この世界で9番目ぐらいな俺、異世界人の監視役に駆り出されました   作:東雲(しののめ)

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第24話:千年

 ニホン出身。

 名乗った後、アクツとやらは付け加えてそう言った。

 

(ただ禁書庫で知った5人目の名は『ショーゴ・マノ』、こいつはまた違う異世界人ってことか……!)

 

 それは勇者たちの反応を見ても明らかだ。

 

「と言っても僕が召喚されたのは千年ぐらい前だけどね」

「千年前ってそんな……」

「最近復活したんだ。当時は『大賢者』なんて呼ばれてたかな」

 

 学園に潜入する前、ある程度勇者という存在について調べた。

 歴史上、今回以外で記録に残っている勇者召喚は1度だけ。

 時代は約千年前にまで(さかのぼ)る。

 

「蘇ったは良いんだけど当時と情勢が全然違くて、いやはや参ったもんだよ」

 

 千年前に召喚された勇者は未だ謎が多い。

 俺は正直おとぎ話だと思っていた。

 

「でも随分平和な世の中になった。千年前に色々捨てた甲斐(かい)がある」

 

 正体不明(アンノウン)の、いやサトシ・アクツの独白が続く。

 

(人間のくせに精霊を操る。異能か? それとも別のカラクリがあるのか?)

 

 しかし騎士たちを軽く蹴散らすだけの力はある。

 

「私たち以外に召喚された人がいるだなんて……」

「アイツとはまた別ってことだよな!?」

「っ幸樹、その話は……」

「だ、だけどよ、そもそも千年も人が生きれるっておかしいし……」

 

 勇者たちの反応は似たり寄ったり。

 彼らもやはりその存在を知らなかったらしい。

 

「僕はつい最近まで眠ってたんだ。冬眠的な?」

「それでも千年なんて……」

「できるさ。これでも大賢者なんて呼ばれていたんだ」

 

 またも断言する。

 せっかくの機会、とりあえず俺も問い掛けてみよう。

 

「この森に魔獣がいないのもアンタの仕業か?」

「ふっふっふ。銀髪ちゃんは見た目通り冷静だ。原因は僕というよりかは精霊たちのせい」

「やっぱり……」

「すぐ悪さをするんだ。それとこの時代の人も精霊は使役できないらしいね」

「ああ。人間が精霊を従えているのは初めて見たよ」

 

 精霊がどうやって魔獣を追い払ったのかまでは不明。

 ただそれでも主であるコイツが渦中にいるのは確か。

 どう切り抜ける——?

 

「自己紹介も終わり、一緒に行こうか」

「も、目的は何だ!」

「だーかーらー僕の願いを叶える手伝いだって。詳しいことは後で話すよ」

「そんな説明で付いて行くわけないだろ!」

 

 先頭をきってスガヌマが拒否を示す。

 ただ素性を晒した相手が引くはずもない。

 

「もう抵抗しないほうがいいよ? 僕強いし」

「そ、それでも……!」

「へえ。ピカピカ勇者君同様、根性はそれなりにあると」

 

 力で強引で連れていこうかと脅すのに対し、剣を構えるスガヌマ。

 ワドウさんも魔力を集めだしてる。

 

「わ、私だって……」

 

 仲間の姿を見てマイさんも奮起。

 

「自分で決めるんだ。もう泣いてる暇は——」

 

 魔力の高ぶり、青い眼が敵を捕らえる。

 少しずつ、彼女も強くなっている。

 

「俺の全力の速さなら……!」

 

 先陣をきってスガヌマが異能を発動、例の高速化だ。

 禁書庫の資料によれば『速度突破(リミット・ブレイク)』と名付けられている。

 

「行くぞ!」

 

 先手必勝。一気に動くスガヌマだが——

 

「そういう単調な速さ、もう見飽きてるんだよね」

 

 迫るスガヌマの動きに的確反応。

 

「——拳王(あいつ)の方が100倍速いよ!」

 

 紫電の如く走るスガヌマに精霊使いのフルカウンターが飛ぶ。

 放たれる炎弾、アレを貰ったらだいぶ危険だ。

 

造形(クリエイト)氷壁(ウォール)!」

 

 氷で相殺。

 転移してきたばかり、技術や経験は皆無の勇者。

 スガヌマへのカウンターは、見えている俺が瞬間的にカバーする。

 

「やるぅ銀髪ちゃん!」

「勇者を召喚した奴等に見せてやりたいよっ……!」

 

 そしてもっとスパルタな教育をするべきと悟らせたい。 

 

「ケンザキの奴もずっとお眠だし……!」

 

 相当気を配りながら相対してる。

 やる気があるのはいいが、今の勇者たちが勝てる相手では絶対ない。

 これ以上は危険——

 

「あっぶな……助かったぜアリシア」

「スガヌマ」

「な、なんだよ?」

 

 思い返せばこれが初めての会話になるか。

 勇者たちのお守りは本来魔法騎士の仕事。

 ただ今を打開できるのはもう俺しかいないから——

 

「ここは……」

「おかしな行動はさせないよ!」

 

 俺に任せて逃げろ。

 そう伝えようとしたが、向こうのアクションが流石に早い。

 

「都合良くいかないな……!」

 

 襲い掛かる精霊魔法を防ぎつつ次手を考察。

 

(普通の魔法と構造が違うせいで軌道が読みにくい……!)

 

 理解はしてる。

 もう優秀な生徒の範疇を越えるしか道はないと。

 

「やるしか、ない——」

 

 どうせこのままいけば奴の手は俺にまで伸びる。

 

「仲間や奴隷になるつもりは……!」

 

 だが勇者たちに災厄の数字(ナンバーズ)とバレるつもりもない。

 勇者が撤退するまではある程度の魔法で押し切る。

 そしてそれ以降で決着をつける——

 

「マトモに戦えそうなは銀髪ちゃんくらい! まあ彼女も長くは持たないでしょ!」

 

 最後の警告と言わんばかり。

 降りかかるプレッシャー、それには流石の勇者たちも顔が強張ってしまう。

 もうダメ。決まりだ。

 

「スガヌマ!」

「な、なんだ?」

拠点(キャンプ)に帰ったらすぐに相手の情報を報告してくれ!」

「おいおい銀髪ちゃーん! 僕は逃す気はないと——」

 

 分かっているとも。

 だが俺はアンタが思ってるほど下手な(、、、)魔法使い(、、、、)ではない。

 

「……新羅万象を凍らすは女神の威光!」

 

 異能へと接続、体内の魔力庫から魔力を引っ張ってくる。

 奥底から溢れ出る銀色の粒子群、昂りは空気を支配する。

 

「こ、この魔力量は……」

「千年前、当時いた魔法使いはどれぐらい強かった? 教えてくれよ」

「銀髪ちゃん。いや、君は一体——」

 

 着用した黒手袋越し、左手の数字刻印が熱を持つ。

 

「世界は、凍る」

 

 そして静かに吐きだすワンフレーズ。

 それだけで現世は氷界へと移り変わる。

 刮目しろ――

 

「――これが本物の魔法だ!」

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