この世界で9番目ぐらいな俺、異世界人の監視役に駆り出されました 作:東雲(しののめ)
ニホン出身。
名乗った後、アクツとやらは付け加えてそう言った。
(ただ禁書庫で知った5人目の名は『ショーゴ・マノ』、こいつはまた違う異世界人ってことか……!)
それは勇者たちの反応を見ても明らかだ。
「と言っても僕が召喚されたのは千年ぐらい前だけどね」
「千年前ってそんな……」
「最近復活したんだ。当時は『大賢者』なんて呼ばれてたかな」
学園に潜入する前、ある程度勇者という存在について調べた。
歴史上、今回以外で記録に残っている勇者召喚は1度だけ。
時代は約千年前にまで
「蘇ったは良いんだけど当時と情勢が全然違くて、いやはや参ったもんだよ」
千年前に召喚された勇者は未だ謎が多い。
俺は正直おとぎ話だと思っていた。
「でも随分平和な世の中になった。千年前に色々捨てた甲斐(かい)がある」
(人間のくせに精霊を操る。異能か? それとも別のカラクリがあるのか?)
しかし騎士たちを軽く蹴散らすだけの力はある。
「私たち以外に召喚された人がいるだなんて……」
「アイツとはまた別ってことだよな!?」
「っ幸樹、その話は……」
「だ、だけどよ、そもそも千年も人が生きれるっておかしいし……」
勇者たちの反応は似たり寄ったり。
彼らもやはりその存在を知らなかったらしい。
「僕はつい最近まで眠ってたんだ。冬眠的な?」
「それでも千年なんて……」
「できるさ。これでも大賢者なんて呼ばれていたんだ」
またも断言する。
せっかくの機会、とりあえず俺も問い掛けてみよう。
「この森に魔獣がいないのもアンタの仕業か?」
「ふっふっふ。銀髪ちゃんは見た目通り冷静だ。原因は僕というよりかは精霊たちのせい」
「やっぱり……」
「すぐ悪さをするんだ。それとこの時代の人も精霊は使役できないらしいね」
「ああ。人間が精霊を従えているのは初めて見たよ」
精霊がどうやって魔獣を追い払ったのかまでは不明。
ただそれでも主であるコイツが渦中にいるのは確か。
どう切り抜ける——?
「自己紹介も終わり、一緒に行こうか」
「も、目的は何だ!」
「だーかーらー僕の願いを叶える手伝いだって。詳しいことは後で話すよ」
「そんな説明で付いて行くわけないだろ!」
先頭をきってスガヌマが拒否を示す。
ただ素性を晒した相手が引くはずもない。
「もう抵抗しないほうがいいよ? 僕強いし」
「そ、それでも……!」
「へえ。ピカピカ勇者君同様、根性はそれなりにあると」
力で強引で連れていこうかと脅すのに対し、剣を構えるスガヌマ。
ワドウさんも魔力を集めだしてる。
「わ、私だって……」
仲間の姿を見てマイさんも奮起。
「自分で決めるんだ。もう泣いてる暇は——」
魔力の高ぶり、青い眼が敵を捕らえる。
少しずつ、彼女も強くなっている。
「俺の全力の速さなら……!」
先陣をきってスガヌマが異能を発動、例の高速化だ。
禁書庫の資料によれば『
「行くぞ!」
先手必勝。一気に動くスガヌマだが——
「そういう単調な速さ、もう見飽きてるんだよね」
迫るスガヌマの動きに的確反応。
「——
紫電の如く走るスガヌマに精霊使いのフルカウンターが飛ぶ。
放たれる炎弾、アレを貰ったらだいぶ危険だ。
「
氷で相殺。
転移してきたばかり、技術や経験は皆無の勇者。
スガヌマへのカウンターは、見えている俺が瞬間的にカバーする。
「やるぅ銀髪ちゃん!」
「勇者を召喚した奴等に見せてやりたいよっ……!」
そしてもっとスパルタな教育をするべきと悟らせたい。
「ケンザキの奴もずっとお眠だし……!」
相当気を配りながら相対してる。
やる気があるのはいいが、今の勇者たちが勝てる相手では絶対ない。
これ以上は危険——
「あっぶな……助かったぜアリシア」
「スガヌマ」
「な、なんだよ?」
思い返せばこれが初めての会話になるか。
勇者たちのお守りは本来魔法騎士の仕事。
ただ今を打開できるのはもう俺しかいないから——
「ここは……」
「おかしな行動はさせないよ!」
俺に任せて逃げろ。
そう伝えようとしたが、向こうのアクションが流石に早い。
「都合良くいかないな……!」
襲い掛かる精霊魔法を防ぎつつ次手を考察。
(普通の魔法と構造が違うせいで軌道が読みにくい……!)
理解はしてる。
もう優秀な生徒の範疇を越えるしか道はないと。
「やるしか、ない——」
どうせこのままいけば奴の手は俺にまで伸びる。
「仲間や奴隷になるつもりは……!」
だが勇者たちに
勇者が撤退するまではある程度の魔法で押し切る。
そしてそれ以降で決着をつける——
「マトモに戦えそうなは銀髪ちゃんくらい! まあ彼女も長くは持たないでしょ!」
最後の警告と言わんばかり。
降りかかるプレッシャー、それには流石の勇者たちも顔が強張ってしまう。
もうダメ。決まりだ。
「スガヌマ!」
「な、なんだ?」
「
「おいおい銀髪ちゃーん! 僕は逃す気はないと——」
分かっているとも。
だが俺はアンタが思ってるほど
「……新羅万象を凍らすは女神の威光!」
異能へと接続、体内の魔力庫から魔力を引っ張ってくる。
奥底から溢れ出る銀色の粒子群、昂りは空気を支配する。
「こ、この魔力量は……」
「千年前、当時いた魔法使いはどれぐらい強かった? 教えてくれよ」
「銀髪ちゃん。いや、君は一体——」
着用した黒手袋越し、左手の数字刻印が熱を持つ。
「世界は、凍る」
そして静かに吐きだすワンフレーズ。
それだけで現世は氷界へと移り変わる。
刮目しろ――
「――これが本物の魔法だ!」