この世界で9番目ぐらいな俺、異世界人の監視役に駆り出されました 作:東雲(しののめ)
ゴーレムを護衛に付けながらスガヌマたちは離脱して行く。
現場にいるのは俺と大賢者だけとなるわけだ。
グイッと背伸び、身体に異常なし。
「意外と鈍ってもいない」
最高のパフォーマンスを発揮できるコンディションだ。
「——や、やるねえ」
向こうさんも遂に復活か。
倒れた木々の山を退け這い出てくる。
「今さっきのは不意打ち、ここからが本番だ」
「そうかい……!」
1人になった自分。
でも緊張も感じないし、臆してもいない。
むしろ意識は一層研ぎ澄まされる。冷静すぎるほど冷静。
「熱いセリフは似合わない、か」
氷製の心臓は今なお健在。
「随分回復したみたいだ」
「ああ。お陰さまでね」
「だがどうせ負ける。自称大賢者、無理しないうちに帰った方が身のためだぞ」
「……なに?」
挑発して俺への執着を強める。
(途中で帰られたら困るのは俺の方なんでな)
もう俺が
俺の片鱗を見た以上、この場で確実に
「おいおい、あんまり調子にのんなよ」
「あれ? さっきまで理知的な口調だったのにな、素が出てきてるぞ」
「……っ!」
サトシ・アクツとやらの年齢は20前後といったところ。
完全な大人とは言いにくい。なにせ
(つまり
本当に千年前にいた大賢者か疑っている。
しかしこれまでの会話を鑑みるに、人を騙せるような良い頭は持っていなそうなのだ。
「——本物の可能性が高いか」
「もう君は要らない……」
「え、なに? 聞いてなかった」
「君は要らないって言ったんだ! 勇者たちだけ僕の手中に収める!」
ダメだね。せっかく逃がした勇者たち。
このまま『大賢者』という存在を周囲に伝えてもらおう。
「復活してから全然ツイてない……なんでこうも……」
「上手く行ってないみたいだな」
「っそうだよ! 少し前もおかしな男にコケにされた!」
「おかしな男……?」
「僕の精霊たちを殺した挙句、怠いとか言って逃げた男が——」
あー、その怠そうな人ってのは
情報一致、コイツはやはり
(だけど辺りに人の気配は感じない。こいつは単身で来てるってことだ)
もし
逃げようとした時なんてなおさらだ。
「道中で襲われたとしても——」
ゴーレムは
俺がコイツを倒して駆けつけるぐらいまでは、時間稼ぎをしてくれるだろう。
まずは目前に集中、どれぐらいの力を解放して仕留めるか——
「そ、そういえば、君の名前をちゃんと聞いてなかったね」
今更な質問だな。
スガヌマやマイさん、勇者がさんざん呼んでただろう。
いや、吹っ飛ばされてたから聞こえてないか?
「アリシア……後はなんだい……?」
こいつ、アリシアを名前と勘違いしている。
俺の名前はクレス、クレス・アリシアだ。
「……」
「どうした、黙ってないで答えてくれないか?」
「アンタに名前を教える必要はない」
「へ、へえ、名前も言えないんだぁ。見た目がいくら良くても頭がバカじゃ——」
不用意に名乗って格好がつくのは冒険譚だけ。
(それにしても大賢者、なんだかヒステリーな感じになってきた)
これが歴史に刻まれた原初の勇者の1人とは……
ただ最終評価するのはその実力を見てから。
「ほらどうした? なんで名前が言えないんだ?」
いい加減クドイ。
ただせっかく、かの大賢者様からの問いかけだ。
名乗らない理由、それを強いて言うなら——
「あのな、これから死ぬ奴に名前教えても意味がないだろ?」
「なに……?」
「冥土の土産はないよ。手ぶらで逝きな」
「ふ、ふざけたたことを——!」
一応宣戦布告、改めて復活した英雄の力を見せてもらおうか。
唱えるとしたら心の中で。