この世界で9番目ぐらいな俺、異世界人の監視役に駆り出されました   作:東雲(しののめ)

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第26話:対決

 ゴーレムを護衛に付けながらスガヌマたちは離脱して行く。

 現場にいるのは俺と大賢者だけとなるわけだ。

 グイッと背伸び、身体に異常なし。

 

「意外と鈍ってもいない」

 

 最高のパフォーマンスを発揮できるコンディションだ。

 

「——や、やるねえ」

 

 向こうさんも遂に復活か。

 倒れた木々の山を退け這い出てくる。

 

「今さっきのは不意打ち、ここからが本番だ」

「そうかい……!」

 

 1人になった自分。

 でも緊張も感じないし、臆してもいない。

 むしろ意識は一層研ぎ澄まされる。冷静すぎるほど冷静。

 

「熱いセリフは似合わない、か」

 

 氷製の心臓は今なお健在。

 

「随分回復したみたいだ」

「ああ。お陰さまでね」

「だがどうせ負ける。自称大賢者、無理しないうちに帰った方が身のためだぞ」

「……なに?」

 

 挑発して俺への執着を強める。

 

(途中で帰られたら困るのは俺の方なんでな)

 

 もう俺が普通の(、、、)学生でないことは察しているだろう。

 俺の片鱗を見た以上、この場で確実に殺す(、、)——

 

「おいおい、あんまり調子にのんなよ」

「あれ? さっきまで理知的な口調だったのにな、素が出てきてるぞ」

「……っ!」

 

 サトシ・アクツとやらの年齢は20前後といったところ。

 完全な大人とは言いにくい。なにせ(ガキ)の挑発に怒るぐらいだし。

 

(つまり(ストレガ)さんみたいに年齢詐欺はしてない。年相応の出立(いでたち)だ)

 

 本当に千年前にいた大賢者か疑っている。

 しかしこれまでの会話を鑑みるに、人を騙せるような良い頭は持っていなそうなのだ。

 

「——本物の可能性が高いか」

「もう君は要らない……」

「え、なに? 聞いてなかった」

「君は要らないって言ったんだ! 勇者たちだけ僕の手中に収める!」 

 

 ダメだね。せっかく逃がした勇者たち。

 このまま『大賢者』という存在を周囲に伝えてもらおう。

 

「復活してから全然ツイてない……なんでこうも……」

「上手く行ってないみたいだな」

「っそうだよ! 少し前もおかしな男にコケにされた!」

「おかしな男……?」

「僕の精霊たちを殺した挙句、怠いとか言って逃げた男が——」

 

 あー、その怠そうな人ってのは(ローラン)さんだな。

 情報一致、コイツはやはり正体不明(アンノウン)で確定だ。

 

(だけど辺りに人の気配は感じない。こいつは単身で来てるってことだ)

 

 もし正体不明(アンノウン)の仲間がいるなら、勇者を捕まえる時点で出て来るはず。

 逃げようとした時なんてなおさらだ。

 

「道中で襲われたとしても——」

 

 ゴーレムは数字(ナンバーズ)をモチーフにして作った特別製。

 俺がコイツを倒して駆けつけるぐらいまでは、時間稼ぎをしてくれるだろう。

 まずは目前に集中、どれぐらいの力を解放して仕留めるか——

 

「そ、そういえば、君の名前をちゃんと聞いてなかったね」

 

 今更な質問だな。

 スガヌマやマイさん、勇者がさんざん呼んでただろう。

 いや、吹っ飛ばされてたから聞こえてないか?

 

「アリシア……後はなんだい……?」

 

 こいつ、アリシアを名前と勘違いしている。

 俺の名前はクレス、クレス・アリシアだ。

 

「……」

「どうした、黙ってないで答えてくれないか?」

「アンタに名前を教える必要はない」

「へ、へえ、名前も言えないんだぁ。見た目がいくら良くても頭がバカじゃ——」

 

 不用意に名乗って格好がつくのは冒険譚だけ。

 

(それにしても大賢者、なんだかヒステリーな感じになってきた)

 

 これが歴史に刻まれた原初の勇者の1人とは……

 ただ最終評価するのはその実力を見てから。

 

「ほらどうした? なんで名前が言えないんだ?」

 

 いい加減クドイ。

 ただせっかく、かの大賢者様からの問いかけだ。

 名乗らない理由、それを強いて言うなら——

 

「あのな、これから死ぬ奴に名前教えても意味がないだろ?」

「なに……?」

「冥土の土産はないよ。手ぶらで逝きな」

「ふ、ふざけたたことを——!」

 

 一応宣戦布告、改めて復活した英雄の力を見せてもらおうか。

 唱えるとしたら心の中で。

 災厄の数字(ナンバーズ)が9番目、絶氷(エターナル)がその首を頂く。

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