この世界で9番目ぐらいな俺、異世界人の監視役に駆り出されました 作:東雲(しののめ)
「——炎の精霊!」
「——
交差する炎と氷の技と技。
交戦に入って少し、まだお互い決定打を出せていない。
「……読めないなぁ」
いかんせんそうお目に掛かれない精霊魔法。
「なかなか厄介な代物だ」
魔法式が正確に解読できなければ、信頼度の高い予想を立てることができない。
俺はあえて受け身回っているとも言える。
「どうした! 守ってばかりじゃ勝てないぞ!」
どうやら操れるは炎精霊だけではないようだ。
今も電撃が頬を掠めていく、避ければ
「炎の精霊! 光の精霊!」
「うおっ!」
今度は精霊魔法の合わせ技。
放たれたレーザー群が大気を焦がす。
(ちょっとキツイ!)
魔力の解放具合をよりオープンに、強化魔法を重ね回避する。
避けたレーザーは大地に突き刺さり爆裂、土埃が立ち込む。
「良い威力——」
大地は隆起し轟音と衝撃をもたらす。
「
見慣れない魔法、捌くのもだいぶ神経を使う。
しかもローランさんはこの大賢者を含め、
「……流石だ」
でも今回はその内の1人、しかも俺と相性の良い後衛タイプ。
脅威には未だなりえない。
「
ただやはり賢者と名乗るだけあって、接近を容易に許してはくれない。
それでもここはあえて武器で首を狙ってみる。
「遠距離戦闘だとどうしても強い魔法がモノを言うからな——」
周りに人がいないとはいえ、全力を出すのは躊躇われる。
「身体強化!」
——もっと速く。
——もっと先へ。
多少の傷は負ってもいい、強引にでも奴の間合いへと入りこむ。
「狙って行こう……!」
踏み込むアクセル。
荒れた大地を強く蹴って前に出る。
「僕には近づけさないよ!
案の定、炎やら氷やら電撃やらが雨の如く放たれる。
だが速度は決して落とさない。
長槍片手に突き進む。
「バカだねぇ君は!」
炎弾と雷撃を弾いた時に毛先が燃える。
風迅の攻撃は俺の頬を掠って流血を生む。
「大地に住まう精霊たち! 侵略者を滅ぼせ!」
「ッチ!」
今度は足元を崩される。
しかも見上げればどでかい炎が迫って来ていて——
「っこれは……」
それなりに距離を詰めたがあと少し。
「もうぶん投げるっ——!」
一閃。握っていた氷槍を
勢いそのままに、力任せに投げ込む。
速度と狙いはバッチリ。
「精霊! 僕を守るんだ!」
カッ!
大賢者は半透明な防御陣を展開、俺の投擲は弾かれた。
「炎の精霊よ! 敵を焼け!」
「流石に次の攻撃へのシフトも早い……!」
カウンターとして炎を叩きこんでくる。
奴の表情、まるで
「だがこの距離は——!」
俺だって力量が分かってくれば相応の対応をする。
オーライ! もう学生の範疇は越えてやるよ!
「停滞しろ! 魔法凍結!」
射程圏内に入れば俺の氷魔法は
「——精霊だろうと逃れることはできない!」
マジック・イン・ザ・フローズン。
奴が展開しようとした魔法はピタリと静止する。
「ぼ、僕の炎が!」
上がり続ける魔力エンジンの回転数、調子出てきた。
「不発になったぐらいで体勢崩すのは甘いって!」
魔法が凍り、驚いた拍子に動きも凍る。
きっと昔は頼りになりすぎる前衛がいたんだろうな。
だが今は違う、サシの勝負だ!
「
再び槍を生成、握ってそのまま奴へと投げ込む——!
「ったあああああぁぁあぁ!」
「クリティカルっ!」
投擲した長槍は今度こそ奴のハラワタに突き刺さった。
心臓に届くことはなかったが、奴が痛みで叫び出す。
「血、血が‥…血が出てる!」
「そのまま殺してやるよっ」
トドメ、そう思った瞬間だ。
突如として大地が隆起、地形が変化する。
「……行く手を阻むか」
大地の精霊の仕業、ホント便利な力だ。
「ふ、ふざけるなああああああああああああああああああ」
痛みやら怒りでぶちギレとなった賢者。
もうお構いなしとありったけを叩き込んでくる。
「精霊魔法のオンパレードってか——!?」
俺を狙って色彩豊かな光線が弾かれる。
その熱量に自然も融解、辺りを破壊しながら閃光は突き進む。
「デタラメに放てば良いってもんじゃないだろうに……!」
守りの姿勢へとシフトチェンジ。
烈火の如き反撃を対処する。
「死ね死ね死ね死ね! 僕をコケにする奴は皆死ねばいい!」
「そんな怖いこと言うなよ……!」
むかしイジめられてでもしたのか?
丁寧口調は完全に崩れて荒い言葉遣い。
精霊魔法の方もかなり雑な使い方になる。
「ただそれを実現させるだけのスタミナがあるのもまた事実——」
氷魔法を壁状に複数展開、
しかし幾ら倒しても精霊は無限に湧いてくる。
「精霊は無限にいる! つまり僕の力は無限大!」
「確かにっ」
それが精霊魔法の恐ろしいところ。
本来人間の使う魔法は体内の『魔力』をエネルギーとする。
「普通は決まった保有量があるんだけど……!」
だが大賢者の魔法のエネルギー源は『精霊』
精霊はどこにでも存在、つまり奴は無限に魔法を放てるってことだ。
同じことをするにしても、ガス欠になるのはコチラだけ。
「だからって
って危な!
雷撃、今も顔のすぐ真横を通り過ぎていった。
1発1発は軽くても弾数は無限、数で押され気味。
(このまま調子づかせるのは良くない。体力的にも時間的にも)
向こうにも何かしらの制約はあるはずなんだが——
「さっきまでの威勢はどこに行ったんだああああぁぁぁい!?」
まさか精霊王なんてものを召喚されたらどうなるか。
可能性はゼロじゃない、だがいっそ一気に畳みかけるのもアリ?
しかしリスクもある。
俺はどう行動すべきかをずっと悩んでいた。
「さあさあ! 炎よ! 風よ! 水よ!」
思考の最中でも攻撃は止まらない。
燃料が切れない魔力砲台。
これで前衛がいたら割とキツかったかもな。
「なかなか良い魔法使うじゃん——」
正直言おう、結構強いよ。
強化された身体と氷槍で精霊たちを屠りながら思う。
上級の魔族に匹敵するぐらいの実力は持っていると感じた。
この時代、人の身でありながらソコまで到達している奴はそういない。
「面倒だ! 僕の声に応えろ大地の精霊たち!」
途端に輝きだす大地、土塊が合わさって1つの形を成していく。
「もしかして大技……?」
すると俺のゴーレムと同じ、そこには巨大な土製人形が誕生した。
「でもデカすぎやしないか……?」
城2つ分くらいあるぞ。
真下から見上げて頭が見えない。
太陽が隠れ、俺の立ち位置は影に支配される。
「大地の精霊よ! 奴を潰せ!」
『GOOOOOOOOOOOOOOOOOO!』
瞬間で誕生した巨体から繰り出される鉄拳ならぬ土の拳。
上から真下へ一直線に落ちてくる。
「——そのまま地面に打たせれば一帯の結界が消える可能性が……」
しかしゴーレムの類には核、人間でいう心臓が必ずある。
そこを見極め、穿てば——
「どんな巨体であろうとも、一撃で破壊することができる」
積み重ねた経験値、魔法の新天地を目指し得た力量、瞳孔の奥が核の
「
鋭く尖らせた氷の先端を頭上に展開、そして照射。
『GYAA、AA——、』
「悪いね精霊さん!」
冷たき尖刃は流星の如く空を駆ける。
一撃必殺にして必中、土の巨体その生命線を断つ。
『GA……GAAAA……AA……』
「ま、まだだ! 精霊はいくらだっている!」
土人形を倒したと思ったら新たな土人形が出現。
「おいおい……」
今度は1体じゃない。
「2、3、4、5……どんどん増えていく」
巨体が森に幾つも、完全にキャパオーバーだ。
それだと自分だって巻き込まれるぞ。
「ブチコロスゥゥウゥゥ!」
ただそんなことに気付く様子はない。
目の前の事しか見えていない。
「これはもう——」
大賢者自体、さっき腹に開けてやった穴も回復したらしい。
せっかく詰めた距離もなんだかんだ元通り。
結局は振り出しに、どうす……
『——ねえクレス、そろそろ私の出番じゃない?』
突如鼓膜に響く女の声。
その音色は悪魔的、聞く者を魅了する艶やかな声質だ。