この世界で9番目ぐらいな俺、異世界人の監視役に駆り出されました   作:東雲(しののめ)

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第27話:絶氷

「——炎の精霊!」

「——氷壁(ウォール)

 

 交差する炎と氷の技と技。

 交戦に入って少し、まだお互い決定打を出せていない。

 

「……読めないなぁ」

 

 いかんせんそうお目に掛かれない精霊魔法。

 

「なかなか厄介な代物だ」

 

 魔法式が正確に解読できなければ、信頼度の高い予想を立てることができない。

 俺はあえて受け身回っているとも言える。

 

「どうした! 守ってばかりじゃ勝てないぞ!」

 

 どうやら操れるは炎精霊だけではないようだ。

 今も電撃が頬を掠めていく、避ければ風刃(ふうじん)が襲っても来る。

 

「炎の精霊! 光の精霊!」

「うおっ!」

 

 今度は精霊魔法の合わせ技。

 放たれたレーザー群が大気を焦がす。

 

(ちょっとキツイ!)

 

 魔力の解放具合をよりオープンに、強化魔法を重ね回避する。

 避けたレーザーは大地に突き刺さり爆裂、土埃が立ち込む。

 

「良い威力——」

 

 大地は隆起し轟音と衝撃をもたらす。

 

(ローラン)さんが面倒になった理由も分かる、なっ!」

 

 見慣れない魔法、捌くのもだいぶ神経を使う。

 しかもローランさんはこの大賢者を含め、正体不明(アンノウン)5人を1人で相手取った。

 

「……流石だ」

 

 でも今回はその内の1人、しかも俺と相性の良い後衛タイプ。

 脅威には未だなりえない。

 

造形(クリエイト)氷槍(ランス)

 

 ただやはり賢者と名乗るだけあって、接近を容易に許してはくれない。

 それでもここはあえて武器で首を狙ってみる。

 

「遠距離戦闘だとどうしても強い魔法がモノを言うからな——」

 

 周りに人がいないとはいえ、全力を出すのは躊躇われる。

 

「身体強化!」

 

 ——もっと速く。

 ——もっと先へ。

 多少の傷は負ってもいい、強引にでも奴の間合いへと入りこむ。

 

「狙って行こう……!」

 

 踏み込むアクセル。

 荒れた大地を強く蹴って前に出る。

 

「僕には近づけさないよ! 精霊の宴(スピリット・パレード)!」

 

 案の定、炎やら氷やら電撃やらが雨の如く放たれる。

 だが速度は決して落とさない。

 長槍片手に突き進む。

 

「バカだねぇ君は!」

 

 炎弾と雷撃を弾いた時に毛先が燃える。

 風迅の攻撃は俺の頬を掠って流血を生む。

 

「大地に住まう精霊たち! 侵略者を滅ぼせ!」

「ッチ!」

 

 今度は足元を崩される。

 しかも見上げればどでかい炎が迫って来ていて——

 

「っこれは……」

 

 それなりに距離を詰めたがあと少し。

 

「もうぶん投げるっ——!」

 

 一閃。握っていた氷槍を大投擲(だいとうてき)

 勢いそのままに、力任せに投げ込む。

 速度と狙いはバッチリ。

 

「精霊! 僕を守るんだ!」

 

 カッ!

 大賢者は半透明な防御陣を展開、俺の投擲は弾かれた。

 

「炎の精霊よ! 敵を焼け!」

「流石に次の攻撃へのシフトも早い……!」

 

 カウンターとして炎を叩きこんでくる。

 奴の表情、まるで(てのひら)で踊る人形を眺めてるみたい。

 

「だがこの距離は——!」

 

 俺だって力量が分かってくれば相応の対応をする。

 オーライ! もう学生の範疇は越えてやるよ!

 

「停滞しろ! 魔法凍結!」

 

 射程圏内に入れば俺の氷魔法は魔法をも(、、、、)凍らす(、、、)

 

「——精霊だろうと逃れることはできない!」

 

 マジック・イン・ザ・フローズン。

 奴が展開しようとした魔法はピタリと静止する。

 

「ぼ、僕の炎が!」

 

 上がり続ける魔力エンジンの回転数、調子出てきた。

 

「不発になったぐらいで体勢崩すのは甘いって!」

 

 魔法が凍り、驚いた拍子に動きも凍る。

 きっと昔は頼りになりすぎる前衛がいたんだろうな。

 だが今は違う、サシの勝負だ!

 

造形(メイジ)氷槍(ランス)!」

 

 再び槍を生成、握ってそのまま奴へと投げ込む——!

 

「ったあああああぁぁあぁ!」

「クリティカルっ!」

 

 投擲した長槍は今度こそ奴のハラワタに突き刺さった。

 心臓に届くことはなかったが、奴が痛みで叫び出す。

 

「血、血が‥…血が出てる!」 

「そのまま殺してやるよっ」

 

 トドメ、そう思った瞬間だ。

 突如として大地が隆起、地形が変化する。

 

「……行く手を阻むか」

 

 大地の精霊の仕業、ホント便利な力だ。

 

「ふ、ふざけるなああああああああああああああああああ」

 

 痛みやら怒りでぶちギレとなった賢者。

 もうお構いなしとありったけを叩き込んでくる。

 

「精霊魔法のオンパレードってか——!?」

 

 俺を狙って色彩豊かな光線が弾かれる。

 その熱量に自然も融解、辺りを破壊しながら閃光は突き進む。

 

「デタラメに放てば良いってもんじゃないだろうに……!」

 

 守りの姿勢へとシフトチェンジ。

 烈火の如き反撃を対処する。

 

「死ね死ね死ね死ね! 僕をコケにする奴は皆死ねばいい!」

「そんな怖いこと言うなよ……!」

 

 むかしイジめられてでもしたのか?

 丁寧口調は完全に崩れて荒い言葉遣い。

 精霊魔法の方もかなり雑な使い方になる。

 

「ただそれを実現させるだけのスタミナがあるのもまた事実——」

 

 氷魔法を壁状に複数展開、(ほふ)った精霊の亡骸が儚く散っていく。

 しかし幾ら倒しても精霊は無限に湧いてくる。

 

「精霊は無限にいる! つまり僕の力は無限大!」

「確かにっ」

 

 それが精霊魔法の恐ろしいところ。

 本来人間の使う魔法は体内の『魔力』をエネルギーとする。

 

「普通は決まった保有量があるんだけど……!」 

 

 だが大賢者の魔法のエネルギー源は『精霊』

 精霊はどこにでも存在、つまり奴は無限に魔法を放てるってことだ。

 同じことをするにしても、ガス欠になるのはコチラだけ。

 

「だからって迂闊(うかつ)に大技を仕掛けるのも——」

 

 って危な! 

 雷撃、今も顔のすぐ真横を通り過ぎていった。

 1発1発は軽くても弾数は無限、数で押され気味。

 

(このまま調子づかせるのは良くない。体力的にも時間的にも)

 

 向こうにも何かしらの制約はあるはずなんだが——

 

「さっきまでの威勢はどこに行ったんだああああぁぁぁい!?」

 

 まさか精霊王なんてものを召喚されたらどうなるか。

 可能性はゼロじゃない、だがいっそ一気に畳みかけるのもアリ?

 しかしリスクもある。

 俺はどう行動すべきかをずっと悩んでいた。

 

「さあさあ! 炎よ! 風よ! 水よ!」

 

 思考の最中でも攻撃は止まらない。

 燃料が切れない魔力砲台。

 これで前衛がいたら割とキツかったかもな。

 

「なかなか良い魔法使うじゃん——」

 

 正直言おう、結構強いよ。

 強化された身体と氷槍で精霊たちを屠りながら思う。

 上級の魔族に匹敵するぐらいの実力は持っていると感じた。

 この時代、人の身でありながらソコまで到達している奴はそういない。

 

「面倒だ! 僕の声に応えろ大地の精霊たち!」

 

 途端に輝きだす大地、土塊が合わさって1つの形を成していく。

 

「もしかして大技……?」

 

 すると俺のゴーレムと同じ、そこには巨大な土製人形が誕生した。

 

「でもデカすぎやしないか……?」

 

 城2つ分くらいあるぞ。

 真下から見上げて頭が見えない。

 太陽が隠れ、俺の立ち位置は影に支配される。

 

「大地の精霊よ! 奴を潰せ!」

『GOOOOOOOOOOOOOOOOOO!』

 

 瞬間で誕生した巨体から繰り出される鉄拳ならぬ土の拳。

 上から真下へ一直線に落ちてくる。

 

「——そのまま地面に打たせれば一帯の結界が消える可能性が……」

 

 しかしゴーレムの類には核、人間でいう心臓が必ずある。

 そこを見極め、穿てば——

 

「どんな巨体であろうとも、一撃で破壊することができる」  

 

 積み重ねた経験値、魔法の新天地を目指し得た力量、瞳孔の奥が核の在処(ありか)を見抜く。

 

造形(クリエイト)!」

 

 鋭く尖らせた氷の先端を頭上に展開、そして照射。

 

『GYAA、AA——、』

「悪いね精霊さん!」

 

 冷たき尖刃は流星の如く空を駆ける。

 一撃必殺にして必中、土の巨体その生命線を断つ。

 

『GA……GAAAA……AA……』

「ま、まだだ! 精霊はいくらだっている!」

 

 土人形を倒したと思ったら新たな土人形が出現。

 

「おいおい……」

 

 今度は1体じゃない。

 

「2、3、4、5……どんどん増えていく」

 

 巨体が森に幾つも、完全にキャパオーバーだ。

 それだと自分だって巻き込まれるぞ。

 

「ブチコロスゥゥウゥゥ!」

 

 ただそんなことに気付く様子はない。

 目の前の事しか見えていない。

 

「これはもう——」

 

 大賢者自体、さっき腹に開けてやった穴も回復したらしい。

 せっかく詰めた距離もなんだかんだ元通り。

 結局は振り出しに、どうす……

 

『——ねえクレス、そろそろ私の出番じゃない?』

 

 突如鼓膜に響く女の声。

 その音色は悪魔的、聞く者を魅了する艶やかな声質だ。

 

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