この世界で9番目ぐらいな俺、異世界人の監視役に駆り出されました 作:東雲(しののめ)
「——今回の功績を
学園のみならず、王国でも大きな話題となった王立魔法学園の林間合宿。
(なにせ勇者が謎の人物から襲撃を受け、また守っていたはずの騎士たちがあっけなく倒されてしまったからって言う……)
幸い死者や大きな傷を負った者も出なかった。
しかし明るみなった謎の存在に王国は揺れていた。
(そして何故か俺は表彰されていると)
王都ハーレンスに帰ってきてから数日。
平常通り授業が始まるかと思ったら俺だけ学園長室に呼び出しをくらう。
「いやはや、デニーロ先生から君の凄さは聞いていたが——」
学園長の長話、曰く功績を讃えるものらしい。
(学園長に騎士団長、偉そうな服を着た人も多い)
チラリと横に視線を動かせばニコニコしている人が何人もいる。
「君の頑張りは本当に素晴らしかった」
「いえ……」
「まさか1人で戦って襲撃者を追い返すとは。学園長としても鼻が高い」
「ま、まあ……」
事情聴取では『大賢者は途中で消えた』と報告した。
(まさか異能使って、一撃で倒しましたなんて言えないからな)
ただスガヌマたちが当時、クレスが皆を守るために1人で残ったと伝達。
だいぶ良いように誇張して報告してくれたらしい。
すると俺の株が急上昇、こうして表彰されるまでに至る。
「——私からもいいだろうか?」
「どうぞどうぞ! 生徒も喜びます!」
長話に割って来たのは甲冑を着た男。
「では。まずアリシア君、私のことを知っているかな?」
「魔法騎士団長、アルバート・シグリフォンさんですよね」
「既知か、これは光栄だ」
光栄って……アンタを知らない方が不自然だわ。
「他国から来たと聞いていたのでね、その辺は疎いと思っていたのだよ」
「有名な方はだいたい知ってます。クラスの皆が色々教えてくれるので」
こちとら潜伏しての監視任務。
ここでの常識や要人についてはそれなりに把握している。
(しっかし学園長の話もそろそろ終わると思ってたのに……)
今度は魔法騎士団長様のお話だとさ。
「では初めにお礼から。勇者方や部下を救ってくれてありがとう」
「いえ」
「そして本当に申し訳なかった。本来は私たち騎士が、君たちを守らねばいけない立場にあるというのに」
感謝と謝罪を続けて投じる。
騎士団長の言うことはもっともだ。
(だけどたかが学生に頭を下げる。なかなかできることじゃない)
子供に守られたのだ、体面的には良いことではない。
それでも礼をできたのは、この人が本物の騎士であるからこそ。
「この失態を深く受け止め、これからに活かしていこうと思う」
自分からしてみたら幾らでも文句は言える。
「僕としてもギリギリだったので、騎士の方々にはとても期待してます」
でもここは謙虚に行く。
(というか、全部イエスで答えてさっさと終わらせるのが一番だ)
猫を被っていると言われようがコッチだって仕事。
内心はともかく、外面は明るい表情で固めて話を聞き流す。
「あ、そうだ。アリシア君は騎士に興味はあるかな?」
「騎士ですか……」
「君の実力は聞き及んでいる。もしよかったら今度騎士団の方に遊びに来てくれ」
遠まわしに騎士にならないかって誘われている?
絶対になりません。
「か、考えておきます」
だが面と向かってそう言うわけにもいかない。
笑顔で返しておく。
真面目で謙虚で愛想が良い生徒を演じるのだ。
(ふふふ、まさか俺が
目立てば動きにくくなるが、同時に信頼という盾もまた手に入る。
表彰されるのも悪いことばかりじゃない。
若干の謝礼金も頂いたことだし。
「たまには外食もアリ……」
「外食?」
「あ! な、なんでもないです!」
つい思ったことを口走ってしまった。
こういうドジ踏むところがダメなんだ。
周りから天然とかポンコツって言われるのもコレのせい。
(だからいつまで経っても異能を掌握しきれなのかな……)
自分の異能なのに、氷と無属性以外の魔法を封じられてるぐらい。
ボスにも人間性を鍛えてこいと言われ送り出された。
自分自身に課題もある。
「それでは次に私からも話を、いいかな学園長?」
「ええ! 生徒も喜びます!」
喜びません。
それでも耐えるしかないこの状況。
俺は学園長たちに終始良い顔をしてこの場をやりすごした。