この世界で9番目ぐらいな俺、異世界人の監視役に駆り出されました   作:東雲(しののめ)

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第30話:婚約

「——失礼しました」

 

 はぁ……

 表彰という名のお喋り会が終わった。

 学園長室を出てようやく自由の身になる。

 さすがに疲労が溜まってきてフラフラだ。

 

「この後は授業か……」

 

 監視役として来ているとはいえ学生の身分。

 サボることは普通許されない。

 そして時間的にはまだ授業中。

 だから廊下には本来誰も生徒はいない、はずなんだが……

 

「こんにちは」

 

 学園長室の近く、その人はいた。

 

「こ、こんにちは、です」 

 

 その金髪は神々しく輝く。開いた碧眼は宝石のよう。 

 美の化身でありながら、平民に憧れる少女。

 

(な、なんでここにクラリスさんが……)

 

 彼女の名はクラリス・ランドデルク。

 公爵家の人間あり、この学園では生徒会長に座す人だ。

 

「数日ぶりですね、クレス君」

「ど、どうも」

「林間合宿での件は聞いてますよ。大変でしたね」

「何とか無事に済んで良かったです」

 

 どうやら我らがトップも事情は知っているらしい。

 まさか(ねぎら)いにでも来たのか? 

 

「じゃあ俺はそろそろ……」

「待ってください!」

 

 静かに去ろうとしたが途端に腕を掴まれる。

 

(ですよねー。素直に帰してくれるわけないですよねー) 

 

 今の時間は授業中。

 生徒会長と言えど、用なくこの場にいることはないだろう。

 つまりクラリスさんは学園長室前で待ち伏せしていた事になる。

 

「クレス君。いえ、クレス・アリシアさん」

 

 改まった喋り口調。

 真剣な目、俺も自然と背筋が伸びる。

 

「今日は貴方を見込んで、とあるお願いをしに来ました」

「……お願い、ですか?」

「ええ。少しでも早くお伝えしたくて、こうして待っていた次第です」

 

 お願い……

 パシリ? 召使い? それとも奴隷?

 何をすれば、いや、何になればいいですかね?

 

(本人は口に出さないが、クラリスさんには大きな借りがある)

 

 彼女がいなければ不合格、そもそも監視任務自体が破綻していた。

 それを忘れる俺ではないし、彼女も忘れる気はないはず。

 いいだろう。

 どんなことでもやってや——

 

「結婚してください」

「………………は?」

 

 意を決してクラリスさんが告げる。

 真剣な(よそお)いの彼女とは真逆、突拍子も無さすぎてマヌケな反応をしてしまう。

 だが呆けた俺に、クラリスさんは再度言い放った。

 

「クレス君、私と(、、)結婚して(、、、、)ください(、、、、)——!」 

 

 正体不明(アンノウン)との戦いもなんとか終わり、学園生活にもようやく慣れ始めた今日この頃。

 それは突然のこと。

 俺は公爵令嬢クラリス・ランドデルクに、プロポーズをされたのだった。

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