この世界で9番目ぐらいな俺、異世界人の監視役に駆り出されました   作:東雲(しののめ)

6 / 26
第5話:試験

 勇者たちと邂逅(かいこう)、しかも1人でなく4人もいると判明。

 これには心底驚いた。 

 

「それでパニくって迷子になるぐらいは……」

 

 頭が一杯だったせいで道を迷う。

 一度はまったく違う場所に行ってしまった。

 

「だけどこうして無事に来れたのは、本当にあの人のお陰だな」

 

 ついさっきのことを思い出す。

 路頭に迷う俺に、声を掛けてくれた女性がいたのだ。

 この学園の制服を着てたし、たぶん先輩。

 

(ちゃんとお礼言えなかったな……名前ぐらい聞いておけば良かったかも……)  

 

 ともかく、とても優しく良い人であった。

 

『実技Cグループの方は会場中央にお集まりください。まもなく試験を開始します』 

 

 思考に(ふけ)る中、案内のアナウンスが会場にこだまする。

 おっと、集中集中! 

 他の事ばかり気にしてはいられない。

 

「なにせ受験者は3000人越えで、この会場だけで200人もいるっていう——」

 

 入学を許されるのはたったの150人だけ。

 S、A、B、C、Dの5クラス編成。

 最上のSクラスに選ばれるのは『天才』『秀才』と呼ばれる者だけだ。

 

(しかも今回に限って言えば、勇者のせいでSクラスの4席は埋まっている状態だし)

 

 ただ監視者たる俺からすれば分かりやすくていい。

 なにせ一番上を目指せばいいだけ。

 そうすれば自然と勇者と同じクラスに行ける。

 

『——受験者はこちらに整列をお願いします』

 

 拡声の魔法具を通し流れるアナウンス。

 ゾロゾロ続く人波に続く、いよいよ合否を決めるための最後の門だ。

 

「ま、落ちる気は更々ないけど——」

 

 むしろ他の事で色々悩まされているよ。

 

『——これから実技試験の内容を改めて説明します』

 

 みんな緊張の面持ち、何百という学生に紛《まぎ》れ話を聞く。

 

『説明はアイザック先生から、お願いします』

『ああ。任された』 

 

 壇上に屈強な男が登場。

 どことなく冒険者臭するこの人が今回のお題らしい。

 

『俺は教師のアイザック。今回は10人編成のチームを作り俺と模擬戦をしてもらう』

 

 ずばり団体戦である。

 と言っても構図は1対10だけど。

 

『周りと連携しながらの技量を測る。メイン採点者は俺。後は外からシトリー先生とヒューズ先生だ』

 

 個人の腕っぷしだけでなく、総合力や協調性も求められるということ。

 なかなか実戦的で良いと思う。

 

「おいおいアイザック先生が相手だなんて……」

「無理だろこんなの」

「はい。Cブロックは大ハズレと」

 

 ヒソヒソと聞こえる周りの会話。

 

(アイザック先生とやら、パッと見じゃたいしたこと無さそうだけどなぁ)

 

 ただ皆がそこまで(おのの)くよは、考えていたより本腰を入れるべきだろう。

 

『10人のグループは受験番号順で決まっている。まず最初は——』

 

 助かる。

 なにせこの見た目のせいで、今でさえ周りから距離を取られている。

 

『——408番、409番、410番、ここまでの10人が一試合目だ』

 

 俺の番号は408、見事に初っ端で当たった。

 アイザック先生の実力を見てから戦いたかったな。

 

『では呼ばれた者はここで待機、他の者は観覧席へと移動しろ』

 

 この会場には360度で観客用の席が設けられている。

 免れた受験者たちは移動、少しして準備は完了した。

 

「もう拡声機は要らんだろう! ルールはさっき言った通り、全力で来い!」

「「「「はいっ!」」」」」

 

 俺も軽く返事をする。

 

「アイザック先生になら魔法の制限はなし、目的は倒すだけ……」

 

 周囲の様子見つつ、適当なタイミングで仕掛けよう。

 

「では、5カウントで始める」

 

 今回は監視が目的で来ている。魔法の威力はよく考えなくては。

 

「5、4、3——」

 

 俺たちは円を描くように配置。

 10人でアイザック先生を囲う。

 

(作戦を話し合う暇はない。周りの動きをよく見る)

 

 皆は緊張のせいか割とフライング気味、ジリジリと距離を詰めているような。

 

「2、1——」

 

 それなりに魔力を練る。

 とりあえず距離をとりつつ様子見して——

 

「試験、開始!」

 

 するとまるで鎖から解き放たれた獣のよう、全員がアイザック先生に猛突進する。

 

(え!? ウソだろ!?)

 

 考えなしに突撃、全員が前衛役ってどういうことだよ!

 

「風は空に届き——」

「穿つ炎が——」

「水の精霊に捧ぐこの——」

 

(しかも詠唱メチャクチャ遅い! 加えてなんでそんな大規模な魔法を……)

 

 てっきり近中距離用の魔法を使うと思っていた。

 速攻なら速攻で、そんな仰々しい魔法使う必要はないだろうに。

 

「っふ、甘い甘い——!」

 

 詠唱でもたつく生徒、教師(アイザック)からしてみれば恰好の得物だろう。

 案の定、魔力を纏わせた拳だけで少年少女を叩き潰していく。

 

「あちゃー……」

 

 仲間の動きもかなり酷いが、それ以上にアイザック先生が意外と良い動き。

 

(やっぱり元冒険者かなんかだな)

 

 思考の最中、受験者たちが面白いようにバッタバッタと倒れていく。

 

「どうしたどうした——!」

 

 秒で半数以下に、その光景に観客席の連中も唖然としてる。

 だがアイザック先生は止まらず。

 

(でもこれ以上好き勝手やられるわけには……)

 

 強化魔法でスピードも相当、振りかぶった拳をまた生徒に向ける。

 今度の標的は女生徒……容赦ないな。

 

「……造形(クリエイト)氷壁(ウォール)

「むっ!?」

 

 そろそろ対抗、放たれた拳は氷壁が完璧に阻む。

 

「——ギリセーフかな」

 

 歪むアイザックの表情、強度はそこそこで作ったつもり。

 

「大丈夫?」

「は、はい」

「そっか。なら良かった」

 

 標的だった女生徒に近づき、一応声を掛けとく。

 ……よしよし。

 これで協力点的なのはまず稼げたな。 

 

「さてと、それじゃあ――造形(クリエイト)氷剣(ソード)

 

 右手に創り出す一本の氷剣。 

 四肢には無属性の強化魔法を付与する。

 さあさあ、活躍の場面がやってきたぞ。

 

 正体がバレるような本気の魔法は使えないが……。

 しかし見せ場は作って、Sクラスに絶対に入らなくてはいけない。

 

「少しだけ見せようか――」

 

 ――なぜ自分が『災厄』と呼ばれるのが、その片鱗を。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。