この世界で9番目ぐらいな俺、異世界人の監視役に駆り出されました 作:東雲(しののめ)
勇者たちと
これには心底驚いた。
「それでパニくって迷子になるぐらいは……」
頭が一杯だったせいで道を迷う。
一度はまったく違う場所に行ってしまった。
「だけどこうして無事に来れたのは、本当にあの人のお陰だな」
ついさっきのことを思い出す。
路頭に迷う俺に、声を掛けてくれた女性がいたのだ。
この学園の制服を着てたし、たぶん先輩。
(ちゃんとお礼言えなかったな……名前ぐらい聞いておけば良かったかも……)
ともかく、とても優しく良い人であった。
『実技Cグループの方は会場中央にお集まりください。まもなく試験を開始します』
思考に
おっと、集中集中!
他の事ばかり気にしてはいられない。
「なにせ受験者は3000人越えで、この会場だけで200人もいるっていう——」
入学を許されるのはたったの150人だけ。
S、A、B、C、Dの5クラス編成。
最上のSクラスに選ばれるのは『天才』『秀才』と呼ばれる者だけだ。
(しかも今回に限って言えば、勇者のせいでSクラスの4席は埋まっている状態だし)
ただ監視者たる俺からすれば分かりやすくていい。
なにせ一番上を目指せばいいだけ。
そうすれば自然と勇者と同じクラスに行ける。
『——受験者はこちらに整列をお願いします』
拡声の魔法具を通し流れるアナウンス。
ゾロゾロ続く人波に続く、いよいよ合否を決めるための最後の門だ。
「ま、落ちる気は更々ないけど——」
むしろ他の事で色々悩まされているよ。
『——これから実技試験の内容を改めて説明します』
みんな緊張の面持ち、何百という学生に紛《まぎ》れ話を聞く。
『説明はアイザック先生から、お願いします』
『ああ。任された』
壇上に屈強な男が登場。
どことなく冒険者臭するこの人が今回のお題らしい。
『俺は教師のアイザック。今回は10人編成のチームを作り俺と模擬戦をしてもらう』
ずばり団体戦である。
と言っても構図は1対10だけど。
『周りと連携しながらの技量を測る。メイン採点者は俺。後は外からシトリー先生とヒューズ先生だ』
個人の腕っぷしだけでなく、総合力や協調性も求められるということ。
なかなか実戦的で良いと思う。
「おいおいアイザック先生が相手だなんて……」
「無理だろこんなの」
「はい。Cブロックは大ハズレと」
ヒソヒソと聞こえる周りの会話。
(アイザック先生とやら、パッと見じゃたいしたこと無さそうだけどなぁ)
ただ皆がそこまで
『10人のグループは受験番号順で決まっている。まず最初は——』
助かる。
なにせこの見た目のせいで、今でさえ周りから距離を取られている。
『——408番、409番、410番、ここまでの10人が一試合目だ』
俺の番号は408、見事に初っ端で当たった。
アイザック先生の実力を見てから戦いたかったな。
『では呼ばれた者はここで待機、他の者は観覧席へと移動しろ』
この会場には360度で観客用の席が設けられている。
免れた受験者たちは移動、少しして準備は完了した。
「もう拡声機は要らんだろう! ルールはさっき言った通り、全力で来い!」
「「「「はいっ!」」」」」
俺も軽く返事をする。
「アイザック先生になら魔法の制限はなし、目的は倒すだけ……」
周囲の様子見つつ、適当なタイミングで仕掛けよう。
「では、5カウントで始める」
今回は監視が目的で来ている。魔法の威力はよく考えなくては。
「5、4、3——」
俺たちは円を描くように配置。
10人でアイザック先生を囲う。
(作戦を話し合う暇はない。周りの動きをよく見る)
皆は緊張のせいか割とフライング気味、ジリジリと距離を詰めているような。
「2、1——」
それなりに魔力を練る。
とりあえず距離をとりつつ様子見して——
「試験、開始!」
するとまるで鎖から解き放たれた獣のよう、全員がアイザック先生に猛突進する。
(え!? ウソだろ!?)
考えなしに突撃、全員が前衛役ってどういうことだよ!
「風は空に届き——」
「穿つ炎が——」
「水の精霊に捧ぐこの——」
(しかも詠唱メチャクチャ遅い! 加えてなんでそんな大規模な魔法を……)
てっきり近中距離用の魔法を使うと思っていた。
速攻なら速攻で、そんな仰々しい魔法使う必要はないだろうに。
「っふ、甘い甘い——!」
詠唱でもたつく生徒、
案の定、魔力を纏わせた拳だけで少年少女を叩き潰していく。
「あちゃー……」
仲間の動きもかなり酷いが、それ以上にアイザック先生が意外と良い動き。
(やっぱり元冒険者かなんかだな)
思考の最中、受験者たちが面白いようにバッタバッタと倒れていく。
「どうしたどうした——!」
秒で半数以下に、その光景に観客席の連中も唖然としてる。
だがアイザック先生は止まらず。
(でもこれ以上好き勝手やられるわけには……)
強化魔法でスピードも相当、振りかぶった拳をまた生徒に向ける。
今度の標的は女生徒……容赦ないな。
「……
「むっ!?」
そろそろ対抗、放たれた拳は氷壁が完璧に阻む。
「——ギリセーフかな」
歪むアイザックの表情、強度はそこそこで作ったつもり。
「大丈夫?」
「は、はい」
「そっか。なら良かった」
標的だった女生徒に近づき、一応声を掛けとく。
……よしよし。
これで協力点的なのはまず稼げたな。
「さてと、それじゃあ――
右手に創り出す一本の氷剣。
四肢には無属性の強化魔法を付与する。
さあさあ、活躍の場面がやってきたぞ。
正体がバレるような本気の魔法は使えないが……。
しかし見せ場は作って、Sクラスに絶対に入らなくてはいけない。
「少しだけ見せようか――」
――なぜ自分が『災厄』と呼ばれるのが、その片鱗を。