この世界で9番目ぐらいな俺、異世界人の監視役に駆り出されました   作:東雲(しののめ)

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第6話:異能

「……面白いな少年、氷魔法が得意なのか」

「ボチボチですね」

「そうか。だが俺を倒すには——」

 

 身体と身体を隔てていた氷壁が破壊される。

 

雷化(ライトニング)!」

 

 アイザック先生は雷系統の強化を使った。

 

「行くぞ!」

 

 雷の如く俊敏にその男は近づいて来る。

 ……だけどそれは今の俺でも十分対処できるレベル。

 

(あの人たちが速すぎるせい。だいぶ遅く見える)

 

 冷静に分析しつつ、紫電奔る拳を氷剣で弾く。

 その間に隙を見つけて——

 

「ここ!」

「ッ!?」

 

 退くと見せかけアイザック先生の鳩尾(みぞおち)に前蹴り叩き込む。

 スピードが落ちたタイミング、逃さずに剣勢を強める。

 

「クソッ! ちょこまかと……!」

 

 肉を切り裂く感触、アイザック先生の鮮血が宙に舞う。

 

「これで体術と立ち回りの点数は入ったはずで——」

 

 一発二発三発、隙を幾つもついて鋭い蹴りと斬撃を入れていく。

 傍から見ればハイスピードな攻防、俺たちの戦いには誰も介入してこない。

 実態はかなり一方的な試合だけど——

 

雷弾(スパーク)っ!」

 

 ここで向こうさんは初めて拳を止め魔法を放つ。

 線形(せんけい)を描く電撃。

 年齢なんてもう関係なし、本当に先生かと疑う『本気』な先制打。

 この空気を変えようと躍起になっているようだ。

 

氷壁(ウォール)

 

 もちろん壁を創り防ぐ。

 

造形(クリエイト)氷槍(ランス)

 

 今度は天上より槍群を降らす。

 

氷剣(ソード)

 

 アイザック先生が上からの槍を掻い潜る最中。

 追撃として背後から剣群を発射する。

 

「なんだよこれ……」

「アイザック先生がやられている……?」

「全然見えねぇ……」 

 

 皆も立ち止まってないで参加してくれ……

 これは団体戦、仲間が動いてくれないんじゃ協力点が稼げないぞ——

 

「攻撃が止まないっ……!?」

 

 氷嵐(ひょうらん)到来。先生の仰る通り完全な物量押しだ。

 とりあえずは単独で戦う、いいや、もう一人でいい——!

 

「まずはこの場から逃げ——!」「簡単には逃がさない——!」

 

 目論み通りで、俺の繰り出す連続魔法に対応するので精一杯。

 ただ仕留めるには至らない、そりゃこれは足止めだもん。

 

「今が好機、早めに決めるか——」

 

 もはや仲間から援護は無し、もう大技を仕掛けてフィニッシュに。

 そしてこの学園は魔法に一番重きを置くと聞く。

 少しばかり派手に魔法を使って、最終加点といこう。

 

「まずは立ち位置を変えないと——」

 

 強化された両脚で会場を駆ける。

 周りにも配慮、大技を使っても問題ないベストポジションを見出す。

 

(悪いな先生)

 

 これでも仕事(、、)で来てるんだ。

 

強化(エンハンス)

 

 ダメ押しの無属性強化を終え準備万端。

 

「ぬおおおおぉぉぉぉ——!」

 

 反響するアイザック先生の声。

 なにせ準備準備と言ってるが、アイザック先生への攻撃は未だ止んでいない。

 何千何万本、ずっと氷製の剣やら槍を飛ばしているのだ。

 たまに飛んでくる雷撃も壁でシャットアウトする。

 

「俺の前では全てが凍てつく——」

 

 本腰入れた魔法を決定打とする。

 

(あくまでSクラスが確定するくらいの度合いで……)

 

 災厄の数字(ナンバーズ)として振舞ったら終わり、あくまで優秀の域で行使する。

 

「まずは攻撃解除」

「……ッ……!」

 

 アイザック先生への細かい攻撃を中止。

 彼は全身傷だらけ、下には血だまりができてしまうほど。

 

「お、お前は——」

 

 何者だ? という彼の疑問の目に心の内で答える。

 俺は世界で9番ぐらいに強い人間、らしいですよ。

 

創造(イメージ)氷大波(リ・ウェーブ)

 

 俺の背後に中規模で展開される魔法陣。

 ここから氷の波を発生。

 それでアイザック先生だけを飲み込む、はずだった。

 

「————!?」

 

 ただ俺の魔法が完成寸前、邪魔が入る。

 それはアイザック先生でも他の教師でも、観客によるものでもない。

 

「エルッ!?」

 

 邪魔をしたのは——俺の異能だった。

 

『——ダッルイ(、、、、)! いい加減(、、、、)にしてよ(、、、、)!』

 

 急速に回転する魔力の流れ。

 求めていないのに莫大な魔力を突然与えてくる。

 

「今は必要ない……!」

『相手はたかが人間、1人2人死んでも何ら世界に影響はないわ』

「俺にあるんだっ!」

 

 脳内に狂気を孕んだ嬌声(きょうせい)がこだまする。

 拒否反応をしたせいか、脳みそがガンガン揺れる。

 

「停止させないとっ……」

『無理無理! チマチマした攻撃なんてもう()()りよ!』

 

 自分が最上位の存在だからこそ、多種族を見下すその姿勢。

 それは邪心ではなく純心、人の命をただただ純粋に軽視している。

 

「お前ってやつは——!」

 

 発射寸前の砲台、弾倉に無限とも思える魔力を一気につぎ込まれた。

 抑えることで精一杯、というかもう俺の身体が持たな——

 

「恨むぞエルっ!」

 

 魔方陣がこれでもかと巨大化、深層より冷たき魔力が放たれる。

 ブリザード。

 凍る、凍る、凍る。

 その勢いまさに雪崩の如し。

 解放された魔力は氷波を形成、高さは会場を飲み込むほど。

 当初はアイザック先生だけを凍らせるつもりだったんだ。

 だけど————

 

 

 

 数秒後には冷気が漂った、気温がマイナスに連れて行かれた。

 

「か、会場ごと、凍らせたのか……?」

「……一体何階梯の魔法だよ……」

 

 近くで腰を抜かした少年たちがそう呟く。

 

(っ……会場の半分は凍らせたか……)

 

 観客席どころか壁を突き破り外にまで氷は届く。

 目の前には『氷山』が誕生してしまった。

 

「これはどうす……」

「ヒエェェェェェ! 殺さないで!」

 

 独り言のつもりが、近くにいた少年は震えながら命乞いをしだす。

 

『あっはっは! 殺さないでですって! 人間の命乞いはいつ見ても面白いわね!』

「エルっ!」 

 

 お前のせいだぞ。

 他の受験生たちも血相を変えて逃げ出している。

 

「いや俺は……」

 

 た、確かにやりすぎけど、なんとかアイザック先生は殺さないように配慮して……

 

『——————————————』

 

 途端にサイレンが鳴り響く。

 

「……試験終了ってことか?」

 

 それにしては、やけにけたたたましいような……

 

『校内にて異常な魔力値を観測しました! 生徒、受験者は、教師の指示に従いグラウンドへと避難してください! 繰り返します校内にて————』

 

 どうやら避難警告、魔族でも現れたか?

 観客席にいた受験者も一層急いでこの場から去っていく。

 所々凍ってるし、そんなに急ぐと転ぶぞ。

 

「俺も移動した方がいいか? だけどアイザック先生をまず助けないと……」

 

 このまま置いて行ったら人間性という点で減点されそうだからな。

 

「救出するか」

 

 魔王ならともかく、その辺の魔族に遅れをとるつもりは一切ない。

 戦犯たる異能(エル)にもこれでもかと説教しつつ——

 

「先生を助け……」

「貴様! そこを動くな!」

 

 誰もいなくなりつつあった寒い会場、急に響くは野太い男の声だ。

 

「アイザックから離れて、ゆっくり両手を上げろ!」

 

 振り返れば何十人もの魔法騎士がいた。

 

(甲冑にはここの校章、学園に常駐してる騎士たちか)

 

 しかしおかしな話、彼らは俺に対し槍を向けている。

 表情もだいぶ強張っているようだし。

 

「えーっと……」

「ここで巨大な魔力を感知した! 貴様がこの会場を凍らせたのだろ!?」

「そうですけど……あ」

 

 今ようやく理解した。

 サイレンの原因は魔族ではなく、俺だ。

 そしてこの人たちは俺を魔族か何かだと思っているらしい。

 

「ハハハ……」

 

 もはや乾いた笑いしか出てこない。

 

「な、何がおかしい!?」

「隊長! きっと私たちのことも凍らせるつもりです!」

「なにっ! まだ諦めてないのか!?」

 

 苦難の筆記をようやく終え、勇者に度肝を抜かれて。

 そして最後の最後でこのオチを、いや槍を突き付けられる。

 

「ボス、もう仕事辞めたいです——」

 

 勘違いで絡まったストーリー。

 俺の受験はお縄によって幕を降ろした。

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