この世界で9番目ぐらいな俺、異世界人の監視役に駆り出されました   作:東雲(しののめ)

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第6.5話:裏側

 王立ハーレンス魔法学園、今年度の試験を終えた次の日。

 ただ無事に終了したかと言うと、そうでもない。

 合格者の選定、クラス編成に教師陣たちは頭を抱えていた。

 

「一体今年の新入生はどうなっているんだ……」

「勇者4人に加え、ディアンヌ家のご令嬢だけでも衝撃だったというのに」

「修羅の年、ですな」

「私Sクラスだけは絶対面倒見切れない自信があります」

 

 みなが口を揃えて感嘆なり驚愕なりを示す。

 確かに今年は近年稀に見る天才が集まっていた。

 

 ただ勇者とされる異世界人たち、それからあの名家の天才など存在は事前に報告を受けていた。

 彼ら彼女らのことは、想定の範囲内であったのは間違いない。

 教職員の中で一番の問題、それは別の人物についてである。

 

「クレス・アリシア、一体何者なのでしょうか?」

「生まれはヘルシン大陸西部、村に名前が無いほどの田舎から来たとありますが……」

「嘘ではない気がするがな。あれだけの実力、よほどの辺境にでもないと隠し通せる代物ではまずないだろうし」

「まあ兎にも角にも、彼が類まれなる才を持つのは事実ですな」

「ええ。試験で使用したのは氷属性だけですが、あれは宮殿の特務騎士にも匹敵しうるものでした」

 

 魔法には第1階梯から第10階梯まで、10段階の種別訳がされる。

 10階梯が最も難易度が高い魔法、学園入学するならば、受験生たちには最低で第3階梯までの魔法使用が必要とされる。

 

 しかし件の少年が見せたのは全て第6階梯以上に相当する。

 数字だけ見ればたった2倍だが、これには天地の差があるのだ。

 

 6階梯より上は常人では辿り着けない、努力と相応の才が求められる。 

 やったことはシンプルながら、その練度はたった15歳の少年が使えるには不可思議なものだ。

 

「しかもアイツは、まだまだ余力を残しているってかんじだったぜ」

「アイザック先生……」

「戦った俺が一番分かる。クレス・アリシア、あれは――怪物だ」

「S級冒険者もお墨付きと」

「元だよ元、あれだけの才能とセンス、墨付けるまでもなく認めるしかねえだろうよ」

 

 立ち会ったのは元S級冒険者のアイザック、彼の実力は誰もが認めている。

 そんな男が為すすべなく敗北。

 本人曰く、遊ばれていた、まったく歯が立たなかったそうだ。

 

 最終的には回復魔法を掛けられる始末で、ぐうの音も出ない。

 誰しも、クレス・アリシアという存在が無名だったのが不思議でならなかった。

 

「アリシア君と勇者方、どっちが強いんでしょうね?」

「そりゃ流石に勇者でしょう」

「いやいや、実戦においてはアリシア君の方が優位かと」

「でも勇者の方たちは異能持ちですからなあ」

「我々の手に負えますかねえ……」

 

 教師たちが不安を抱くのも無理はない。

 なにせ魔王討伐を目的に召喚された勇者4人、有力貴族のご令嬢、そして無名の天才。

 彼ら以外にも暫定Sクラスには癖が強い者が集まりつつある。

 

 最上クラスでありながら、今回ばかりは異端のクラスとも呼べるだろう。

 

「今年の国際試合、どうなると思います?」

「うーん、帝国も帝国で戦姫がいますからなあ」

「あと教国でも20代目の剣聖が決まったと聞きますし」 

「なんだか波乱の世になってきた気がしますね」

「ああ。戦争が起きそうで怖えよな」

 

 季節の終わり、年が明ける前には代表を選出し国家間で親善試合が行われる。

 勇者、天才、戦姫、剣聖、そうそうたる面子がそろい踏み。

 彼らが交わる時、一体どんなことが起きるのか。

 

 ただ戦争は起きるとしても国家間での可能性は低い。

 なにせ近頃では魔王たちの動きが活発化、むしろ人類は結託する傾向にある。

 

「彼らがいれば、魔王たちもどうにかなりそうですな」

「ええ。出来ればあの組織(、、、、)もなんとかして欲しいものだ」

災厄の数字(ナンバーズ)ですか……」

「あの連中はその気になれば大陸の征服も容易、世界さえ————」

「そこまでとしておこう」

 

 これ以上は論点がズレすぎる。

 学園長が閑話に終止符を打つ。

 今議論すべきは合格した生徒のクラス編成に他ならない。

 

「さあ、生徒の話をしましょうか」

 

 春はすぐそこ。

 学園の新体制が始まろうとしている。

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