Fate/Grand Order if「矛盾結晶楽園ニルヴァーナ・ゼニシア 遠き黄金の奇跡」 作:一四
「アア…なんだ?つまり…?ここはオレのいた世界じゃなくて、サーヴァントって奴としてここに呼ばれてて?カシラは俺じゃなくてお前のほうで?でもやることはゼニスをつぶすって事で変わんねぇ…ってことでいいのか…?」
「うん。多分大丈夫。」
荒野の中央から離脱しながら、俺と鬼丸は情報のすり合わせをしながらフィオナの森という場所に向かって歩いていた。情報の共有中、カルデアとの通信が復旧し現状の説明も済ませた。マシュとの通信も回復し、現在フィオナの森という安全地帯にいることもわかったのでそこに向かっているというわけだ。その間でわかった事なのだが、どうやら鬼丸はこの特異点…いや、異聞帯の歴史から呼ばれたサーヴァントのようだ。この世界と似た世界で虫人間と似たような奴らと戦っていたらしい。本人としてはその最中にここにワープしたような形でここに来たと認識しているらしい。こちらの立場を説明してサーヴァントであるという事も説明すると時間はかかったけど飲み込んでもらえて無事契約を済ませた。
「にしてもよぉ…。これ…いつになったら森につくんだ…?どこ見ても荒野だぜ?」
マシュもこちらに向かって来ているようなので中間地点で合流できるはずが、まったくもってそうなる気配がない。何しろどこを見渡しても不毛の荒野だ。ここに森といわれる空間があるようには思えない。時間にして二時間ほどは徒歩で移動しているし、体力と魔力に無理がないように強化を回して走っているのだがそれでもつかないし、視界にも入らない。ダヴィンチちゃんに座標をもらっているから迷うこともないはずなんだけど...。
「まあ、その座標が果てしなく離れてるんだけどね~。」
ダヴィンチちゃんの少し気の抜けたような声がさっきまでの状況も相まってすこし安心する。通信が回復したばかりは余裕なく、申し訳なさそうだったこともあって、俺も少し沈んだ気分になってしまってた。やっぱりダヴィンチちゃんは元気な方がいい。その調子のままダヴィンチちゃんは話を続ける。
「にしてもこれはすごい。仮に円形にこの荒野が広がっているならあそこはほぼ陸の孤島みたいな建物ってことになる。どんな意図でどう建てられたのか。好奇心がそそられるよ。」
それに対しては意外にも、鬼丸が答えをもっていた。
「そりゃああそこがあいつらの本拠地だからだろ?ニルヴァーナ・ゼニシア。オレの世界ではそう呼ばれてた。ゼニスの本拠地だ。ついでに言うと空に浮かんでたはずなんだが地面に普通に立ってたな。」
「鬼丸!?そういう大切なことは話しといて欲しかったなぁ!あれが本拠地なのか...。」
「藤丸...貴様というやつは…。毎度毎度とんでもないトラブルの巻き込まれ方をしよってからに…。こちらの胃がもたんぞ全く…。なんにせ無事で良かったがな。」
ゴッフ司令の俺よりも俺のことを心配して暮れている様子に毎度の事ながら癒される感じがする。それで冷静になったのか当時のことがより鮮明に浮かぶ。
「そういえば大きな橋でつながれてたし、本来は飛んでるのかも...。」
「ありえるね。でも、だとしたら空想樹に当たるものは何処にあるんだろう?視認できる範囲には無いし、まさかあそこまで巨大なものに類するものが隠れているとは思えない。そもそも空想樹は存在しないのか…?」
「そりゃあフィオナにあるんじゃねぇか?森だし。」
「いえ鬼丸さん。それはありません。住民の方に聞き込みをしましたがそのようなものがあると言っていた人はいませんでした。」
「そうなのか?そう簡単にはいかねぇか。ん…?ああ、お前がマシュか。確かに芯の通った感じがするな。俺は鬼丸、同じカシラのもとにいるダチとして、これから頼むぜ。なんなら俺はサーヴァントってのにも疎いからな。先輩として色々教えてくれたら助かるぜ。」
「私が先輩...!ですか!?」
マシュよりも後輩のサーヴァントというのはかなり限定されるし、まだ誰かの先輩という立場に慣れないようで少しぎこちなく言葉を返す。
「戦いに関してはあまり教えられる事は多くないかも知れませんが、魔術に関しては鬼丸さんより理解が深いと思うので、わからないことなどあればおっしゃってください!全力で説明させていただきます!」
「ああ!そん時は頼らせてもらうぜ!」
カルデアでの解析によると、どうやら鬼丸のクラスはセイバーらしい。デカいドラゴンに乗ってたりしたからライダーかと思ったんだけど、セイバーは単騎戦力として高い傾向にあるからむしろこの状況ではありがたいかもしれない。
「暫定ではあるけどね?そもそも汎人類史では確認することもできない英雄だったからね。物語産だとしても出典不明だ。少なくともカルデアのアーカイブにその名前の痕跡はない。」
「鬼というからには日本出身のはずなんだけどな〜…。何か根本的な部分を取り違えてるのかな…?」
自分が無名だと言われているようなものなのだが、鬼丸は気にも留めないようで話を続けていた。
「セイバーねぇ。名誉ある名前だな。俺はなんだかんだ守られてばっかだったし、ここではお前やアスを守れるように気合入れるぜ!」
「セイバーってそんな守りって感じのイメージある?」
セイバーは守りというよりむしろ攻撃のイメージだと思い、気になって聞いてみる。
「ああ。カシラのとこじゃ違ったりすんのかな?俺達の中でセイバーといえば自分の身を呈しても仲間を守る、そんな一部の心意気のある戦士の事をいうのさ。丁度そこのアスみてぇなガーディアンの連中に多くいたりしたぜ。」
「ガーディアン?アスが?」
「なんだ?もしかしてアスもそのナリで別のとこから来たのか?」
「ちがうんだ。ボク、記おくが無くて…。」
「そうなのか?でも多分お前の種族がガーディアンなのは間違い無いと思うぜ。多分その羽毛の中身はガチガチだろ?」
言われて確認してみると羽毛とその軽さで気が付かなかったけど、体自体は機械のような固いものでできているみたいだった。それを受けて鬼丸の話はかなりの信憑性があるように感じたけど、それを聞いて考え込むアスはしばらくしても特になにかを思い出す事は無かった。その空気を知ってか知らずかダヴィンチちゃんが話を戻す。
「なるほど。どちらかと言えばセイヴァークラス。救世者に近い意味合いだね。」
「セイヴァーって何?聞いたことないクラスだけど?」
「カルデアで観測したことは無いがBBが提供してくれた情報にあったエクストラクラスの一つだね。詳しいことは不明だが世界を救えるくらい徳が高い、グランド中のグランドみたいなサーヴァントが所属しているクラスだね。」
「へぇ…すごいサーヴァントだね!うちでも呼べないかなセイヴァー!」
「藤丸君、ことはそう単純じゃないのさ。このクラスに至るには例えば、善悪関係ない全ての救済だとか、自身を顧みない程の人類への愛みたいなものを持つ必要がある。この条件の危うさがキミにはわかるはずだ。」
「…。人類悪と紙一重ってこと…?」
「そう。行き過ぎた愛の先に必ずしも正しい結末が待っている訳じゃない。方法を間違うこともあれば、そもそもゴールがずれてたりもする。そんな矛盾を超越する存在なんて用いようというのがどうかしてる。」
「ビーストを何体か呼んでいるキミに言っても今更かもしれないけど、改めてね。」
「そっか…。まあそんな人が自分から来なくてもいいくらいまだまだ希望があるって考えようかな!」
「うんうん!素晴らしいポジティブシンキングだ藤丸君!それより目下気になるのはゼニスに関してだね。」
「世界に唐突に現れ、世界を終わらせようとする存在。それこそ、この世界においてのビーストのようなもののように聞こえるんだけど、わかっていることだけでも教えてくれないかい?」
ダヴィンチちゃんの質問に鬼丸は頭をかきながら考えこんでいたが、どうにか纏まったのか、纏まらないと諦めたのか、話始める。
「ゼニスについて知ってる事か…。まずあいつらは洗脳ができる。」
「トライストーンって石を体に埋め込まれるとクリーチャーは感情を失ってあいつらの思い通りに操られる。俺達はそういうゼニスの手下をまとめてアンノウンって呼んでる。」
「洗脳だって?それはかなり厄介だけど、条件が明確かつ物理的接触を伴わなければいけないという事がわかっているのはいいことだね。まずそこの対策から始めないとかな。」
「あとは目的だな。あいつらは全てのクリーチャーの感情をなくしてゼロの世界ってのを作ろうとしてるらしい。そのあと何すんのかは知らないけど、やってることはそのまんまだから多分間違いねぇ。」
「ゼロの世界か…。確かにそれなら閉じるべき世界だ。しかしなんだかふわっとしてるね。何かこう具体的な相手の目的に関する情報とかは無いのかい?」
「さあ?あいつらは世界に急に現れたんだからよ。アンノウンの親玉名乗ってな。単純に世界を自分たちで支配してぇんじゃねぇか?」
その結論はダヴィンチちゃんにはどこか腑に落ちないようだ。俺も少し気になる。確かにゼニスは聞いた感じ思想とかのない侵略者って感じだけど、そこで思考を止めてはいけない。今まで倒してきた世界が抱えていた重みと同じものが、この世界にもあるかもしれない。それを知らなくていいなんてことはないんだ。少しでも気になる部分を考える。
「そういえば支配しようとしてるのにいっぱい居るんだね。ゼニスって。最後に喧嘩とかにならないのかな?」
「多分問題ねぇ。あいつらは元々自分達の感情がゼロの奴の集まりなんだ。仲良く世界を支配すんだろ。喧嘩するための感情もねぇ奴らだ。アイツを除けばよ。」
「アイツ?」
「ああ。一人だけゼニスから感情を手に入れてダチになったヤツがいるんだよ。名前はライオネル。でけぇライオンみてぇなやつだ。まあ裏切り者ってことでゼニスたちと敵対することになってたから結局あいつらからしたら結果は変わんねぇんだろうが。」
「まって?ゼニスって“そうじゃなくなる”なんてことができるものなのかい?」
「ああ。ゼニスっていうのは感情がねぇからああなってるやつらだ。なにかしらで強い感情さえ手に入れりゃあゼニスじゃなくなる。」
「それならどうにかなりそうだ。情報からこの世界のゼニスは神霊級の存在である可能性もあったからもし戦闘になった場合攻略できるかが不安だったんだけど、対策も既に存在してるのか!鬼丸たちは相当頑張ってたんだね。感謝しきれないよ。」
「早速こちらでも対策を用意しよう!強い対精神汚染魔術やそれに類するスキルならあるいは…。」
今までの話を聞いていて一つの矛盾がふと浮かび、口から洩れる。
「だとしたら...」
「感情を持たない彼らがどうして目的を持ったんだろう?」
「感情がないならそもそも、何かしたいなんて思わないんじゃない?」
「そうするってことは何か意志があるってことなんじゃない?」
その言葉を聞いた鬼丸は目を見開いたまま思考を巡らせる。そして今まで見えなかった事が少しずつ見えてくる。
「確かに...。そんなこと考えてもいなかったけど、あいつらの言ってる事とやってたことは矛盾してたんだ…。」
「ハハッ...ハハハハッ!今回のカシラはとんでもねぇお人好しらしい。」
「どうしたの!?急に!?」
「そもそもオレはあいつらの事情なんて考えちゃいなかったんだ。敵だしな。」
「仲間も数えきれないくらいゼロにされてきた。だけど今にして思えばあいつらのそれは直接命を奪ってたわけじゃなかった。そういうところにあいつらのラインがあったのかもしれねえ。」
「そんなことあいつらが悪い奴じゃねぇって本気で信じなきゃ考えつかねぇよ。それが思いつくのはいかれたバカかとんでもねぇお人好しだけだぜ。」
「改めて、オレはこの件が片付くまでお前についていくことに決めたぜ。頼むぜ、カシラ!」
その申し出に嬉しくなり、思わず出された拳に自身の拳を打ち付けるように出してしまう。鬼丸もその行動が意外だったのかお互いに顔を見合わせ思わず笑ってしまう。
「聞いていて確信しましたが、やはり鬼丸さんの歴史とこちらの世界の歴史というのは共通点はありますが全く同じ歴史をたどっているわけではないようです。私がフィオナの住人のみなさんに聞いた話では...」
そうマシュが続けようとした時、それを遮るようなタイミングで強い圧迫感を感じた。その原因はダヴィンチちゃんが教えてくれた。
「膨大な魔力の反応を感知!すごい速さでこっちに向かってくる!まるでこっちの場所がわかってるみたいに迷いがない...。霊基の規格は神霊級だ…。さっきの虫人間たちとは比べ物にならない!おそらく...」
「ゼニス御大のお出ましってわけだ…。」
「さあ、どいつが来るんだ?」
鬼丸が睨みつけた荒野の先から現れたのは巨大な花、それを背に佇む、獅子の頭部をもつ巨人、両手には巨大な剣と盾を携えているオリュンポスで見た機械神を思わせるような存在。どう見ても友好的なものではないことは確かなのだが、その特徴は…
「テメェ...ライオネルなのか?」
「いかにも。
それを聞いてか聞かずか鬼丸は瞬時に走り出し、ライオネルの頭上から大剣を振り下ろす。目にも止まらない攻撃だったがライオネルは動じることなくそれを剣で受け止める。それを受け鬼丸は様々な角度からの連撃を加え続けるがそれをライオネルはわずかな体の動きと最低限の剣と盾の動きで受けながし続ける。何度かの打ち合いの後、鬼丸は正面から仕掛け鍔迫り合いの形になる。
「テメェ...!腑抜けやがって!!!」
「オマエなんかの言いなりになってやがるな!ふざけやがって!根性見せろよ!それでもテメェはライオネルか!」
その言葉を受けたライオネルは間を置くことなく言葉を返す。その行動が否応にも鬼丸の記憶にある人と目の前のものが違うものであることを示していた。
「
そういったライオネルは反撃に移る。その体躯からはかんがえられない超高速の一刀に反応がギリギリだった鬼丸は剣で攻撃を受けるのに精いっぱいだった。衝撃をそのままに勢いよく吹き飛ばされる。即座の復帰は難しいだろう。
「イレギュラーナンバー1並び2を視認。捕獲に移る。」
こちらに目を向けたライオネルがその手を伸ばしてくる目的はどうやら俺とアスの捕縛のようだが。
「ただやられるわけにはいかない!」
霊基グラフを起動させ守りに特化したサーヴァントを呼び寄せる。
「
「拘束解除。開門せよ。」
そう告げライオネルが剣を天高く掲げるとその後ろから光の
「門...なのか?」
「然り。」
その門の奥から多くの人が現れる。しかしその全員の目に正気はなく、こちらに雪崩のように襲い掛かる。そしてそれを率いるのは、水晶の羽をもつ黄金の竜。全員を操っているのか力を送っているのか、その龍から伸びる光が人々に作用しているのは確かだ。
「サーヴァント達でも押し負ける…!?」
「どうやら奥の竜が人々を魔力で強化してサーヴァント級にしているみたいだ!リンクを断ち切る方法はわからない以上あのドラゴンを倒す他に今はない...!」
ダヴィンチちゃんの言うとおりにドラゴンを攻撃することは、多分、出来ないわけじゃない。でもそうするなら、この人たちの命は保証できない。おそらくこの人達は正気を失っているだけで生きている人間だ。この人たちに危害を加えたくはない...。
「どうすればっ...!」
人の波の間隙を縫って竜への攻撃は仕掛けてみているがどの攻撃も届かない。防御も攻撃もあと一手足りない。
膠着状態が崩れようとした時、影が一つ横を過ぎて竜へと向かう。
「オラァ!」
その攻撃は人々の妨害などもあってクリーンヒットはしなかったがダメージは入っているようで竜は少しよろめく。
「どうやら仲間はテメェ程やれるヤツじゃねぇらしいなぁ!?ライオネル!」
「仲間?該当する対象は周辺環境に存在していない。」
「...ッ!こいつら邪魔だ!全員ぶっ潰して竜を叩くぜカシラァ!」
「ダメだ!この人たちを殺しちゃダメだ!」
「なんでなんだよカシラ!オレならいける!それが速えェだろ!?」
「ダメだ。」
「カシラ!」
「鬼丸、ダメだ。」
俺は頑として鬼丸を止める。それで自分の意志が伝わることを信じる。俺と目を合わせた瞬間見たこともない、驚きのような、恐怖のような、悲しみのような、そんないろいろなものが混ざった表情を浮かべていたが、その後理解してくれたようで目線を目の前の軍団にもどす。
「つってもどうする?防戦一方じゃどうにもなんねぇ。」
「隙をついてとかは無理?」
「無理だな。こいつらを裁きながらじゃなきゃどうにかなるかも知んねぇが…。」
そう相談してる間にも敵の勢いは強まっていく。
「アス!あそこでやってくれた栄養くれるやつ!アレできない?」
「ごめん...。あそこをはなれてから力が上手く集まらないんだ…。」
そうしている間に防御網を抜けた敵の攻撃が背後から襲ってくることに気づく
「しまった…カシラ!」
「ブースト!ストライク!」
その聞きなれた声と共に見慣れた装甲を纏った姿が現れ背後の敵を吹き飛ばしていった。しかし、命に問題はないとわかる。
「緊急時につき警告なしで昏倒させました。」
「シールダー、マシュ・キリエライト。遅ればせながら合流しました。指示を、マスター!」
これなら、いける!
「マシュ、攻撃を集中させて!鬼丸の道を作るんだ。」
「了解!被弾確率...収束!」
「鬼丸、支援する!突っ込んで!」
「おうよカシラ!まるでさっきとは別人だぜ!」
防御優先の選出から一部を攪乱用のサーヴァントに交代し、鬼丸の道を開く。幻術を操るキャスターに細かく指示をだし、被害が出ないよう行動を誘導する。正面は、心配しなくてもいい。結果、理想的な状況が出来上がる。
「行け!鬼丸!」
「一瞬でカタを付けてやるぜ!」
雄たけびとともに呼び出されたドラゴンとの連携攻撃がその刹那始まり、終わる。
「
その宣言と共に竜は羽の水晶と同じように粉々に砕け散る。光が途絶えた人々は吸い込まれるように門の中へ戻っていく。
「ほう、パピロニアを倒すか。しかし、イレギュラーの追加か。しかもあれはおそらくユニットとして運用することによって能力が大きく上がる。手数も未知。独断での戦闘続行は不能と判断、報告の為、帰投する。」
「どこに行こうってんだライオネル!戦わねぇのかよ!」
「その必要はない。お前にそれを止めることもできない。」
そう吐き捨てるライオネルを実際止めることはできず、その場からライオネルが姿を消すのをただ見ていることしかできなかった。でも、生き残った。これでまだ、チャンスはある。
「どうしちまったんだよ、ライオネル…。」
その声が寂しく荒野に消えた。
幕間
その目を見た。優しいやつの目。敵を敵とも思えねぇ、会ったばっかの奴だってほいほいと信じちまうようなスキがあんのかねぇのかよくわかんねぇ飄々とした奴。でもその目には
「無」
そういうのが相応しい気がした。吸い込まれそうな
「何を無くしてきたってんだよ…。」
戦闘が終わった後、マシュと合流したアイツの目にはそんなもんは一切見えない。だけど確かにそこにあったはずだ。違和感は拭えねぇが、誓いは曲げねぇ。アイツは俺を信じるって言ったんだ。オレがそうしねぇのはスジが通らねぇ。抱いた恐怖を振り払うように勢いよく二人の元へ向かい、本来の目的地であるフィオナの森を目指す。その間でオレ達はマシュのこれまでのフィオナの森での話、そしてそこで知ったこの世界の話を聞くことになる。その中にはオレが予想もしていなかった大きな矛盾が存在していた。