Fate/Grand Order if「矛盾結晶楽園ニルヴァーナ・ゼニシア 遠き黄金の奇跡」   作:一四

8 / 9
三章 二節

起きた後、まだ寝ていたアスをつれて朝食をとる。昨日はまともに味がしなかった素朴なパンもスープも今日は味がわかった。朝食の後、マシュから今日の予定を聞く。どうやらまず初めに姫様に会いに行かなくてはいけないらしい。これだけ色んなものも用意してもらっていたしお礼も言いたかったので丁度いい。なぜか行きたがらない鬼丸を引きずって行き、俺達は姫さまの居る社へと向かった。たどり着くとそれに気づいたような姫様は意外とフレンドリーに話しかけてきた。

 

「ほう。貴様が救世主こと藤丸立香か。なんか思っておったよりパッとはせぬが、マシュが言うからには頼りになるんじゃろう。よろしく頼むぞ。」

 

少しのショックはあったけど挨拶を返す。次に手元のアスを紹介し、鬼丸の番になる。だけど、なぜかやたらと後ろの方で隠れる様にして居るものだから前に連れてくる。

 

「じゃあ最後は鬼丸だね。」

 

その言葉を聞いた姫様は今までよりも一段大きな声で驚きを露わにした。

 

「鬼丸じゃと!?そこにおるのか!?そんなはずは…。」

 

それを受けて鬼丸の方を見ると、何か観念したようにため息をつき、自ら前に進んでいった。

 

「話に聞く限りには随分としおらしいもんだから名前が同じだけかと思ったが、その失礼で傍若無人な様子を見るにこっちの世界でもねぇちゃんはねぇちゃんらしいな。」

 

「ねぇちゃん!?」

 

「ああ。プリンプリンはオレの姉。まさかこんな形で会うなんて思ってなかったし、別の世界の家族に会うとかなんか変な感じだったからイヤだったんだけどな。オマエが無理やり連れてくるもんだからよ…。」

 

確かに昨日も姉の話はしていたけどそれがこの森の姫様のことなんて…。

 

「じゃあもしかして鬼丸って王子様なの!?」

 

「なんだよワリィか?オレだって好きで王子やってんじゃねぇよ。」

 

「鬼丸がまだここにいるはず…?まさか偶然?フフッ…計画が台無しじゃ。これが運命の力というところか…。」

 

 

姫様は何か言っていたようだが鬼丸をからかうのに夢中だった俺はそれに気が付かなかった。いじりにしびれを切らしたころ、鬼丸が話を買える為か姫様に話をふる。

 

「つうかそろそろ社から出てきてもいいんじゃねぇか?仮にも家族の前だぜ?」

 

「すまんがそれはできない。童にも立場がある。今のお前は流れてきた異邦の戦士。特別視はできん。他のものに示しが付かぬからな。」

 

「別にいいけどよ。やっぱたまにしっかりしてんな。これが世界の違いってやつなのかね?ようやく肌で感じられたぜ。」

 

しばしの沈黙が流れる。少しの居心地の悪さも感じるこの状況を打開すべくなにか話すことがないかを必死に考え、思いつき、そのまま口にだす。

 

「そういえばこっちの鬼丸ってどうしたの?なんだかんだ助かったんだよね?一緒じゃないの?」

 

その言葉を口にした後姫様を中心にさらに空気が冷えていくのを感じた。どうやらしくじったらしい。と思っていたが、姫は一呼吸置いた後特に気にしている様子もなく

 

「鬼丸…、あやつはな、少し前、童達を裏切り、消息を消した。」

 

 

そう言った。それに俺も鬼丸も驚きが隠せず思わず聞きなおした。

 

「オレが…裏切っただ!?いくら別世界のオレでもそんな情けねぇマネするわけが…」

 

「事実じゃ。奴はブリティッシュ・パビリオンへの遺品回収任務中に消息不明となった。その後アンノウン化した状態での目撃情報が一部のものからあった。今は皆には口止めしている状態じゃ。漏れれば反乱軍の士気に関わるからな。」

 

「童たちも実際にパビリオンに行ったわけでは無いからそこで詳しく何が起こったかは分からんが、おそらくそこでトラブルが発生し再びアンノウンとなったと考えておる。」

 

この世界の鬼丸。その存在に心当たりがないわけではない。鬼丸とよく似た鬼。思い出せばあれがこの世界においての鬼丸だと考えてもおかしくはない。だとすれば裏切ったというのは何かおかしい。彼は何も言わなかったけど、たしかに俺とアスを守ってくれていた。彼が心を失っていたとすればそんなことをするだろうか?

 

「どんな事情があったところで仲間を裏切るのは許せねぇ!オレがオレ自身の落とし前をつけてやる!」

 

「それであれば都合が良かろう。お前たちにはブリティッシュパビリオンに向かって欲しいのじゃ。そこに鬼丸の手がかりもあるだろうし、何より童達の逆転の鍵がそこにある。それを手に入れてほしいのじゃ。」

 

怒る鬼丸をたしなめるように姫は淡々と話し続けていた。特に断る理由はないけど分からないことは多いので一つ一つ聞いていこう。

 

「まず、ブリティッシュ・パビリオンってどこ…?」

 

 

「ブリティッシュというのは確かカルデアのサーヴァントの誰かが名乗った名前の筈ですがそれを冠する地ということは、例の中立地帯のことでしょうか?」

 

「そうじゃな…対局においては中立の地じゃ。サーヴァントが支配しておるのも間違いないし、何ならそやつが鍵を保管しておる。しかし、戦いと縁がない場所ではない。それこそがお前たちに任せたい理由でもある。」

 

 

「というのは一体?戦闘が予想されるのでしょうか?カルデアのサーヴァントであるなら私たちを確認した段階でその様なことは起きそうにありませんし、それなら納得の人選ですね。」

 

「いや逆じゃ。貴様らが行くのであれば確実に戦闘は起こる。しかし、その必要があるのじゃ。」

 

「戦闘が必要なのでしょうか?荷物の受け渡しですよね?一体なぜそのようなことになると…?」

 

「そこを陣取ったブリティッシュという奴は城に難を逃れに来た者の前には姿を露わさんが、勇気あるものがそこに足を踏み入れた時だけ姿を表す。」

「そしてそして勝利したものには褒美を取らせるという。鍵の保管というのは名ばかりで実質あやつに強奪されているにも等しい。それを取り戻さなくてはならないのじゃ。鬼丸一人で回収に向かわせたのもそのためじゃ。」

「全く、何とも面倒な性をもつ奴じゃ。あれほど我の強い者であれば心あたりがあるのではないか?」

 

 

「ああ…ね…?」

 

俺の頭の中にはこの状況を眺めてキヒヒと笑っている意地の悪い竜が頭に浮かんだ。それを聞いて俺にできたのは、姫様の方から目をそらして話題を変えることくらいだった。

 

「そ…そういえば…結局鍵ってなんなの?」

 

容疑者ことヴリトラについて軽い説明をした後改めて残った疑問を整理することになった。先ほどから鍵と言っているけど具体的に何かはわからない。ヴリトラの存在自体とも言えるかもしれないけど、どうも姫はそれを戦力と考えている気がしない。だとしたらこの状況を打開するためのものというのは一体なんなのだろう?

 

「依頼する以上語らねばならぬよな。鬼丸がいると聞いたものだから口に出しにくくてな…。」

 

「遺品じゃよ。我が弟にして鬼丸の兄、修羅丸のな…。」

 

 

「ッ…!?兄ちゃんが…?この世界では生きてたんだろ!?それがなんで!?」

 

「今起こっている第三次頂点対戦(ワールドウォー)ゼニスで前に立って戦え、かつゼニスと戦える程の力量を持つものは鬼丸と修羅丸の二人くらいじゃった。そして自由の英雄達が倒してくれたとはいえ、それでもゼニスはあと二体存在する。そやつらとの闘いがあったのなら無傷とはいかぬ。」

 

「奴はその盾で我らの退路を切り開いたのじゃ。一人、犠牲となって。」

 

「そんな…ことって…」

 

鬼丸としては兄との別れは二度目ということになる。その悲しみを知ることは俺にはできない。しかし、それが相当な重みであることは鬼丸の歯がみする音が聞こえそうな口元から察せられた。

 

「そうして全てが終わった後、童は聞いたのだ。その遺品をブリティッシュパビリオンにいた避難者が見つけ持ち帰り、それをブリティッシュが自ら表れ奪っていったと。」

「そしてこう告げたらしいのじゃ。」

 

「これには支配を打ち破るための崇高な力が宿っておる。勇あるもののみわえに挑むがよい。もしわえをの試練を超えることができたのなら、その者にこの盾を譲ろうではないか。」

 

「とな。」

 

「残されたゼニスに対抗しえる修羅丸の力。何より弟の遺品じゃ。取り返さねばならん。しかし鬼丸も消えた今あの場所に向かえるものは童達の中には居なかった。しかし、お前たちが現れた。星よりの者。そして、別の世界の鬼丸よ。」

 

状況は分かった。どうやらこちらの責任も多大にあるみたいだし、元々断る気も無かったし、ブリティッシュ・パビリオンへ向かうことを決める。その思いを俺が伝える前に横に居た鬼丸の方が一足早く啖呵をきった。

 

「オレのやることはさっき言ったことと変わんねぇ。オレはオレ自身の落とし前をつける。それでいいだろ?マスター。」

 

そういってその場を去る鬼丸の背中にはあのライオネルと退治したときも深い怒りが滲んでいた。

 

「そういうとだから、まかせて!」

 

そう了承の返事を残して俺は鬼丸を追うようにその場を去る。去り際マシュにその場を任せたいとアイコンタクトをとると意図を組んでくれたようで、姫との必要な話をすすめてくれた。俺は急いで階段を降り、鬼丸の姿をさがし始めた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。