Fate/Grand Order if「矛盾結晶楽園ニルヴァーナ・ゼニシア 遠き黄金の奇跡」   作:一四

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三章 三節

貸してもらった部屋の周囲を探していると、昨日寝ていた川の畔に居る鬼丸を見つけた。その目線は川を見ているようでその奥の何かを見つめているようにも見えた。

 

「なに見てんの?」

 

なるべく圧力をかけないように。でも軽薄過ぎないように鬼丸にどうにか寄り添えるように一歩踏み出す。それに反応した鬼丸は一度こちらを見たがすぐに川面に目線を戻す。それに拒絶の意志は無く、今彼の思いが向かう場所がここにはないのだとわかる。

 

「川に写ってるオレを見てる...はずなんだけどな...。なんにも見えねぇ。その先にはいろいろ見えんだけどな。」

 

「その先って?」

 

「オレの先にあった背中...ゴールデンエイジの初代カシラ、オニナグリ。おせっかいでめんどくせぇだけだと思ってて、まさかオレの前からこんなにすぐに消えてなくなるなんて思ってなかったそんな背中。そして、その前にオレの前からいなくなった、オレよりよっぽどしっかりしてて王って感じの兄ちゃん...修羅丸の朧げな姿とか。そんなもん...。」

 

その話を聞きながら彼の隣で同じように川面をみる。もし俺が彼と同じようにみるなら、俺の先にだれが映るだろうか。思い浮かんできたのはあまりにも多い人たち。所長、ダ・ヴィンチちゃん、ゲーティア、ホームズ、ペペさん、キリシュタリア、デイビット…ドクター...。様々なそれぞれに自分たちの信念や矜持、方法を以て未来を目指した人たち。その影が浮かんで。でも確かにその中に自分を描き出すのは難しい。

 

「確かに。みえないかも。自分。」

 

それを聞いた鬼丸がふと笑った気がした。と思えば急にその場に座り込む。見つめる俺にも隣に座るよう促してくるので並んで座る。

 

「なんでなんだろうな。なんか柄にもねぇことをマスターの前ならペラペラと喋れちまうもんだ。ついでにオレの悩みも聞いて行ってくれるか?なんかお前に話したらなんか分かりそうな気がするんだよ。」

 

「俺でいいなら。」

 

そういって視線で思いを伝える。それを受け取った鬼丸は滔々と語り始めた。

 

「オレ、元の世界だとゴールデンエイジって奴らのカシラなんだよ。そういや会ったばっかの時言ったっけかな。」

「でもそれは全員に相応しいって思われてたからなったって訳じゃねぇ。先代のカシラオニナグリが死んじまって、その時オレを指名したからってだけなんだよ。」

「だから、オレなりにリーダーとして相応しいようにしようって思ってんだけどやっぱわかんなくてよ。」

「兄ちゃんとかオニナグリとかを見習おうにも短気なオレはどうにも、守るために耐えるみたいなことは出来なくてよ。ただ前に突っ込むのが精々できることで、それでいいっていうか、それしかねぇって思いながらやってきたけどよ。」

「ここに来てから特に、オレのやり方が正しいのかなって疑問に思っちまうんだよな。」

「特にお前たちを見てる時によ。」

 

「俺達?」

 

「ああ。マシュなんてもう見てからにだろ?あの盾はきっと多くのものを束ねて、多くのものを守ってきたんだって。あの戦場の立ち姿だけでわかったぜ。歴戦と言ってもいい、オレよりも重い戦いってのを重ねてきた先輩なんだってな。」

「その戦いのなかでも何かを守る為に戦える。そういうのが良いんだって思うんだよな。何かと戦って、壊して、傷つけて…。そんなのよりそういうのから守るために剣をとれるってのが本当のカシラの資格なんじゃねぇかなって。ずっと考えちまうんだよ。どんだけ考えたって自分にゃできねぇって分かってんだけどな?」

「でもオレは託されたんだ。守る為に戦ってきたヤツが守ってきたモンをよ。その責任に軽々しい向き合い方なんてできねぇ。」

「そういうのもあってこの世界のオレの話を聞いたら余計むかついてよ?この世界のオレはそれを適当にほっぽって逃げやがったんだ。」

「そうする自分の姿ってのを想像するとどうしても我慢できなくってよ。それに我慢できねぇオレの堪え性の無さも許せねぇしよ。」

「溜まってたもんが抑えられなくなってこのザマだ...。」

 

そう言い終わると鬼丸は空を見上げたけれど、その瞳は澄んだ空を見ているはずなのに曇りがかっていて、依然何かが見えているようには見えなかった。

 

その言葉が彼の悩みを解くことにはならないかもしれない。でも心に浮かんだ言葉を口にしておきたかった。ただそれだけで勢いのまま話し始める。

 

「確かにマシュはいろんなものを抱えて、色んなものを守ってきた。ああ!俺もいっしょにね?だけど、それだけじゃ無いんだよ。」

「守るだけじゃ、俺たちは進めなかった。だから戦って勝ち取ってきたんだ。奪ってきたんだ。俺達からすれば取り返す為に、でも相手からすればそんなの関係なくて、ただ奪われたんだ。だから言ってみれば俺たちが奪ってきたんだ。」

 

「ダ・ヴィンチちゃん達も場所によっては奪われた本人達にすらそれは俺達のせいじゃないって言ってくれることもあった。でもやっぱり俺も思わずにはいられないんだよね。これがただの簒奪なんじゃないかって。」

 

「なるほどな...マシュのあの盾の重さも、お前の目も、そういう事か。」

 

「守る道の先に奪う戦いが待ってるのかもしれねぇ...か...。じゃあ、どうすんのが正解なんだろうな?」

 

「きっとやり方も、目指す先も、もっと沢山あるんだと思うんだ。守る・戦うだけじゃなくてさ。」

 

「俺の見てきた人たちはいろいろな方法で、色々な未来を目指してた。同じ目標にむかうひとでも自分達ができる方法でその先を目指してた。その未来に報いる為に相応しい方法をもって進みたいっていうのは間違いじゃないと思う。そういうのを求めていくのがきっとより良いものを生み出していくんだ。」

「でもさ、だからって、理想とは違ってたって、自分が出来ることを積み重ねた未来がそれよりも悪いものだって、決まってるわけじゃないと思うんだ。それらに優劣なんてつけるべきじゃないって思うんだ。自己弁護みたいだけどさ。」

 

「だからさ、鬼丸もとにかく進んでみたら?その道が必ずしもオニナグリさんに報いる結果にはならないかも知れない。だけどそうなるかも知れない。進んでみないとわかんない。立ち止まって考えていてもその時はきっと来ないんだから。」

「それに、鬼丸がそれだけ悩んで決めた道を進むことを無責任だなんてみんな思わないよ。少なくとも俺はそう思わない。」

「きっと鬼丸には鬼丸らしい未来の形があるんだよ。きっと。」

「もしかしたら、仲間がほしいだけなのかもしれないけどね。自分に何が出来るかわからなくても、不確かな未来に希望を託して、見えてる道を進み続ける、そんな同志が。仲間はいたけど、この自分の中の葛藤と走ってきたのはずっと一人だったから。」

 

なんか柄にもなく語ってしまったと反省していると鬼丸が急に立ちあがり、俺に手を差し伸べてくれた。その顔はさっきまでよりはずっと晴れていて、その瞳も今、目の前に居る俺を映していた。

 

「そこまで言われてウジウジしてる方がダセェよな。そっちの方が二人に向ける顔がねぇ。」

「正しいのかはわかんねぇし、未来は見えねぇけど、オレもとにかく進んでみることにするぜ。隣を歩いてるやつも居るんだしな。」

 

「うん!あっ、そうだ。それに鬼丸。この世界の鬼丸もきっとまだ捨てたもんじゃないよ。」

 

 

「ニルヴァーナ・ゼニシアを出る時に俺とアスを助けてくれた鬼が居たんだ。そいつはキミに似た大剣をつかってた。あの時はわかんなかったけど、きっとあれがこの世界の鬼丸なんだ。」

「聞いた話がどうであれ、俺の前に現れた鬼丸は人を助けようとしてた。俺はそれを信じていいと思う。」

 

「ただ裏切った訳じゃなかったのか...?にしたってじゃあなんでこんなことになってんだ...?」

 

「だからこそ、その真意を知るためにも。」

 

「ああ!ブリティッシュ・パビリオンまで行って、そのブリティッシュとかいう奴をブッ飛ばす!」

 

俺と鬼丸は二人とも再び立ち上がり、まだ見ぬ希望を目指して歩き始めた。




鬼丸

筋力B
耐久B
敏捷B+
魔力D-
幸運A
宝具C

宝具
勝利宣言
対因果宝具/対人~対軍宝具

ビクトリーラッシュ。召喚した国士無双カイザー「勝×喝」に搭乗し運命共同体となることで疑似的に龍としての存在規模を上げた状態で放つ攻撃。この攻撃により敵の撃破が確定した瞬間、因果への干渉が開始される。自分+仲間と倒した敵の存在としての力を比べ自身の方が大きかったとき、因果を圧縮しその間隔を刹那とすることで殴った瞬間に勝ったという事象を引き起こす。勝利が確定したタイミングであった事象が圧縮されるので、使用した魔力総量もどれだけ勝つまでに使用しようと圧縮されるため、膨大な魔力をともなう因果干渉のはずが連続での使用が可能。それどころか本人はなんかノリで行けてると思っているため軍隊レベルの敵全てとタイマンするというレベルでの連続使用がデフォルトである。それゆえの対軍宝具。つまり、オレが負けるまで殴るのをやめねぇということである。


クラススキル
対魔力C-
騎乗B

スキル
怪力B+
天性の肉体B
戦闘続行A
鬼種の魔B-
竜種C


E2正史から召喚されたサーヴァント。クラスはセイバー。サスペンスとの戦闘を終えたまだゼニスに至る前の状態で召喚されている。
まだゴールデンエイジのリーダーになったばかりでその在り方を掴んでおらず悩んでいる。
彼の手本となるリーダーはオニナグリと幼少の時をわずかに共にした修羅丸であり、その身を挺しても誰かを守るという”忍耐と犠牲を以ての守護”というものが核となるリーダー像だが、鬼丸の気質上そういったことに向かずそれに関して悩んでいるようだ。
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