【ウマ娘if】転移した俺は、トレセン学園で運命に抗う 作:KUROX
ウマ娘――彼女たちは、走るために生まれてきた。
時に数奇で、時に輝かしい歴史を持つ別世界の名前とともに生まれ
その魂を受け継いで走る。
それが、彼女たちの運命。
この世界に生きるウマ娘の、未来のレース結果は――
まだ、誰にもわからない。
彼女たちは走り続ける。
瞳の先にある、ゴールだけを目指して――
───────────
涙目の女性『あの子泣いてたのよ!?』
???『ごめん、出ていくよ……』
涙目の女性『なんで……あなたはっ!』
涙目の女性『しがみついてでもここに居ようとしないの!』
涙目の女性『すぐに逃げるのよ!!』
???『……』
???『……ごめん』
───────────
ピロリロリン♪ピロリロリン♪
『……う~……ん……あと5分……』
『……って、誰に言うてんねん……』
『……ん』
『……もう朝か』
朝からさわやかに一人ツッコミを入れた後
『ピッ…』スマホのアラームを止める
『うぅ~~んっ、よく寝……れてないわな、相変わらず……はぁ』
『歳のせいか、はたまた病気のせいか、スッキリした目覚めは何処へ』
(一人暮らしのオッサンは独り言が多くなる、あるあるやな)
(いや、独り言というより、昔から頭の中の【ワシ】と会話するクセがある)
(外では普通の『俺』)
(でも、誰にも聞こえへん場所なら、独り言くらいええやろ?)
『今何時だ?』
スマホに手を伸ばす
『ん?』
スマホ『ザッ……』スマホ画面全体にノイズが走る
『あん?故障……か?ま、一瞬だったし大丈夫……かぁ~…あ?』
『なんじゃこりゃ、日付バグってるじゃん……スマホまで寿命かぁ?』
『日付読めないじゃん、時間は読めるけど』
『ってか、今日営業さんの手伝いだっけ、ってことはスーツか……』
『早めに支度しないとな』
久しぶりのスーツに着替えながら愚痴る
『ったく、俺の社会復帰の為とはいえアルバイトこき使うなよなぁ』
『……あれ?ネクタイなんかおかしくね?久しぶりだから……イマイチ……』
スマホ『ピロリロリン♪ピロリロリン♪』
『スヌーーズッ!?ヤバッ最終警告や!』
『急げぇ急げぇ~……っと』
雑に靴を履き自宅を出るためにドアを開ける
ガチャッ
『え?』キョロキョロ
『……え?』
『……ココ……ドコデツカ……?』
(目の前に広がるのはまったく知らない景色……)
(せやけど、現代の日本であることは間違いない)
(どこぞのラノベの主人公のように、魔素の溢れた洞窟の中におったり……)
(西洋風の街並みや亜人や地竜もおらん……)
(いたって現代、めっちゃ現代、そしてめっちゃ日本)
(日本語の看板もあるし街並みも感覚でわかる)
(ココ日本)
『冷静になろう……』ガチャ
自分の部屋に戻る
『うん』キョロキョロ
(大して広くもないアパートの一室、見渡すのも簡単や)
『間違いなく我が家、めっちゃ我が家』
『……クンクン……うん、無臭』
(誰しも経験あるやろ?他人の家は“他人の家臭”がするもんや)
(せやけどここは無臭……)
(よくよく嗅げば、ほのかにワシ臭)
『……ぅぇ』
『ふぅー……』ドサッ
一度落ち着くためにベッドに腰掛ける
そして加熱式たばこをセットしてスイッチオン
『……フゥーー……』
(まだ夢の中におるんか?)
(家は間違いなくワシの家やもんな)
(けど、外はまったく知らん街)
(家ごと移動?……んなアホな)
(なんかのドッキリ?……この後【大成功】って看板持った奴が『テッテレー♪』って出てくんのやろ?)
『……』
(……こんなオッサンにドッキリかけてなんのメリットがあんねん……)
(アカン……現実逃避入ってきてる……)
(何にしてもここがどこなんか確認せんことにはしょうがない……か)
(……大丈夫……ヒト、コワクナイ……知らん人でも……大丈夫)
『……フゥーー……もう一回……そと出てみる?……』
たばこのスイッチが切れたタイミングで立ち上がる
今度はしっかりと靴を履き……ドアを……開ける!!
ガチャッ!!
『……』
街の喧騒、車の交通音、そして時折聞こえるハトの……
『ぽっぽー……ぽぽー……』
(……めっちゃフツーー!!)
(意気込んで出たところで、めっちゃ普通の風景、ワシの意気込み返せや!)
『ともあれ、場所を特定しないことにはなぁ……』
(危険はないみたいやし……つーかめっちゃ日本やし)
『ちと散策してみますか』
アパート2階の自室から階段で1階へと降り、道路へと出る
アパートの前はさほど広くない普通の片側1車線道路
(走っている車もみたことあるもんばっかりや)
(外に出ればいい大人なワシ、独り言は言わん、これ大人の常識)
てくてくてく
(あなたと♪コンビニ♪ファミリーマート♪)
てくてくてく
(あ、ココスや……濃厚ビーフシチューの包み焼きハンバーグ食べたい……)
てくてくてく
(ココスのとこから道広くなってるわ)
『……あ!』
(仕事!!忘れてたぁぁぁぁぁぁぁ!!どないしよっ!?今から行くっ!?)
(いやいやいや!こっからどう行くねんな?その為に散策中やろ?)
(とりま、連絡だけでも……)
と、スマホをジャケットの内ポケットから取り出そうと視線を落とした、その時……
ビュンッ!!
『うおっ!?』
一陣の風が目の前を横切る
(あっぶな!なんや?今の自転車か?にしても、えらい速かったな……)
風を巻き起こしたと思われる影を目で追う
(はっや!もうあんな遠くに……??)
(……自転車や……ない?)
(……制服女子……?)
(シルエットが……)
『!!』
『……ウマ耳に尻尾ぉっ!!?……ングッ』
通行人『!』ちらちら……
(恥っずぅ~!あかんめっちゃ視線集めてもうた)
(ええ大人が大声で『ウマ耳に尻尾ぉっ!!?』はないやろ!……ワシどんだけウマ娘好きやねん)
(まぁ、距離もえらい離れてたしなんかの見間違いやろ)
(それにホンマに恰好がウマ娘だとしても、ただのコスプレかなんかや、今は女子人気も高い言うしな)
(……にしても……あの風といい……えらい速かったようなぁぁぁぁああ……あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!』
『ウマ娘専用レーンッ!!??……ングッ!!』
(いやいやいやいや!なんや!?あの標識!!)
(ウマ娘専用レーン?)コテン?
(自転車専用レーン?)コテン?
(ウマ娘専用レーン?)コテン?
(自転車専用レーン?)コテン?
(そうそう!自転車専用レーンや!【自転車専用】を【ウマ娘専用】と書き間違えたんや!!)
『……』
(……そんなことある?)
ちらっ
(……はい、【ウマ娘専用レーン】って書いてあります……)
(地面にもしっかり色付きウマ娘専用レーンがあります……)
『……』
(……映画の……撮影……かな?)
(せやっ!実写映画の撮影か!!)
(いやぁ~ウマ娘もついに実写映画化かぁ~……やるなぁ~、サイゲェ~……)
(ワシの情報網に引っかからずにここまで大規模な撮影始めてるとは……)
(と、言うことはどこかにカメラがぁ~……)
キョロキョロ……
ビュンっ!!
『え?』
キタサンブラック『あ!おはようございます!』cv矢野妃菜喜
通行人A『おう!おはよ!キタちゃん!がんばってよ~!』
キタサン『ぁりがとうござぃますぅぅぅぅぅ……』←すでに遥か彼方
通行人A『へっ、相変わらずキタちゃんは元気だなぁ~』
『…』
『……』
『………』
『…………』ガクッ……〇ΓZ!!←地面にへたり込む
通行人A『うおっ!?』ビクゥッ!!
イマジナリーシャ〇(認めたくないものだな……自分自身の、若さゆえの過ちというものを……)
通行人A『兄ちゃん!どうした?大丈夫か!?』
(……少佐ぁ……ワシ、もう45なんよぉ……若くないのよぉ……)
(この歳で認めなかったら……それはもうただの【ボケ】なんよぉ~)
通行人A『兄ちゃん!具合悪いのかっ!?』
(だってぇ~目の前通り過ぎてったもの……コスプレじゃないよ?……)
(原付追い抜いてたもん……コスプレJKは走って原付追い抜けないよ?)
(ボルトでギリだよ?ボルトウマ娘のコスプレしないよ?)
通行人A『お~い!』
(しかもね、しかもね!キタサンブラックだったんだよ?あのお祭り娘!みんなのお助けキタちゃんだったんだよ?G1・7勝、cv矢野妃菜喜そのままだったんだよ?ウマ娘オタクのワシ間違えないよ?)
通行人A『おい!兄ちゃん!?聞こえてるか?救急車呼ぶか?』
『……』
通行人A『ダメだこりゃ、全然聞こえて……』
スクッ←立ち上がる
通行人A『うおおぅっ!!』ビクビクゥッ!
通行人A『……』ドキドキ……
『……』
通行人A『……』ドキドキ……
『さて!黄金郷(エルドラド)でも探しに行くかっ!?』✨
通行人A『は?』ポカーン
スマホ『ピロリロリン♪ピロリロリン♪』
(今度はなんやねん!おっさんもうお腹いっぱいやぞ!)
通行人A(あ、察っし……コイツ関わったらイケないやつだ……)……イソイソ
ピッ
『……もしも~し』
???『もしもし、片桐 隆(かたぎり たかし)さんのお電話で間違いないでしょうか?』
『はい、そうですけど……どちら様?』
???『申し遅れました、わたくし、トレセン学園で理事長秘書をしております【駿川たづな】と申します』
『……』
駿川たづな『駿川たづなと申します♪』cv藤井ゆきよ
『……!?』
(2回名乗った!?)
たづな『もしもし?』
『……』
たづな『片桐さん?』
『……あの』
たづな『はい?』
『詐欺にしては攻めすぎじゃないですか?』
たづな『……はい?』
『いや、普通もっと銀行員とか警察とか名乗るでしょ?』
『トレセン学園理事長秘書って』
『ターゲット層狭すぎません?』
(ワシ、ドンピシャやけど)
たづな『ふふっ』
『え?』
(笑った?)
たづな『いえ、資料通りの方だと思いまして♪』
『資料!?』
たづな『はい、片桐隆さんの資料です』
『なんで俺の資料がトレセン学園にあるんですか!?』
たづな『それも含めて、学園でお話ししたいと思いまして、一度トレセン学園にご足労頂けませんか?』
『行きます!すぐ行きます!!』
たづな『え?今から…大丈夫なんですか?』
『全っ然っ!大丈夫です!むしろ大歓迎です!』
たづな『ふふっ、大歓迎はこちらのほうです、それでは…』
『あ!』
たづな『?…どうかされました?』
『トレセン学園の場所わからない……です……』
たづな『あら、そんなはずは……いえ、スマホでトレセン学園と検索すればすぐにわかりますよ♪』
『……』
(その手があったかぁぁぁ~……!テンパリ過ぎて忘れてたわ……ワシのあほう……)
『あはは……そうですよね、スマホでね……』
たづな『はい♪それでは……1時間後でいかがでしょう?』
『1時間後承知しました!』
たづな『それではお待ちしていますね♪』
『はい!それでは、失礼しま~す』
スマホ『ピッ……ツーツーツー……』
『ふぅ~……』
(これで何かしらの情報が掴める!)
(そう思うたらふたつ返事してたわ…あははぁ~…)
(マジで詐欺やったらどないしよ?ウケるんやが?)
(あ!せやったスマホ検索!)
(かぁ~…はじめっから地図アプリ開いてたら、ここがどこだかすぐに分かったのになぁ~)
(やっぱ人間冷静さが必要やなぁ)
ポチポチ……
(……地図アプリを開いて~)
(…………現在地、東京都府中市〇〇)
『……』
(ですよねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!)
(知ってた!ワシ知ってた!つーかここまでくればさすがに察したわ!)
(ウマ娘オタク舐めるなよ!トレセン学園が府中近郊って設定はアニメ1期で履修済みやわ!)ドヤ✨
(と、ドヤってる場合やないな……ルート検索して……ヨシっ!)
(少なくともこれでこの世界がなんなんかは、すこしは掴めるはずや!それに…)
(なんでワシの資料がトレセン学園にあるのか?)
(スマホの番号まで知られてるんや、何もわかりませんでした、とはならんやろ)
(ほな!行きますか!トレセン学園!!)
◇◇◇
(地図アプリで見てたから、想像はしてたけど……)
(トレセン学園……デけぇぇぇぇぇぇぇ~~~~~!!)
(規模感おかしいやろ……)
(まぁ通常の学校機能に、トレーニングコースやら、プール、各種トレーニングマシンのあるトレーニングルーム、トレーナー室、果てはウイニングライブ練習用のダンススタジオや屋外ステージもあったらこうもなるか……)
(そして……)
(道路を挟んだ向かいには……)
(禁断の花園!!栗東&美浦寮!!)
(……来るまでは普通やったのに……)
『……』
『マジでウマ娘の世界なんだな』
???『……片桐さ~ん!こちらですよ~!!』
『っ!?』
たづな『お待ちしていました、時間通りですね』
『……デジャヴ』
たづな『はい?』
『あぁ!いや、なんでもないです……』
たづな『?』
たづな『……それでは理事長室までご案内しますね』
『あ!はい、お願いします』
たづなさんの案内で学園内へと入る……
(いまは授業中かな?やけに静かやな)
(もっとわちゃわちゃしてるイメージあったけど、こういうとこは普通の学校と一緒なんやな)
『ふふっ』笑みがこぼれる
たづな『どうかなさいましたか?』
『いや、トレセン学園ってもっとこう……なんというか……』
『活気があるようなイメージだったのに、案外静かなんだな、と…』
たづな『今は授業中ですからね、始業前の早朝トレーニングや放課後は活気で溢れてますよ♪』
『そうなんですね』
(なんにもないウマ娘の日常風景なんか見る機会ないから新鮮やな)
・・・・・・
コンコンコンコン……
たづな『お連れしました』
ガチャ
『失礼します』
???『歓迎ッ!!』cv水橋かおり
(ハイ!秋川やよいキターーーー!!扇子もちゃんと歓迎仕様!!)
理事長『うむ、よく来てくれた!』
(……この子……ゲームやアニメではただの“ロリキャラ”枠だと思うてたのに……)
(実際に会ってみると……なんか会社の社長と話してる気分になるな……)
(さすがは巨大組織URAの基盤を支えるトレセン学園理事長ってわけか)
『ところで私にお話っていうのは……?』
(目上の人と話すとき一人称は私!最低でも僕やで♪)
(40過ぎのおっさんが目上相手に俺、俺イキってたら“イタイ”からな、これも社会経験のなせる業!)
『そもそもなんで私なんかの資料がトレセン学園に!?』
理事長『うむ、単刀直入に言おう!』
理事長『要請ッ!!』バっ!扇子広げる
理事長『片桐【元トレーナー】に中央トレセン学園トレーナーへの復帰をお願いしたい!』
『………………………………』フリーズ
『……はい?』
『誰が……元トレーナーですって?』
理事長『片桐隆トレーナーだ』左手にある資料をヒラヒラさせながら
『いやいや!私がトレーナー……な、ん……て?』ちらっ
理事長の左手の資料に目が行く
パシッ!
理事長の手から奪うように資料を取る
『……』
(氏名…片桐 隆 生年月日…19〇〇年9月12日 血液型…O型 電話番号…〇〇〇ー〇〇〇〇ー〇〇〇〇)
(合ってる…所々読めない文字があるけど、全部ワシのパーソナルデータや……)
(経歴 〇〇年〇月 中央トレーナー試験合格 同年〇月 日本ウマ娘トレーニングセンター学園配属)
(!!?)
(なんやこれ?……なんやこれはっ!?)
(今日きたばっかやぞ!ここがなんかようわからん世界やけど!!今日!ワシはここにきたんや!!)
(……なんで過去にワシがおるねん……)
(しかも、トレセン学園のトレーナーって……)
『ん?』
手に持った資料の最後の一文が目に入る……
(〇年〇月…急病により無期限休職)
『!』
(……なんでこっちでも病気休職してんねん……)
(……これじゃあ……なんも、変わらんやん……)
コンコンコン……
不意に理事長室のドアをノックする音が聞こえた
たづな『彼女も来たみたいですね』
(彼女?)
たづなさんがドアへと近づき……開ける
???『失礼します』
『!!』
(……知っている)
(ワシは……彼女を……)
(静かなたたずまい……)
(長く伸びた美しい栗毛……)
(遠くをみるようなどこか儚い瞳……)
(ウマ娘ファンだけじゃない)
(競馬ファンなら誰もが知っている……)
(誰よりも速く先頭を走った……)
(悲運の名馬)
(サイレンススズカ)
第1章 【サイレンススズカ編】出走!
ー1章ー001話 プロローグ 完
第1話を最後までお読みいただき、ありがとうございます
初回は3話連続投稿です
第2話は8月1日(土)19時、第3話は8月2日(日)19時に公開します
作品の裏話や、作中に仕込んだネタの話はnoteで公開していきます
初回の記事は、3話連続投稿を終えた翌日、8月3日(月)に公開します
更新情報とnoteへのご案内は、Xからお知らせします
作者X・KUROX
それでは、次回もよろしくお願いいたします