【ウマ娘if】転移した俺は、トレセン学園で運命に抗う 作:KUROX
11月
【東京レース場 芝2000m G1 天皇賞・秋】どーーーん
東京レース場 控室
スズカ『……ん!……ん!』
『……』
『はい!いつもより入念にしといたから』
スズカ『ありがとうございます』
『……』
スズカ『……大丈夫ですか?トレーナーさん』
『ん?』
スズカ『ストレッチの手が少し震えていました……』
『やだっ!うっそぉ~ん……!』
スズカ『……』
『……』
『……覚悟ができたから……といっても……』
『……怖さは……なくならないもんだね……ははは』
『……』
『でも、大丈夫……怖くても……一緒に走るって決めたから……』
『……って、レース前のトレーナーがこんなんじゃダメだね』
スズカ『いいえ、トレーナーさんはトレーナーさんのままがいいんですよ』
『こんなポンコツよわよわおっさんトレーナーでも?』
スズカ『ふふっ……私にとっては世界一の名トレーナーさんです♪』
『スズカ……趣味悪くない?』
スズカ『ふふっ……そうかも』
『スズカ……』
スズカ『……』
『ありがとう』
スズカ『!』
『君にはいつも助けられてばかりだった……本当はトレーナーの俺が助けなきゃいけないのに……』
スズカ『いいえ!私はトレーナーさんに出会って、たくさんのものを貰いました』
『……』
スズカ『楽しく走る方法……』
スズカ『体調管理の大切さ……』
『……ぅ』
スズカ『ブレーキのかけ方……』
スズカ『苦手の克服の仕方……』
スズカ『走る以外の楽しさ……』
スズカ『そして、あの美しい先頭の景色……』
スズカ『独り占めじゃない……二人で見る景色の美しさを……』
『スズカ……』
スズカ『まだ言えますよ?』
『いや もう十分です!トレーナーさんお腹いっぱいです』
スズカ『それにこれからまだまだ、増えてくんですよ♪』
『!』
スズカ『まだ見ぬ、先頭の景色が……』
『そうだな、この先のまだ見ぬ景色……』
『そうだ なんならこのまま秋シニア3冠でも狙っちゃうか!まだ見ぬ栄冠へ!ってね』
スズカ『まだ、天皇賞も走ってませんよ?』
『いやいや、スズカならいけるよ!……ちょっと距離が長いレースもあるけど……』
『それはこれからのトレーニングで強化すればいい!』
スズカ『ふふっ……はい!』
係員『サイレンススズカさーん、準備お願いしまーす』
スズカ『はい!』
スズカ『トレーナーさん、今日の作戦をお願いします♪』
『え?あ、うん!』
『じゃあ……コホンッ』
『思いっきりたの……』
スズカ『ストップ!』
『え?』
スズカ『う~ん……何か違うのよね……』
『え?なにが……?』
スズカ『あ!ピコーンッ 』
『?』
スズカ『作戦は……“片桐隆”さんでお願いします!』
『!?』
スズカ『ふふっ』ニコッ✨
『……』
『もう~ホンマに』
『……スズカにはかなわんなぁ~……』
スズカ『♡ッ!』
『ほな、いくで!』
スズカ『はい!』
『どちゃくそ楽しんでっ!ほんでもって先頭で帰ってこい!!』
『絶対!帰ってくるんやでっ!スズカッ!!!』
スズカ『はい!片桐トレーナーさん!!』
『はは……』
スズカ『ふふふ……』
◇◇◇
東京レース場 パドック
実況『天皇賞・秋、出走ウマ娘たちがパドックへ姿を現しました』
実況『まずは1番、堂々の1番人気サイレンススズカ』
歓声『スズカー!』『こっち向いてー!』『今日も逃げ切ってー!』
実況『今年に入って負けなしの6連勝、重賞は5連勝中』
実況『前走・毎日王冠では、エルコンドルパサー、グラスワンダーを寄せつけず完勝』
実況『宝塚記念に続く2度目のG1制覇へ、異次元の逃亡者が秋の盾に挑みます』
スズカ『……』
実況『続いて2番、2番人気メジロブライト』
歓声『ブライトー!』『春秋連覇だー!』
実況『サイレンススズカと同世代、昨年のクラシックではダービー、菊花賞ともに3着』
実況『今年の天皇賞・春を制した長距離王者が、春秋連覇を懸けて東京芝2000mへ挑みます』
ブライト『ふふ~……今日もゆったり参りましょう~』
実況『9番、3番人気ダマスクイービル』
実況『昨年のダービー2着、そして年末の有マ記念を制したG1ウマ娘』
実況『近走はやや精彩を欠いていますが、実力上位は疑いようがありません』
ダマスクイービル『……』
(気配は悪くない……人気通り、当然怖い相手や)
実況『10番、4番人気ステイゴールド』
歓声『ステゴー!』『今度こそ勝てー!』『ステゴーぶちかませぇ~!』
実況『G1戦線で幾度も上位争いを演じながら、いまだタイトルには届かず』
実況『あと一歩で勝ち切れない善戦ウマ娘が、悲願のG1初制覇を狙います』
ステイゴールド『……きたな……スズカ』
(ステイゴールド……)
実況『人気の中心は、やはり年内無敗のサイレンススズカ』
実況『果たして今日も異次元の逃亡劇は見られるのか!』
実況『それとも、秋の盾を巡って新たな主役が現れるのでしょうか』
ステゴ『ちゃんときてくれたな……スズカ』
スズカ『ふふ……ステイゴールドとは違うから』
ステゴ(スズカの気配が前とは違う……?)
ステゴ『ははは……今日はいいレースをしよう……そして……』
ステゴ『まだ見ぬ勝利の先の景色を二人で見よう……』
スズカ『ごめんなさい、ステイゴールド』
ステゴ『!』
スズカ『この先の景色を一緒に見る相手はもう決まってるの』チラッ
ステゴ『!』
ステゴ(……片桐トレーナー……そういうことか……)
『ん?』
ステゴ『なるほど、きみの旅の相手は彼か……じゃあ、この先の景色は……』
ステゴ『私が独り占めしよう』
スズカ『!』
スズカ『いいえ、“私たちの”先頭の景色は誰にも譲らないわ』
ステゴ『……お互い良い旅路を……』タッタッタッ……
スズカ『……ええ』
◇◇◇
東京レース場 コース横関係者席
エアグルーヴ『隣、失礼するぞ』
『エアグルーヴ』
グルーヴ『随分緊張しているな、トレーナー』
『そ、そう……?』
『来てるんだったら控室にきてくれたらよかったのに』
グルーヴ『レース前の集中を乱したくないからな……それに……』
『?』
グルーヴ『お邪魔になるだろ?』
『ばっ!そんな訳ないだろ!エアグルーヴの激励が邪魔だなんて』
グルーヴ『ふふ、そろそろゲートインだ』
『……』
東京レース場 ゲート前
実況『今スターターが位置につきました』
ファンファーレ~♪♪♪
観客『わああああああああぁ~……』
実況『13万を越える手拍子に送られて各ウマ娘、ゲートインが順調に進んでいます』
実況『栗毛の静かなる逃亡者にたいして、果たして追跡者たちの秘策はあるんでしょうか!』
実況『さあ、各ウマ娘ゲートに収まり……態勢完了』
実況『秋の盾を巡る戦い……天皇賞・秋』
ブライト『……』
ダマスク『……』
ステゴ『……』
スズカ『……』
『……くっ』
(見ろ、見ろ、見ろ!……スズカの走りを)
──────
『約束する……君の走る先を……俺はずっと見てる……スズカの隣で』
──────
(約束したやろが!全部!見届ける!)
ガシャンッ!
実況『今スタートですっ!』
実況『ポーンっと一人サイレンススズカが、すーっと上がっていく』
実況『さあ、期待に応えてサイレンススズカ早くも先頭!』
実況『そしてその後ろ6番のハードカウント』
実況『外を通りましてステイゴールド4番手あたり』
実況『2コーナーのカーブへと入っていきました』
実況『早くも早くも8バ身くらいの差をつけてサイレンススズカがいく!』
実況『カメラをこれだけ引いても後ろが見えない!』
実況『サイレンススズカの大逃げ!後続を突き放す!』
スズカ(大丈夫……この間のレースより……もっと……先へ!)
実況『さあ、かなり縦長の展開まもなく3コーナーの手前まもなく1000mの標識!』
実況『果たしてどのくらいで通過していくのか!』
実況『今通過!57秒4!57秒4で過ぎて行った!』
グルーヴ『57秒4っ!だと!?……速すぎないか?』
『……』
実況『3コーナー飛ばしに飛ばしてサイレンススズカがいっている!』
実況『後続の各ウマ娘、大丈夫なのか?捕まえることはできるのか?』
(大丈夫……大丈夫……信じろ!)
実況『大ケヤキのむこうを過ぎていきました!』
(頼む……頼む……頼む……頼む!)
実況『サイレンススズカ!大ケヤキを越えて直線に入る!』
『!!』
実況『スタンドは割れんばかりの大歓声!』
(……越えた?……越えれた!!)
実況『ここでサイレンススズカさらにスパートに入る!』
『いけぇー!!スズカァーーーッ!!!』
……ゾワッ
今までに感じたことのない冷たいものが、背中をはしる
『え?』
(なんや……これ?……こんな違和感……今まで……こんな……離れてるのに……)
『スズカーーっ!!止まれぇーーっ!!走るなぁっ!!』
スズカ『えっ!?』
スズカ(トレーナーさ……)
パリーン
スズカ『……ぐっ!!!』
スズカの歩幅が崩れ、みるみる速度が落ちていく
実況『あっと!ここでサイレンススズカ失速!サイレンススズカ失速!』
『スズカー!』ガッ 柵を越えようとする
グルーヴ『どうしたッ!?まだ、レース中だぞ!!』ガシッ
実況『あ!ちょっと!これは……サイレンススズカ!サイレンススズカに故障発生です!!』
スズカ『……く……くぅ……』
グルーヴ『スズカッ!?』
『はなせぇぇーっ!!』バッ タッタッタッタッタッタッ………
グルーヴ『あ!おいっ!トレーナー!……』
実況『なんということだ!サイレンススズカに故障発生!走れない!レース続行不能!』
実況『サイレンススズカ、ゴールを迎えることなくレースを終えた!』
観客『───────』
実況『沈黙の日曜日!』
『スズカー!』タッタッタッタッタッタッ………
『はぁっ……はぁっ……はぁっ……』タッタッタッタッタッタッ………
(何がアカンかった!?何が足りんかった!?なんでこんな!?)
実況『先頭はここでハードカウント!ハードカウントが先頭にたった!』
ステゴ(スズカ!?)
実況『さあ、そして2番手にはステイゴールド!ステイゴールドが上がってきている!』
(スズカ……スズカ……スズカ……スズカ!)
実況『残り100m!先頭ハードカウント!内からステイゴールドが迫る!』
実況『ハードカウント先頭でゴールイン!大ベテランハードカウント、G1初制覇!』
実況『2着はステイゴールド!』
『スズカーッ!』ガシッ
スズカを抱きとめる
スズカ『……ッ』苦悶の表情
『スズカ!スズカ!』
ゆっくりスズカを寝かせる
『おい!救護班!!救急車!!はよせえやっ!!!』
『スズカ!スズカ大丈夫か!しっかりせぇ!』
ピーポーピーポー……
バタンッ!
ドクター『すぐに担架を用意して!』
救護係『はい!』
『先生!はやくっ!』
ドクター『少し離れて……!』触診をする
ドクター『……ッ!!……すぐに病院へ!救急搬送!!』
救護係『はい!』
スズカ『……く……くぅ……』
『スズカ!』
救護係『離れてください、担架に乗せます!』
『……ワシの……』
グルーヴ『片桐トレーナー!』タッタッタッ……
救護係『救急車出ます!』
また、守れなかった――その事実を運命に突きつけられ、片桐は膝から崩れ落ちる
ピーポーピーポー
グルーヴ『スズカは!?』
『……ワシの……せいや……』
グルーヴ『スズカはどうなった!』
『……全部……全部……』
グルーヴ『片桐トレーナー!』
『……ワシが……強引にでもレースを……』
グルーヴ『しっかりしろ!今一番つらいのは誰だっ!?』ガッ
グルーヴ『貴様はサイレンススズカのトレーナーだろっ!!』
『!』
『……』
グルーヴ『スズカは?どうなった?』
『……病院へ、緊急搬送された……』
グルーヴ『入場口でタクシーを捕まえてくる!貴様もすぐにこい!』タッタッタッ……
『……スズカの側に……いないと……!』スクッ
『……』
『約束……したから』
・・・・・・
東京レース場 関係者通路
『はぁ……はぁ……はぁ……』タッタッタッ……
???『おい!きたぞ!!』
記者『片桐トレーナー!サイレンススズカは!?サイレンススズカの容態は!?』
ぞろぞろ……
『まだ……詳しいことは……』
記者『片桐トレーナー!サイレンススズカの容態はどうなんですか!?』
『詳しいことは、わかり次第説明しますので……道を空けてくださいっ!』
記者『今日の作戦はトレーナーの指示だったんですか?』
『今度説明の場を設けますので、今は!』
記者『担当ウマ娘があのような事故を起こして今、どんなお気持ちですか!?』
『ッ!!』
『……先を急ぎますので!……どいてください!』
記者『事故の原因は、あなたの指示だったんですか!それとも彼女の暴走だったのですか!?』
……プツンッ
『……は?』
『……どけ』
記者『トレーナーとして今回の事故の責任は誰にあると……!?』
『どけって言うとるのがわからんのかっ!!』ドンッ
女性記者『きゃあっ!』
『お前らなんかの相手してる暇ないねんっ!!どけやっ!!』
記者『うおっ!片桐トレーナー!説明責任を!!』
わー、わー……
藤井(こりゃ、アカンわ……レースの衝撃と、この人だかりで半パニック状態になっとる……)
『どけ!どけ!どけってぇ!!』
藤井(ナンボ叫んでも無駄や……)
『どけ!どけ!どけ!……』
『……どけっ!……どけっ!……』
『……どけって……』
『……どいて……』
『どいて……ください……』
『……道を空けて……』
『……スズカの……ところへ……』
『……お願いしますから……』
記者たち『片桐トレーナー!一言だけでも!』『片桐トレーナー!!』『説明をっ!!』
藤井(……無理や……)
???『やれやれ、最近の記者は天皇賞2着のウマ娘がこんな近くにいるのに……』
藤井(ステイゴールド!?)
ステゴ『インタビューもしてくれないのか?』
ドリームジャーニー『本当に、あれだけ素晴らしい走りをしたアネゴを無視して、トレーナーに取材とは……』
ドリジャ『本当に質が落ちたものですね』キッ
女性記者『……うっ』
ナカヤマフェスタ『勝負の熱もわからねぇ連中が、よく記者を名乗れるな』ギロッ
記者『……な、なにを……』
フェノーメノ『ここはあなた方だけの通路ではありません!!速やかに道を空けなさいっ!!』
記者『あ……ああ……』ササ……
???『なんだ?なんだぁ?ステゴの2着祝いのパーティーかあ?こんな狭いとこじゃなくてもっと!デカイ会場でやろうぜぇぇぇぇっ!!うりゃぁぁぁぁーーー!!』
藤井『ゴールドシップ!……なんで、わしやねーん!』
カッカッカッ……
???『余の行く手を阻むか……愚民どもよ、疾く道を空けよ……』
記者『オ……オルフェーブル!』
オルフェーヴル『去ねっ!!』
記者『……ヒィィッ』
『……』
ステゴ『さぁ、行ってやりな、片桐トレーナー』
『……みんな……ありがとう……』タッタッタッ……
ステゴ『彼らの旅路は茨の道か……それとも……』
・・・・・・
東京レース場 入場口前
グルーヴ『ここだ!トレーナー!!』
『はぁ……はぁ……』タッタッタッ……
グルーヴ『乗れ!』
『……ありがとう』バタンッ
グルーヴ『URA指定病院まで!急ぎで頼む!』
運転手『病院までね……はい』
『……』
グルーヴ『……』
『……ワシのせいや』
グルーヴ『……』
『ワシが天皇賞に出るって決めた』
『……ワシが強引にでも……スズカに嫌われても……回避してたら……』
グルーヴ『片桐トレーナー』
『もっと調べとけば……もっと慎重に見とけば……』
グルーヴ『今はまだ、何が原因かも分からない』
『ワシが止めとったら……』
グルーヴ『……』
『ワシがあの日、屋上で出走を認めへんかったら……』
グルーヴ『スズカが納得したと思うか?』
『……』
グルーヴ『あいつは自分で走ると決めた』
グルーヴ『貴様一人が背負うことではない』
『でも、ワシはトレーナーや……』
グルーヴ『ああ、そうだ』
グルーヴ『だから今、スズカのそばへ向かっている』
『……』
グルーヴ『私だって怖い』
『!』
グルーヴ『だからこそ、信じるんだ!スズカの強さを……』
『……』
グルーヴ『……』
『……ワシのせいや』
グルーヴ『片桐トレーナー』
『ワシが………ワシのせいでスズカの走りを……』
グルーヴ『いい加減にしろっ!!』
『……』
グルーヴ『今、貴様が壊れてどうする!』
グルーヴ『スズカが目を覚ました時、最初に探すのは誰だと思っている!』
『……』
グルーヴ『貴様だ』
『……』
グルーヴ『ならば、せめてあいつの前に立てる顔をしていろ』
『……無理や……』
グルーヴ『……無理でもだ』
『……』
グルーヴ『私も……隣にいる』
『……エアグルーヴ』
グルーヴ『だから今だけは、前を向け』
『……』
『……ああ』
『……スズカのそばへ、行かんとな』
グルーヴ『ああ』
『……』
グルーヴ『……』
◇◇◇
URA指定病院 受付
『はぁ……はぁ……』タッタッタッ……
グルーヴ『……』タッタッタッ……
『あの!今!救急で運ばれてきたサイレンススズカはっ!?』
病院受付『は、はい……今は緊急手術中です』
グルーヴ『行くぞ、トレーナー』タッタッタッ……
『ああ……』タッタッタッ……
病院受付『あ!病院内は……!』
・・・・・・
手術室前 待合所
【手術中】
『……』
グルーヴ『……』
・・・・・・
手術中のランプが消える
『……!』バッ
手術室の扉が開く
パタ……パタ……
『先生!スズカは!どうなんですか!?』
医師『詳しいことは、この後説明しますので、こちらでお待ちください』
『手術は成功したんですよね!?』
医師『手術は無事に終了しましたので、こちらでお待ちください』パタ……パタ……
『……』
グルーヴ『……』
再び手術室の扉が開く
ガラガラ……
『スズカ!』
看護師『まだ、麻酔が効いていますので、下がってください』ガラガラ……
スズカ『スー……スー……』
『……スズカ』
グルーヴ『……しっかり……しろ、トレーナー……』
『……』
グルーヴ『……』
・・・・・・
診察室
医師『サイレンススズカさんのケガを分かりやすく申しあげますと……』
医師『右足首周辺の複数の骨が、粉砕骨折しています』
(右脚!?左脚やなくてっ!?)
医師『手術でできる限りの処置はしましたが……』
医師『今後も数回の手術をしてリハビリを重ねれば……』
医師『歩けるようにはなるかと』
『え?』
グルーヴ『!』
『歩けるようには?……なる?』
医師『はい、日常生活に支障は出ないくらいには……』
『レースは?』
医師『……片桐トレーナー……お気持ちはわかりますが……』
『走るのは?』
医師『……』
医師『……リハビリの結果にもよりますが……』
医師『うまくいけば軽いジョギングくらいなら……』
『うまくいけば?……軽いジョギング?』
医師『……これが今の医学の限界です』
『スズカにもう走るな……と?』
医師『……』
グルーヴ『おい!トレーナー……』
『お前……医者やろ?』ガタッ
医師『……』
グルーヴ『やめんか!』
『医者は人のケガ治すんが仕事やないんかっ!!』ガッ
医師『……』
グルーヴ『いい加減にしろっ!トレーナー!』バッ!
『……』
グルーヴ『申し訳ございません、先生』
医師『……いえ、お気持ちは……』
『……』
『……スズカに……』
『……スズカに……なんて……』
『……なんて……言うたらええねん……』
グルーヴ『……』
医師『……』
『……』
・・・・・・
病室
『……』ぎゅ……スズカの手を握る
グルーヴ『……』
『……』
『……もう、遅い……エアグルーヴは帰りなさい』
グルーヴ『……私も……』
『頼む……』
グルーヴ『!』
『……二人に……してくれないか……』
グルーヴ『……』
グルーヴ『……何かあればすぐに呼べ……』タッ…タッ……
『……』
スズカ『……』
『……』
スズカ『……』ぎゅ……
ー1章ー011話 夢のこたえを、君に言えない 完
【あとがき】
第11話「夢のこたえを、君に言えない」を最後までお読みいただき、ありがとうございました
この第11話を、一人でも多くの方へ届けたい――
その思いから【決戦は沈黙の日曜日】と銘打ち、1週間、Xで発信を続けてきました
告知を見てくださった方、反応や共有で力を貸してくださった方、そして第11話を最後まで読んでくださった皆さま。本当にありがとうございます
ここまで読んでくださった皆さまへ、お願いがあります
初見でも、第11話だけでいい
運命に抗う二人の一日を、最後まで読んでほしい
この第11話をまだ知らない方へ届けるために、この作品の共有ボタンから、第11話をXへ共有して力を貸してください
お願いします
サイレンススズカと片桐隆が迎えた、沈黙の日曜日
運命に夢を断たれた二人が、ここからどんな答えを返すのか
次回、第12話は9月2日(水)19:00公開予定です
そして明日8月31日(月)07:00、noteにて『KUROXの
第10話・第11話のネタ解説と、執筆の裏話をお届けします
これからも、二人が運命に抗う物語を見届けていただければ幸いです
【note(裏話・ネタ解説)】
https://note.com/kurox_1200
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