【ウマ娘if】転移した俺は、トレセン学園で運命に抗う   作:KUROX

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ー1章ー013話

 

※本話には、精神疾患および自死を想起させる表現が含まれます。

閲覧の際はご留意ください。

 

 

 

 

トレセン学園 面談室

 

教官『ゆっくり考えて結論を出せばいいから』

 

スズカ『はい』

 

教官『まだ、あなたにもこの学園で進む道があるんだから、後悔のない選択をしてね』ガタッ

 

スズカ『ありがとうございました』

 

ガラガラッ……バタン

 

スズカ(後悔のない選択……私にできるかしら?)

 

スズカ『トレーナーさんに相談してみよう』

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

トレーナー室前

 

コンコンコン……

 

スズカ『失礼します』

 

ガラッ

 

スズカ(あら?トレーナーさん……お休みかしら?)

 

スズカ(それにしても久しぶりね、ここからたくさんのレースに……トレーナーさんと……)

 

スズカ(トレーナーさん……お家にいるかしら?いきなり押しかけて行ったら迷惑よね……)

 

──────

 

『ありがとう、スズカ』

 

──────

 

スズカ(昨日のトレーナーさん……少し変だった……行ってみよう)

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

呼鈴『ピンポーン……』

 

スズカ『……』

 

呼鈴『ピンポーン……』

 

スズカ『……』

 

呼鈴『ピンポーン……ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン』

 

スズカ(あら?これだけ鳴らしても出てこない……いないのかしら?)

 

スズカ(また!風邪とか引いて動けなくなってたら!?)

 

スズカ『……ん』ガチャ

 

スズカ(……開いた)

 

スズカ『お邪魔しまーす、トレーナーさん?』

 

スズカ『!』

 

スズカ(すごい綺麗……片付けがこんなに行き届いてて……)

 

スズカ『!』

 

スズカ(前に来た時よりも家具が減ってる!?)

 

スズカ(おかしいわ!……トレーナーさん!)

 

慌ててスマホを取り出す

 

スズカ『……』ピッピッピッ……

 

スマホ『プップップッ……』

 

スズカ『……』

 

スマホ『トゥルルルル……』

 

スズカ『……』

 

部屋の奥『ピロロロロ……♪』

 

スズカ『え?』

 

部屋の奥『ピロロロロ……♪』

 

スズカ『……そんな……!』

 

音を頼りに部屋の奥へ向かう

 

机の上『ピロロロロ……♪』

 

スズカ『……トレーナーさんの……スマホ……』

 

スズカ『……』ピッ スマホを切る

 

スズカ(なんで?なんで?スマホを……部屋もこんなに綺麗だし……)

 

スズカ(どうしよう……どうしよう……)

 

スマホ『ピロリロンッ……♪』

 

スズカ『きゃっ』

 

スズカ(私の……エアグルーヴ?)

 

ピッ

 

グルーヴ『スズカか?すまんな突然、お前のことだから進路について悩んでるんじゃないかと……』

 

スズカ『……』

 

グルーヴ『スズカ?おい、聞こえているか?』

 

スズカ『……エアグルーヴ……エアグルーヴ……どうしよう……』

 

グルーヴ『スズカ!どうした!何があった!』

 

スズカ『トレーナーさんが……トレーナーさんが……』

 

グルーヴ『落ち着け、落ち着いて話すんだ、スズカ』

 

スズカ『トレーナーさんが……いなくなっちゃった』

 

グルーヴ『!!……落ち着けスズカ、一度学園に戻れ、話はその時聞く』

 

スズカ『う……うぅ……』

 

グルーヴ『いいか?落ち着いてくるんだぞ……わかったな?』

 

スズカ『……うん』

 

 

 

・・・・・・

 

 

トレセン学園 正門前

 

スズカ『はぁ!はぁ!はぁ!』タッタッタッ……

 

グルーヴ『スズカ!』

 

スズカ『エアグルーヴ』タッタッタッ……

 

グルーヴ『スズカ!』ガシッ

 

スズカ『エアグルーヴ、トレーナーさんが!』

 

グルーヴ『お前……走ってきたのか?』

 

スズカ『そんなことはどうでもいいの!トレーナーさんが!』

 

グルーヴ『ばかものっ!!』

 

スズカ『!』

 

グルーヴ『退院したばかりだろう?もしまた傷が悪化したらどうする!?』

 

スズカ『私のことなんてどうだっていいの!トレーナーさんが!!』

 

グルーヴ『片桐トレーナーがお前の傷が悪化したのを知ったらどう思う!!』

 

スズカ『!!』

 

グルーヴ『……あのバカみたいに優しいトレーナーが知ったら!……それこそ……ぐっ』

 

スズカ『……』

 

スズカ『……ごめんなさい、エアグルーヴ、もう無理はしない、絶対!』

 

グルーヴ『ああ、それでいい』

 

グルーヴ『で?片桐トレーナーが失踪したんだな?』

 

スズカ『……うん』

 

グルーヴ『心当たりは?』

 

スズカ『……わからない……』

 

グルーヴ『一度理事長に相談してみよう、ついてこい』

 

スズカ『……うん』

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

保科『あら!スズカさん、退院おめでとう』

 

スズカ『……先生』

 

保科『!?』

 

保科『……なにかあったの?』

 

グルーヴ『それが……片桐トレーナーが失踪しました』

 

保科『!』

 

グルーヴ『今から理事長に相談に行くところです』

 

保科『私もついていきます』

 

グルーヴ『先生?』

 

スズカ『……』

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

コンコンコン……

 

たづなの声『どうぞ』

 

グルーヴ『失礼します』

 

保科『失礼します』

 

スズカ『……失礼します』

 

たづな『あら、なんか珍しい組み合わせですね』

 

理事長『どうしたのだ、深刻そうな顔をして』

 

グルーヴ『片桐トレーナーが失踪しました』

 

理事長『!』

 

たづな『!』

 

グルーヴ『我々だけでは捜索できません、大人の力を借りなくては』

 

たづな『すぐに警察へ連絡します、ですが……現状では自ら外出しただけと判断される可能性も……』

 

保科『スズカさん、あなたトレーナーの部屋に行ったのよね?どういう感じだった?』

 

スズカ『えっと……以前行った時とは違って、凄く整理されていて綺麗で……』

 

スズカ『家具も少し減っていたような気がします、それにスマホが……ぅ……』

 

保科『ありがとう、つらいわよね』

 

スズカ『……ぅぅ……』

 

保科『理事長、以前依頼されていた、片桐トレーナーの休養原因がわかりました』

 

理事長『なんと!』

 

保科『私も確認に時間がかかって、報告が遅れてしまったのだけど……』

 

保科『片桐トレーナーは重度のうつ病により休養していたことが分かりました』

 

スズカ『!』

 

保科『一時は閉鎖病棟に入らなければいけないほどだったそうです』

 

理事長『!』

 

保科『……本当は本人の許可もなく、生徒たちの前でも言うことじゃないんだけどねぇ……』

 

保科『うつ病は死に至る病です、それも最悪の形で……』

 

スズカ『……うぅ……』

 

保科『スズカさん、辛いだろうけどもう一つだけ教えて』

 

スズカ『……ぅぅ……はい』

 

保科『最後に片桐トレーナーに会ったのはいつ?』

 

スズカ『……昨日の……夕方です……』

 

保科『!』

 

保科『理事長、あまり時間がないかもしれません、迅速な判断を』ペコッ

 

理事長『承知!直ちに警察へ連絡!学園でも捜索隊を編成する!』

 

たづな『片桐トレーナーの命に関わる可能性があることも、必ず伝えます』

 

保科『お願いします』

 

保科『ただし、病気のことは片桐トレーナーの大切な個人情報です』

 

保科『捜索に加わる生徒たちには、必要以上に伝えないでください』

 

理事長『当然!情報の取り扱いには最大限配慮する!』

 

グルーヴ『私は会長に連絡します、生徒会にも協力を要請します』

 

理事長『頼んだ!』

 

スズカ『私も……探しに行きます』

 

グルーヴ『スズカ……』

 

スズカ『無理はしません……でも、何もしないで待っているなんてできない!』

 

スズカ『トレーナーさんが……一人で苦しんでいるかもしれないのに……』

 

保科『スズカさん』

 

スズカ『……はい』

 

保科『あなたにしか分からないことが、きっとあります』

 

スズカ『!』

 

保科『最近よく口にしていた場所、思い出の場所、行きたいと言っていた場所……』

 

保科『どんな小さなことでもいい、落ち着いて思い出して』

 

スズカ『……わかりました』

 

たづな『片桐トレーナーの自宅周辺や駅、病院にはこちらから確認します』

 

グルーヴ『我々は、片桐トレーナーと関わりのある者たちに聞いて回ろう』

 

スズカ『……はい』

 

理事長『総員!片桐トレーナーの捜索を開始する!』

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

たづな『トレセン学園の駿川と申します、そちらに片桐という男性が搬送されていないか確認を……』

 

職員『たづなさん!近隣の駅とバス会社から返答が来ました!』

 

たづな『目撃情報は!?』

 

職員『ありません!防犯カメラも確認してくださるそうですが、時間がかかると……』

 

たづな『わかりました、次の病院へ連絡します!』

 

職員『ですが、もう周辺の病院はほとんど……』

 

たづな『まだです!個人病院も診療所もあります!』

 

たづな『無事だと確認できるまで、全部です!』

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

理事長『緊急!片桐トレーナーの行方が分からない!』

 

ざわっ……

 

理事長『現在、警察にも捜索を依頼している!学園の業務に支障が出ない範囲で構わない!心当たりのある者は協力してほしい!』

 

六平『片桐の野郎……』

 

南坂『担当する生徒たちにも声をかけます、彼女たちの方が街中を探すには適任でしょう』

 

六平『俺は外の連中に当たる、記者なら警察より耳が早ぇこともある』

 

理事長『頼んだ!ただし、決して生徒たちだけで危険な場所へ向かわせないように!』

 

南坂『承知しました』

 

六平『……勝手に消えて終われると思うなよ、若造』

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

バンッ!

 

グルーヴ『会長!』

 

ルドルフ『どうした、エアグルーヴ』

 

グルーヴ『片桐トレーナーが……失踪しました』

 

ルドルフ『!』

 

ブライアン『失踪?』

 

グルーヴ『自宅にはスマホが残され、身辺も整理されていたそうです、命に関わる可能性があります』

 

ルドルフ『……事情は理解した』

 

ルドルフ『ブライアン、門と駐車場の記録を確認してくれ、私は各寮と警備員に聞き込みを行う』

 

ブライアン『わかった』

 

グルーヴ『私はスズカと片桐トレーナーに関わった者を当たります』

 

ルドルフ『エアグルーヴ』

 

グルーヴ『はい』

 

ルドルフ『必ず連れ戻すぞ』

 

グルーヴ『……はい!』

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

南坂『片桐トレーナーの捜索に協力してもらいたいんです』

 

ネイチャ『あのトレーナーさんが……?』

 

イクノ『担当区域を指定してください、効率よく分担しましょう』

 

ロイス『片桐トレーナーは記録に残すべき方です、こんなところで記録を終わらせるわけにはいきません!』

 

アース『ああ、彼の音色が途切れてしまう前に、必ず見つけ出そう』

 

南坂『僕とイクノさんは学園周辺、ネイチャさんとマチタンさんは公園をお願いします』

 

南坂『アースさんとロイスさんは河川敷と、その周辺の休憩所を』

 

ロイス『写真と特徴は記録済みです、聞き込みはお任せください!』

 

マチタン『小さな場所も、むんっ!と見逃さず探しますよぉ!』

 

南坂『ターボさんは——』

 

ターボ『ターボが一番に見つける!!』

 

南坂『ターボさんは僕と一緒です』

 

ターボ『なんで!?』

 

南坂『一人で遠くまで行ってしまうからです』

 

ネイチャ『こんな時まで通常運転だねぇ……』

 

ターボ『絶対見つけるもん!それで勝手にいなくなったこと、ターボがいっぱい怒る!』

 

アース『ふふっ、それは再会を告げる賑やかなファンファーレになりそうだ』

 

南坂『ええ、そのためにも必ず見つけましょう』

 

全員『おーっ!』

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

エル『片桐トレーナー!いたら返事をしてくだサーイ!』

 

グラス『エル、ただ呼ぶだけでは見落としてしまいます、お店の方にも写真を見せて聞きましょう』

 

スペ『私、駅員さんに聞いてきます!』

 

キング『なら私は商店街の反対側を探すわ、同じ場所ばかり探しても仕方ないでしょう?』

 

スカイ『スカイさんは人が休めそうな場所を見てきますかねぇ』

 

グラス『皆さん、何か分かればすぐに連絡を』

 

エル『絶対に見つけマス!』

 

キング『当然よ!私たち全員を心配させた責任、きっちり取ってもらうんだから!』

 

スペ『はい!見つけて、ちゃんと帰ってきてもらいましょう!』

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

タキオン『片桐トレーナーが失踪?』

 

ポッケ『ああ!それで学園中で探してんだ!』

 

ダンツ『タキオンちゃんも手伝って!』

 

カフェ『……』

 

タキオン『なぜ、私が研究の貴重な時間を割いてそんなことをしなければいけないんだい?』

 

ポッケ『お前!知らない人間じゃねぇだろ!?お前の薬飲んで発光までしてんだぞ!』

 

ダンツ『よくわからないけど、ただの失踪じゃないみたいなんだよ』

 

タキオン『……それで?』

 

カフェ『……もう行きましょう……ポッケさん……ダンツさん……時間の無駄です』

 

ポッケ『このぉ、薄情者っ!』

 

ダンツ『……行こう、ポッケちゃん』

 

タキオン『ある研究結果によると……』

 

ポッケ『あん?』

 

タキオン『マンツーマンのトレーナー関係は強い共依存関係になることが多いらしい』

 

タキオン『それを防ぐために学園ではトレーナーによるチーム制を勧めている……』

 

タキオン『強い共依存は時にお互いの破滅へと繋がる……そんな事例で溢れているからねぇ』

 

タキオン『しかし、極稀に強い共依存が思いもよらない奇跡を生むことがある』

 

タキオン『片桐トレーナーとサイレンススズカは果たしてどちらだろうね?』

 

ポッケ『何言ってんだ?』

 

タキオン『時には目に見えない“奇跡”なんてものに頼ってみるのも悪くないって話だよ』

 

カフェ『!』

 

ポッケ『行くぞ!ダンツ、カフェ!俺たちはレース場の端から端まで探すぞ!』

 

ダンツ『うん!』

 

カフェ(……お友だち……何か感じるの?……)

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

六平『俺だ、藤井』携帯で話す六平

 

藤井『これは六平トレーナー、またわしに連絡してくれはるとは……もしかしてわしのこと好きになりました?』

 

六平『馬鹿野郎!そんな場合じゃねぇー!』

 

藤井『うるさっ!……冗談ですやん……』

 

六平『片桐が消えた』

 

藤井『!』

 

藤井『……なんですって?』

 

六平『携帯を置いて、部屋も片づけてやがったらしい』

 

藤井『!』

 

六平『駅、バス、タクシー、宿泊施設、使える伝手は全部使え、あいつを見たって情報を集めろ』

 

藤井『無茶言いますね、こっちは新聞記者ですよ?』

 

六平『だから頼んでんだ』

 

藤井『……貸し、ですよ』

 

六平『好きにしろ』

 

藤井『写真を送ってください、地方の記者にも回します』

 

六平『頼む』

 

藤井『六平さん』

 

六平『なんだ』

 

藤井『見つけましょう、必ず』

 

六平『……ああ』

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

日が傾き始めた頃……

 

スズカ『……どこにもいない』

 

グルーヴ『警察からも、まだ有力な情報はないそうだ』

 

スズカ『トレーナーさん……』

 

フクキタル『スズカさん!』

 

スズカ『フクちゃん……』

 

フクキタル『まだです!まだ一つだけ、試していない方法があります!』

 

グルーヴ『占いか』

 

フクキタル『……はい』

 

スズカ『お願い!フクちゃん!今はなんでもいいから情報が欲しいの!』

 

フクキタル『……わかりました』

 

 

フクキタルが胸元から、シラオキ様のお守りを取り出す

 

両手で強く握りしめ、祈るように額へ当てる

 

 

フクキタル『シラオキ様……お願いします……』

 

フクキタル『どうか、片桐トレーナーのいる場所へ……私たちをお導きください……!』

 

 

静寂――

 

 

チリン……

 

 

風もない中、お守りについた小さな鈴が鳴る

 

次の瞬間、一陣の風が中庭を吹き抜けた

 

フクキタルの髪と尾が、大きく風になびく

 

 

フクキタル『……見えます』

 

フクキタル『夏……海……沈んでいく夕陽……』

 

スズカ『!』

 

フクキタル『そして……あの日の記憶……』

 

スズカ『夏の……海……』

 

背後から、静かな声が重なる

 

カフェ『……間違っていません』

 

グルーヴ『マンハッタンカフェ』

 

カフェ『お友だちも、同じ景色を見ています』

 

フクキタル『!』

 

カフェ『海を見下ろす……高い場所に、誰かが一人で……』

 

スズカ『!!』

 

──────

 

『……今すぐ逃げだしたい!……』

 

──────

 

スズカ『……合宿所』

 

グルーヴ『何?』

 

スズカ『夏にみんなで行った、あの海です!』

 

スズカ『トレーナーさんは、あそこにいる!』

 

 

・・・・・・

 

 

グルーヴ『占いだけで警察や捜索隊は動かせん』

 

グルーヴ『だが、片桐トレーナー本人の言葉に心当たりがあるなら確認する価値はある』

 

バンッ!

 

グルーヴ『理事長!片桐トレーナーのいる可能性の高い場所が分かりました!』

 

理事長『確かなのか!』

 

スズカ『夏合宿の夜、トレーナーさんはあの海で言ったんです……今すぐ逃げだしたいって』

 

グルーヴ『占いだけなら私も動きません、ですが片桐トレーナー本人の言葉と一致しています』

 

グルーヴ『外れても失うのは時間だけ、ですが行かなければ命を失うかもしれません』

 

理事長『決断!直ちに向かうのだ!』

 

たづな『タクシーを手配します!』

 

理事長『私費!代金は私が負担する!』

 

スズカ『ありがとうございます!』

 

グルーヴ『行くぞ、スズカ』

 

スズカ『……うん!』

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

夜 合宿所近くの海岸

 

バタンッ ブーーーン……

 

グルーヴ『スズカ、お前はこの海岸の見える範囲を探せ!私は合宿所の人に聞いてくる』

 

スズカ『わかった』

 

グルーヴ『海岸から離れるなくれぐれも走るなよ!片桐トレーナーを見付けたら、すぐに私に連絡しろ!』

 

スズカ『ええ!』

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

人影のない、波音だけが鳴り響く海岸を歩く……

 

冬の澄んだ空気の中、遠くの景色までが鮮明に浮かび上がる……

 

永遠に続くかのような水平線が月明かりに照らされ、幻想的な景色が広がっていた……

 

スズカ(……いない……確かにここのはずなのに……)

 

スズカ『トレーナーさん』

 

──────

 

カフェ『海を見下ろす……高い場所に、誰かが一人で……』

 

──────

 

スズカ(……高い場所……)

 

スズカ(……高い場所……高い場所……)

 

スズカ(あそこの崖……!)

 

月明かりの中に、海へ突き出すような高い崖が浮かび上がる

 

その先端に立つ、わずかな人影

 

スズカ(人影!……まさか……!)

 

スズカ『トレーナーさん!』ザッザッザッ……

 

 

・・・・・・

 

 

スズカ『はぁはぁはぁ……』

 

『……』海のただ一点を見つめている片桐

 

スズカ『トレーナーさん!』

 

返事はない

 

スズカ『トレーナーさん!』ザッ……ザッ……

 

わずかに振り返る

 

スズカ『トレーナーさん……良かった……』

 

生気のない笑みを浮かべ……

 

スズカ『!』

 

タッ…………タッ…………タッ…………

 

まるで夜の海に吸い込まれるようにゆっくり歩みを進める……

 

スズカ『ダメーーーーーーッ!!』ザッ!!

 

禁じられていた全力疾走

 

スズカ『もう、貴方は一人じゃないって!!』

 

『……ス……ズカ?』

 

『!!』

 

『走るなっ!!』ザッ

 

無意識に身体がスズカを制止しようとする

 

ガシッ!ザーッ……

 

片桐を抱きしめ、崖から離れるように倒れ込む二人……

 

 

 

 

スズカ『どうして?どうしてこんな……』

 

『……』

 

スズカ『う……うあぁぁぁぁぁ~ん……』

 

『……スズカ』

 

『……走ったら……ダメだろ……』

 

スズカ『えぇぇぇぇぇぇ~ん……』

 

 

 

 

 

ー1章ー013話   もう一人じゃない、Waiting for Tomorrow   完

 

 

 

 

 

 




第13話 もう一人じゃない、Waiting for Tomorrow

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

今回は、これまでの中でも特に重い回となりました。

片桐を捜し、最後まで手を伸ばしたスズカ。
本話のタイトルに込めたものが、少しでも伝わっていれば嬉しく思います。

この一話ですべてが解決するわけではなく、次回も二人が向き合う時間は続きます。
引き続き、彼らの歩みを見届けていただければ幸いです。

次回、第14話
9月9日(水)19:00公開予定

【KUROXの駄馬(だば)なし  第6走】
第12話・第13話の裏話やネタを振り返ります。
9月7日(月)7:00公開予定

【X(本編直接公開・最新情報)】
https://x.com/utsupapa_2021

【note(裏話・ネタ解説)】
https://note.com/kurox_1200
※noteは、登録・ログイン不要でそのままお読みいただけます。
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