【ウマ娘if】転移した俺は、トレセン学園で運命に抗う 作:KUROX
※本話には、精神疾患および自死を想起させる表現が含まれます。閲覧の際はご留意ください。
夜の海岸を、スズカに手を引かれ歩く……ゆっくり……
スズカ『……』ぎゅ
『……』
スズカ(トレーナーさん……ずっと下を向いたまま……)
合宿所へ近づくにつれ、まばらだった人影が少しずつ増えていく……
通行人A『やっぱ夜の海岸は寒いねぇ~』ザッ……ザッ……
通行人B『めっちゃ寒い!もう真冬だね』ザッ……ザッ……
『!』
スズカ『!』
スズカ(トレーナーさん……手が震えてる)
スズカ『トレーナーさん、どうしました?大丈夫ですか?』
『……』
『……怖い……』
スズカ『え?』
『……人が……怖い……』
スズカ『!』
グルーヴ『スズカー!』
『!』ビクッ
スズカ『エアグルーヴ!』
グルーヴ『二人とも無事か?』
スズカ『……それが……トレーナーさんが……』
グルーヴ『どこかケガでもしたのか?』
スズカ『違うの!トレーナーさん……人が怖いって……』
『……』ぎゅう
グルーヴ『!』
グルーヴ『……一度合宿所に戻るぞ』
スズカ『合宿所に?』
グルーヴ『お前から連絡がくる前に、保科先生から連絡があった』
グルーヴ『先生もこちらに向かっているそうだ』
グルーヴ『たづなさんが合宿所に話を通してくれた、先生が到着するまでそこで待機するようにとのことだ』
スズカ『わかったわ』
グルーヴ『いくぞ』
『……』
スズカ『……』ザッ…ザッザッ……ザッ
グルーヴ『!』
グルーヴ『スズカ、お前……その歩き方!』
スズカ『……』
視線を逸らすスズカ
グルーヴ『あれだけ言ったのに!走ったのか!』
『!!』ビクッ!
『あ……ごめんなさい、ごめんなさい、俺が……悪いんです……だから……怒らないで……』ガシッ
スズカの腕にしがみつく
スズカ『!』
グルーヴ『……片桐……トレーナー……?』
『……ぅぅ……』ぎゅう
スズカ『……大丈夫ですよ……トレーナーさん……ぅ』ぎゅ
グルーヴ『……』
・・・・・・
合宿所内
『……』ぎゅ
スズカ『……』
グルーヴ『……』
・・・・・・
ガラッ
保科『みんな、無事かい!?』
スズカ『……』
『……』ぎゅう
グルーヴ『……先生』
グルーヴ『それが……』
グルーヴ『……』
保科『……』
・・・・・・
保科『そうかい、事態はわかったよ、すぐに片桐トレーナーとスズカさんを病院に連れていくよ』
スズカ『先生!私はいいから!トレーナーさんを……!』
保科『スズカさん、大丈夫、片桐トレーナーを後回しにするわけじゃないよ、二人一緒に診てもらうんだ』
保科『その手は離さなくていいから、スズカさんも一緒においで』
スズカ『……はい』
保科『さ、みんな車に乗って』
グルーヴ『……』タッ……タッ……
スズカ『……行きましょう、トレーナーさん』
『……』
保科(……)
保科(……本当に、間に合ってよかったよ……)
保科(これからが、大変だけど……命さえあれば……何度だって……)
・・・・・・
保科が運転する車内
ブーーーーッ……
保科『まずは近くの病院で、スズカさんの脚を診てもらうよ』
スズカ『先生!私のことよりトレーナーさんを……!』
保科『片桐トレーナーを後回しにするわけじゃないよ』
保科『精神科の救急はね、内科や外科に比べて受け入れてくれる病院がずっと少ないんだ、まして今は夜だからね』
保科『今、たづなさんが、片桐トレーナーが以前入院していた病院に連絡してくれている、受け入れ先が決まるまでに、あなたの脚を診てもらうんだよ』
スズカ『……』
保科『大丈夫、片桐トレーナーも一緒だよ、その手は離さなくていいからね』
『……』ぎゅ
スズカ『……』ぎゅう
◇◇◇
東京都立府中病院 精神科閉鎖病棟 病室
ベッドに横になる片桐
『……』ぎゅ
スズカ『……』ぎゅ
『……』
スズカ『……眠れませんか?』
『……うん』
スズカ『ずっと、傍にいますから安心してください』ぎゅう
『……うん』ぎゅ
スズカ『……』
『……』
──────
医師『片桐さんは今、自殺の危険が非常に高い状態です』
医師『死にたいというより、生きるために自分を守る力がほとんど残っていない……そう考えてください』
スズカ『……私の……ケガのせいですか?』
医師『あなたのケガやレースが、大きな引き金になった可能性はあります』
医師『ですが……あなたのせいではありません』
医師『今は無理に励ましたり、理由を聞き出したり、こちらからレースの話を持ち出したりしないでください』
医師『もし片桐さん自身が死について話した時は、否定せずに聞いて、すぐ私たちに知らせてください』
医師『病室へ持ち込む物は、必ず看護師に確認してください。安全を守り、見守るのは私たち病院の役目です』
医師『薬も使います。ただ、薬を飲めばすぐ元通りになる病気ではありません』
医師『休養と治療を重ねながら、焦らず回復を待ちましょう』
スズカ『……わかりました』
保科『スズカさん、あなたにしかできないこともある、でも、あなた一人で全部背負わなくていいんだよ』
保科『片桐トレーナーも、あなたも、私たちが一緒に支えるからね』
スズカ『……』
──────
『……すぅ……すぅ……』
スズカ『……やっと……眠った……』
保科『……睡眠薬が効いたようだね』
保科『さ、スズカさんも、帰るよ』
スズカ『……』ぎゅう
保科『気持ちはわかるけど、先生と約束したでしょ?』
保科『ここは閉鎖病棟で、付き添いで泊まることはできないんだ』
保科『今夜はここの先生たちに任せて、明日また来ましょう』
保科『片桐トレーナーも眠ったんだ』
保科『スズカさんも患部に異常がなかったとはいえ、しっかり休まないといけないよ』
スズカ『……はい』
スズカ(……トレーナーさん……一人にはしませんから)
◇◇◇
翌日 東京都立府中病院 精神科閉鎖病棟 病室
看護師『片桐さん、面会の方が来られましたよ』
『……』
ガチャ……
スズカ『おはようございます、トレーナーさん』
『……スズカ』
スズカ『昨日は眠れましたか?』
『うん……おはよう、スズカ』
スズカ『おはようございます』ニコッ
『……』
スズカ『今日は少し顔色がよさそうですね』
『……そう?』
スズカ『はい』
理事長『片桐トレーナー……』
たづな『片桐トレーナー……』
保科『おはよう、少しは眠れたかい?』
『!』
スズカ『トレーナーさん?』
バサッ!
頭まで布団をかぶる
『……』
スズカ『トレーナーさん……大丈夫ですよ?』
理事長『……』
たづな『……片桐トレーナー』
『……』
スズカ『……トレーナーさん……』
保科『……理事長、たづなさん、一度外へ出よう』
理事長『……承知した』
たづな『はい……』
・・・・・・
病室前
たづな『まさか、私たちの顔を見ただけで……』
理事長『我々が負担になってしまったのか……』
保科『誰が悪いわけでもないよ、今の片桐トレーナーは、人と会うだけでも心をすり減らしてしまうんだ』
保科『スズカさんとなら普通に話せるみたいだけど、他の人を受け入れられる状態じゃないね』
理事長『……』
保科『しばらく面会はスズカさんだけにして、他のみんなには見舞いを控えてもらうようにしましょう』
たづな『皆さんには、片桐さんが無事に保護され、治療を受けていることだけ伝えます』
たづな『入院先や詳しい病状については伏せておきますね』
保科『そうしておくれ、面会できる状態になったら、こちらから知らせよう』
理事長『承知!今の我々にできることは、回復を信じて待つことなのだな』
保科『ああ……今は、それで十分だよ』
・・・・・・
病室
『……』
『……もう……帰った?』
スズカ『はい、もう私だけですよ』
『……』
ゆっくりと布団から顔を出す
『……ごめん』
スズカ『謝らなくていいんですよ』
『……うん』
スズカ『今日はずっと、ここにいますから』ぎゅ
『……うん』ぎゅ
◇◇◇
数日後…… 病室前
看護師『スズカさん、少しいいですか?』
スズカ『……はい』
看護師『今日、何か食べました?』
スズカ『私は大丈夫です』
看護師『昨夜は眠れましたか?脚は痛みませんか?』
スズカ『……』
看護師『毎日、面会時間いっぱいまで片桐さんの傍にいますよね』
看護師『帰る時も、何度も病室を振り返ってる』
スズカ『……一人にしたくないんです』
看護師『また、いなくなってしまうんじゃないかって?』
スズカ『!』
スズカ『……はい』
看護師『……怖かったですね』
スズカ『……』
看護師『でも、それだけではなさそうね』
スズカ『先生は……私のせいではないと言ってくれました』
看護師『……ええ』
スズカ『でも、私のトレーナーにならなければ……私があのレースを走らなければ……』
スズカ『こんなことには……なっていなかった……』
看護師『先生に言われても、自分を責めてしまうんですね』
スズカ『……はい』
看護師『あなたのケガやレースが、片桐さんが調子を崩すきっかけの一つになった可能性はあります』
スズカ『……』
看護師『でも、きっかけになったことと、あなたが片桐さんを病気にしたことは同じではありません』
スズカ『……でも』
看護師『そう思えない気持ちまで、今すぐ変えなくていいですよ』
スズカ『……』
看護師『片桐さんが、あなたといる時に安心しているのは確かです』
看護師『でも、あなたにしか支えられないということではありません』
スズカ『……』
看護師『あなたが帰ったあとの片桐さんを見守るのは、私たちの役目です』
看護師『あなたがいない時間も、私たちと一緒に過ごせるようになること……それも治療の一つなんですよ』
スズカ『私が……帰ることも?』
看護師『ええ』
看護師『帰って、食べて、眠って、脚を休めて……明日また来る』
看護師『それも、片桐さんを支えることです』
スズカ『……はい』
◇◇◇
トレセン学園 面談室
たづな『休学……ですか?』
スズカ『はい』
たづな『理由は、今後の進路について考えるための準備期間が欲しい……』
スズカ『……はい』
たづな『……』
たづな『本当は、片桐トレーナーの病院へ通うためですね?』
スズカ『……』
たづな『責めているわけではありませんよ』
たづな『ただし、スズカさん自身の治療と生活を疎かにしないこと、それが保科先生から出された条件です』
スズカ『保科先生が……?』
たづな『保科先生は、こうなることも予想されていたみたいですよ』
スズカ『……わかりました、お約束します』
たづな『片桐トレーナーを支えるために、あなたまで倒れてしまってはいけませんからね』
スズカ『……はい』
たづな『休学の手続きはこちらで進めておきます』
スズカ『……ありがとうございます』ペコッ
◇◇◇
東京都立府中病院 病室
看護師『片桐さん、今日は病室の外へ出てみませんか?』
『……』
スズカ『トレーナーさん?』
『……人が……いる』
スズカ『では、今日は扉のところまでにしましょう』
『……』
スズカ『私も一緒です』
『……スズカも?』
スズカ『はい』
『……うん』
・・・・・・
スズカ『急がなくても大丈夫ですよ』
『……うん』
一歩……
『……』
もう一歩……
『……』
病室の扉の前で立ち止まる
スズカ『今日はここまでにしましょうか』
『……うん』
スズカ『戻りましょう、トレーナーさん』ぎゅ
『……』ぎゅ
◇◇◇
手つかずの食事を前に
スズカ『ごはん……食べられませんか?』
『……お腹……空いてない』
スズカ『少しだけでも……』
『何を食べても……味がしない』
スズカ『……そうですか』
『ごめん』
スズカ『謝らなくていいんですよ』
スズカ『食べられないこと、看護師さんに伝えましょう』
『……うん』
◇◇◇
病棟の廊下
スズカ『今日は、あそこの窓まで行ってみませんか?』
『……』
看護師『おはようございます、片桐さん』
『!』ぎゅう
スズカ『……大丈夫ですよ』
『……』
看護師『……』ペコッ
そのまま通り過ぎる看護師
『……』
スズカ『戻りますか?』
『……行く』
スズカ『!』
『……窓まで……』
スズカ『……はい』
スリ…………スリ……………
◇◇◇
頭から布団を被っている片桐
『……今日は……無理』
スズカ『はい』
『……今日は、身体が動かない』
『……』
『……また、駄目になった』
スズカ『……昨日歩けたことは、なくなりません』
『……』
スズカ『今日はここで、一緒に休みましょう』
『……うん』
◇◇◇
看護師『先生から、病院の中庭までなら出てもいいと許可が出ましたよ』
『……外?』
看護師『人の少ない時間を選んでいます、無理をする必要はありませんからね』
『……』
スズカ『嫌なら、今日はやめておきましょう』
『……スズカも……一緒なら』
スズカ『もちろんです』
『……なら……行く』
・・・・・・
東京都立府中病院 中庭
少し離れた場所から看護師に見守られながら、二人でゆっくりと歩く……
スズカ『焦らなくていいですよ』
『……うん』
スズカ『疲れていませんか?』
『……大丈夫』
柔らかな風が二人の間を通り抜ける……
『……』
スズカ『……気持ちいい風ですね』
『……うん』
『……久しぶりだから……』
『……気持ちいい……』
スズカ『……はい』
『……』
スズカ『あそこのベンチで休みましょうか』
『……うん』
・・・・・・
並んでベンチに座る二人
『……』
スズカ『……』
会話はない……
それでも、二人の間に流れる空気は穏やかだった……
『……スズカ』
スズカ『はい』
『……明日も……来てくれる?』
スズカ『……はい、必ず来ます』
『……そっか』
スズカ『はい』
握られた手の震えは、まだ消えていない……
けれど、その力は以前よりも少しだけ優しくなっていた……
◇◇◇
東京都立府中病院 病室
スズカ『今日もいい天気ですよ、トレーナーさん』
『ああ、本当だ』
スズカ『今日は調子よさそうですね?トレーナーさん♪』
『そ、そうかな……』
スズカ『朝ごはん、食べられました?』
『うん、全部食べたよ』
スズカ『凄い!✨エライですね~……』なでなで
『ちょ、スズカ……子供じゃないんだから』
スズカ『ふふっ……ごめんなさい』
???『入るわよ』
ガチャ
『!』
スズカ『あの……!?』
『ハイ……セイコー……!?』
ハイセイコー『お久しぶり、トレーナー!』
『……あ……ああ』
六平『邪魔するぞ』
スズカ『六平トレーナーまで……?』
セイコ『どう?調子は?』
『……』
セイコ『……トレーナー?』
『……』
スズカ『ご、ごめんなさい!トレーナーさんまだ疲れてるみたいで……それに大勢での面会は……』
セイコ『!』ギロッ
セイコ『あんたがサイレンススズカね』ツカツカツカ……
スズカに詰め寄る
スズカ『……!』
バシッ! 平手打ち
スズカ『ッ!?』
セイコ『あんたのせいで片桐がこんなになったんでしょ!!』
スズカ『!!』
セイコ『あんたなんかのトレーナーにならなかったら、こんなことにはなってなかったのよ!』
スズカ『……ぅ』
スズカ『……ゴメンナサイ……うぅ~……』
泣き出すスズカ
セイコ『そうやって泣いてっ!あんただけ悲劇のヒロインにでもなったつもり?』バッ
再度手を振りかぶる
ガシッ
振り上げた手を掴む
スズカ『!!』
『もうやめぇや……セイコ』
『これ以上うちの娘に手ぇ出したら、お前でも許さへんぞ』
スズカ『!!!』
スズカ『……トレーナー……さん!?』
『……』
セイコ『……』
『……』
セイコ『……』ニコッ✨
『?』
セイコ『おかえり、たかちゃん♪』
『……たか……ちゃ……』
セイコ『スズカちゃんごめんねぇ~!痛かった?ホントにごめんね~!』ぎゅう
スズカを抱きしめる
スズカ『……え』キョトン
セイコ『全っ然っ本心じゃないの!ひどい事言ってホントにごめんねぇ~』なでなで
スズカ『え?……え?』
セイコ『……けど』
セイコ『本当は、こうやって誰かに責めて欲しかったんでしょ?』
スズカ『!!』
セイコ『私もそうだったからわかるんだぁ……』
セイコ『誰も責めてくれないから自分で自分を責めるしかなくなっちゃう』
セイコ『そうやってどんどん自分を追い込んじゃうの……』
スズカ『……ぅ』
セイコ『けど、さっきのビンタでもう貴女は罰を受けた、罪の意識を抱くのはもうおしまいにするのよ』
セイコ『嘘でもいいからそう考えてみて、スズカちゃん、そうすれば少しは自分を許せるから』
スズカ『……うぅ……』
セイコ『そもそも誰のせいでもないんだもの、だからもう……』
セイコ『自分を責めちゃダメよ?わかった?』
スズカ『……うぅ……うあぁぁぁぁ~……』
再び泣き出すスズカ
セイコ『ほらほら、泣かないの、美人さんが台無しだぞぉ~』よしよし
『……スズカ』
セイコ『ほら!たかちゃんも!貴方の大事な娘が泣いてるでしょ!』
『え!?あ!……はい』
スズカ『……ぅぅ……トレーナーさん……』
『な……泣かないで、スズカ』なでなで
スズカ『トレーナーさぁん!』ガシッ
抱きつくスズカ
セイコ『……』
セイコ『帰りましょっか?ろっぺいさん♪』てくてくてく……
六平『むさかだ!』てくてくてく……
ガチャ
・・・・・・
セイコ『……』てくてくてく……
六平『まったく、いきなり片桐と面会したいとお前から連絡がきた時は驚いたぞ』
セイコ『六平トレーナーならなんとかできると思って』
六平『なんとかするために、また、あの三流記者に貸し作っちまったじゃねぇか』
セイコ『ありがとうございます、六平トレーナー♪』
六平『それに、あの演技』
六平『病室に入ったら一切口出しするなと言われたときは何をするのかと思ったが……』
セイコ『ふふ~ん♪』
六平『お前なぁ……もうちょっとやり方はなかったのか?』
六平『結果が出たからよかったものの、一歩間違えれば二人とも傷つけただけだぞ』
セイコ『……わかってるわよ、私だって怖かったんだから』
セイコ『……』
自分の震える手を見るハイセイコー
セイコ『あの人はね、昔っからウマ娘が大好きなの……』
セイコ『だから……たくさん傷ついてきた……』
セイコ『けど、大好きだから、ウマ娘の為なら何度でも立ち上がるの』
セイコ『……そういう人なのよ』
六平『お前が悪役になる必要があったのか?』
セイコ『……』
セイコ『今の私がいるのは、あの人のお陰だから……』
・・・・・・
『……落ち着いた?』
スズカ『……はい』
『ごめん……俺の元担当が……』
スズカ『いいえ!……ハイセイコーさんはきっと、私とトレーナーさんのために……』
『うん』
スズカ『……』
『……』
スズカ『ありがとうございます』
『?』
スズカ『……庇ってくれて、娘って呼んでくれて……』
『あ、あれは!……とっさに身体が動いたっていうか……』
『嫌……じゃなかった?娘って言われて……』
スズカ『う~ん……』
『……』
スズカ『嬉しかったですよ』ニコッ✨
『……////』
『そ、……そっか』
スズカ『私がトレーナーさんの娘ってことは……』
『?』
スズカ『トレーナーさんは私の“パパ”ですね』
『パッ!?』
『パ……パパは……やめて……』
スズカ『ふふふっ……』
『は……はは……はははっ』
スズカ『!!』
スズカ『トレーナーさん』
『ん?』
スズカ『……笑った』
『え?……な、なんかダメだった?』
スズカ『ずっと……笑っていなかった……から……ぅぅ……』
『え?ちょっ……スズカ……泣かないでっ』
スズカ『……うぅ~……』
『え?……大丈夫、大丈夫だから』よしよし
スズカ『……はい……ぅぅ……大丈夫ですよね……』
『よしよし』なでなで
スズカ『……ぅぅ……』
『明日も……一緒に、中庭を歩こうか?』なでなで
スズカ『……はい……』
スズカ『もちろんです!トレーナーさん』ニコッ✨
頬を伝う涙を拭うこともなく、スズカは泣きながら……笑った
ー1章ー014話 涙ひかって明日になれ 完
第1章 第14話「涙ひかって明日になれ」
お読みいただき、ありがとうございます。
前回、ようやく片桐を見つけたスズカ。
けれど、連れ戻せたからといって、すぐに元どおりになるわけではありません。
病室の扉まで。廊下の窓まで。そして、中庭へ。
進める日もあれば、動けない日もある。
「昨日歩けたことは、なくなりません」
支える側になったスズカの、この言葉を大切に書きました。
そんなスズカもまた、自分を責め続けていました。
片桐だけでなく、彼女にも支えが必要だったんですよね。
そして、ハイセイコーの登場。
かなり強引で、六平トレーナーの言うとおり、一歩間違えれば二人を傷つけるだけの行動でした。それでも踏み込んだ彼女の、震える手。その意味も感じていただけたらと思います。
重い場面が続きましたが、最後はようやく、二人で笑うことができました。
私も、ここまで来て少しほっとしています。
次回はいよいよ、第1章サイレンススズカ編の最終話です。
二人の物語を、最後まで見届けていただけたら嬉しいです。
【次回公開予定】
第1章 第15話
9月12日(土)19:00
今回は主人公・片桐隆の誕生日に合わせた、誕生祭特別公開です!
いつもの日曜日より一日早い、土曜日の公開になります!
1章最終話なので、作者が張り切って書きたいもの全部詰め込みました。ボリューム通常話の2倍です。
是非土・日を使ってゆっくり読んで下さい。
【裏話・ネタ解説】
『KUROXの
9月14日(月)07:00公開予定
第1章第14話・第15話の裏話やネタをお届けします。
【X(本編直接公開・最新情報)】
https://x.com/utsupapa_2021
【note(裏話・ネタ解説)】
https://note.com/kurox_1200
※noteは、登録・ログイン不要でそのままお読みいただけます。
KUROX