【ウマ娘if】転移した俺は、トレセン学園で運命に抗う 作:KUROX
ー2章ー001話 プロローグ
むかしむかし――
色とりどりのバラが咲く、
それはそれは、きれいなお庭がありました。
赤いバラは、元気な笑顔を。
白いバラは、やさしい心を。
黄色いバラは、あたたかな幸せを。
お庭を訪れた人たちは、
美しいバラを見るたびに笑顔になりました。
そんなある日――
お庭のすみっこに、
小さな、小さな芽が生まれました。
やがて芽はすくすく育ち、
ひとつのつぼみをつけました。
そして、ある朝。
つぼみは、ゆっくりと花を咲かせました。
それは、誰も見たことのない、
青い色をしたバラでした。
「まあ、なんて変わった色でしょう」
「青いバラなんて、気味が悪い」
「きっと、不幸を呼ぶ花だわ」
みんなは青いバラを怖がり、
誰も近くへ来なくなりました。
ほかのバラたちも、
青いバラから離れていきました。
「どうして、わたしだけ青いの?」
「わたしは、ここに咲いていてはいけないの?」
青いバラは悲しくなって、
毎日、ぽろぽろと涙をこぼしました。
誰かを笑顔にしたかったのに。
誰かを幸せにしたかったのに。
青いバラは、だんだん下を向き、
今にも枯れてしまいそうになりました。
そんなある日――
ひとりの青年が、お庭へやってきました。
青年は青いバラを見つけると、
驚いたように目を大きくしました。
青いバラは思いました。
――また、怖がられてしまう。
けれど、青年はやさしく笑って言いました。
「やあ! 青いバラなんて、とってもすてきだ!」
青いバラは、びっくりしました。
そんなことを言ってくれた人は、
今まで誰もいなかったからです。
「わたしを見ても、怖くないの?」
「どうして? こんなにきれいなのに」
「でも、みんなは不幸を呼ぶ花だって……」
「僕は、そうは思わないよ」
青年はお庭の主人にお願いして、
青いバラを引き取りました。
そして、新しい鉢へ植え替えると、
明るい窓辺に置いてくれました。
毎朝、お水をあげました。
毎晩、やさしく話しかけました。
「おはよう、青いバラ」
「今日は、いいお天気だね」
「きっと元気になれるよ」
「だって、君はこんなにすてきなんだから」
いつしか青いバラは、
青年のことを“お兄さま”と呼ぶようになりました。
お兄さまの言葉を聞くたびに、
青いバラは少しずつ顔を上げました。
しおれていた葉は、また緑色になり、
小さなつぼみが、いくつも生まれました。
そして、ある朝――
青いバラは、
空のように美しい花を咲かせました。
お兄さまは大喜びで、
青いバラを窓辺に飾りました。
すると、道を歩く人たちが、
次々と足を止めました。
「まあ、なんてきれいなバラでしょう」
「青いバラを見ると、幸せな気持ちになるね」
青いバラを怖がっていた人たちも、
やがて笑顔で見上げるようになりました。
青いバラは、ようやく気づきました。
「わたしも、誰かを幸せにできるんだ」
青いバラは、
大好きなお兄さまのそばで咲き続けました。
空よりも青く。
誰よりもやさしく。
たくさんの人へ、
幸せを届けながら――
いつまでも、いつまでも、
幸せに暮らしました。
────絵本 新説『しあわせの青いバラ』より
───────────
トレセン学園 トレーナー室
『う~~~~ん……』パラッパラッ……
スズカ『……』モクモク……
(なんやかんやありまして、トレーナー復帰を果たしたワシですけども……)
(え?)
(戻るのにどんだけ時間かかってんだ?)
(……遅いって?)
(ワシは!少年ジ〇ンプの主人公ちゃうねんぞ!)
(40過ぎのおっさんや!新しいこと始めるのも!決心すんのも時間かかんねん!)
(痛みを知ってる大人は歳の分だけ再スタートが遅れるもんなの!)
(……)
(……たぶん?)
(まぁ、それはさておき、ルドルフたちのお陰ですんなりトレーナーに戻れて)
(迷惑かけた人たちへの、謝罪行脚も……)
(退職整理の時に大体の人に会うてたから、こっちもすんなり終わったんや)
(みんな、当たり前のようにワシが戻ってくることを、疑ってもなかったらしい……)
『う~~ん……』ペラッ……ペラッ……
スズカ『……』カキカキ……モクモク……
(ん?スズカさんですか?)
(スズカは今年の4月からトレセン学園サポート科に正式に転科)
(レースを走るウマ娘たちと違うて、放課後のトレーニング等はないので)
(ワシのサポートがしたい、ということで、見習いトレーナーになってもらった)
(で、ワシのデスクの隣にスズカ用のデスクも準備して、今は勉強中ってわけや)
『う~ん……』パラッ……パラッ……
スズカ『……決まりませんか?……』カキカキ……
『……うん』
スズカ『……いっそのこと、あみだくじとかで決めてみたらどうです?……』カキカキ……
『スズカさん……さすがに、それは……』
スズカ『……』モクモク……
(って、聞いてへんし……)
(しっかし、この量……)
経歴書の山 どーーん
(こりゃ、理事長たちがムキになるのも納得やわ……)
───────────
トレセン学園 理事長室
『本当にご迷惑をおかけしました』ペコッ
理事長『不問ッ!そんなことは気にしなくていい!よくぞ戻ってくれた!片桐トレーナー!』
たづな『本当に……おかえりなさい♪』
『ありがとうございます、それでぇ……』
たづな『新しい担当さんのお話ですね!』食い気味
理事長『期待ッ!学園側でも候補者を選出してある!何人でも、遠慮なく選んでくれたまえ!』食い気味
『う゛……』
(どんだけ……トレーナー不足やねん……)
たづな『こちらがまだ、トレーナーが決まっていない娘たちの経歴書です!』どんっ!
『え?』
経歴書の山 どーーん
理事長『逸材ッ!どの娘も将来有望なウマ娘だ!もちろん!全員選んでくれても一向に構わないぞ!』
『いやっ!構うやろっ!』ビシッ
『あ! し、失礼しました……』
理事長『?』
『さすがに全員というのは……』チラッ
経歴書の山 どーーん
『う゛……病み上がりですので……何人かで……』
たづな『もちろん!何人でもいいですよ♪“何人でも”!!』
(圧が、凄いねんけど…… )
理事長『推奨ッ!遠慮はいらないぞ!むしろ、多ければ多いほど大歓迎だ!』
『あ、ははは……善処しま~す……』
(病み上がりや言うてるやろっ!!)
たづな『では、こちらをお持ちになって……』ひょい
たづな『ゆっくり、考えてくださいね』さっ
『は……はいぃっ!?』ズシィッ!
(え?この重さを?え?) たづなを見る
たづな『ニコッ♪』
『……』
『そ……それでは……失礼、します』 ずしーん……
ガチャッ バタン
───────────
(なぁ~んてことがあって、さらにこの追い打ち……)サッ
経歴書に挟まっていたメモ書き
【片桐トレーナーへ
まずは、ご自身のお身体を第一に。
ご復帰と、スズカさんの新たな門出を心よりお祝い申し上げます。
新しい担当さんは、無理のない範囲で、何人でも!
“何人でも”大歓迎ですよ♪
駿川たづな】
『……』
(後半の圧が強いのよ……たづなさん……)
『さて、どうしたものかねぇ……』
スズカ『……トレーナーさんは気になる娘はいないんですか……?』カキカキ……
『……気になる娘ねぇ……』チラッ
経歴書の山とは別に置かれている一枚を見る……
【ライスシャワー】
───────────
ライス『だから!トレーナーさん!ライスのトレーナーさんになってくださいっ!!』
───────────
『……』
『はあぁぁーーっ……』
スズカ『?』
(一度、断っちゃってるのよ、ワシ……)涙目
(トレーナー辞めるつもりだったからね)
(それに……ライスを担当に迎えるにあたって……大きな問題が一つ……)
『……』
『……』チラッ
スズカ『……?』カキカキ……
『……』プイッ
スズカ『……??』カキカキ……
『……』
(ライスシャワーは……)
(……)
(ワシの“最推し”ウマ娘やねぇぇぇぇぇぇ~~んっ!!!!)
(ん?)
(わかってるわ!一度、いや!二度も会ってるだろ?って思うやろ!?)
(ちゃうねん!あんときの“ワシ”〇んでたみたいなもんやから、全っ然っ、平気やってん!)
(それが証拠にワシの“オタクアイ”が発動せんかったやろ?)
───────────
【ピンポーン!】
【KUROXの!片桐隆豆知識♪】
どうもみなさん、1章、最終話ぶりの登場……作者のKUROXです (o*。_。)oペコッ
さて、たかちゃんがまたアホみたいなこと言ってますが……
説明しよう!
“オタクアイ”とは、ウマ娘オタク片桐隆がオタクパワー全開でウマ娘を見ると
自然と中の人……つまりcv(キャラクターボイス)まで見えてしまう現象である!!
ちなみに、たかちゃんが窮地に追い込まれて余裕がないときや、中のワシ君が眠ってる時は発動しないよ♪
あ、あとcvが見えるのは、その娘に“オタクアイ”が初めて発動した時だけね♪
これは作者都合 さすがにテンポ壊れちゃう(´;ω;`)ウゥゥ<ホントは毎回書きたい……(声優愛♡)
過去話でも何度か発動してないシーンがあるので探してみてね~(^_^)/~
それでは、本編続きをどうぞ……
───────────
(ウマ娘“箱推し”のワシ!みんな好き!みんな大好き!)
(だが……しかーっし!物事には順番ってもんがある!)
(その順番の第1位がライスシャワーやねん!!)
(ウマ娘始めたきっかけがライスシャワーやねん!!)
(ライスシャワーをデザインした人に課金したいねん!!)
(ウマ娘に出会う前から!実馬ライスシャワー号も大好きやってん!!)
(はあ、はあ……)
『……ライスはキケンや……』
スズカ『!?』
スズカ『ライスちゃん、とってもいい娘ですよ?』
『!』
(聞かれた!さすがウマ娘、聴力もハンパなっ……あれ?)
『ライス“ちゃん”?……いつの間に仲良くなったんだ?』
(スズカは基本年下でも“さん付け”で呼ぶのに……)
スズカ『ふふ……』
スズカ『スペちゃんと同じで、私に憧れてるんですって』
スズカ『最近すごい懐いてくれて……とってもかわいいですよ♪』
『へぇ~……憧れねぇ~……』
スズカ『う~ん……』
スズカ『私っていうより……たぶん、トレーナーさんに憧れてるんだと思いますけど……ね』
『俺に!?』
スズカ『ふふっ……』
(ああ、そういえば……)
───────────
ライス『は、はい……ライス、ハイセイコーさんの大ファンなんです!』
『!』
ライス『ハイセイコーさんの走りはみんなを笑顔にして、日本中を幸せにして……』
ライス『ライスもあんな風に走りたい……そう思って!』
ライス『それで……ハイセイコーさんのこといっぱい勉強したら、片桐トレーナーさんのことも書いてあって』
ライス『二人三脚でスーパーアイドルウマ娘になったって!』
ライス『だから、ライスもハイセイコーさんみたくみんなを幸せにしたいんです!』
───────────
(そんなこと、言うてたっけなぁ~……)
スズカ『一度、ライスちゃんの走りを見てみたらどうですか?』
『……うん』
・・・・・・
トレセン学園 トレーニングコース
『ライスは……』キョロキョロ……
スズカ『あ!トレーナーさん!あそこ!』
『お!』双眼鏡を覗く
ライス『はっ……はっ……はっ……』
『……』
(やっぱ、他の娘に比べて身体はちっちゃいが……)
(うん、めっちゃバランスのとれた、ええ走りや……)
(同世代の娘に比べたら頭1個2個は抜けてるな……)
(それにあの黒髪……まさに漆黒のステイヤー……ま、まだデビュー前やけどな)
ライス『はっ……はっ……はっ……!』
ライス『はぁぁーーっ!』
『!』
(末脚も悪くない……せやけど……ワシのイメージよりは……)
(まだデビュー前やからか?)
ライス『ふぅ~……』
ライス『!』
ライス『あれ?……スズカさん!』タッタッタッ……
『まずいっ!』サッ……とっさにスズカに隠れる
スズカ『?』
スズカ『トレーナーさん?』
『しーっ!……』
『!』
ライス『こんにちは!スズカさん♪』
スズカ『こんにちは、ライスちゃん』
ライス『今日は、どうしたn……?』
『……』
ライス『片桐……トレーナーさん?』
『……』
ライス『ど、どうしたんですか?……トレーナーさん……?』
スズカ『気にしないで、いつも通りだから……』
『……』
ライス『……はぃ……?』
スズカ『今日はね、トレーナーさんがライスちゃんの走りを見たいって言うから……』グイグイ……
『ちょ!……やめ!……スズカ!』ギュッ……
ライス『え!ライスの走りをですか!?』
スズカ『ええ、とっても気になってたみたいなの』グイグイ……
『あ!……やめ!……ととっ!!』タッ……
ライス『片桐トレーナーさん……』
『あ!……あぁ、こ、こんにちは……』
ライス『お、おかえりなさい!』cv.石見舞菜香
『!』
ライス『あ、あの時……ライス自分のことばっかりで……けど、トレーナーさん……辞めるって……』
『……』
ライス『けど……けど!やっぱり戻ってきてくれたから!』
ライス『ライス、とっても嬉しいです!』ニコッ✨
『!!』
ずっきゅーーーーん♡
(あっかぁ~~~~~ん!!)
(さ……最推しが……目の前に!!)
(か……かわい……過ぎる……)
(声も……良過ぎる……耳が幸せ過ぎて……昇天しそう……)
(可愛さが……限界突破してる……!)チラッ
ライス『?』コテン?
(……ち、ちくしょう……!)
(ま、守りてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ~……!!)
スズカ『いつも通りだから……ふふ』
『コホン……ラ、ライスは……まだ、ト、トレーナーは決まってないんだよね?』
ライス『え?……は、はい!』パァー✨
(眩しい!笑顔が眩しいよっ!溶けちゃいそうだよ!!)
『……こ、こんど……一度……デーt』
(ちゃうやろぉっ!!)バシッ! セルフビンタ
『ぐはっ』
ライス『きゃっ!』
スズカ『……むっ……!』
(あ、あかん……最推しを前にして……邪な心が溢れ出てしまうとこやった……)
スズカ『トレーナーさん!』
『はい!』
スズカ『自分を傷つけちゃ……むぅ~』
『あ!ご、ごめんなさい!』
スズカ『めっ!……ですよ!』プンプン!!
『ハイ、ゴメンナサイ……』しゅん……
スズカ『……ムスー』
(あかん、まったくもってあかん!最推しを前にして、冷静になれん……)
(ここは、一度……)
『ラ、ライス!』
ライス『はい!』
『日を改めて、面談してくれないか?』
ライス『面談……ですか?』
『う、うん……今はちょっと、アレが……アレだから!』
ライス『?』コテン?
『う゛』
(いちいち可愛いな……ちくしょう……)
『あ、明日の放課後は、空いてる?』
ライス『はい!大丈夫です!』
『じゃあ、明日の放課後に俺のトレーナー室に来てくれるかな?』
ライス『はい!わかりました!』
『じゃ、じゃあ……そういうことで!』ビューン……タッタッタッ……
ライス『……』
スズカ『ふふっ……トレーナーさん、ライスちゃんのこと、とっても気になってるみたい』
ライス『え?……え? そ、そうなんですか??』
スズカ『ええ』
ライス『……////』
スズカ『それじゃ、ライスちゃん、また明日ね♪』
ライス『は、はい!』
・・・・・・
トレーナー室前
『ふぅーふぅー……』
(な、なんたる最推しの破壊力……まったく“トレーナー”になれんかった……)
スズカ『トレーナーさん』
『ん?』
スズカ『ライスちゃん、スカウトしなくてよかったんですか?』
『ま、まぁ……色々、聞きたいこともあるし……』
(冷静に話できんからね!)
カチャ
『あれ?』
スズカ『どうしました?』
『俺、トレーナー室出る時……カギ、閉めたよな?』
スズカ『……はい、閉めてるの見ましたよ』
『……カギ、開いてる……』
スズカ『!』
『ス、スズカはここで待ってて!中、確認するから』
スズカ『……でも』
『トレーナーさん命令です!』
スズカ『……はい』
『……ゴクッ』
(い、いくで~……)
ガラッガラッ!
『誰やっ!!』
し~~~~ん……
『……へ?』キョロキョロ……
スズカ『……誰かいました?』
『……』てくてく……キョロキョロ……
スズカ『トレーナーさん?』
『誰もいない……』
スズカ『な、何か盗られたり……?』
『いや、荒らされた……形跡もないな……』
スズカ『……』
『……』
『……カギ閉め忘れた……のかな?』
スズカ『そ、そうですね……私も勘違いだったかも……』
(無駄に緊張してしまったやないか……!)
『う~、どっこらせ……っと』
スズカ『トレーナーさん、座るときに、どっこらせはおじさんみたいですよ?……ふふ』
『おじさんだからいいんですよー……』
スズカ『もぉ~……』
(ん?)
(なんじゃこりゃ?)
(経歴書の山の間に一枚の紙(?)がとび出てる……?)サッ
(写真……?)
『ッ!!』
スズカ『どうかしました?』
『いや!……なぁ~んでも……ないかなぁ~……?』 サッ 写真を隠す
スズカ『?』
(な、なんで?……なんで!?こんな写真が……?)
◇◇◇
翌日 放課後 トレーナー室
『……コホン』
スズカ『??』
ライス『……』
トランセンド『~♪』
スズカ『えっと……なんでトランセンドさんが……?』
『俺がたづなさんに頼んで、呼んでもらいました』
トランセンド『よろよろ~……♪』cv.塚田悠衣
スズカ『そう……なんですね……よろしくお願いしますね』
『じゃあ、まずはライスから面談はじめよっか?』
ライス『ひゃ、ひゃい!』
『ライス、緊張しなくていいからね』
ライス『……はい』
スズカ『ふふっ……』
『ライスの夢はこの前聞かせてもらったから……』
ライス『……』
『少し、走りについて聞いてもいいかな?』
ライス『はい!』
『昨日、少しだけライスの走りを見せてもらったんだけど……』
ライス『……』
『身体のバランスがとてもよくて、スムーズで柔らかい走りができてると思う……』
ライス『!』
『たぶん、同世代の中でもかなり完成された、いい走りだったよ』
ライス『あ、ありがとうございます……////』
『ただ、最後の直線での末脚……』
ライス『……』
『……ライスはどこに向かって、ラストスパートしてる?』
ライス『!』
ライス『え?え?えっと……』
『……』
ライス『ゴ、ゴールに向かって……一生懸命……?』
(うん、やっぱりそうや……ライスはまだ実力を発揮する方法を知らない……)
『うん、そっか……』
ライス(あ、あれ?なにか違ったのかな……?)
『じゃあ、最後にもうひとつ……』
ライス『……はい』
『この前ライスは俺を逆スカウトしたけど……それはなぜ?』
ライス『それは!片桐トレーナーさんが……』
『ハイセイコーの元トレーナーだから?』
ライス『!!』
『元祖アイドルウマ娘、人々を熱狂させ、日本中に笑顔をもたらした……』
『そのトレーナーだったから?』
ライス『ち、ちが……』
『俺はもうハイセイコーのトレーナーじゃないし、たぶん、あのころの俺とは違う……』
『ハイセイコーがアイドルウマ娘と呼ばれたのは、彼女自身の才能があったから……』
ライス『……』
『俺の力じゃない……』
『レースで勝って、人々を幸せにしたいのであれば、俺なんかより……』
『六平トレーナーや、奈瀬トレーナーの方がはるかに優秀だよ……』
ライス『……ちがう……』
『“アイドルトレーナー”はもういないんだよ……』
スズカ『……』
トラン『……』
ライス『……ちがう』
ライス『……ちがうもんっ!!』
『!』
ライス『ライス!トレーナーさんと初めてお話しした時!』
ライス『とっても嬉しかったの!』
ライス『トレーナーさんはライスの名前の意味知っててくれた!』
ライス『ライスならなれるよって言ってくれた!』
ライス『ライス、周りの人、不幸にしてばっかりの……ダメな子だけど……』
ライス『トレーナーさんが“ライスシャワー”になれるって言ってくれたから!』
ライス『だから、ライスは!ライスのトレーナーさんは!』
ライス『片桐トレーナーさんじゃなきゃ!嫌なのっ!!』
『……』
スズカ『……ライスちゃん……少し落ち着いて……』
ライス『……ぅ……ぅぅ……』
トラン『……』
『……』
(出ちゃってた~……!!)
(あぁ~……ワシ寝てたのにぃ~……)
(確かにライスの名前の由来、言っちゃったような気がするわ…… )
(最推し、恐るべし…… )
(けど、これで決まりやな)
ライス『……ぅぅ』
『ごめん!ライス』ペコッ
ライス『!』
『この前、君の逆スカウトを断ったこと……』
『そして、君を試すようなことをしてしまったこと……』
ライス『……それって……』
『……うん』
『トレーナーは、その娘の人生を預かる』
『レースに勝った時、一緒に喜ぶだけじゃない』
『怪我した時、負けた時、夢に届かなかった時……』
『そんな時も、その隣にいる人間だ』
ライス『……』
『もし君の望むトレーナーが“アイドルトレーナー”だったら……』
『やっぱり、俺の出る幕じゃない』
『そう思ったから、君を試すようなことをした……本当に申し訳ない』
『けど、トレーナーは生半可な覚悟じゃ務まらない』
(とくに……“ライスシャワー”はな……)
『だから、君にも……本当に俺と走る覚悟があるのか、確かめたかった』
ライス『……』
『ライス……』
ライス『はい』
『君が“ライスシャワー”になる、その夢……俺にも手伝わせてくれ!』
ライス『!』
ライス『はい!お願いします!』✨
スズカ『ふふっ……よかったわね』
トラン『うんうん、おめでとー』ぱちぱちぱち……
『……』
ライス『……』
スズカ『……』
三人分の視線が、ひとり拍手を続けるトランへ集まる
トラン『……いやー、めでたい♪めでたい♪』ぱちぱちぱち……
『でぇぇ~っ!?』くわっ!
『トランさんはなんで呼ばれたか分かってるのかなぁ~?』
トラン『ありゃ?』
トラン『ウチもトレーナー契約でしょん♪』
『あ!ライスちゃんは座って待っててね~、何だったら今日はもう帰ってもいいからねぇ~』
ライス『ライス待ってます』
『そっか~じゃあ、ちょっと待っててね~……』
『でぇぇ~っ!?』くわっ!
『トランさんはなんで呼ばれたか分かってるのかなぁ~?』
トラン『……トレちゃん、そのくだりはもうやったよ……?』
『トレちゃん!?』
ライス『!』
スズカ『ふふっ……面白い娘』
『ま、まあ、いい……って言うか、まだトレーナー契約してないんですけど~?』
トラン『ありゃ?違ったん?』
『その前に言うことがあるんじゃなくって?トランさん!!』プンプン
トラン『……う~ん……』
トラン『……はてな?』コテン?
『……むっ』
『この写真はなんなんですか!!』バンッ!
【トランセンドの水着姿でワ~オ♡な写真】
ライス『////!?////』
スズカ『あら……すごい……!』
『君が置いたんだろ!』
トラン『ピュー♪ピュー♪ピュー♪……』口笛
『それに!』ササササッ……
トラン『?』
『なんで……胸が“縮小加工”してあるんだ!?』ボソボソ……耳打ち
ライス&スズカ『?』
トラン『ふふふ……ウチの情報によると……片桐トレーナーはそういう趣味だと……ほれ』指さす
ライス『?』すん……
スズカ『?』すん……
トラン『ウチの“まんま”よりいいかなって?』どん!胸を張る
『ばばばばば、ばか言うんじゃありません!』
『だだだだだ、誰が!そそそそそんな、情報を!?』
トラン『ふふふ、ウチを誰だと思ってんの、ニヒルで危険な情報屋さんだよ?』✨
(ま、まさかそんな!……ワシの性癖まで……!?)
『そ、それに!どうやってこの部屋に入った!?施錠してあったはずだぞ!』
トラン『んん?ウチは、今ならトレーナー室の扉が開いているって、情報を聞いただけだよん』
『……たまたま、誰かが開けたことを聞いた……と?』
トラン『ん~……それ以上は企業秘密で♪』
『ぐ……』
トラン『それにトレちゃんさぁ……』
『まだ、トレーナーちゃうわ!』
トラン『担当さん……一人だけでいいのかなぁ~……?』ニヤ……
『……う゛』
トラン『学園からも色々あるんじゃなぁ~い?』
(くっ、くそ!どこまで知って!?)
『……そ、それは……』
トラン『そんなトレちゃんに!』
トラン『お勧めのウマ娘ちゃんがいますよ~!こ・こ・に♪』✨
『……むぅ……』
(確かに、トランの情報網はこの先かなり役に立つかもしれん……)
(それに……トランセンドと言えば……)
(JRA施行のダートGI級競走を4勝、JRA主催のダート競走獲得賞金も歴代1位)
(だったはず……ダートはイマイチ見てなかったからうろ覚えやけど)
(そんなワシでも知ってる名馬中の名馬!)
(……アリよりのアリか……?)
『……』
『なんで?』
トラン『ん?』
『こんなことまでして……なんで俺なんだ?』
トラン『う~ん……なんとなく?』
『へ?』
トラン『一度、トレちゃんを見かけたことがあってさ……』
トラン『ビビビッ!っとキタ……みたいな?』
『な、なんじゃそれ……』
トラン『それに、トレちゃんといると……刺激が多そうじゃん♪』
『!』
トラン『平凡な日常に、ゾクゾクとワクワクを!トレちゃんとならピッタリだと思うんだよねぇ』
『……むぅ~……』
トラン『それにウチ、けっこうお買い得だと思うよ?』
『お買い得?』
トラン『情報収集は得意、相手の分析もできる、各コースの知識もバッチリ』
トラン『トレちゃんの手が回らないところは、ウチが勝手に拾っとくし……』
トラン『走れて、喋れて、役にも立つ!こんな優良物件、今を逃したら次はないかもよぉ?』ニヤッ
『ぐぬぅ~……』
(確かに、情報収集はもちろん、どう見てもこの面子はコミュ力が不足してるような気が……)ちらっ
スズカ『……』←天然、しゃべるの苦手
ライス『……』←弱気、他人を不幸に巻き込むと思ってる
『……』 ←そもそもコミュ障
トラン『お買い得でっせぇ……旦那ぁ~』←圧倒的コミュ強
『……』
『買った!!』
トラン『!』
ライス『!』
スズカ『!』
トラン『毎度アリィ♪』
ライス『わぁ、おめでとうございます』
スズカ『おめでとう、トランさん』
トラン『むっ……スズカさん、スズカさん』
スズカ『?』
トラン『ライスさんはライス“ちゃん”で、ウチはトラン“さん”なんですぅ?』
スズカ『え!?……えっと、まだ、そんなにお話したこと……ないから』
トラン『おんなじトレーナーに師事するのに……ぐすん』
スズカ『え! えっと……トラン……ちゃん、がよければ!』
トラン『モチモチ~!仲良くやろうよ~♪』
スズカ『よ、よろしくね、トラン……ちゃん』
『やれやれ……』
『では、改めて!ライスシャワー!トランセンド!これからよろしく!!』
ライス『はい!よろしくお願いします!』
トラン『よろしくね~、トレちゃん!』
スズカ『ふふ……“チーム片桐”結成ですね♪』
『そうか……チームか……』
『はは……ま、スズカを入れてもまだ3人だけどな』
スズカ『それでも、立派なチームですよ♪』
トラン『チーム名はどすんの?トレちゃん』
『チーム名か……確か……星の名前を使うのが一般的なんだっけ?』
ライス『うん、お星さまが“キラキラ輝く”って意味の、“トゥインクル”シリーズにちなんで』
ライス『みんなお星さまの名前をつけるの』
『星の名前か……全然知らないな……』
トラン『ちょっち、待ってねぇ……今調べるよん』ポチポチ スマホ(?)
『それ……スマホ?』
トラン『ふふふ……そんじょそこらのスマホとは、ちょっと違うんだよねぇ~』ポチポチ
(さすがトランや……あとで見してもらお♪)←新しいもの好き
トラン『トレちゃんは、9月生まれのおとめ座だから……』ポチポチ……
スズカ『……よく、知ってるのね』
『はは……ホントにね』
(トランセンドだからねぇ~……)
トラン『う~ん……スピカ!!』
『却下で!!』即答
トラン『え?』
スズカ『!?』
ライス『!?』
トラン『どして?』
『その名前は使っちゃいけね~……使っちゃぁ~いけねぇ~んだよ……』
トラン『そう……なんだ? じゃあ……』ポチポチ……
(スピカはあかん……それだけはあかん……)
トラン『お!』
トラン『これはど?』
トラン『ポリマ(Porrima)』
『……ポリマ……』
トラン『うん、おとめ座の星でね、未来を告げる女神の名前なんだって』
トラン『1つの星に見えるけど、実はよく似た2つの星が、寄り添って輝いてる連星』
トラン『新しい未来へ、みんなで一緒に走ってく……ウチらにピッタリじゃない?』
(……未来を告げる女神!?……)
ライス『わあ!素敵!ライス、ポリマがいいと思う!』
スズカ『私も、新しい未来へ……って、ピッタリだと思うわ』
『……』
トラン『トレちゃんはど?』
『……“チームポリマ”か……』
(未来を告げる女神とワシじゃ、喧嘩になりそうやけど……)
『よしっ!チームポリマ!結成だ!!』
ライス『やったぁ!……えへへ』
スズカ『ふふ』ぱちぱちぱち……
トラン『やんや♪やんや♪』ぱちぱちぱち……
『じゃあ、チームポリマ、これから頑張っていくために!掛け声を……』
『ライス!よろしく!』
ライス『ふぇっ!?え?ラ、ライスが?……掛け声!?』
『うん、よろしく!』ニコニコ✨
ライス『え? ……う、うん!ライスやってみるね!』
一同『……』
ライス『がんばれポリマ、がんばれー……』
ライス『おー!!』
一同『おー!!!』
ライス『えへへ……』
『ははは……』
スズカ『ふふふっ』
トラン『にゃっはっはっ……』
(ワシの最推し、めっちゃ可愛い♡)
第2章 【ライスシャワー編】 出走!!
ー2章ー001話 プロローグ 完
第2章第1話 プロローグ
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
第1章の終盤は重たい展開が続きましたが、ようやくいつもの日常が戻ってきて、僕自身もちょっとホッとしています(笑)
そして、ライスシャワーとトランセンドが加わり、チームポリマが結成!
新しい仲間たちと始まる第2章も、楽しんでいただけたら嬉しいです!
次回、第2章第2話は、9月16日(水)19:00公開予定です。
今回の裏話・ネタ解説は、
『KUROXの
第1章第14話・第15話・第2章第1話をまとめて扱います!
9月14日(月)07:00公開予定です。
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それでは、次回もよろしくお願いします!
KUROX