【ウマ娘if】転移した俺は、トレセン学園で運命に抗う 作:KUROX
6月 トレセン学園 トレーニングコース
ライスシャワー メイクデビュー戦まで1カ月……
『集合~!!』
ライス『!』
トラン『!』
・・・・・・
『二人ともアップは済んだな?』
ライス『うん!』
トラン『バッチリ♪』
『今日は以前に話をしていた“特別模擬レース”を行います!』
ライス『模擬レース……』
トラン『……ワクワク』
『そろそろだと思うんだけど……』時計を見る
スズカ『トレーナーさん!お連れしました』
ぞろぞろ……
ライス&トラン『!』
『チームカノープスの皆さんです!』
南坂『片桐トレーナー、今日はお願いします!』
『南坂トレーナー、ありがとうございます、今日はチームカノープスのみなさんの胸を借ります』
南坂『そ、そんな 改まらないでください!大先輩にうちの娘たちを見て貰うんですから!』
『夏合宿の時の約束でしたから、今日は遠慮なくお願いします』ペコッ
南坂『いやいや!ですから……』
ターボ『トレェェェーーーーナァァァーーーッ!!』ビュンっ!
ネイチャ『こら!ターーボーッ!』
ターボ『えい!』突進頭突き
ガシッ!
ターボ『!?』
『ふふふ、ターボ、同じ手はこの片桐トレーナーには通用しないぞ』ぎゅ
ターボ『むぅ……はなせぇー!』じたばた……
ライス『……ターボさん、トレーナーさんに抱っこされてる……』
南坂『す、すいません!片桐トレーナー!ターボ!』
『はーはっはっ……』ぱっ
ターボ『なかなかやるな……』
南坂『まったく……』
南坂『みんなポリマのみなさんにご挨拶して』
ネイチャ『はいはい、それじゃあ私から……ナイスネイチャでーす、まあ模擬レースなんで、お互い気楽にいきましょ~』
トラン『さっき一番必死にターボさんを追っかけてた人だ』
ネイチャ『そこは見なかったことにしてくれる?』
イクノ『イクノディクタスです、模擬とはいえレースですから、体調に異変を感じた場合はすぐに申し出てください』
ネイチャ『自己紹介で体調管理から入るんだ……』
イクノ『重要なことですから』
マチタン『マチカネタンホイザです!長いからマチタンで大丈夫だよ!』
マチタン『ライスさんとは同期だよね?一緒に頑張ろう!えい、えい、むん!』
ライス『う、うん!えい、えい、むん……!』
マチタン『おお~!むん仲間だ!』
ライス『む、むん仲間……?』
アース『ボンジョルノ!サウンズオブアース!』
アース『君たちとの出会い……新たなアンサンブルの予感に、地球も歓喜の音を奏でているよ!』
トラン『お、おおう……急に情報量が……』
ライス『あ、あんさんぶる……?』
ロイス『ロイスアンドロイスよ!強さも、ドラマも、個性も、全て揃ってこその“最強”!』
ロイス『今日は私という存在を、その目にしっかり焼きつけてね♪』
トラン『自己紹介の完成度たかっ!』
ロイス『当然よ、第一印象から勝負は始まっているもの』
ターボ『最後はターボだ!ツインターボ!』
ターボ『一番速いのはターボだって、すぐに教えてやるからな!』
ネイチャ『はいはい、さっき頭突きした子ね』
ターボ『頭突きじゃない!あれはターボの挨拶!』
ネイチャ『そんな挨拶があってたまるか!』
南坂『……以上、チームカノープスです』
トラン『個性が……』
ライス『すごい……』
ネイチャ『あはは……そこは否定できないねぇ』
ロイス『片桐トレーナー!』ササササッ……
『ん?』
ロイス『どうして!どうして?チームを結成するのであれば、このロイスちゃんを誘って頂けなかったのですか!?』
『え? だってロイス、カノープスに所属してるし……』
ロイス『あれだけ……あれだけ!アピールしたのに……』
『さすがに他チームからの引き抜きは……ねぇ』
ロイス『今からでも遅くはありません!是非!チームポリマに……』
ネイチャ『はーい、ロイスー帰るよー』ガシッ
ロイス『いやっ!離してください!ネイチャさん……!』ばたばた……
トラン『……過去になんかあったん?あの二人?』
スズカ『……知りません!』プイッ
ライス『……』
・・・・・・
南坂『準備できましたー!』
『ありがとう、南坂トレーナー』
ライス『ゲートも使うんだね……』
『うん、ライスのデビュー戦も近いからね、実戦形式の模擬レースにしたくて』
ライス『……実戦……』
『トラン、枠順は決まった?』
トラン『ほい、ランダムで決まったよん♪』スマホを見せる
【1番ツインターボ
2番サウンズオブアース
3番ナイスネイチャ
4番ライスシャワー
5番マチカネタンホイザ
6番イクノディクタス
7番トランセンド
8番ロイスアンドロイス】
『……うん』
『いいか、二人とも……チームカノープスはG1ウマ娘こそいないが……』
南坂『う゛……』
『すでにデビューしていて、重賞を勝ってるウマ娘が何人もいる……』
ライス&トラン『……』
『でも、今日は実戦形式のレースだ!勝つ気で本気で走るように!』
ライス&トラン『はい!』
南坂『チームポリマは二人ともデビュー前だけど、あの片桐トレーナーが指導しているウマ娘だからね』
南坂『二人とも資質は間違いないはず、気を抜いていると負けるよ』
南坂『本気で勝ちに行こう!』
カノープス『はい!』
・・・・・・
ゲート前
マチタン『ライスさん!』
ライス『タンホイザさん』
マチタン『デビュー戦決まったんでしょ?』
ライス『うん、7月の札幌に』
マチタン『そっかぁ、私はまだ決まってないけど……クラシック路線に進むなら……』
マチタン『ライスさんとはライバルだね!』
ライス『!』
ライス『……ライバル……』
マチタン『だから私、今日はライスさんに負けないよ!』
ライス『うん、ライスだって……負けない』
・・・・・・
【トレセン学園トレーニングコース 特別模擬レース 芝1600m】
ガコンッ
(……態勢完了や……)
ライス『……』ドクン…ドクン…
ガシャンッ!!
ターボ『ターボが1番だぁぁぁーーーっ!!』
トラン『うおっ!?いきなり全開!?』
『ライス!』
ライス『……!』
ライス(出られた……!)
ライス(大丈夫……ちゃんと走れてる……!)
スズカ『いいスタートです!』
南坂『ターボは、いつも通り迷いがありませんね……』
ターボ『もっともっと、差を広げるんだ!』
トラン『いやいや、ちょっと速すぎない!?』
トラン(でも……ここで離されたら、追いつけないっしょ!)
トラン『行くしかない……!』
『トランも追った……』
スズカ『2人だけ、後ろとの差が開いていきます』
南坂『イクノはついていきません……自分のペースを守っています』
イクノ『……』
イクノ(今はまだ、追う時ではありません)
ライス『ハッ……ハッ……』
ライス(前に、イクノさん……)
ライス(その外に、ロイスさん……)
ライス(2人についていけば……大丈夫……)
『ライスは?』
スズカ『イクノさんの後ろです、前の2人にも釣られていません』
『よし……』
南坂『その後ろにはタンホイザ、ネイチャ……最後方がアースですね』
マチタン『ハッ……ハッ……!』
マチタン(ライスさん、いい走り……)
マチタン(でも……離されないよ!)
ライスの耳が、ぴくりと動く
ライス(足音……)
ライス(すぐ後ろに、誰かいる……)
マチタン『むんっ……!』
ライス『……!』
ライス(タンホイザさん……)
ライス(ライスを見てる……?)
ライス(さっきの言葉……本気なんだ……)
───────────
マチタン『ライスさんとはライバルだね!』
───────────
ライス『ハッ……ハッ……!』
ライス(ライバル……)
ライス(タンホイザさんは、ライスに勝ちたいって……)
ライス(ライスを……競う相手だって思ってくれてる……)
ロイス『ふふっ……皆さん、前のお2人ばかり見ていますが……』
ロイス『このレースの主役を、忘れてもらっては困ります!』
ライス『……!』
ライス(ロイスさんが前に……)
ライス(追わなきゃ……!)
『ライスが少し反応した』
スズカ『でも、まだ仕掛けてはいません』
南坂『ロイスが動く気配を見て、いつでも追えるように構えましたね』
『周りをよく見てる……』
スズカ『はい、落ち着いています』
『……』
(あのライスが……)
(誰かと一緒に走れてる……)
ライス『ハッ……ハッ……』
ライス(大丈夫……)
ライス(ライスのせいで、誰かが転んだりしてない……)
ライス(誰も、不幸になってない……)
ライス(ライスも……走っていいんだ……!)
マチタン『ライスさん……!』
ライス『!』
ライス(また……近づいてきた……)
スズカ『タンホイザさんが、少しずつライスちゃんとの差を詰めています』
『ライスも気づいてるね』
南坂『ええ……先ほどから、後ろの足音を意識しています』
『前だけじゃなく……後ろも……』
スズカ『今、ライスちゃんの中では、タンホイザさんもレースを走るための目標になっています』
『目標……』
スズカ『はい、抜かれたくない相手です』
ライス『ハッ……ハッ……!』
ライス(まだ……来ないで……)
ライス(ライスは、もっと前に……!)
トラン『ハッ……ハッ……!』
トラン(ウソ……もう脚が……)
トラン(さっきみたいに、前へ出ない……!)
イクノ『……今です!』
トラン『っ!?』
イクノ『先に行かせていただきます』
トラン『まだそんなに残ってんの!?』
ターボ『イクノ!?』
イクノ『追いつきましたよ、ターボさん』
ターボ『むむっ……!追いつかせないもん!』
南坂『第3コーナー、イクノが動きました!』
スズカ『トランさんを抜いて、ターボさんとの差を詰めていきます』
『ライスも行け!』
ライス『……!』
ライス(イクノさんが……遠くなる……)
ライス(ここで、行かなきゃ……!)
ライス『くっ……!』
スズカ『ライスちゃんも反応しました!』
南坂『いい判断です!イクノに離される前に、自分から速度を上げました!』
ロイス『ここが、私の華麗なる見せ場です!』
ライス『っ……!』
ライス(ロイスさんが外へ……)
ライス(前が空いた……!)
ライス(行ける……!)
ライス『ハァッ……ハァッ……!』
『ライス、いいぞ!』
スズカ『迷わず前へ出ました!』
南坂『ですが、タンホイザもついてきます!』
マチタン『むぅぅぅーーーんっ!』
ライス『!』
ライス(速い……)
ライス(ライスが動いたのに……離れない……!)
マチタン『ライスさん……!』
マチタン(追いつくよ……!)
マチタン(だって、私たちはライバルなんだから……!)
ライス『ハッ……ハッ……!』
ライス(タンホイザさんが……来る……!)
ライス(もっと……)
ライス(もっと速く……!)
ネイチャ『おっ、みんな動き始めたねぇ……』
ネイチャ(イクノはターボを捕まえにいって……)
ネイチャ(タンホイザは、ライスちゃん狙い……)
ネイチャ『それじゃ、ネイチャさんも……行きますか!』
アース『……!』
アース『終幕を告げるには……まだ早い!』
スズカ『ネイチャさんが外へ出ました!』
南坂『一気に前との差を詰めます!』
『ライスは!?』
スズカ『ロイスさんの後ろ……いえ!』
ライス『……!』
ライス(外はネイチャさん……)
ライス(このままじゃ、道が……)
ライス(でも……内なら……!)
ライス『こっち……!』
『内へ入った!?』
スズカ『僅かに空いた場所へ、自分から入りました!』
ライス『ハッ……ハッ……!』
ライス(怖くない……)
ライス(前は空いてる……!)
ライス(ライスは……走れる!)
マチタン『ライスさん!』
ライス『っ!?』
ライス(横……!?)
マチタン『追いついたよ!』
ライス『タンホイザ……さん……!』
マチタン『ここから勝負だね!』
ライス『……!』
『マチタンが並んだ……!』
南坂『最終コーナーで、完全にライスさんを捉えました!』
スズカは、並びかけた二人をじっとみつめていた
『スズカ?』
スズカ『ライスちゃんは今、初めて前ではなく……横を見ました』
『横……』
スズカ『はい……自分と競っている相手を見ています』
ライス『ハッ……ハッ……!』
ライス(タンホイザさん……)
ライス(苦しそう……)
ライス(それでも……ライスを見てる……)
マチタン『ハッ……ハッ……!』
マチタン(追いついた……)
マチタン(あとは……前に出るだけ!)
マチタン『むぅぅぅーーーんっ!!』
ライス『っ……!』
ライス(タンホイザさんが……前に……)
ライス(抜かれる……)
ライス(……ヤダ……)
『最後の直線だ!』
ターボ『まだまだぁぁぁーーーっ!!』
イクノ『逃がしません……!』
ネイチャ『お2人とも、ネイチャさんを忘れてない!?』
スズカ『先頭のターボさんに、イクノさんが並びます!』
南坂『さらに外からネイチャ!』
『3人の勝負……!』
ライス『ハッ……ハッ……!』
ライス(前に、みんながいる……)
ライス(ライスより……ずっと速い……)
ライス(ライスじゃ……勝てない……)
マチタン『ライスさんっ!!』
ライス『……!』
───────────
マチタン『だから私、今日はライスさんに負けないよ!』
───────────
ライス(……嫌だ)
ライス(勝てないかもしれない……)
ライス(1番には、なれないかもしれない……)
ライス(それでも……)
ライス(タンホイザさんには……)
マチタン『むぅぅぅぅーーーんっ!!』
ライス『負けたく……ない……!』
マチタン『!』
ライス『ライスだって……!』
『……!』
ライス『負けないっ!!』
その叫びとともに、強く芝を蹴った
スズカ『ライスちゃん……!』
南坂『もう一度、伸びた!?』
ライス『やあぁぁぁーーーっ!!』
ライス(抜かせない……!)
ライス(タンホイザさんに……負けたくない!)
マチタン『むぅぅぅぅーーーんっ!!』
マチタン(すごい……!)
マチタン(これが、ライスさんの本気……!)
マチタン『でも……私だってぇぇぇーーーっ!!』
『あのライスが……』
(誰かに勝ちたいんやない……)
(誰かに負けたくないって……)
(あんな顔で……!)
イクノ『ここまでです……ターボさん!』
ターボ『まだ……まだターボが1番だもん!』
ネイチャ『届いてっ……!』
スズカ『イクノさんが前へ出ます!』
イクノ『はぁぁぁぁーーーっ!!』
ターボ『うにゃぁぁぁーーーっ!!』
ネイチャ『くぅぅぅーーーっ!!』
南坂『イクノ、先頭でゴール!』
スズカ『ターボさんも粘っています!』
南坂『大外のネイチャより、僅かに前です!』
ネイチャ『あぁ~!また3着ぅぅぅーーーっ!?』
ターボ『ターボが2番だもん!!』
ライス『ハッ……ハッ……!』
マチタン『ライスさんっ!!』
マチタン(ゴール……!)
マチタン(あと少し……!)
ライス『負け……ないっ!!』
ライス『やああぁぁぁぁーーっ!!』
マチタン『私だって……負けないよぉぉぉーーーっ!!』
『ライス!!』
ライス『っ!!』
マチタン『むんっ!!』
二人の身体が、ほとんど同時にゴール板を駆け抜ける
スズカ『……ライスちゃんです!』
南坂『ライスさんが僅かに前へ出ました!』
ライス『ハァ……ハァ……ハァ……』
ライス(勝った……?)
ライス(ライス……タンホイザさんに……)
ライス(勝った……!)
ロイス『ま、待って!まだ私の見せ場がぁぁぁーーーっ!!』
トラン『いや……これ……マジでキッツ……!』
アース『まだ……私の演奏は……終わっていない……!』
・・・・・・
【特別模擬レース結果】
1着 イクノディクタス
2着 ツインターボ
3着 ナイスネイチャ
4着 ライスシャワー
5着 マチカネタンホイザ
6着 ロイスアンドロイス
7着 トランセンド
8着 サウンズオブアース
・・・・・・
ライス『ハァ……ハァ……ハァ……』
マチタン『ハァ……ハァ……負けちゃったぁ~……』
ライスは肩で息をしながら、タンホイザへ顔を向ける
マチタン『やっぱり、ライスさんは強いね』
ライス『……違うよ』
マチタン『ほえ?』
ライス『タンホイザさんが、ライスをライバルだって言ってくれたから……』
マチタン『……』
ライス『ライス……初めて……』
ライス『誰かに、負けたくないって思えたの……』
マチタン『……!』
ライス『だから……次も……』
ライス『次も、ライスが勝つから……!』
マチタン『おお~……!』
ライス『……?』
マチタン『ライスさん、今……すっごくライバルっぽいよ!』
ライス『えっ……!?』
マチタン『でも、次は私が勝つからね!』
ライス『……うん!』
ライス『ライスも……負けない!』
南坂『いいライバルになりそうですね』
『……はい』
スズカ『トレーナーさん』
『ん?』
スズカ『ライスちゃん……笑っています』
笑うライスを見つめたまま、しばらく言葉が出なかった
(今まで誰かの不幸ばかり怖がって……)
(自分の願いを、ずっと飲み込んできたライスが……)
(今、自分から……負けたくないって願った)
『そうだな……』
『とても、いい顔だ』
ライス『えへへ……』✨
◇◇◇
7月 トレセン学園 正門前
ライスシャワー メイクデビュー戦まで2日……
『ライスが発熱!?』
スズカ『はい、今、美浦寮に行って確認してきたんですけど……』
スズカ『寮長さんから、ライスちゃんが熱を出して寝込んでるって聞いて……』
『ッ!』ダッ……
スズカ『あ!トレーナーさん、寮内はっ……!』
(今日から札幌開催のデビュー戦に備えて出発する予定やのに……!)
・・・・・・
『はぁ……はぁ……』タッタッタッ……
息を切らしたまま、美浦寮の玄関へ飛び込もうとする
???『おっと!こっから先はトレーナーは入れないよ!』
『なっ!?』
(ヒシアマゾン!)
ヒシアマゾン『寮の規則なんだ、特別な事情でもない限り寮内には入れないよ!』cv.巽悠衣子
(褐色の肌がセクシー♡って、そんな場合ちゃうわっ!)
『ライス、ライスシャワーに会わせて欲しいんだ』
ヒシアマ『さっき、スズカに説明しただろ?寝込んでるんだよ』
スズカ『ヒシアマさん!』
ヒシアマ『スズカ、たとえ担当トレーナーでも寮には入れない規則だって知ってるだろ』
スズカ『……ええ、それはもちろん……』
『ライスは明後日デビュー戦なんだ!』
ヒシアマ『!』
『札幌開催だから今日中に出発しないと……頼む!会って確認だけでもさせてくれ!』
ヒシアマ『……ん~……』
『一生に一度のメイクデビューなんだ!』
ヒシアマ『……わかったよ』
『!』
ヒシアマ『寮長権限で特別に許可してやるよ』
『あ、ありがとう!』
ヒシアマ『ただし!アタシもライスの部屋までついていく、それが条件だよ』
『ああ、ありがとう』
・・・・・・
美浦寮 ライスシャワー・ゼンノロブロイの部屋
コンコンコン……
???『はい』
ヒシアマ『ヒシアマだ、ライスにお客さんだよ』
ガチャ
ヒシアマ『アタシはここで待ってるから』
『ありがとう』
スズカ『ありがとう』
???『あ、あの……?』
(ゼンノロブロイ!)
ゼンノロブロイ『あ!ライスさんのトレーナーさん』cv.照井春佳
(ちっこい!メガネ!三つ編み!可愛い♡……って、いいかげんにせいっ!ワシ!)
ライス『ハァハァ……トレーナー……さん……?』
『ライス!』タタタ……
(顔が真っ赤や……)
ロブロイ『ライスさん、昨夜から調子が悪かったみたいで……』
『ロブロイが看ててくれたんだな、ありがとう』
ロブロイ『……いえ』
スズカ『……ライスちゃん、大丈夫?』
ライス『スズカさん……ハァハァ……』
『ライス……額、触るぞ』ぴとっ
(熱っ!)
ライス『ハァハァ……冷たい……ハァハァ……』
ライス『……ごめんなさい……』
『!』
ライス『……ライス……やっぱり……ダメな子……だね……ハァハァ……』
『……』
『……スズカ、ロブロイ……ライスと二人にしてくれないか?』
スズカ『……はい、ロブロイさん……行きましょう』
ロブロイ『……はい』
スズカ『部屋の外で待ってますね』
ガチャ……バタン
スズカたちが出ていくのを見届け、ライスへ向き直る
『……ライス』ぎゅ ライスの手を握る
ライス『……ごめんなさい……ライス……ダメな子で……』ぎゅう
ライス『……カノープスのみんなにも……いっぱい、手伝ってもらったのに……』
『……』
ライス『……みんな……ライスのためにしてくれたのに……』
ライス『……デビュー戦なのに……もうすぐ、なのに……』
『……』
ライス『……やっぱり……ライスはダメな子なんだ……うぅ~』
ライス『……こんなダメな子が……みんなを幸せに……なんて……ぅ』
こらえていた涙があふれ、言葉はそのまま嗚咽に変わった
ライス『えぇぇぇ~ん……』
空いた手を、優しくライスの頭に置く
『できるよ』なでなで
ライス『!』
ライス『ぅぅ……なんで?……ライス、こんなダメな子なのに……』
『ライスならできる』なでなで
ライス『わかんないよ……ライス、みんなに迷惑かける……ダメな子なのに……』
『俺は信じてる』なでなで
ライス『!!』
『ライスはいつか日本中を幸せにする“ライスシャワー”になれる』なでなで
ライス『……こんな、ダメな子なのに……?』
『誰にだってダメなところの1つや2つあるさ』なでなで
ライス『みんなに……迷惑ばっかりかけてるのに?』
『誰も迷惑だなんて思ってないよ』なでなで
ライス『どうして?……どうして、こんなライスを信じてくれるの?』
『俺はもうライスから幸せをもらったから……』なでなで
ライス『……え?』
『俺がトレーナーとして戻ってこれて、こんなに素敵なチームを持つことができたのは……』
『ライスのおかげだから……』
『俺がライスに幸せをもらったように、みんなにも幸せが届く日は必ず来る……』
『そう、信じてる』なでなで
ライス『!』
───────────
そして、新しい鉢へ植え替えると、
明るい窓辺に置いてくれました。
毎朝、お水をあげました。
毎晩、やさしく話しかけました。
「おはよう、青いバラ」
「今日は、いいお天気だね」
「きっと元気になれるよ」
「だって、君はこんなにすてきなんだから」
───────────
ライス(……お兄さま……みたい……)
ライス『……ライスでも、なれるかな……?』
『なれるよ』なでなで
ライス『……う、うえぇぇぇ~ん……』
『……』なでなで
・・・・・・
ガチャ
スズカ『トレーナーさん!ライスちゃんは?』
『うん、疲れて眠ってる』
スズカ『そう、ですか……』
『けど、落ち着いたみたい』
スズカ『……よかった』
『ロブロイ、もう少しライスのこと看ててもらっていいか?』
ロブロイ『はい、もちろんです!』
『よろしくお願いします』ペコッ
ロブロイ『そ、そんな……』
ヒシアマ(……へぇ)
『ヒシアマにも、迷惑をかけたね』
ヒシアマ『いいよ、アタシもライスのことは気にかけとくから、安心しな』
『ありがとう』
◇◇◇
8月 新潟レース場 控室
『ライス、緊張してない?』
ライス『し……してま……しゅ!?』
ライス『え~ん、噛んじゃったぁ~!』
『ははは……!』
『一生に一度のデビュー戦さ、緊張して当たり前』
ライス『……ぐすん』
『どうせなら……楽しんじゃえ!』
ライス『……楽しむ』
『ああ!1か月も待ちに待ったデビュー戦だろ?』
(当初予定していた札幌でのデビュー戦を発熱で見送り、今、ワシたちは新潟に来とる)
ライス『……楽しむ……うん、ライス、やってみる!』
(ちなみに、トランはスズカさんに任せて学園でお留守番や)
『それに、レースが終わったら、いっぱいおいしいもの食べよう!』
ライス『……おいしいもの』✨
『ああ!なんたって新潟は“米”どころだからね』
ライス『ライス、楽しくなってきたかも!』
(この1か月、ライスの成長ぶりには目を見張るものがあった)
(正直、デビュー戦への不安はない、そう思えるほどに……)
係員『ライスシャワーさん、時間です』
ライス『ひゃ!ひゃい!』
『ライス、大丈夫……信じて……楽しんで!』
ライス『うん!』
・・・・・・
【新潟レース場 芝1000m ジュニア級メイクデビュー戦】どん
実況『さあ!第4コーナーから最後の直線!』
実況『先頭は10番!9番が並びかける!さらにその外、8番ライスシャワー!』
『ライス!』
ライス『ハッ……ハッ……!』
実況『先頭は9番に変わった!外からライスシャワーが迫る!』
ライス(苦しい……)
ライス(でも……)
───────────
『ライス、大丈夫……信じて……楽しんで!』
───────────
ライス(……楽しい!)
ライス(みんなと一緒に走るの……楽しい!)
実況『残り100m!内9番!外8番ライスシャワー!2人並んだ!』
ライス『やあぁぁーーっ!!』
ライス(もっと……前へ!)
実況『ゴール前!僅かにライスシャワーが出た!』
ライス『やああぁぁぁぁーーーっ!!』
実況『ゴールイン!!』
実況『8番!ライスシャワーです!クビ差でデビュー戦を制しました!』
『ヨッシャーーッ!!』
スタンドから沸き上がった歓声が、ライスを包み込む
ライス『……!』
『ライスーーーっ!!』
ライス『ハァ……ハァ……ハァ……』
ライス(ライス……勝った……)
ライス(誰も……不幸になってない……)
ライス(みんな……笑ってる……!)
ライス『……トレーナーさん!』
ライス『ライス……勝ったよぉぉぉーーーっ!!』
『ははは……やったぞライス!やったーーっ!!』
・・・・・・
新潟レース場 地下バ道
ライス『トレーナーさん!』タッタッタッ……
『ライスーー!』
ライス『ライスやったよ!』
『ああ!おめでとう!』
ライス『ライス、トレーナーさんの言った通り、楽しく走れたの!』
『うんうん』なでなで
ライス『スタンドのみんな喜んでくれたかな?』
『みんなライスの走りに喜んでたよ』なでなでなで……
ライス『そ、そう?ならよかった!』
『ライスー!初勝利だよ~!!』なでなでなでなで……
ライス『ト……トレーナーさん』
『ん~?よしよし』なでなでなでなでなで……
ライス『ちょ、ちょっと……なですぎ……////』
『ああ!ごめん!!喜びと、ライスの可愛さのあまり!!』
ライス『ふぇ!……か……かわ……////』
『いやだったよな?ごめんな』
ライス『う、ううん……嫌じゃないよ……////』
『そ、そう?』
ライス『……うん……////』
『ライス』
ライス『?』
『初勝利ありがとう』
ライス『え?』
『トレーナーさんはとっても幸せです』
ライス『……うん!』パァー✨
『よーし!それじゃあ、おいしいもの食べに行くぞー!』
ライス『おー!……えへへ』
ー2章ー003話 幸せへ続く、はじまりのSignal 完
第2章第3話「幸せへ続く、はじまりのSignal」
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
ライス、無事にデビュー勝利です!
模擬レースで芽生えた「負けたくない」という気持ちも含め、ようやく彼女自身の物語が走り始めました。
それにしても、カノープスは全員そろうと会話が進まない(笑)
次回、第2章第4話。
9月23日(水)19:00公開予定です。
【KUROXの
対象話:第2章第2話・第3話
9月21日(月)7:00公開予定です。
【X】
[https://x.com/utsupapa\_2021](https://x.com/utsupapa_2021)
【note記事 KUROXの
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