【ウマ娘if】転移した俺は、トレセン学園で運命に抗う 作:KUROX
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1998年 11月1日 東京競馬場 晴れ
第118回 天皇賞・秋
食い入るようにブラウン管テレビを見つめる
まだレースは中盤にもかかわらず
東京競馬場全体を揺るがすようにどよめくスタンド
歓声『うおおおおおぉぉ~……』
実況『かなり縦長の展開、まもなく第3コーナーの手前』
実況『1000mの標識は果たしてどのくらいで通過して…今通過っ!57秒台で過ぎていった!!』
実況『3コーナー飛ばしに飛ばしてサイレンススズカと武豊がいっている!』
実況『後続の各馬大丈夫なのか?捕まえることはできるのか?』
実況『大ケヤキのむこうを過ぎていきました!サイレンススズカ予定通りに…』
実況『あぁっ!?ちょっとここで手応えが?どうなんだ!?』
実況『さあ、ここで抑えるような恰好……!?』
実況『あ!?ちょっと……!?サイレンススズカ!サイレンススズカに故障発生です!!』
実況『なんということだっ!!』
実況『4コーナーを迎えることなくレースを終えたサイレンススズカと武豊!』
実況『沈黙の日曜日!!』
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『……』
たづな『……トレーナー』
たづな『片桐トレーナー?』
『え?……あ、はい!』
たづな『どうされたんですか?急に深刻なお顔をされて?』
『いや!ちょっと考え事を……すいません……』
『……ってか!私はトレーナーじゃないですよ!』
理事長『はっはっはっ……まぁ細かいことは置いといて』
(全然細かくないわ!!)
たづな『ご紹介しますね、こちら、サイレンススズカさんです』
サイレンススズカ『サイレンススズカです』cv高野麻里佳
(グハッ!……生スズカ……威力えっぐぅ……)
理事長『スズカ君、その後川内トレーナーの調子はどうだね?』
スズカ『お医者さんが言うには、やはり香港遠征の疲労が原因ではないかと……』
理事長『復帰はいつぐらいになりそうなのかな?』
スズカ『……』ブンブン……黙って首を振る
理事長『……う~む』ちらっ
スズカ『私……トゥインクルシリーズでもう走れないんですか?』
たづな『レースの出走登録には必ず担当トレーナーのサインが必要ですから……』ちらっ
(おお、おお、見とる見とる……シカトしたろ)プイッ
(ま、けど状況は理解したわ、それで“元トレーナー”のワシに復帰要請ね……)
『……』
『代わりのトレーナーくらいいるんじゃないですかぁ?天下のトレセン学園なら』
理事長『……ぐぬっ』
(ぐぬ?)
たづな『それが……お恥ずかしい話、中央トレーナー試験の受験者はここ数年減る一方で……』
たづな『合格者となると、その中のさらに一握りでして……』
たづな『反面、露出も多く、煌びやかなイメージのトレセン学園入学希望者は増加しており……』
理事長『トレセン学園はこのところ慢性的なトレーナー不足なのだっ!』
(なのだっ!じゃ、ないやろ!)
たづな『学園としましても、若くして引退された方や』
たづな『片桐トレーナーのように休職中の方に復帰をお願いしているのですが……』
たづな『思うようにいっていない現状でして…』
理事長『再度!要請ッ!片桐トレーナーにはs…』
『辞退ッ!』
理事長『はぅぅ~…』
『そもそも私はトレーナーじゃないですから』
理事長『否定ッ!正確には“今は”だ』
『……!』
理事長『君は間違いなく中央トレセン学園のトレーナーだった!』
『いや、でも…』
(知らない)
(ワシにはそんな記憶はない)
(ウマ娘は好きだ)
(サイレンススズカも好きだ)
(でも……)
『……』
『……無理……ですよ』
スズカ『……』
たづな『…片桐さん?』
『だってそうでしょう?』
『トレーナーって、その子の人生を預かる仕事ですよね?』
スズカ『……』
『レースに勝ったら一緒に喜ぶだけじゃない』
『怪我した時、負けた時、夢が届かなかった時……』
『その隣にいる人間でしょう?』
『そんな大事な場所に、私みたいなのが立っていいわけがない』
理事長『……』
たづな『……』
スズカ『……トレーナーさん』
『だから……トレーナーじゃ……』
スズカ『どうして……そんな悲しそうな顔をしているんですか?』
『!!』
スズカ『まるで……』
(やめろ、それ以上言うな)
(そんな目で見るな)
(知ってるんだ君の未来を)
(君の大好きな物を奪った“あの日”を)
(守れるわけがない……ワシなんかに)
(変えられるわけないんや……)
理事長『熟考ッ!』
『うおっ!』
理事長『……今日は結論を急がない、君自身で答えを見つけてほしい』
スズカ『……』ずっとこちらを見つめている
『……わかりました、一度持ち帰ります』
たづな『では、こちらを……』
『これは?』
たづな『トレーナーバッジです♪』
『いや!だからまだやるとは!』
たづな『学園への“入場許可証”として、ですよ♪』
たづな『考えるにしても、何も知らない場所では答えなんて出せませんから』
『……』
『そういうことなら……お借りします』
理事長・たづな『…………』ニヤリ
(ん?……今一瞬二人が笑ったよう……な?)
(気のせいか)
スズカ『……』ペコ 深く頭を下げる
(…………)
◇◇◇
自宅ソファーに深く腰を掛け加熱式たばこのスイッチを入れる
『……俺が、トレセン学園のトレーナーねぇ……』
いつもより深くたばこを吸いこむ
『フゥーーーー……』モクモク……
『……生スズカ……エグい可愛かったなぁ……』
(とはいえ、競馬の調教師でもスポーツトレーナーでもコーチでもなかった)
(ただの素人競馬&ウマ娘ファンのおっさんが、トレーナーなんて出来るわけないやんか……)
(そりゃあ、ゲームのウマ娘みたくパラメーターが可視化されて、コマンドをポチって押すだけならワシでもできるけど……)
『……』
(……異世界転移やんな?……)
(……ワンチャンあるか?)
スクッ←立ち上がる
右手を広げまっすぐ前に伸ばす
『コマンドッ!!』
『……』
『……』
『……////』
ボフッ
(……ハイ…なんにもでません……)
(ただのイタイおっさんです)
(異界渡りしたら、チートスキルは確定イベントやないんか!?)
(大賢者とか、ダ女神とか、死にもど……り、は嫌だし試したくない、な)
(と、いうことは、今日1日探索した感じでは…)
(このウマ娘世界(仮)は99%元いた現実世界と同じで……)
(ウマ娘という存在だけが追加されてる世界ってことか……)
『……』
(ワシに何をしろっちゅーねん……)
『……』
(あ、仕事忘れてた)
スマホを取り出す
(着信もメールもなし……嫌な予感しかしないんやけど……)
ピッピッピッ
スマホ『プップップッ……』
スマホ『おかけになった番号は現在使われておりません、番号をお確かめの上……』
ピッ…プツッ
『フゥーーーー……』モクモク……
(……)
(あれ?これ……もしかしなくても……)
(【無職転移】爆誕ッ!?)
(いやいや! あれは無職のおっさんが転生してるから無職転生であって…)
(ワシの場合は転移したら無職になったんやから、違う違う……アハハハ…)
『……』
(いや!もっとアカンことなってるけど!?)
(……貯金あと、どんだけあったかな?……)
スマホ『ピッピッ……』
(よかった~……銀行アプリは生きてるわ……)
『……』
『フゥーーーーーーー……』モクモク……
(……転移した世界で最初にやることが、就職活動か……誰得やねん)
(『要請ッ!!』……うっさい出てくんな……)
(……出来るわけないやろ……)
(……スズカを救うことなんて……)
(『サイレンススズカ!サイレンススズカに故障発生です!!』……)
(……)
(……あんなんなったらどうすんねん……)
(……スズカも……ワシも……)
(……)
(…………)
(…………ぐうぅー)
◇◇◇
『スズカッ!!』ガバッ 勢いよく起き上がる
『……ハァハァ……』
『……あれ?』
(あかん、寝落ちしてたわ……)
(うっわ!めっちゃ汗かいてるやん)
(……なんやこの胸の苦しさ)
(……夢……?)
(全然覚えてへんけど)
『……』
『……風呂入ろ』
サッとシャワーだけ浴びて汗を流す
・・・・・・
『ふぅ~さっぱり✨ところで今何時だ?』
スマホ【04:02】
『おっさんの朝は早い!』
(言うてる場合か!4時っておっさんこえておじいちゃんやん!)
(ん?)
(そういえば、ウマ娘のアプリってどうなって……)
『あるぅっ!』
(昨日、デイリーやってねぇ~!)
(今はたぶんそこじゃねぇ~!)
(なんやこっちの世界にも普通にあるんか?まぁウマ娘人気エグイもんな、国民的競技になってるみたいやし…)
スマホ『ポチッ』
パッ!!
『うおっ!まぶしっ!!!』
突然目を覆ってしまうほどの一瞬の激しい発光
『……』
『なんだ今の……?』
『……あれ?』
スッスッ スワイプ……スワイプ……
『……消えてる……』
(……ウマ娘のアプリだけなくなってる……?)
『……』
ぐぅ~~~~……
『はうぅぅぁぁ~……』
(……ワシ、最後にメシ食ったのいつだっけ?)
(冷蔵庫になんかあったかな?……)
パカッ
『……』
バタンッ
(……コンビニいくか)
◇◇◇
店員『ありがとーございましたー』コンビニで軽食を買い外にでる
『……』
(ここまでくるとトレセン学園は目と鼻の先だな)
(地図アプリで検索した最寄りのコンビニからトレセン学園までは徒歩数分の距離やった)
(つまりワシの家からトレセン学園も徒歩圏内ってこと)
(ちょおっと行ってみる?)
(この時間ならまだ誰もおらんやろうし)
(いきなりウマ娘の大群に出会ったら……死ぬ!)
(間違いなく!萌え死にする自信がある!!)
『……まぁ、下見ってことで』
◇◇◇
トレセン学園正門前 どーーーーーーん
(改めて見てもデカ……)
守衛『おはようございま~す』
『うおっ!』
『……お、おはようございます』(裏声)
守衛『何か御用ですか?今の時間は部外者の方はぁ……』
『あ、いや、ワシ…ゴホンッ……俺は……』モゾモゾ……ゴソゴソ……
守衛『……ん~?』
守衛(不審者か?)
『こういう物です!!』
(テレレッテッテレー♪“トレーナーバッジィ~”)ド〇え〇ん風
守衛『ああ!トレーナーさんでしたか!早朝からお疲れ様です』
『ははは…おつかれさまで~っす……』イソイソ……
守衛『……』
守衛『……この学園のトレーナーって変わった人多いよな』ボソッ
・・・・・・
(よっしゃ、第一関門突破!)
(いやぁ、バッジ借りといてよかった~トレーナーバッジ様様やな)
『……』
(当たり前やけど、だ~れもおらんな……)
(校舎は…さすがにこの時間じゃ開いてるわけないし……)
(じゃあ、グラウンド……トレーニングコースでも見にいくか……)
・・・・・・
スズカ『はっ、はっ、はっ……!!』
(……サイレンススズカ……)
朝焼けの中一人走るサイレンススズカがいた
スズカ『はっ……はぁっ……ふふっ……!!』
『!』
(……笑って……?)
────レースとは、スピードとスピードの戦い、誰もがコンマ1秒を競い、激しくぶつかり合う
しかしそんな中、まるで異なる世界に在るかのように、粛々とターフを駆けるサイレンススズカに見惚れていた
(……ホンマに…なんて楽しそうに走るんや……)
まだ誰もいない早朝、トレーニング時間でもないというのに、彼女は目を見張るようなスピードでコースを走り続けていた……
スズカ『ふぅっ……!!うん……早朝に走ると、静かでいいわね……』
スズカ『そういえば、今日はちょっとだけいつもより空が赤いかしら……?』
スズカ『……ふふっ、この景色全部、独り占めね』
スズカ『……あら?』
スズカ『……』
スズカ『……片桐……トレーナーさん?』
(見つかった!?)
スズカ『……見学……ですか?』
『あ、ああ!まぁ、そんなところ……』
スズカ『ふふっ……こんな時間じゃ私くらいしかいませんけど?』
優しく微笑む彼女に言葉が詰まる……
『……す、すごく、楽しそうに走るんだな…』
スズカ『そ……そうですか?……////』
スズカ『……//』
スズカ『えっと……すみません、失礼します。私、もう少し走っていくので……』
そう言うと、サイレンススズカはすぐに行ってしまった。
あれだけコースを駆けた後なのに、まだ走り足りないらしい
凄まじい速さで、なおかつあんなにも楽しそうに風を切る彼女の姿は、ひどく脳裏に焼き付いた
(……先頭の景色……か)
◇◇◇
一度帰宅し今度はしっかりベッドで仮眠をとった後、再度学園を訪れる
(この時間やったら本格的なトレーニングの時間やろ)
てくてく……
(…………)ドキドキ……
てくてく……
(…………)ドキドキ……
わいわい……わいわい……
(早朝とは打って変わって、めっちゃ活気に溢れとるな)
(なるべく周りを見ないように、下を向いて……トレーニングコースは……)
(なんで下を向いているのかって?)
(ウマ娘“箱推し”のワシ、まだ心の準備が出来てないからに決まってるやろ!?)
???『バクシン!バクシーーン!!』
『う゛っ!!』ドキッ!!!
『……』ドキドキ……
(……耳も塞いだ方が、ええかな……?)
・・・・・・
なんとか、生きてトレーニングコースまでたどり着き
(ヨシッ!いくで!!)
意を決して辺りを見回す
活気に溢れるトレーニングコース……
様々なウマ娘たちがトレーニングに励んでいる姿が目に入る
(芝コース……)
(ダートコース……)
(坂路コース……)
(ウッドチップコース……)
『……』
(あれ?……スズカが……いない?)
(……どれだけ探しても、スズカの姿を見つけることは出来へんかった……)
(う~ん……)
(もう帰った?……あのスズカが?トレーニングもせずに?)
ウマ娘A『…昨日のあれ見たぁ?』
ウマ娘B『見た見た!チョーやばくなかったぁ?』
『!』
(MOBウマ娘キターーー!!)チラッ
(……MOBウマ娘もビジュ良いのズルい……サイコーかよ?サイゲ……)
(ヨシ!いくぞ!)
『あ、あの~ちょっといいかな?君たち?』
ウマ娘A『はい?なんでしょう?』
『スズカ……サイレンススズカ……どこにいるか知らない?』
ウマ娘A『え?スズカ先輩ですか?』
ウマ娘B『スズカ先輩なら外周に出てると思いますけど…』
ウマ娘A『うん、スズカ先輩最近この時間になるとよく外周出てるよね~』
ウマ娘B『やっぱ…あれかな?トレーナーさんが倒れちゃったからかなぁ~?』
ウマ娘A『一人じゃなかなかコース練習しづらいもんね~』
ウマ娘B『今が一番大事な時なのにねぇ』
ウマ娘A『そうそう!この前の香港のレースも5着だったけど、マジヤバい走りしてたし!』
ウマ娘B『マジで今最盛期!って感じ?あたしらとは次元が違うわ~』
ウマ娘A『それなのに……ねぇ』
『あ、ありがとね!そっか外周ね!助かったよ!じゃあ!!』ビューン……
逃げるように立ち去る
ウマ娘A・B『……』
ウマ娘A『……誰?今の?』
ウマ娘B『知らね、トレーナーバッジ付けてたから、トレーナーじゃん』
ウマ娘A『あんなトレーナーいたっけ?』
ウマ娘B『あ!もしかして!スズカ先輩の新しいトレーナー!!?』
ウマ娘A・B『……』
ウマ娘A・B『ないわぁ~~……』
ウマ娘A『さすがにあれはなくね?』
ウマ娘B『マジそれな!めっちゃ陰キャっぽかったし』
ウマ娘A・B『……』
ウマ娘A『スズカ先輩早く新しいトレーナー見つかるといいよねぇ~』
ウマ娘B『ねぇ~』
(MOBウマ娘ちゃん…おじさんの足、君たちみたいに速くないからね……)
(全部聞こえてるからね……えっぐえっぐ……)
(ともかく、もう一度スズカに会いたい)
(会って話をしてみたい)
(トレーナー云々は抜きにして)
(ただ、彼女を知りたい)
(ゲームの中じゃない本物の彼女を……)
(街中探し回ってみますか!!)
◇◇◇
『ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…』
『……吐きそう……』
(つーか冷静に考えて、街中走り回ってるウマ娘を見つけるって無理ゲーじゃない?)
(見つけても、走ってるウマ娘に追いつくの不可能じゃない?)
(やっぱり冷静さは必要だよね……)
気が付けば、街を見下ろせる高台まで来ていた
『……ここは!』
(知ってる、ゲームの中の…)
『!!』
(……スズカ?)
高台の柵の前……
夕日に照らされながら……
静かに街を見下ろすサイレンススズカがいた……
風に揺らぐ美しい栗毛……
トレーニング直後で、少し上気して赤らんだ頬……
遠くを見つめる瞳……
思わず声が漏れた
『綺麗だ……』
スズカ『!?』
スズカ『片桐……トレーナー……さん?』
(アカン!聞かれた!?)
『や、やぁ……き……奇遇だね……』
(ちゃうやろ!ちゃんと話する為に来たんやろが!?)
スズカ『ホント、こんなところで奇遇ですね』
(ほら、ちゃんと話すんやろ!)
『いや、その……』
スズカ『……?』
(また!逃げ出すんか!?)
『ちゃうわっ!?』
スズカ『きゃっ!?』
『ああ!ごめん驚かせて!』
『……』
『実は…偶然……じゃなくて……
『君を探してたんだ』
スズカ『私を……?』
『うん、学園に行ったら見当たらなくて、他の生徒に聞いたら外周に出てるって聞いてさ』
スズカ『そうなんですね……もしかして私の担当トレーナーの件……ですか?』
『ごめん!』ペコッ
スズカ『!』
『期待を持たせるようなことはしたくないから、先に言っておく』
スズカ『……』
『俺はトレーナーに復帰するつもりはない』
スズカ『……』
『……誰の……トレーナーにも……』
スズカ『……じゃあ……私になにか御用ですか?』
『……君の……事を知りたいんだ……』
スズカ『……私の』
『いやいや、なんかキモイねごめんね!』
『けど、そうじゃなくて……』
『……今朝の……君の走りが頭から離れないんだ……』
スズカ『……』
『あんなに綺麗で……楽しそうな走り……今まで見たことなかった』
(もっと見ていたい、もっと近くで……)
『だから……話だけでも……』
スズカ『……』
『……』
スズカ『……私、走るのが大好きなんです』
スズカ『走って、走って、目の前から誰もいなくなるくらい、速く走って……』
スズカ『目の前に誰もいない景色が……どこまでも広がって……』
スズカ『もっと速く走ったら、もっと遠くまで走ったら……』
スズカ『どんな景色が広がってるんだろう?って……』
『……』
『怖くは……ないのか?』
スズカ『え?』
『誰よりも速く……どこまでも遠くへ走った先の景色が……綺麗な景色とは限らないだろ?』
(……おい)
スズカ『……そう、ですね……』
『もしかしたら、その先の景色が、2度とっ…!』
(やめとけ!)
スズカ『怖くないです』
『え?』
スズカ『もしその先の景色が……ううん、その先に何もなくても』
スズカ『怖くないです』
『……』
スズカ『だって、私走るのが大好きなんです』
『!!』
スズカ『私が走りたくて走って……その先の景色が見えなくても……何もなくても……』
スズカ『たぶん私、ずっと走ってますから』ニコッ
そう言ったスズカの優しい笑顔は、どこか力強く感じた
(……ええのか?このままスズカを一人で走らせ続けて……)
(あの美しい走りを、屈託のない笑顔を……)
スズカ『でも……トレーナーさんがいないとレースには出られないんですけどね』
(ワシがトレーナーにならなくても、いつかは他のトレーナーが決まり、スズカはレースに戻るやろ……)
(なんも知らないスズカとトレーナーは、“あの日”まで走り続けるやろ……)
(いいのか?)
(このままで本当にいいのか?)
(また、目の前の大好きな物から、大切な物から逃げ出すのか!?)
スズカ『……えっと……それじゃあ、私、学園に戻りますね』
『……』
『……てくれ』
スズカ『……え?』
『……手伝わせてくれ』
スズカ『……それって……』
『担当トレーナーとして君と一緒に走りたい!』
『君のレース人生を手伝わせてくれ!』
スズカ『……』
『……』
スズカ『はい!……トレーナーさん!』
ー1章ー002話 Silent Starを追いかけて 完
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
3夜連続投稿、2夜目となる第2話でした!
片桐とスズカ――ようやくここから、2人の物語が走り始めます
そして明日は、3夜連続投稿の最終夜!
第3話を投稿します!
もちろん、物語はまだまだ続きますw
さらに3夜連続投稿後の8月3日には、noteで本作の裏話・ネタ話を掲載予定です
本編とあわせて、こちらも楽しんでいただけたらうれしいです!
▼KUROXのnote
https://note.com/kurox_1200
それでは、また明日の第3話で!