【ウマ娘if】転移した俺は、トレセン学園で運命に抗う 作:KUROX
トレセン学園 トレーナー室
たづな『ふふ、面白いことを言いますね……片桐トレーナー……』スッ……
帽子をゆっくり脱ぐ……
たづな『……』
『!!』
『あ……れ?』
(ウマ耳が……ない!?)
たづな『私はれっきとした“人”ですよ?』
『そんな……そうだ!経歴書!あんな重い束!軽々持ってたし……』
たづな『……』
『それに、足だって人よりはるかに速いはず……ウマ娘と変わらないくらい……』
たづな『あら?片桐トレーナーの前で走ったことはなかったと思うのですが……』
『……』
たづな『それが、この世界に来るときに私が授かった能力です』
『!!』
たづな『転生前の競走馬としての能力を、そのままこの体に受け継いだんです』
『え?ちょ、ま……え?……転生して?……え?……能力?』
たづな『私も……おそらく片桐トレーナーと同じ世界からきた転生者です』
『ちょ、ちょっと待ってください!……情報量が……』
(あれ?おかしい……)
『……なんで?』
『……なんで話せるんや!?“世界の修正力”は!?』
たづな『……“あれ”はこの世界を“異物”で汚さないための力』
たづな『私たちのように、異界渡りをした者同士が会話をしても大丈夫なんです』
『……』
『……お、俺は……別世界から……転移してきた……』
たづな『はい』
『!』
(ホンマや!)
『じゃあ、たづなさんも本当に……?』
たづな『はい、あちらの世界では競走馬として……そしてこちらの世界に人として転生してきました』
『やっぱり……!』
(……噂が本当やったら、たづなさんは……10戦10勝、レコード勝ち7回、クラシック二冠を制した直後、破傷風で命を落とした“幻の馬”……)
『トキn……』
たづな『いけませんッ!!』ぐっ……自分の胸を押さえる
たづなの表情から、さっきまでの余裕が消える
『!』
たづな『その、名前は……言わないで……ください……』
『……は、はい』
(修正力!?……じゃない、トラウマか……?触れちゃいかんとこやったか……?)
たづな『それよりも、色々聞きたいことがあるのではないですか?』
(そうや!初めて出会った、同じ世界から来た人!少しでも情報を……)
『……聞いてもいいんですか?』
たづな『私が答えられることであれば』
『……史実は、変えられないんですか?』
たづな『……わかりません』
『そんな……』
たづな『しかし……世界の修正力のせいで、というのであればそれは違います』
『!』
たづな『先ほどもお話ししたように世界の修正力は、この世界を異物から守るための力……』
たづな『元の世界の情報がいたずらにばらまかれ、この世界が混乱するのを防ぐための力です』
たづな『片桐トレーナーの知っている“未来通りに修正するための力”ではありません』
『それじゃあ……』
たづな『はい、この世界の未来は、まだ誰にもわかりません』
『変えられる……?』
たづな『しかし……未来を変えるのはとても困難です』
『え?』
たづな『ウマ娘は、私たちの世界にいた競走馬の名前と……魂を受け継いでこの世界に生まれてきます』
たづな『彼女たちの魂の結びつきはとても強く……未来を変えることは簡単ではありません』
『……』
たづな『私も転生したのち、私のように夢半ばで倒れてしまうウマ娘を救いたくて、理事長秘書になったのですが……』
言葉の続きを待っても、たづなは黙ったままだった
『変えられなかった……?』
たづな『……いえ』
『!』
たづな『わからなかったんです』
『?』
たづな『私と同じ時代を走っていた競走馬の名前を持つ娘が、全然いなくて』
たづな『私の記憶はあの日本ダービー後までしかないので』
『時間軸が……バラバラなんだ』
たづな『はい、こちらの世界では時間そのものの概念が元いた世界とは違うようで……』
『……』
たづな『全ての生徒にまで目が行き届かず……』
『じゃあ、やっぱり変えられないんですよ……』
たづな『そんなことは……!』
『スズカは引退し!ライスもケガをした!!』
たづな『!』
『ワシの知ってる史実そのまんまなんですよ……』
ぶつけた言葉が、重く二人の間に残る
たづな『……本当に?』
『……』
たづな『本当に“そのまま”だったんですか?』
『!!』
───────────
実況『サイレンススズカ!大ケヤキを越えて直線に入る!』
『!!』
実況『スタンドは割れんばかりの大歓声!』
(……越えた……越えれた!!)
実況『ここでサイレンススズカさらにスパートに入る!』
『いけぇー!!スズカァーーーッ!!!』
───────────
(そうや!確かにワシの知ってる史実よりも進んでる……それに!)
(骨折した足も左ではなく右やった……)
『……違う、俺の知ってる史実とは……』
たづな『この世界の未来は決まっていないんです』
『……』
『……けど、過程は違っても……結果は……』
たづな『だれか、予後不良で安楽死しましたか?』
『!!』
『それは!彼女たちは競走馬とは違い、ウマ娘だから!』
たづな『それだけでも大きく変わってると思いませんか?』
『ッ!』
たづな『失われるはずだった、一つの命が救われた……』
たづな『それだけでも大きな変化だと……』
『……詭弁ですよ、走るために生まれてきた彼女たちにとって、走れなくなることは死と変わらない……』
『……スズカはもう……』
たづな『走るのをやめてしまったんですか?』
『……』
たづな『形は変えても、スズカさんは走り続けているように私には見えますけど……?』
『くっ……!』
たづな『もうわかっているはずですよ、片桐トレーナー』
『……』
たづな『この世界はあなたの知っている世界とは違う……あなたの知っている史実通りではないこと』
たづなの言葉に、胸の奥が締め付けられる
たづな『あなたがそれを認めたくないのは……怖いからですよね?』
たづな『自分の知っている未来の通りに、また進んでしまうことが』
『怖いに決まってるやろッ!!』
『また、彼女たちの夢を奪ってしまうかもしれへんのやぞ!』
たづな『でも、あなたは戻ってきた、そして新しいウマ娘のトレーナーになった』
『……』
たづな『私にできることは少ないかもしれません、それでも……』
たづなは、まっすぐこちらを見つめる
たづな『私も協力します、ですから……』
たづな『“あらゆるウマ娘が幸福に過ごせる、理想の世界”……その実現に、片桐トレーナーも協力してください』
『!』
たづな『……』
『……』
『……俺にできますか……?』
たづな『片桐トレーナーにしかできないことが、たくさんあります』
『……』
たづな『あら?もう、こんな時間……少し長話しすぎちゃいましたかね』
『……』
たづな『私はこれで失礼しますね』
『……』
たづなは帽子をかぶり直し、いつもの理事長秘書の顔に戻る
たづな『応援しています……片桐トレーナー……』
ガラガラッ……バタン
閉じた扉を、しばらく見つめる
『……“あらゆるウマ娘が幸福に過ごせる、理想の世界”……か』
◇◇◇
翌日 トレセン学園 美浦寮前
運転手『お待たせしました、到着です』
『ありがとうございます』
『ライスはそのまま待ってて』
ライス『う、うん……?』
車を降り、ライスの座る側へ回り込む
ガチャッ
ライス『お兄……さま……?』
『よっ……と』ライスを抱き上げる
ライス『ひゃあっ!』
『退院したてだからね、部屋までお姫様抱っこだ』
ライス『え? ちょ……ちょっと恥ずかしいよ お兄さま……』
(あぁ~……イイッ!……お兄さま……♡)
『恥ずかしくても我慢!下手に歩いて悪化したらお兄さま泣いちゃうぞ!』
ライス『……う、うん……』
『うん、聞き分けのいい子は大好きですよ♪』
ライス『……ライス……重くない?』
『全然っ!……むしろ、軽いくらいだよ』
ライス『……////』
・・・・・・
ヒシアマ『お!来たな』
『悪いね、ヒシアマゾン、また立ち会ってもらって』
ヒシアマ『いいんだよ、今回は事前に許可も取ってるんだし、ライスのためだからね』
『ありがとう』
ヒシアマ『にしても……随分大事にされてるじゃないか?ライス……?』
ライス『え!? こ……これは!……お兄さまが……』
ヒシアマ『ふ~ん……お兄さまねぇ……』ちらっ
『コホンッ ……さ、早く部屋に行こう』
ライス『う、うん……そうだね』
てくてくてく……
ヒシアマ『へへ……仲のいいことで』
・・・・・・
美浦寮 ライス&ロブロイの部屋
ガチャッ
トラン『コメちゃん、おかえり~♪』
ライス『あれ?二人とも、先に来てたの?』
スズカ『ええ、ライスちゃんをお部屋で迎えたかったから』
『よっ……と』ライスをベッドにそっと下ろす
ライス『ありがとう』
『どういたしまして』
スズカ『しっかり休んで、ちゃんと治すのよ』
トラン『ヒマを持て余さないように、ウチが色々持ってきてあげるね』
ライス『うん、二人ともありがとう』
ロブロイ『無事に退院できて、本当に良かったですね、ライスさん』
ライス『うん、ちゃんと治せばまたレースにも戻れるし、ライスしっかり治すね』
ロブロイ『はい!私もできることはお手伝いしますね!』
『ライス、寂しくないように毎日お見舞いに来るからな』
ヒシアマ『ダメだ!』
『そんな!』
ヒシアマ『トレーナーは原則、寮内立ち入り禁止だ!』
『お見舞いだよ?』
ヒシアマ『ダーメ!』
『こんな可愛いライスを一人にするの?』うるうる……
ライス『……////』
ヒシアマ『同室のロブロイもいるし、アタシも気に掛けるよ!』
『ちょっとだけでも?』
ヒシアマ『くどい!』
『……ぅぅ』しゅん……
スズカ『トレーナーさん、時間があるときは私たちも来ますし』
トラン『そうそう、コメちゃんに寂しい想いはさせないよん♪』
『……ロブロイもよろしくお願いします』ペコッ
ロブロイ『え そんな、かしこまらないでください 』
ロブロイ『ライスさんのためですから!お任せください!』
『ありがとう……』
『……どうしても……?』ちらっ
ヒシアマ『ダメだ!』
『はぅ……』しゅん……
ヒシアマ『めんどくさいやつだな……』
ライス『ふふ……みんなありがとう』
『なぁ~んか、俺だけ仲間外れみたいじゃない?』ちらっ
ヒシアマ『……ふんっ』プイッ
『つ……冷たい……』しゅん……
ヒシアマ『き・そ・く・だ!』
『……ケチ』ぼそっ
ヒシアマ『なにぃっ!』
『……』
ライス『お兄さま、みんないるからライス平気だよ』
スズカ『お兄さま!?』
トラン『へぇ~……』
ライス『あ!……へ、変かな?』
トラン『ううん、全然変じゃないよね?スズカさん?』
スズカ『え? ……ええ……』
トラン『トレちゃん、トレちゃん、いつの間にそんなに親密になったのさ?』
『え? それは……』
トラン『それは?それは?』
『秘密です!』
トラン『なんだよ~、トレちゃんのけ~ち』
『……』
ヒシアマ『さ!トレーナー、いつまでも居てもらっちゃ困るよ!』
ヒシアマ『用が済んだなら帰った、帰った!』
『じーっ……』うるうる……
ヒシアマ『そんな目で見てもダメなもんはダメだ!』
『わかりましたよー ……帰りますよ!帰ればいいんでしょ!』
ヒシアマ『……子供かよ……』
『ライス、しっかり休むんだぞ』
ライス『うん、ありがとうお兄さま』
『ライス~……』よしよし……
ライス『えへへ……////』
ヒシアマ『……』イライラ……
ヒシアマ『か!え!るッ!!』ぐいっ!
『あぁ~……れぇ~……』じたばた……
ヒシアマ『行くよ!』
スズカ『ふふ……』
トラン『やれやれ……』
ロブロイ『……すごいトレーナーさんですね……』
ライス『えへへ……』
◇◇◇
1カ月後 トレーナー室 昼休み
『……ぼけぇ~……』
(片桐です……)
(担当のライスシャワーがケガで休養中のため、やることが激減したとです)
(トレーナーなのに、トレーニングする相手がおらんとです……)
(片桐トレーナー改め、暇人28号です……)
(片桐です……)
(せめてお見舞いに行こうとしたら、ヒシアマ姉さんの鉄壁のガードに阻まれました)
(担当トレーナーなのに、美浦寮へ近づくことすらできんとです……)
(片桐です……)
(週2回、病院でのライスのリハビリにも付き添っとるとです)
(ばってん、ワシに手伝えることは何もありません)
(ただ黙って見守っとったら……)
(軽い変質者扱いされたとです……)
(片桐です……)
(ライス本人からも……)
ライス『無理して来なくてもいいよ?』
(やさしく言われました……)
(やさしさが、いちばん心に刺さるとです……)
(片桐です……)
(そうだ、ワシにはトランがおるじゃないか!)
(そう思って、スズカさんが作ったトレーニングメニューを確認したとです)
(ワシが口を出すところは、ひとつもありませんでした……)
(片桐です……)
(基礎トレーニングが中心とはいえ、本当によくできたメニューでした)
(実際のトレーニングも確認した結果……)
(もっと、やることがなくなったとです……)
(片桐です……)
(片桐です……)
(片桐です……)
(……)
『スズカ、俺なんかより立派なトレーナーになるんじゃないか?』
『ぼけぇ~……』
『はぁ~……なにしよ?』
コンコン……
(誰や?昼休みに……)
『はい』
スズカ『失礼します』
『スズカ……それにトランも』
トラン『こんちわ、トレちゃん♪』
『どうしたんだ、二人そろって?』
スズカ『トレーナーさん、一緒に学食でお昼ごはんどうですか?』
『お昼?』
トラン『最近のトレちゃん、コメちゃんが休養中で暇そうだったから……』
スズカ『気分転換にみんなでお昼でもどうかなって、トランちゃんと相談したんです』
『学食……カフェテリアか……』
(昼のカフェテリアといえば、ウマ娘の巣窟!ネームドウマ娘はもちろん、MOBちゃんたちも集まる……)
(正にウマ娘のホットスポット!)
『う~ん……』
トラン『行こうよ!トレちゃん!』
(ワシには刺激が強すぎて、今までは避けてきたが……今ならいけるか?)
(みんな一緒やし!)
『ま、いいか』
(暇だしね)
トラン『やった♪』
スズカ『それじゃ、行きましょう♪』
『うん』
(いざ!出陣じゃ!!)
・・・・・・
トレセン学園 カフェテリア
モクモクモク……
『……なんだ、この煙?』
(初めて足を踏み入れたカフェテリアが、すでに視界不良なんやけど……)
トラン『火事!?……じゃない、この匂い……お肉だ!』
『お、おい!トラン!』
トラン『煙の発生源、調査してきまーす♪』タッタッタッ……
(好奇心旺盛か!)
スズカ『追いかけましょう、トレーナーさん』
『う、うん……』
ジュウゥゥゥ……
『カフェテリアに……卓上コンロ?』
煙の向こうでは、見覚えのある5人が卓上コンロを囲んでいた
ゴールドシップ『うめぇぇぇっ!やっぱ昼から食う焼肉は背徳の味がするぜぇぇぇっ!!』cv.上田瞳
ナカヤマフェスタ『ゴルシ、それはまだ焼けてねぇ!腹壊すぞ』cv.下地紫野
ゴルシ『肉は赤いうちに食えって、肉の神様が言ってる!』
ナカヤマ『その神、保健所に連れてけ!』
ドリームジャーニー『ゴルシさん、こちらはもう焼けていますよ』cv.吉岡茉祐
オルフェーヴル『姉上、次はその肉を余に』cv.日笠陽子
ドリジャ『はい、オル、少し待ってね』
ステゴ『……』モグモグ
(……ステゴ一族!?)
(なんでカフェテリアで焼肉しとんねん!?)
トラン『おお~♪ 本当に焼肉やってる!』
ゴルシ『お?なんだ、てめーらも肉の匂いに釣られてきたか?』
『いや、そうじゃなくて……』
『カフェテリアで焼肉って、いいの?』
オルフェ『余が望んだ』
『……はい?』
オルフェ『王が宴を望み、臣下がそれを叶えるのは当然のことであろう』
(王のワガママやった!)
ドリジャ『アネゴとゆっくり食事をするのも久しぶりでしたので、厨房と施設管理の方には私から許可をいただきました』
『許可、取れるんだ……』
ドリジャ『換気にも十分配慮していたのですが……』
ゴルシ『焼肉ってのは煙が出てからが本番だろ!』
ナカヤマ『こいつが勝手に火力を上げやがったんだ』
ステゴ『まあ……悪くない景色だろ?』
『景色、完全に霞んでるけどね……』
ステゴ『お?』
ステゴ『久しぶりだな、スズカ、それに……片桐トレーナー』
スズカ『久しぶりね、ステイゴールド』
ステゴ『元気そうで何よりだ』
スズカ『おかげさまで』
『ステゴ……あの時は、本当にありがとう』
ステゴ『……なんの話だい?』
『秋の天皇賞のあと、記者たちから俺たちを助けてくれただろ?』
ステゴ『ああ……あれか』
ステゴ『せっかくのレースのあとに、記者たちが邪魔だっただけさ』
スズカ『記者……?』
『病院へ向かう途中、記者たちに囲まれて動けなくなったんだ』
『その時、ここにいるみんなが道を空けてくれてね』
スズカ『そんなことが……』
スズカは5人の方へ向き直り、深く頭を下げた。
スズカ『皆さん、本当にありがとうございました』ぺこっ
『改めて、俺からもお礼を言わせてほしい』
『あの時、みんなが来てくれなかったら、俺は……』
一族『?』
ナカヤマ『礼を言われるようなことはしてねぇよ』
『え?』
ナカヤマ『アタシはステゴのレースを無視した記者に、腹が立っただけだ』
ドリジャ『私も、アネゴの素晴らしい走りが正当に扱われるべきだと申し上げただけです』
オルフェ『余の行く手を阻む愚民を退けた、それだけのこと』
ゴルシ『アタシは藤井のオッサンを投げたかっただけだぞ?』
『……』
(誰ひとり、俺を助けたつもりはなかった!!)
(なんというか……実にステゴ一族らしいな)
ゴルシ『まあ、細けぇことはいいじゃねぇか!てめーらも食ってけよ!』
ステゴ『せっかくだ、3人とも座っていきな』
スズカ『いいの?』
ステゴ『ああ、肉は余ってるからな』
トラン『やった♪ それじゃ、お邪魔しまーす!』
『お前、馴染むの早いな……』
ジュウゥゥゥ……
ドリジャ『スズカさん、お皿をどうぞ……トランさんはこちらへ』
ドリジャ『片桐トレーナー、お飲み物はお茶でよろしいでしょうか?』
『あ、うん、ありがとう』
(ドリジャ、めちゃくちゃ気が利くな……)
オルフェ『姉上、余の皿が空いているぞ』
ドリジャ『いま用意するね、オル』
(王は焼肉でも王やな……)
ステゴ『……』モグモグ
(それにしても……)
(ステゴの前に置かれた皿には、小さな肉が1枚だけ……それを少しずつ、実にゆっくりと食べている)
『ステゴ、それだけで足りるの?』
ステゴ『私はこれくらいで十分さ』
(少食なウマ娘、初めて見たかも)
ゴルシ『金色オヤジは昔っから全然食わねぇんだよ、ほっとくと白飯3粒で旅に出るぞ』
ステゴ『誰がオヤジだ』
ドリジャ『ゴルシさん、アネゴに失礼ですよ』
カッカッカッ……
フェノーメノ『この煙は一体なんでありますか!?』cv.日比優理香
ゴルシ『げっ、マメちん!』
メノ『ゴルシさん!!』
メノ『ステゴさん!ジャーニー先輩!またあなた方は、カフェテリアで何をしているのでありますか!!』
ドリジャ『ご安心ください、メノさん、施設の使用許可はこちらに』スッ……
メノ『……許可証!?』
ドリジャ『はい、換気設備の使用申請も提出済みです』
メノ『し、しかし、この煙は……』
ナカヤマ『まあ、固いこと言うなよ、メノ、せっかく来たんだ、食ってけ』
メノ『ナカヤマさん!自分は風紀委員として注意を……』
ステゴ『メノ、これ食うか?』ヒョイ
メノ『あ、いただきます!』
ドリジャ『メノさん、こちらも焼けていますよ』ヒョイ
メノ『ジャーニー先輩!?』
オルフェ『メノ、余には不要だ、貴様に下賜する』ヒョイ
メノ『オルフェさんまで!?』
ゴルシ『マメちんには特別にホルモン山盛りだぁぁぁっ!!』ドサッ!
メノ『ゴルシさん!マメちんではなく、メノであります!!』
ナカヤマ『こっちのハラミも焼けたぜ、メノ』ヒョイ
メノ『ま、待ってください!まだ口の中に……!』モグモグ
(注意しに来たはずが、一瞬で焼肉会に取り込まれた……)
(しかも、なぜかメノの皿だけ肉が減らん……)
ゴルシ『おい、ナカヤマ!それはアタシが育ててた肉だぞ!』
ナカヤマ『焼き場で目を離す方が悪い!勝負は一瞬だぜ』
ゴルシ『上等だ!だったら、どっちが最高の焼き加減に仕上げられるかで勝負だ!』
ナカヤマ『面白ぇ……乗った』
カチンッ 互いのトングがぶつかる!
メノ『食べ物で遊んではいけないのであります!……むぐっ!?』
ステゴ『メノ、野菜も食え』ヒョイ
メノ『ステゴさん……!』モグモグ
トラン『焼き加減勝負?面白そう♪ゴルシさん、トング貸して!』
『トランまで!?』
ゴルシ『援軍か!よーし、任せたぞ!』
ゴルシ『現在、焼き網レースはカルビが先頭!その外からハラミが追い上げてくるぅぅぅっ!!』
スズカ『先頭……』ピクッ
トラン『スズカさん?』
スズカ『トランちゃん、右側をお願い』スッ……
トラン『スズカさんまで乗った!?』
スズカ『先頭のカルビは、私が見ます』キリッ✨
『スズカぁ!?』
ゴルシ『ここでサイレンススズカ参戦!焼き網レースは4人による大混戦だぁぁぁっ!!』
ジュウゥゥゥ!!
わー!わー!
オルフェ『余の肉を焦がすでないぞ!』
ドリジャ『皆さん、お野菜も召し上がってくださいね』
メノ『もう……皿に……乗せないで……ください……』モグモグ
ステゴ『にぎやかでいいな』
肉の焼ける音に、みんなの声が重なっていく
『……うん』
(ステゴ一族に、スズカとトラン……)
(さっきまで暇人28号やったのに……)
(肉はまだ1枚しか食べてへんけど、もう胸いっぱいです……)
ゴルシ『まだだ!まだ火力が足りねぇ!!』
メノ『ゴルシさん……?』
ゴルシ『ここからが最終直線!一気にラストスパートだぁぁぁぁっ!!』
バサバサバサバサッ!!
『どこから出した、その団扇!?』
ナカヤマ『おい、ゴルシ!風を送る方向が……!』
ボオォォォッ!!
全員『あっ……』
火災報知器『ジリリリリリリリッ!!』
スプリンクラー『プシャァァァァァァッ!!』
ゴルシ『うおぉぉぉっ!恵みの雨だぁぁぁっ!!』
メノ『ゴルシさぁぁぁぁぁんっ!!』
ゴルシ『さらばだ、明智君!』ダッ!
メノ『待つのであります!!』 ダッ!
ゴルシ『焼肉は終わらねぇぇぇぇっ!!』
メノ『終わりでありますぅぅぅぅっ!!』
ドタドタドタドタ……
『……』
(やっぱり昼のカフェテリアは……)
火災報知器『ジリリリリリリリッ!!』
スプリンクラー『プシャァァァァァァッ!!』
(ワシには刺激が強すぎたらしい……)
ちゃんちゃん♪
◇◇◇
2カ月後 URA指定病院
理学療法士『では、これで病院でのリハビリは最後になります』
ライス『ありがとうございました』
『ありがとうございました』
医師『3カ月よく頑張りましたね』
医師『まずはリハビリを継続しつつ、軽めのトレーニングから開始して、段階的に強度を上げていくようにしてください』
『わかりました』
理学療法士『我々もライスさんのレースを楽しみにしていますよ』
ライス『はい!』
『それでは、本当にお世話になりました』ペコッ
ライス『ありがとうございました』ペコッ
・・・・・・
トレセン学園 トレーナー室
スズカ『今日からトレーニング復帰ね、ライスちゃん』
トラン『おめでとさん♪コメちゃん』
ライス『うん!みんなありがとう』
『とはいっても、初めは病院で教わったリハビリの継続と、軽めのトレーニングだけだからな』
ライス『うん!』
『チームポリマ!モットー!!』
一同『?』
『体調管理が一番大事!!』
『はいっ!』
一同『……?』
『ふ、復唱ぉ!』
トラン『えぇ~……』
スズカ『ふふ……本当に大事なことよ』
ライス『うん!ライスは今回のケガでよくわかったの』
『では、改めて!』
『チームポリマ!モットー!!』
『体調管理が一番大事!』
『はいっ!』
トラン『スズカさん、今日のトレーニングメニュー教えて』
スズカ『はい、今日はこれよ』
ライス『体調管……ふぇっ!?あ、あれ?』
トラン『了解、了解♪いこ、スズカさん』
スズカ『はい、いきましょう』
スズカとトランは、何事もなかったようにトレーナー室を出ていく
ガラガラ……バタン
『……』
ライス『……』
『……ライスぅ~……』しくしく……
ライス『お、お兄さま……お兄さまにはライスがいるからね』
ー2章ー006話 願いのカタチ──まだ誰も知らない明日へ 完
第2章第6話「願いのカタチ──まだ誰も知らない明日へ」
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
たづなさんの正体が明らかになり、片桐が恐れていた「史実」にも、一つの答えが示されました。
そして、ライスの復帰を待つ間に飛び込んだステゴ一族の焼肉会。
昼のカフェテリアは、片桐には少し刺激が強すぎたようです(笑)
次回、第2章第7話。
10月4日(日)19:00公開予定です。
【KUROXの
対象話:第2章第6話・第7話
10月5日(月)7:00公開予定です。
【X】
https://x.com/utsupapa_2021
【note記事 KUROXの
https://note.com/kurox_1200
※noteは、登録・ログイン不要でそのままお読みいただけます。
KUROX