【ウマ娘if】転移した俺は、トレセン学園で運命に抗う 作:KUROX
4月
中山レース場 芝2000m GⅠ 皐月賞 どーーーん
中山レース場 控室前
雨音に混じって、遠くからスタンドのざわめきが響いてくる
『……』そわそわ……
(大丈夫……大丈夫や……)うろうろ……
(トレーニングも十分した……)ぐるぐる……左回り……
(これまで、ずっと一緒にがんばってきた……)ぐるぐる……左回り……
(初のG1、ついにこの時がきてしもうた……)ぐるぐる……左回り……
(でも!きっと……きっと、大丈夫……)ぐるぐる……左回り……
(最推しライスの勝負服姿を見ても!きっと耐えられる!!)
ライスの声『お、お兄さま……準備できたよ』
『ひゃっ!?……は、はいッ!』
ガチャ
目の前には、勝負服に身を包んだライスが立っていた
『❤❤ッ!?』
ライス『ど……どうかな?ライスの勝負服……////』
『❤❤』
ライス『お、お兄さま……?』
『❤❤』
スズカ『トレーナーさん?』
『❤❤』
マリ『お~い……ナビっちぃ?』
『❤❤』
エク『これは……トランさんの出番ですね』
『❤❤』
トラン『ふふん、トランさんにお任せ♪』スッ……
『❤❤』
トラン『目覚めよ!トレちゃん!……』
トラン『ザメハァッ!!』
スパァーーッン!(トレちゃん専用、携帯折り畳み式ツッコミハリセン)
『アウチッ!!』
『はッ!……どこに課金したらいいですかッ……!?』
トラン『おかえり、トレちゃん♪』
エク『さすが、トランさんです』
ライス『お、お兄さま……大丈夫?』
『あ、ああ……❤❤ッ……!!』
『アカンッ!!』ブンッブンッ
『はぁ……はぁ……』
『やばい……可愛さの中にも、ライスの決意や思いの強さが表れてる……最高の勝負服や……』
ライス『え!?あ、えっと……あ、ありがとう……////』
スズカ『よかったわね、ライスちゃん』
ライス『う、うん』
『コホン……少しだけ、取り乱してしまいましたが……』
一同『……少し?』
『と、ともかく!ライスの初G1挑戦だ!』
ライス『うん……でも……』
ライス『また……雨だね』
『トラン、バ場状況は?』
トラン『う~ん……今んとこは良バ場だけど、このまま降り続いたらわかんないね』
『そうか……』
ライス『……ライスがダメなk……』
『ライスぅ~!』
ライス『は、はい!』
『出走する娘は、みんな同じ条件で走るんだ』
『天気だけで誰も不幸にはならないよ』
ライス『う……うん』
『ブルボンみたいな走りをするんだろ?』
ライス『!』
ライス『うん!』
『じゃあ、雨なんか関係ないな』
ライス『うん!』
『よしっ!』
『クラシック初戦、初のG1皐月賞だが、気負わず行くんだぞ!』
ライス『……う、うん』
スズカ『トレーナーさん……逆効果です』
『え!?』
トラン『あぁ~あ、いい感じだったのにぃ~……』
エク『プレッシャーを与えているようにしか見えません』
『え ええ!?』
マリ『……ボケっち?……』
『マリッ!?』
マリ『きゃはは……』
ライス『……えへへ』
スズカ『ふふ……大丈夫みたいね、ライスちゃん』
ライス『うん!ありがとう、みんな!』
コンコンコン……
係員『ライスシャワーさん、パドックへお願いします!』
ライス『ひゃ……はいっ!』
マリ『ほら!ナビっち!掛け声!』
『お、俺!?』
ライス『うん!お兄さま』
『そ、そうか ……じゃあ……ゴク』
『皐月しょ……』
ライス『ッ!』
トラン『トレちゃん!』
『ひゃい!』
エク『……ハァー、学習してください、片桐トレーナー』
『……スイマセン……』
ライス『えへへ……』
『改めまして……』
『チームポリマ!頑張るぞぉ~……おーっ!!』
一同『おーーっ!!』
『行ってこい!ライス!』
ライス『はい!』
・・・・・・
中山レース場 パドック
雨粒を弾きながら、出走ウマ娘たちがパドックを進んでいく
実況『さあ、各ウマ娘が出揃いました!クラシック初戦、G1皐月賞!まもなく発走です!』
マチタン『ラ~イスさんっ!』
ライス『マチタンさん』
マチタン『いよいよ本番だね』
ライス『……うん』
マチタン『ふふふ……負けませんよぉ~!』
ライス『ライスだって!負けないもん!』ちらっ
ブルボン『!』
てくてくてく……
ブルボン『こんにちは、ライスさん、タンホイザさん』
ライス『こ、こんにちは!』
マチタン『こんにちは、ブルボンさん』
ブルボン『今日も私が勝たせてもらいます』
ライス・マチタン『!』
ライス『ラ、ライスだって負けないから!』
マチタン『ひょぇ~……相変わらずすっごい、自信……』
ライス『じー……っ』
ブルボン『じー……っ』
ブルボン『……それでは、失礼します』てくてくてく……
ライス『……ふぅ~……』
マチタン『ライスさん……すごいね』
ライス『え!え! ……なにがっ!?』
マチタン『ふふふ……さあ?』
ライス『??』
マチタン『じゃあ、レースでね!』
ライス『うん!』
その様子を、少し離れた場所にいたハネダサクセスが横目で見ていた
ハネダサクセス(フンッ……何あれ、自分たちだけが主役になったつもり?)
ハネダサクセス(……見てなさい)
中山レース場 ゲート前
ガシャンッ!
実況『今!皐月賞、スタートしました!』
実況『各ウマ娘、ほぼ揃った綺麗なスタート!』
実況『4番ミホノブルボン好スタート!やはり行く!迷わず先頭へ立ちました!』
実況『スタンド前、早くも後続との差を広げていく!ミホノブルボン、リードはおよそ3バ身!』
実況『9番ライスシャワーも好スタート!内を選んで4番手につけました!』
実況『第1コーナーへ入ります!先頭はミホノブルボン!』
実況『第2コーナーを回って向こう正面!ミホノブルボン、今日も自分のペースでレースを引っ張ります!』
実況『さあ第3コーナーへ向かう!ここから徐々にバ群が詰まってきた!』
実況『外から後続が進出!先頭との差を縮めにかかります!』
実況『ライスシャワー、出る場所がない!バ群の中へ完全に閉じ込められた!』
実況『残り600m!先頭ミホノブルボンはまだ余裕がある!』
実況『後続が一斉に動く!外から次々と前へ上がってくる!』
実況『第4コーナー!先頭ミホノブルボン!その脚は衰えない!』
実況『最終コーナーを立ち上がって、最後の直線!』
実況『ミホノブルボン、ここからラストスパート!さらに後続を突き放す!』
実況『残り200m!先頭ミホノブルボン!堂々と先頭を駆け抜ける!』
実況『2番手争いは大混戦!外から!そしてバ群の間を突いてハネダサクセスが上がってきた!』
実況『ハネダサクセス2番手へ!しかし先頭までは遠い!』
実況『さらに後方からマチカネタンホイザも追い上げる!じわじわと順位を上げてきた!』
実況『残り100m!ここでようやくライスシャワーの前が開いた!』
実況『ライスシャワー追い出した!ここから伸びる!しかし、あまりにも遅い!』
実況『先頭はミホノブルボン!後続を寄せつけない!』
実況『ミホノブルボン!今、ゴーールッ!!』
実況『無敗のままクラシック最初の冠をつかみました!勝ったのはミホノブルボン!』
実況『2着はハネダサクセス!』
実況『マチカネタンホイザは7着!』
実況『ライスシャワーは8着でゴール!』
片桐『……』
着順表示に映る「8着」の文字をじっと見つめる片桐
◇◇◇
5月
東京レース場 芝2000m GⅡ NHK杯 どーーん
実況『今!NHK杯、スタートしました!』
実況『16人、ほぼ揃ったスタート!』
実況『15番ライスシャワー好スタート!外から前へ上がって、2番手につけました!』
実況『先頭は8番!その後ろにライスシャワー!』
実況『しかし外から13番ハネダサクセス!早くも前へ!2番手に上がります!』
実況『向こう正面!先頭は8番、2番手ハネダサクセス!その後ろでマチカネタンホイザも虎視眈々!』
実況『ライスシャワーは徐々に位置を下げて7番手!バ群は大きく固まっています!』
実況『1000m通過は1分1秒台後半!重バ場のなか、第3コーナーへ!』
実況『ハネダサクセスが先頭との差を詰める!マチカネタンホイザも続く!』
実況『ライスシャワーも5番手まで押し上げてきた!』
実況『第4コーナー!ハネダサクセスが先頭に立った!』
実況『最後の直線!先頭ハネダサクセス!後続を引き離しにかかる!』
実況『マチカネタンホイザが追う!さらに外から9番も伸びてきた!激しい2着争い!』
実況『ライスシャワーは伸びない!前との差が詰まらない!』
実況『先頭はハネダサクセス!そのままゴーールッ!!』
実況『ハネダサクセス、皐月賞2着の雪辱を果たしました!』
実況『2着はマチカネタンホイザ!ライスシャワーは8着でゴール!』
片桐『……また、8着か』
◇◇◇
翌日 トレセン学園 トレーナー室
『今日はライスのここ2戦の振り返りと、今後の対策について考えたいと思う』
ライス『……』しゅん……
『実戦経験を生かしたアドバイスをスズカ』
スズカ『はい』
『データ分析はトラン』
トラン『ういうい』
『この、4人で進めていこう』
ライス『……ごめんなさい』
『ライス、謝ることなんてないんだよ、しっかり敗因を分析して今後に役立てればいいだけなんだからさ』
ライス『……うん』
『それに、今回の敗因は分かり易いからね』
ライスは黙ったまま、モニターへ視線を向ける
『まずは皐月賞から、トラン』
トラン『はいよ~、VTR流すよん』
再生が始まると、部屋から会話が消え、皐月賞の実況だけが流れていく
じーっ……
・・・・・・
『……うん、まずはここだな』
VTR【実況『ライスシャワー、出る場所がない!バ群の中へ完全に閉じ込められた!』】
『スタートから好位置をキープ、もっともロスの少ない内々を進む……』
『けど、それが裏目に出て、第3コーナーで上がってきた後続組と』
『先頭集団との差が詰まり完全に囲まれてしまった』
画面の中で進路を失う自分を、ライスはじっと見つめる
『結局、前が開いたのが残り100m手前……時すでに遅し……』
ライス『……』
『スズカだったら、この場面どうした?』
スズカ『え!? ……トレーナーさん、意地悪で聞いてません?』
『はは……まぁまぁ、答えて、スズカだったら?』
スズカ『もぅ……そもそも私は逃げて、自分のペースで走りますから……囲まれること自体あまりないです』
『この時のライスみたいに囲まれたら?』
スズカ『多分……ライスちゃんと同じ結果になっていたと思います』
ライス『!』
『うん、トレーナーさんもそう思います』
スズカ『絶対わかってて聞いてますよね?』むぅ
『はは、トレーナーの言葉より、実際にレースを走ったウマ娘の言葉の方が伝わることが多いんだよ』
ライス『……』コクコク……
『ちなみにトランだったら?』
トラン『へ?ウチ?……ウチだったら外に出るかなぁ~……思いっきり!』ニヤリ
『多少外の娘に接触しても……だろ?』
トラン『ま、レースは戦いだしねぇ~♪』
ライス『……』
『うん、ライスやスズカにもトランくらいパワーがあったらいいんだけどね』
『そんなすぐには身に付かないし、そもそも小柄なライスには向いていない』
ライス『……うん』
『皐月賞の敗因は、バ群に呑まれて身動きが取れなくなってしまったこと』
ライス『はい』
『スタートは良かった、コース取りも正しい、けどその後の他のウマ娘の動きまでは見れていなかった……』
『けど、しょうがないよな、そこまで気にしてたらブルボンに追いつけないもんな』
ライス『お兄さま……』
『実力不足じゃない……次に生かそうな』なでなで
ライス『うん……////』
『次、NHK杯……トラン』
トラン『はいよ~……ぽちっとな』
・・・・・・
VTR【実況『ライスシャワーは伸びない!前との差が詰まらない!』】
VTR【実況『先頭はハネダサクセス!そのままゴーールッ!!』】
VTR【実況『ハネダサクセス、皐月賞2着の雪辱を果たしました!』】
VTR【実況『2着はマチカネタンホイザ!ライスシャワーは8着でゴール!』】
ライス『……』しゅん……
『うん……トラン、ライスの近走の天候とバ場状態は?』
トラン『えっとねぇ……』
トラン『芙蓉Sは曇りで重バ場、スプリングSは小雨で、これも重バ場』
トラン『皐月賞は雨だけど、バ場は良のまま……で、昨日のNHK杯は曇りで重バ場だね』
トラン『こうして並べると、ここ4戦、一度も晴れてないんだよねぇ……』
『う、うん』
ライス『……やっぱり、ライスが……』
『ライスぅ~……?』
スズカ『ライスちゃん……?』
トラン『コメちゃん……?』
ライス『え!あ、えっと……ごめんなしゃい』
『うん、天候はみんな一緒、ライスに悪いとこは一つもない』
ライス『……はい』
『とはいえ、4戦連続かぁ……』
ライス『……』しゅん……
スズカ『トレーナーさんッ!』キッ
『あ!いや、そういう意味じゃなくって……』わたわた
スズカ『……むぅ』
『ごめんなさい……』
トラン『トレちゃん、進めて進めて』
『……はい』
『なぜ、最後の直線、ライスの末脚は伸びなかったのか』
『トラン、ライスの通過順位と上がりタイムを教えてくれ』
『上がりは、勝ったサクセスのも頼む』
トラン『ほ~い……』
トラン『コメちゃんの通過順位は、2番手、7番手、5番手……最終8着』
トラン『上がり3ハロンは36秒3、勝ったハネダサクセスは36秒0』
トラン『ゴールタイムは0秒6差、上がりだけなら0秒3差だね』
『2番手から、3コーナーで7番手……そこから4コーナーまでに5番手へ戻してる』
『ライス、3コーナー手前でバ群に包まれた時、一度速度を落としたな?』
ライス『……うん』
『重いバ場で体力を削られながら、位置を戻すためにも脚を使った……』
『それでも、上がりはサクセスと0秒3差……』
『末脚が伸びなかったんじゃない』
『伸び始めるのが遅れて、伸び切る前にゴールが来たんだ』
『ライスは鋭い差し脚ってタイプじゃないからな、バ群に揉まれてペースも乱れて』
『ラストスパートのタイミングもわずかに遅れた……これがNHK杯の敗因だろう』
ライス『……』しゅん……
『バ群に呑まれても何もいいことはない、皐月賞とNHK杯での走りで十分わかったな』
トラン『じゃあ、どうすんのさ?ウチやスズカさんみたいに逃げる?』
『う~ん、それも考えたんだけど……ブルボンも逃げだし、逃げには今よりも厳密なペース管理も必要になってくる』
『今からじゃ、ダービーには間に合わないだろ』
スズカ『今のままの走りで、バ群に呑まれないように、ブルボンさんにも遅れないように……』
トラン『……無理じゃね?今からじゃパワー強化も間に合わないし、逃げも出来ないんじゃ……』
ライス『……ぅぅ』
『それが、そうでもないんだな~』
ライス『えっ!?』
『バ群に呑まれにくいし、ペースもあんまり考えなくていい作戦があるんです』
スズカ『そんな走り方あるんですか?』
『トラン、ブルボンの今までの全レース通過順位出して』
トラン『え?ブルボンさんの?……出すけど……』
ライス『?』
トラン『!?』
トラン『これ……デビュー戦が10番手、7番手』
トラン『2戦目は2番手、2番手……朝日杯は2番手、2番手、2番手』
トラン『スプリングステークスと皐月賞は……どっちも、1番手、1番手、1番手、1番手』
トラン『……デビュー戦以外、通過順位が一度も動いてない』
『デビュー戦だけはスタートミスがあって、後方からのレースになったけど』
『それ以降は、スタートから一切順位を落とさず、上げず……最後は1着』
『恐ろしい程、正確かつ安定したペースで走ってる』
ライス『……すごい』
『そして、今のブルボンは逃げ、常に先頭をキープ、おそらくダービーでも逃げでくるだろう』
『そのブルボンに終始ついていければどうなると思う?』
トラン『そっか!常に先頭を走るブルボンさんの後ろならバ群に呑まれることはほとんどない、なんたって先頭がブルボンさんだからね、それにブルボンさんがペースを作ってくれる』
スズカ『本当についていくだけでいいのね』
ライス『……ついていく』
『そう、ブルボンのスピードについていくことさえできれば……』
ライスは、遠ざかっていったブルボンの背中を思い出す
ライス『……』
『2度ブルボンとレースを走ったライスならそれがどれだけ難しいか、身をもって分かってるだろ』
ライス『うん』
『けど、そこまで心配することはないぞ』
ライス『え?』
『日本ダービーは、これまでのレースで最長の2400mだ』
『自分の力を最大限生かすペースで正確に走るブルボンなら、そこまでのハイペースにはならないだろう』
『それに、距離が伸びれば伸びるだけ、ライスの持ち味である長くいい脚が使える』
『しっかり作戦がハマれば……勝てる』
ライスは息を呑み、ゆっくりと顔を上げる
ライス『ライスが……ブルボンさんに……』
『そう!これこそ……』
『行け行け!ブルボン!コバンザメ大作戦だ!』
ライス『……』
スズカ『……相変わらずね……』
トラン『……何?トレちゃん……その作戦名……?』
『え!?あれ?わかりづらい!? ほら、コバンザメって、大きなさk……』
トラン『意味じゃなくてッ!……ネーミングセンスが絶望的に、ダサい!』
『がぁーーーーーん!!』しゅん……
ライス『ラ、ライスは……わかりやすくて、とってもいいと思うよ!』
スズカ『いいのよライスちゃん、無理に庇わなくても』
『がぁーーーーーん!!』しゅん……
トラン『コメちゃんの作戦なのに、行け行け!ブルボンって……敵応援してどうすんのさ……』
『がぁーーーーーん!!』しゅん……
ライス『う、うん、ライスも……そこはどうかな?って、思っちゃった』
『チーーーーーーーーン……』
スズカ『名前はともかく、作戦はこれで決定ね』
トラン『早速トレーニングに取り掛かろ、コメちゃん!』
ライス『うん!』
『チーーーーーーーーン……』
◇◇◇
翌日 チームポリマ部室
エク『……』そわそわ……
ガチャッ
エク『ひゃあっ!』
(ひゃあっ?)
エク『お、お疲れ様です、片桐トレーナー』そわそわ……
『お疲れ……あれ?エク一人?』
エク『はい、マリはクラスの用事があるので』そわそわ……
『ふ~ん……どっこいせ』座る
エク『……』うろうろ……
(ん~?エクにしては、妙に落ち着きがないな)
『なんでそんな端っこに立ってるの?座れば?』
エク『……はい』サササ……ぽすっ
(隣っ!?)
エク『……』
(ん?なんか落ち着いた?)
『エク、最近がんばってるみたいだな』
エク『いえ、普通にトレーニングメニューをこなしているだけです』ピクッピクッ
『スズカが褒めてたよ、まじめに取り組んでくれて偉いって』
エク『当たり前のことです』✨フリフリ……←尻尾
『じゃあ、トレーナーさんからもご褒美だ』なでなで
エク『こ、子供扱いしないでください』✨ブンブン……
(顔とセリフはクールなのに……)
『ああ、ごめんごめん』パッ
エク『……!』ピタッ……しなぁ←耳
エク『……』しゅん……
『じーっ……』
『よ』なでなで
エク『!』✨ブンブン……
(ふはは……可愛いやつめ❤)なでなで……
エク『……』✨ブンブン……
ガチャッ
マリ『エク、お待たせぇー』
エク『マリ!?』✨ブンブン、ブンブン……
『ん?お疲れ、マリ』なでなで……
マリ『……エク、どしたん? 尻尾……扇風機みたいになってるよ? 』
エク『え!?えっと……こ、これは 』✨ブンブン……
マリ『じーっ……』
『……』なでなで……
エク『ちょ、ちょっと!片桐トレーナー!もう、撫でなくていいです!』 ブンブン……
『ん?嫌だった?』なでなで……
エク『え!?……えっとぉ、嫌……という訳では、ないのですが……』 ブンブン……
マリ『じーっ……』
『じゃあ、良くね?』なでなでなでなで……
エク『んー……////』 ブンブンブンブン!!
マリ『……エク、尻尾ちぎれんじゃね?』
(ぶははは……おもろ♪)
エク『も、もうホントに!』ガタッ
『あ!ごめんごめん、あまりにエクの反応が可愛くて……つい』
エク『か、かわッ!?……////』ブンブン……
マリ『おんやぁ~?……お顔が赤いですぞぉ~……エクぅ?』
エク『し、知りません!////』ブンブン……
ガチャ
スズカ『お疲れ様です』
ライス『こんにちは』
『お疲れさん』
マリ『お疲れー』
エク『……////』
エクは赤い顔のまま、スズカたちからそっと視線を逸らす
スズカ『あら?エク、顔が真っ赤よ?大丈夫?』
エク『……だ、大丈夫です!////』
『はっはっはっ……』
マリ『あひゃひゃ……』
スズカ・ライス『?』
『さ、トレーニング始めるぞ』
一同『はい!』
・・・・・・
トレーニングコース
『では!日本ダービーに向けた、行け行け!ブルボン!コバンザメ大作戦トレーニングだ!』
マリ『何それ!?ダッサ!!』
『ぐぬぬ……見てろよ、マリがデビューしたら、もっとダサい作戦考えてやるからな!』
マリ『はッ!?フツーに嫌なんですけどっ!?』
『ははは……お前のトレーナーは俺だ!諦めろ!』
マリ『ちょっ、待ってよナビっち!せめて名前はうちが考えるからさぁ』
『べー、ダメでーっす!』
マリ『ちょっとぉ~、エクからもなんか言ってよぉ』
エク『え?わかりやすくて、いい作戦名だと思うけど?』
マリ『マッ!?』
エク『マ』
『エクはいい子だなぁ~……』なでなで……
エク『……//』✨ブンブン……
マリ『ダメだ……エクめ、完全にナビっちに懐柔されてる…… 』
スズカ『トレーナーさん、そろそろトレーニング開始しないと……』
『ああ、そうだな、もうそろそろだと思うんだけど……』
トラン『トレちゃーん!頼まれてたもん届いたよん♪』
『お!グッドタイミング!トラン!』
ライス『お兄さま……なに?その箱?』
『ふふふ……これこそ、行け行け!ブルボン!コバンザメ大作戦トレーニングの秘密兵器!』ごそごぞ
ライス『秘密兵器?』コテン
『見よ!これぞ幻のにんじん!』
『愛知県碧南市、鈴盛農園が誇る、スウィートキャロットリリィ・ザ・ブラック……その名も〝黒王〟!冬場には糖度12から14度にもなる、甘くて希少な黒にんじんだ!しかもこいつは、その冬採れを低温貯蔵した特別品!』
ライス『黒い……にんじん?』
『トラン、これ洗っといてくれた?』
トラン『うん、トレちゃんがすぐ食べられるようにっていうから、全部洗っておいたよん』
『そっか、じゃあまずはトランにご褒美だな』
トラン『ん?』
『はい、トラン、あーん……』
トラン『あー……』
『ほいっ』
トラン『ポリッ!』
トラン『んんーーーッ❤❤❤』✨
ライス『!!』
トラン『なんじゃこりゃー!あんっま!もう果物じゃん!』
ライス『……』
『はい、スズカ……あーん』
スズカ『え?……あー……』
『ほいっ』
スズカ『ポリッ!』
スズカ『んんーーーッ❤❤❤』✨
ライス『……ぁ』
『はい、次はエク、あーん』
エク『え? 私も……ですか?……あー……』フリフリ……
『ほいっ』
エク『ポリッ!』
エク『んんーーーッ❤❤❤』✨ブンブンブンブン……
ライス『……ぁ、ぁぁ』
マリ『ナビっち!ナビっち!次うち!うち!』
『ああ、マリ……お前にはこれだ』カポッ
マリ『え?』
『で、この黒ニンジン〝黒王〟を……こうして……』
マリにかぶらせたウマ娘用ヘルメットの頂点から垂らされた釣り糸に黒王を括り付ける
マリ『……もしかして……?』
マリの背中側へ垂れた黒王が、ぶらぶらと揺れる
『これで、ヨシ!』
マリ『え?試食は?黒王は?』
『作戦名ばかにしたから、マリにはあげませぇ~ん』
マリ『えぇぇぇぇ~!ナビっちのけちぃ!』
『ははは……!なんとでも言いたまえ!』
スズカ『トレーナーさん、秘密兵器ってもしかして……』
『うん、黒王を付けたマリに逃げてもらって、ライスにはその後ろをついていってもらうんだ』
トラン『いや、何もにんじんぶら下げなくても……普通についていくんじゃダメなの?』
『ライスはやさしい子だからね、普通にマリについていくだけだと、本来の闘争心が出ないと思ったんだよ』
エク『ライスさんの目……効果はありそうですね』
ライス『……黒王……ゴクッ』
マリ『え? ライスちゃん?ちょ、目が怖いんですけど……』
『トラン!エク!』
トラン『はいよ』
エク『はい』
『トランとエクの二人は仮想バ群の役をしてくれ』
トラン『仮想バ群?』
『うん、エクはライスの隣に付かず離れず、ライスが外に出れないように』
エク『了解しました』
『トランはエクの少し前で、マリとライスの間が空いたらそこに入るようにしてくれ』
トラン『OK♪』
『あ!でもパワープレーは禁止だぞ!』
トラン『わかってるって、コメちゃんが少しでも遅れてマリとの間が空いたらそこに入ればいいんでしょ?』
『そういうこと♪ 二人ともよろしくな!』
『あとは……ライス!』
ライス『……はっ! はい!』
『ライスの黒王はあれだからな』マリを指さす
ライス『……うん……』
『じゃあ、みんなスタートラインについてぇ』
ライス『じーっ……』
マリ『ラ、ライスちゃん……お手柔らかに、ね?』
ライス『じーっ……』
マリ(ちょっ!全然聞いてないんだけどぉっ!)
『準備いいかぁ~!?』
『マリぃ~……死ぬ気で逃げろよぉ~……』
マリ『デビュー前のウマ娘に言うセリフかぁっ!?』
『ガハハハッ……位置について!』
マリ『ちょちょっ!……』
ライス『じーっ……』
『よぉーい……』
ライス『じーっ……』
マリ『もお!こうなったらガチで逃げ切ってやる!』
『……どんッ!!』
マリ『でやぁぁぁぁー……!!』
ライス『……コクオウッ!!』
ライスは一瞬でマリの背後へ迫り、目前の黒王へ手を伸ばす
『あ』
スズカ『あ』
トラン『あ』
エク『あ』
ライス『……えいっ♪』パシッ
マリ『あれ?』
ライス『お兄さま!お兄さま!』✨
『んんーーっ……』
ライス『ライス!取ったよ!』✨
『め、めしあがれぇ~……』
ライス『やったぁぁー……ポリッ!』
ライス『んんーーーッ❤❤❤』✨
『マリさん……』ゴゴゴゴ……
マリ『え?えぇッ!?うちのせいっ!?』
『死ぬ気で逃げろって言っただろう!』
マリ『逃げたし!ガチで!ってか、無理ゲーじゃね?』
『まさか、これほどとは……』
ライス『んんーーーッ❤❤❤』
スズカ『凄いスタートダッシュでしたね……』
『ハァー……ハンデ付けるか……』
・・・・・・
マリ『はぁ!はぁ!はぁ!……』
『マリィ!また追いつかれるぞ!』
マリ『ちょッ!うちのトレーニングじゃないっしょぉ~っ!!』
ライス『……コクオウ……コクオウ』
エク(ライスさん……すごい集中力)
スズカ『ライスちゃん……普段より凄い走りですね』
『うん、やっぱりライスは明確な目標がある方が実力が出せるな』
ライス『……えいッ♪』パシッ!
マリ『……はうぅ~』
ライス『お兄さま!お兄さま!』✨
『はは……めしあがれ』
ライス『いただきます!』✨
ライス『んんーーーッ❤❤❤』✨
トラン『はぁ……はぁ……コメちゃんすんごい、集中力……全然間に割り込めないよ』
『トランもお疲れ様』
マリ『ナ……ナビっち、ちょっと休憩……しよ……』
『マリぃ……』
マリ『……え?』
『はい、あーん』
マリ『あー……ポリッ!』
マリ『んんーーーッ❤❤❤』✨
マリ『ヤバッ!うまっ!あまっ!なにこれっ!?』
『ははは……マリもよくがんばってくれたからな』
『ライス、どう?周りを囲まれても気にならない?』
ライス『え!?あ……そっかぁ……ライスずっとトランちゃんとエクに囲まれてたんだ』
『ははは、周りが気にならないくらい集中してたか』
(本来なら周りが見えなくなるのは決して良くはない、せやけど、今はこれでええ、対ブルボンならこのままでええ)
スズカ『トレーナーさん』
『ん?』
スズカ『黒王が……今ので最後の1本でした』
『ありゃ、そうか……じゃあ、ちょっと早いけど今日のトレーニングはここまでだな』
『みんな、ダウンして上がってくれ』
一同『はい!』
『ライス』
ライス『はい?』
『いいか?今日のついていく意識を忘れないように!普段から目標を捉える意識を持つようにな』
ライス『うん!』
トラン『コメちゃ~ん!ダウン行くよー!』
ライス『うん!』タッタッタッ……
ライス(ついてく……ついてく……)
・・・・・・
マリ『う゛ぅ~……ガチ疲れたんだけどぉ……』 タッタッタッ……
エク『お疲れマリ、あのライスさんからよく逃げてたと思うよ』タッタッタッ……
トラン『うんうん♪ 集中力ヤバかったもんねコメちゃん』タッタッタッ……
ライス『ついてく……ついてく……』タッタッタッ……
マリ・エク・トラン『!?』ビクッ!
マリ『え? ライスちゃん?……も、もうトレーニング終わったよ?』 タッタッタッ……
ライス『ついてく……ついてく……』タッタッタッ……
マリ『もしも~し?……ライスちゃん?』 タッタッタッ……
ライス『ついてく……ついてく……』タッタッタッ……
エク『こ、これは……』タッタッタッ……
トラン『うん、完全にロックオンされたね……』 タッタッタッ……
マリ『もう黒王は無いんだってぇ~……!!』 ダーッシュ!
ライス『ついてく……ついてく……!!』ダーッシュ!
エク『……マリ』
トラン『コメちゃん、ダウンでダッシュしたら、ダウンの意味無くなっちゃうよ……』
◇◇◇
5月末
東京レース場 芝2400m GⅠ 東京優駿 どーーーん
実況『その戦いに勝てれば、辞めてもいいというトレーナーがいる。』
実況『その戦いに勝ったことで、燃え尽きてしまったウマ娘もいる。』
実況『その戦いは、僕たちを熱く、熱く狂わせる。』
実況『勝負と誇りの世界へようこそ!ダービーへようこそ!!』
実況『G1東京優駿・日本ダービー!まもなく開始です!!』
ワアアアアアアアアアアアアアッ!!
ー2章ー009話 あの背中を追って、winning the soul 完
第2章第9話「あの背中を追って、winning the soul」
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
ライスのためのトレーニングなのに、マリのほうが大変そうですね(笑)。
黒王がなくなっても追いかけられるマリ、お疲れさまでした。
そして、いよいよ日本ダービー。
ライスがあの背中にどこまで迫れるのか、次回も見届けてください。
次回、第2章第10話。
10月14日(水)19:00公開予定です。
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対象話:第2章第8話・第9話
10月12日(月)7:00公開予定です。
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【note記事 KUROXの
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