【ウマ娘if】転移した俺は、トレセン学園で運命に抗う   作:KUROX

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ー2章ー010話

 

 

 

5月末

 

東京レース場 芝2400m GⅠ 東京優駿 どーーーん

 

スタンドを揺らす大歓声が、控室の奥まで響いている

 

東京レース場 控室

 

コンコンコン……

 

『はい、どうぞ』

 

ガチャッ

 

???『失礼します』

 

『たづなさん……』

 

たづな『みなさん、お疲れ様です』

 

『来てくれたんですね』

 

たづな『ええ、一生に1度のクラシック……しかも日本ダービーですから♪』

 

『ありがとうございます』

 

マリ『ヤバッ、これでチームポリマ全員集合じゃん!』

 

たづな『うふふ、私もポリマの一員ですから……ライスさんは……』

 

ライス『……ついてく……』

 

スズカ『……ライスちゃん』

 

たづな『……すごい集中……』

 

『……』

 

スズカ『ライs……』

 

『スズカ』

 

ライスに話しかけようとするスズカを制止する

 

スズカ『トレーナーさん……』

 

『そのままで……』

 

スズカ『でも……ライスちゃん、少しかかり気味じゃ……』

 

『いや、いい……ライスはこれくらいでいいんだ』

 

ライス『ついてく……ついてく……ブルボンさんに』

 

スズカ『……』

 

トラン『……』

 

マリ『……』

 

エク『……』

 

たづな『……』

 

ライスの集中を乱さぬよう、息を潜めるように沈黙を守るポリマの面々

 

控室には張りつめた緊張感だけが漂っていた……

 

ライス『……ついてく……ついてく』

 

・・・・・・

 

コンコンコン……

 

ライス『!』

 

係員の声『ライスシャワーさん、パドックへお願いします!』

 

『よしッ!!』

 

ライス『ひゃあッ!』 

 

トラン『トレちゃん声デカすぎ』 

 

『ああ! ごめんごめん』 

 

ライス『……お兄さま……?』

 

『ライス!今さら作戦の話はしない!自分を信じて!全てを出してこい!』

 

ライス『はい!お兄さま!』

 

『行くぞ!チームポリマ!おーッ!』

 

一同『おーッ!』

 

 

・・・・・・

 

東京レース場 パドック

 

実況『世代の頂点を決めるGⅠ東京優駿・日本ダービー!』

 

実況『選ばれし18人のウマ娘が、次々とパドックへ姿を現します!』

 

ワアアアアアアアアアアアアアッ!!

 

実況『7番、現在8番人気、マチカネタンホイザ』

 

実況『皐月賞7着、前走NHK杯では2着』

 

実況『持ち前の粘り強い走りで、今度こそ世代の頂点へ手が届くか!』

 

実況『8番、現在2番人気、ハネダサクセス』

 

実況『皐月賞2着の雪辱を果たし、前走NHK杯で見事勝利!』

 

実況『打倒ミホノブルボン、その一番手としてダービー制覇に挑みます!』

 

実況『13番、現在16番人気、ライスシャワー』

 

『フンッ!なにが16番人気だ……』

 

トラン『気持ちは分かるよトレちゃん、前2走の8着が響いてるね……』

 

実況『皐月賞、NHK杯では、ともに8着』

 

実況『しかし、距離はさらに伸びて2400m!低評価を覆し、この大舞台で真価を発揮できるか!』

 

実況『そして15番、現在1番人気、ミホノブルボン!』

 

ワアアアアアアアアアアアアアッ!!

 

実況『デビューから5戦5勝!皐月賞を圧倒的な走りで制した無敗の王者!』

 

実況『史上にその名を刻む、無敗のクラシック二冠達成なるか!』

 

ライス『……』

 

パドックを進むライスの視線は、ただ一人……ミホノブルボンだけを捉えている

 

もう、二人に言葉は必要なかった

 

 

・・・・・・

 

東京レース場 ゲート前

 

 

ライス(ついてく……ついてく……)

 

実況『さあ、大外18番ゆっくりとゲートに収まって、日本ダービー。態勢完了であります』

 

ガシャンッ!

 

実況『今!ゲート開いた、スタートを切りました!』

 

実況『さあ、ブルボンいいスタート第1コーナー、400メートルまでにまず先頭に立つのか。スーッと行く、スーッと行く』

 

ライス(ブルボンさんに……ついてくっ!!)

 

実況『ライスシャワーと一緒に、ゼッケン15番ブルボンが行った。やはりブルボン行った』

 

実況『ミホノブルボンが17人を従えて、第1コーナー先頭でレースを進めようとしております』

 

実況『ブルボンが先頭に立ちました、その後ろにライスシャワー、内の方からは4番が続きます』

 

実況『9番が外目から3番手から2番手をうかがいます、ブルボンが行きました』

 

実況『このまま2400メートルをミホノブルボン、一気に逃げ切ることが可能なのでしょうか』

 

(そうや、それでいい……逃げろブルボン!そのまま行ったらええ、ライスは絶対に置いていかれへん!)

 

実況『ブルボンが3バ身から4バ身、後続を引き離して向こう正面に入っていこうとしております』

 

実況『さあ、先頭から見てみましょう』

 

実況『先頭はミホノブルボンが立っています、その後ろ3バ身ぐらい距離があります』

 

実況『外目をつきまして9番、そして13番ライスシャワー。インコース4番、ちょっと持っていかれている』

 

実況『その後方でありますが、8番ハネダサクセスがいる。インコースには6番であります』

 

実況『さらに12番がいる。さらに外から16番、スーッと14番。内からスーッと1番が上がっていった』

 

実況『さらにその後方でありますが、11番、さらに18番。5番も後方待機であります』

 

実況『一人置きまして17番、さらに10番。その後ろに7番マチカネタンホイザ』

 

実況『こういった態勢で、早くもブルボンは3コーナーの坂を上り切っています』

 

実況『3コーナーから4コーナーに向かっていく、まだ依然としてブルボンが1バ身ちょっとのリードがある』

 

実況『1バ身ちょっとのリードがある!ライスシャワーが2番手であります、ライスシャワーが2番手!』

 

(ええぞ!ライス!周りを気にせず自分の走りができてる!こっから……!)

 

実況『さあ、外目をつきまして黄色いゼッケン、9番がスーッと差を詰めてまいりました』

 

実況『3、4コーナーの中間地点大ケヤキの向こう、ブルボンが依然として先頭』

 

実況『ミホノブルボン先頭!そしてライスシャワーが2番手、ライスシャワーが2番手!』

 

実況『さあ、有力ウマ娘がブルボンにここから襲いかかる!第4コーナーカーブ!』

 

実況『府中の直線は500メートル!府中の直線は500メートル!』

 

『いけぇー!ライスぅーーッ!!』

 

ライス(最後の直線、ここから……)

 

ライス(ここから!ライスが追いつくんだ……!!)

 

実況『ブルボン先頭!ブルボン先頭!ブルボン先頭で、まもなく400メートルの標識を切る!400を切る!』

 

実況『ここからはブルボン、未知の世界!ここからは未知の世界!』

 

実況『しかしブルボン先頭!ブルボン先頭であります!』

 

ライス『やあぁぁぁーーーッ!!』

 

実況『2番手ライスシャワーも追い出した!しかし差が縮まらない!』

 

実況『外の方から5番やってきた!5番もやってきた!』

 

実況『まだしかし、先頭とは2バ身から3バ身!残り200だ!2200を通過した!』

 

実況『2番手ライスシャワー!しかし大外から5番が一気に伸びてきた!』

 

実況『5番がライスシャワーに並んだ!内のライスシャワーも譲らない!』

 

実況『さらに後方からマチカネタンホイザも追い込んでくる!』

 

ライス『!!』

 

ライス(ブルボンさんッ!……速い……くぅッ!)

 

実況『ブルボン先頭!ブルボン先頭!ブルボン先頭だ!』

 

実況『ブルボン3バ身から4バ身!』

 

実況『おそらく勝てるだろう!おそらく勝てるだろう!』

 

実況『もう大丈夫だぞ!』

 

実況『ブルボン!2400!3バ身から4バ身リードで逃げ切った!』

 

実況『6戦6勝!無敗の二冠達成であります!』

 

実況『2番手は混戦!内ライスシャワー、外5番!これは写真判定です!』

 

実況『ミホノブルボン好スタートから2400メートルを逃げ切りました!』

 

実況『スタンドからは、ブルボンコールが巻き起こっております!』

 

実況『そして今!写真判定の結果が出ました!2着はライスシャワー!16番人気のライスシャワー2着です!』

 

実況『3着に5番!4着に7番マチカネタンホイザとなりました!』

 

ライス『はあ……はあ……はあ……ッ!』

 

ライス(2着……?……最後まで……ブルボンさんについていけた……)

 

ライス(でも、追いつけなかった……)

 

『くっ、まだ……届かないのか……』

 

 

・・・・・・

 

東京レース場 地下バ道

 

頭上からは、ブルボンを称える大歓声がまだ遠く響いている

 

カッカッカッ……

 

『お疲れ様、ライス』

 

ライス『……お兄さま』

 

『いい走りだった……』

 

ライス『……でも、追いつけなかった……』

 

『うん、認めよう……ブルボンにはまだ届かない』

 

ライス『……やっぱり、ライスじゃ……』

 

『まだ、ブルボンの背中は見えなかったかい?』

 

ライス『!』

 

ライス『ううん、今日はずっとブルボンさんの背中見てたよ』

 

『そう、今までは背中も見えなかったろ?』

 

『捉えたんだ、ブルボンの背中を、ライスの力で』

 

ライス『ううん、違うよお兄さま……』

 

『え?……』

 

ライス『ポリマのみんなが協力してくれたから……作戦、手伝ってくれたから……』

 

『……』

 

ライス『だから、ブルボンさんの背中に集中できた……ついていけたの』

 

スズカ『……ライスちゃん』

 

マリ『へへ……うちらも役に立ったね、エク』

 

エク『……うん』

 

トラン『あと、たったの4バ身だよ、コメちゃん』

 

ライス『うん!』

 

『そう!あとは追いつき、追い越すだけ!』

 

『そして、クラシック最後の1冠、菊花賞はライスの得意な長距離戦!』

 

『今度こそブルボンに勝って、ライスシャワーになろう!』

 

ライス『うん!』

 

マリ『ん?ライスちゃんはライスシャワーじゃんね……?』

 

エク『?』

 

トラン『ふふ……』

 

スズカ『さ、控室に戻りましょう……たづなさんが待ってるわ』

 

・・・・・・

 

東京レース場 控室

 

ガチャッ

 

たづな『おかえりなさい、ライスさん♪』

 

ライス『ただいま、たづなさん』

 

たづな『ダービー2着、おめでとうございます!』

 

ライス『……うん、ブルボンさんには追いつけなかったけど……』

 

たづな『ふふ……』

 

ライス『?』

 

たづな『ライスさん、毎年このダービーを目指して、何人のウマ娘がデビューしていると思います?』

 

ライス『え? え、えっと……』 

 

たづな『毎年3000人以上がデビューして、ダービーに出走登録するウマ娘だけでも1000人を超えるんですよ』

 

ライス『……1000人』

 

たづな『ライスさんは、その一生に1度のダービーで2着になったんです』

 

たづな『ご自分にもっと自信を持ってください』

 

ライス『……うん、ありがとう、たづなさん』

 

(はは、たづなさんらしい励まし方だな……)

 

たづな『ところで、片桐トレーナー』

 

『はい?』

 

たづな『ライスさんの今後のローテーションは決まっていますか?』

 

『はい、6月は1カ月休養に充てるつもりですが』

 

ライス『えっ!?』

 

『去年9月の芙蓉ステークスでケガをしたとき以来、レースとトレーニングでまとまった休みを取ってなかっただろ?』

 

ライス『うん、で……でも!1カ月も休んじゃったら、ブルボンさんに……』

 

『いいか?ライス、7月から2か月間の夏合宿に、トレーニングのピークを持っていきたいんだ』

 

ライス『……うん』

 

『高くジャンプするためには、深くしゃがまなければいけないだろ?今は夏合宿に備えて、しっかり身体を休める時期なんだ』

 

ライス『……高く……うん!わかったよ、お兄さま!』

 

たづな『それでしたら、いっそのことチームの皆さんも、早めの夏休みを取ってはいかがですか?』

 

『チーム全員ですか?』

 

たづな『はい♪』

 

『いや、トランとマリとエクは通常トレーニングがありますし……』

 

『それに、デビュー前の夏合宿は任意参加だから……』

 

『トラン、マリ、エク……7月からの夏合宿、3人はどうする?』

 

トラン『え?もちろん参加に決まってんじゃん、コメちゃんのトレーニングも手伝いたいし』

 

マリ『うちも行くっしょ!合宿、めっちゃ楽しそうじゃん!』

 

エク『私も参加します』

 

『ほら、全員やる気ですし、チームで休むのは……』

 

たづな『皆さんが夏合宿に参加するなら、なおさらその前に早めの夏休みが必要です』

 

『う~む……夏休みか、ということであれば……その間に合宿メニューも組めるか……』

 

たづな『片桐トレーナーも休まなきゃいけません!』

 

『……え?俺も?』

 

スズカ・たづな『むっ……』 

 

スズカ・たづな『当たり前ですッ!』

 

『はうッ!』 

 

たづな『片桐トレーナー、最近お休みはいつ取りました?』

 

『え!?いや……週末は普通に休んでますよ ライスのレースがあるときは休めませんけど……』 

 

たづな『スズカさん……?』

 

スズカ『平日は現役のライスちゃんのトレーニングに付きっ切りで、メニュー作りもしています』

 

『そ、それはそうだろ!トゥインクルシリーズ、しかもクラシック真っ只中だし……』

 

スズカ『週末、ライスちゃんのレースがないときも、トランちゃんやマリちゃん、エクの1週間分のデータを整理して、トレーニングメニューを作っています』

 

たづな『……ギロッ』

 

『んーーっ……』 

 

スズカ『私の知る限り、トレーナーさんが休んだ日はありません』

 

『え!いやいや……休んでるって!』 

 

たづな『片桐トレーナー……丸一日、ポリマの事を一切せず、自分のために休んだのはいつですか?』

 

『え!? え……えぇ~っと……』

 

ポリマ一同『じーっ……』

 

『き、記憶にございません……』 

 

たづな『ハァーっ……そんなことだろうと思いました』 

 

『いや、ポリマのために動くのは苦にならないし……みんな大好きだし……』 

 

ポリマ一同『キュンッ❤』

 

たづな『そういう問題ではありませんッ!』

 

『はうッ!』 

 

たづな『ご自身のご病気のこともあります!しっかり休養をとることの重要さは分かっていますよね?』

 

『う゛……ハイ』

 

たづな『チームポリマ運営責任者として、1カ月間のチーム完全休養を提案します!』

 

『……しかし……』

 

スズカ『トレーナーさん、チームポリマのモットーは覚えていますか?』 

 

『はい……体調管理が一番大事……です』 

 

トラン『トレちゃんは自分のこと後回しにしすぎなんよ、そりゃあウチらの事優先してくれるのは嬉しいけど……』

 

『別にそんなことはないと思うんだけど……俺がしたくてしてるだけであって……』

 

マリ『うっわ、ここまで言われてもまだ働こうとしてるの?ナビっち?』

 

『だ、だから!別に仕事って思ってないっていうか……なんというか……本中華?』 

 

エク『意味がわかりませんよ、片桐トレーナー……』

 

『ぐはッ……』 

 

エク『それに片桐トレーナーも、夏合宿のために今は深くしゃがむときではないんですか?』

 

『ぐっ……』

 

ライス『……お兄さま』

 

『ライス……』

 

ライス『ライスたちと……一緒にお休み、しよ❤』上目遣い

 

ズッキューーーーーン❤

 

トラン『お?……これはかなり効いたんじゃない?』

 

『ぐ……ぬぬぬぅ~……』

 

マリ『おお!ナビっち耐えた!?』

 

『お、俺は……1カ月も、いらないんじゃない……かな?』

 

トラン『じゃあ、次はスズカさん……よろ♪』

 

スズカ『え!?わ……私!?』 

 

トラン『もう一押しだよ♪』

 

スズカ『う……うん、やってみるわね』 

 

スズカ『トレーナーさん……』ササササッ……

 

『スズカ……?』

 

トラン『おお!近い!さすがスズカさん♪』

 

スズカ『わ、私たちと一緒に……お休み、しましょう❤』上目遣い

 

ズッキューーーーーン❤❤

 

『ぐっはぁーッ!』

 

トラン『マリ!畳みかけろッ!』

 

マリ『任せてッ!』

 

マリ『ナビっちぃ~……』猫撫で声

 

『マ、マリぃ……?』

 

マリ『うちらと楽しい楽しい……お休み……しよッ❤』上目遣い

 

ズッキューーーーーン❤❤❤

 

『……ぁ……ぁぁ……』

 

トラン『どうだ!?』

 

『……や、休む……休む、けど……』

 

トラン『ええぃ!しつこいやつめッ!エクぅ!』

 

エク『え?え!? 私……こういうのは…… 』

 

マリ『あ~あ……ナビっちが過労で倒れちゃったら、エクのことなでなでしてくれる人いなくなっちゃうねぇ~……』ちらッ

 

エク『!』

 

エク『や……やってみる……!』

 

エク『か、片桐トレーナー!』

 

『へ?……エク?』

 

エク『え……えっと……あ、頭を!……撫でてくれませんか?』

 

『え?……いいけど……』なでなで

 

エク『んーっ……❤』ブンブン……

 

トラン『変化球キターッ!』

 

エク『みんなで、お休みして……いっぱいなでなで……して❤』ブンブン……上目遣い

 

ズッキューーーーーン❤❤❤❤

 

『アカーーンッ……』

 

トラン『出た!関西弁!……やったか……?』

 

『お休み……お休み……楽しいお休み……菊花賞』

 

トラン『まだだ!』

 

マリ『トラちゃんはやんないの?』

 

トラン『ウチ?ウチかぁ~……トレちゃんの好みに刺さるかなぁ~……?』てくてく……

 

マリ『?……うしろから……?』

 

トラン『トーレちゃん♪』むにぃ

 

『!!』

 

マリ『うっわ!うしろから……押し付けてる』 

 

トラン『ウチらと一緒に、お休み……しよ❤』

 

ズズズ……ズッキューーーーーン❤❤❤❤❤

 

トラン『お、予想以上に効いたっぽいねん♪』

 

『夏休み……夏休み……みんなで楽しい……夏合宿』

 

トラン『なんでそうなるッ!?』 

 

トラン『もう、最終兵器を出すしかない!たづなさん!』

 

ライス『もうやめてトランちゃん!とっくにお兄さまのライフは0だよ!』

 

たづな『ふふふ……お任せください』

 

ライス『たづな……さん?』

 

たづな『片桐トレーナー……』

 

『たづなさん……?』

 

トラン『……ごくッ』 

 

たづな『6月からチームポリマ、早めの夏休みでよろしいですね?』

 

『はい、夏合宿に向け1カ月間の休養とします……』ぼぉーっ……

 

たづな『片桐トレーナーは?』

 

『はい、私も夏合宿に向け1カ月間の休養をとります……』ぼぉーっ……

 

たづな『トレーナー業務をせず、しっかり休養しないといけませんよ?』

 

『はい、トレーナー業務は一切せず、休養に充てます……』ぼぉーっ……

 

たづな『はい、よくできました♪ いい子いい子……』なでなで……

 

『……えへへ』ぼぉーっ……

 

トラン『お、大人の包容力……かな?』 

 

 

◇◇◇

 

 

翌日 トレセン学園 保健室

 

ガラガラッ……

 

『こんちわ~……保科先生いますかぁ~?』

 

保科『おや?片桐トレーナー、久しぶりだね、どうかしたのかい?』

 

『いえ、それが……』

 

保科『ハッ!?もしかして、また体調が悪いのかいっ!?なんでも話聞くよ!』

 

『いやいや 大丈夫です!今のところ問題なく生活できてますから!』 

 

保科『ほっ……それならよかったよ、じゃあ、何か相談かい?』

 

『ええ、実は……チームで早めの夏休みをとることになりまして……』

 

保科『うん、トゥインクルシリーズ中のウマ娘とトレーナーが過労気味になるのは珍しいことじゃないからね、休める時にしっかり休む!いい判断だと思うよ』

 

『それで……せっかくチームで休むなら、みんなで保養地にでも行こうかと思いまして……たづなさんに相談したら、保科先生に聞いてみるといいって言われたんです』

 

保科『ああ!そういうことかい……それならおすすめの場所があるよ!』

 

『本当ですか……!?』

 

・・・・・・

 

放課後 トレーナー室

 

ガラガラッ……

 

『ごめんごめん、ちょっと手続きに時間がかかって遅れちゃった』 

 

ライス『お兄さま、今日からポリマの練習は夏休みだよね?』

 

『うん、そうなんだけどね』

 

トラン『あ!トレちゃん……もしかして……また仕事してたんかッ!?』

 

スズカ・たづな『むっ!!』ギロッ! 

 

『いやいやいや! そうじゃ……なくも、ないかもしれんが……』 

 

スズカ『トレーナーさん!』 

 

たづな『片桐トレーナー!』 

 

『ちょちょちょっ!聞いて!』

 

ライス『ライスたちと約束したのに……ぅぅ~……』しゅん……

 

マリ『あぁ~ナビっち嘘つきだぁー!ライスちゃん泣かせたぁー!』

 

『だから、俺の話を聞けって!』 

 

エク『さすがに昨日の今日で、みんなとの約束を違えるとは思えません……まずはお話を聞きましょう』

 

『エクぅ~……お前はホントいい娘だなぁ~……』なでなでなで……

 

エク『……ん♪』✨ブンブンブン……

 

マリ『エク……懐きすぎ……』

 

エク『そ、そんなことはっ……!』

 

たづな『まぁ、一度片桐トレーナーのお話を聞きましょう……もし私たちとの約束を忘れているようなら……』

 

一同『じーっ……』

 

(あ、あれ?……これ、返答次第ではワシ……ヤバくね?) 

 

『……約束は、守ってます!』

 

トラン『じゃあ、何の手続きだったのさ?』

 

『休むための手続きです!』

 

トラン『余計怪しくなったんだけど……』 

 

『だから!今週末から2泊3日、みんなで温泉旅行に行くんだよ!』

 

一同『えっ!?』

 

『保科先生に教えてもらった、ゆこま温泉郷のゆこま旅館……さっき予約が取れた』

 

マリ『旅行ッ!?やったぁーーッ!』

 

エク『……みんなで温泉旅行』✨フリフリ……

 

ライス『お兄さまも……一緒?』

 

『もちろん!俺も仕事はしないで、みんなと休むよ』

 

ライス『……えへへ❤』

 

スズカ『ふふ……それなら、許します♪』

 

『俺、何かの裁判にかけられてた?』 

 

たづな『結果は無罪ですよ♪』

 

『こっわ……』 

 

マリ『ねえねえ!じゃあ明日、みんなで買い物行こ!旅行の準備!』

 

一同『賛成♪』

 

『……俺は特に買う物ないし……いってらっしゃい』

 

マリ『は?何言ってるの?ナビっち?』

 

『いや、だから俺は……』

 

マリ『うちらが買った荷物、誰が持って帰るん?』

 

『自分の荷物くらい……』

 

マリ『手に持って、電車で?』

 

『……車か……?』

 

マリ『さっすがナビっち♪』

 

ライス『お兄さまと一緒に、お買い物できるんだね♪』

 

『……ああ』

 

トラン『トレちゃん、落ちるの早ッ!』

 

 

◇◇◇

 

 

翌日 放課後 トレセン学園正門前

 

タッタッタッ……

 

ライス『おまたせ!お兄さま♪』

 

ぞろぞろ……

 

『うん、みんな揃ったかな?』

 

マリ『なにこの車!デッカ!ナビっちの!?』

 

『レンタカーだよ、みんなで移動するんだからこんくらいじゃないと荷物も載らないだろ』

 

トラン『にしても、結構いいやつじゃないの?この車』

 

『まぁ、せっかくのおでかけだしな……高級ミニバンにしたんだよ』

 

スズカ『ふふ……トレーナーさんも楽しみにしていたんですね』

 

『いや、その 遠征以外でチームでおでかけなんて初めてだろ?だから……』 

 

スズカ『ふふ……そうですね』

 

『じゃあ、みんな乗って乗って』

 

一同『ピキーーーン……』

 

『あ?……どしたん?』

 

ライス『……ライスは……お兄さまの……!』

 

スズカ『……たとえポリマのみんなとは言え……先頭は譲れないわ……!』

 

トラン『ナビならこのトランさんが適任っしょ……!』

 

マリ『うちも……やっぱ先頭のが見晴らし、いいじゃんね……!』

 

エク『……片桐トレーナーの隣……なでなで……!』

 

『え?……なにこれ?』 

 

ゴゴゴゴゴゴ……

 

トラン『恨みっこなしの一発勝負だよ!』

 

ライス『うん!』

 

スズカ『ええ!』

 

マリ『うちが勝つ!』

 

エク『なでなで!』

 

一同『さーいしょは……グーッ!』

 

一同『じゃーんけーん……』

 

一同『ポンッ!!』

 

・・・・・・

 

車中

 

ライス『お兄さま!はい、お飲み物♪』

 

『うん、ありがとライス❤』

 

ライス『ううん、お兄さまに運転して貰ってるんだもん、ライスがしっかりサポートするね♪』

 

スズカ『……』ムスー

 

トラン『……負けた』

 

マリ『助手席がよかったぁー!』

 

エク『しょうがないよ、マリ……』

 

『ありがとな、ライスぅ~』なでなで……

 

ライス『えへへ……』

 

エク『くっ!……な、なでなで……』しゅん……

 

マリ『ところでナビっち?これ、どこ向かってんの?』

 

『ハァー……言い出しっぺのマリがノープランだと思ったから、しっかりリサーチしてきましたよ』

 

トラン『慣れない休みで暇だっただけじゃない?』

 

『う゛……ソンナワケナイジャナイカ……』 

 

ライス『お兄さま……片言……』

 

『う……まぁ、着いてからのお楽しみってことにしときますか』

 

スズカ『そういえば、たづなさんはやっぱり温泉来れそうにないんですか?』

 

『うん、理事長秘書だからね、週末はレースもあるし、学園責任者の秘書として学園を空けるわけにはいかないからって』

 

スズカ『そうですか……残念ですね』

 

『うん、こればっかりはしょうがな……』

 

バッシャーン!

 

『ブバァッ!?』

 

対向車のトラックが勢いよく跳ね上げた水が、全開の運転席側の窓から片桐に直撃する

 

ライス『お兄さま!!』

 

『ぺっ……ぺっ……なんだぁー!あのトラック!』 

 

ライス『あぁ……お兄さまがびしょびしょ……』

 

スズカ『ライスちゃん、これトレーナーさんに』

 

タオルをライスに手渡す

 

ライス『う、うん……お兄さま、ライスが拭いてあげるね』ふきふき……

 

マリ『きゃはは……ナビっち!水も滴るいい男じゃん♪』

 

トラン『マリ!笑ったら、トレちゃんが可哀そうっしょ……プー、クスクス……』

 

エク『トランさん……笑ってますよね?』

 

トラン『だって……チョーミラクルじゃない?ぷぷッ……』

 

ライス『……やっぱり……ライスが……ごめんなさい』

 

一同『はい?』

 

ライス『ライスが助手席に……お兄さまの隣に座ったから!』

 

『ライス、何度も言ってるだろ、そんなわk……』

 

びちゃっ

 

『……びちゃ?』

 

スズカ『ト、トレーナーさん……あ、頭に……鳥の、フンが……』ぷるぷる……

 

『……え?』

 

マリ『……ぷっ……ぶぁはっはっ……もう無理!我慢できない……ひゃひゃひゃっ!』

 

マリ『なんでナビっち車の中なのにびしょ濡れで、頭に鳥のフンついてんの!マジミラクルなんですけどー?あひゃひゃ……』

 

トラン『ぷぷッ……ト、トレちゃん……窓、いい加減窓……閉め、あははは……』

 

エク『だ、ダメでしょ……ぷぷ……そんなわら……ぷぷぷ』

 

スズカ『もう、みんなして……ふふふ』

 

『やれやれ……いい笑いものだな』 

 

ライス『……ごめ……』

 

『ライス、今この車内で不幸な人がいる?』

 

ライス『え!?』

 

一同『あはははは……』

 

ライス『みんな、笑ってる……でも、お兄さまが……』

 

『んー?お!ちょうど信号待ちだな……ライス、頭についたの拭いてくれる?』

 

そう言って、頭をライスに向ける

 

ライス『うん……』ふきふき……

 

ライス『できたよ、お兄さま』

 

『ん、ありがと♪』

 

ライス『……』

 

まだ不安そうなライスへ、わざと胸を張る

 

『水も滴るいい男だろ?』キリッ✨

 

マリ『あははは……車の中でびしょ濡れでなんか言ってんよ!』

 

トラン『マリ!ちょ、いいかげんに……あははは』

 

スズカ『ふふふ……』

 

エク『ぷぷ……』

 

ライス『お兄さま……えへへ』

 

『ははは……』

 

 

・・・・・・

 

 

【Emi Terrace TOKOROZAWA】

 

マリ『うっわ、デッカ!駅前にこんなのあんの、所沢すごくない!?』

 

エク『マリ、声大きい……でも、あの白い外壁、ちょっと綺麗』✨フリフリ……

 

スズカ『街の真ん中なのに、緑があって気持ちがいいですね』

 

トラン『この広さ、帰る頃にはスマホの歩数がすごいことになってそう……』

 

ライス『わぁ……お兄さま、ライス、もうわくわくしてきちゃった♪』

 

『写真で見たより立派だな……ははっ、俺も楽しみになってきた』

 

マリ『ナビっち!うち、ちょっと見て回ってくる!』びゅーん……

 

エク『あ!マリ!待って……一人で行かないでよ!』

 

『エクぅ~!マリの監視頼んだぞぉー!』

 

エク『了解です……!』

 

スズカ『トランちゃん、私たちも行きましょう』

 

トラン『うん、行こ行こ』

 

『ん?二人で行くのか?』

 

スズカ『はい、実は前からトランちゃんに新しいノートPCの相談をしていて……』

 

トラン『そ♪ ちょっと調べたらよさげな店舗があったから、見に行こうってことになったんよ』

 

『へぇー……』

 

(スズカがPCねぇ……)

 

スズカ『トレーナーさん、行ってきますね』

 

トラン『じゃあ、トレちゃんたち、後でねぇ~……』

 

『……温泉の準備じゃなかったのか?』 

 

ライス『ふ、二人になっちゃったね』 

 

『ライスは何か見たいものあるのか?』

 

ライス『うん、旅行用に新しいお洋服買おうかな?って』

 

『よし、じゃあ、一緒に行こうか』

 

ライス『うん!』

 

・・・・・・

 

1階 鉄道レガシー

 

マリ『エク!見て見て!壁から電車生えてる!電車!』

 

エク『西武2000系……駅が近いからかしら?』

 

マリ『エク!写真写真!』

 

エク『……はいはい』

 

・・・・・・

 

3階 家電売り場

 

トラン『さてさて♪ トレーナー用のノートPCなら……データの記録がメインだよね?レース動画も保存して、映像でフォームも確認するし……トレーニングメニューの作成には……』

 

棚には、見た目のよく似たノートPCと細かな性能表が、隙間なく並んでいる

 

スズカ『……たくさん種類があるのね……』 

 

トラン『うん、同じ型でもメモリの容量違いとか、保存容量の違いとか、いろいろあるからね』

 

スズカ『そ、そうなのね……ハァー……』

 

トラン『ん?どしたん?』

 

スズカ『やっぱり少しはパソコンのことも勉強した方がいいわね……なにもわからなくて』 

 

トラン『ん?別にいいんじゃね?そんなことよりトレーナーの勉強っしょ?今は』

 

スズカ『でも、それじゃあトランちゃんが……』

 

トラン『へ?ウチがいるんだから、分かんないことは聞けばいいじゃん、気にすることないよん♪』

 

スズカ『トランちゃん……ありがと』

 

トラン『全然、好きでやってるだけだし』

 

・・・・・・

 

2階 ファッションフロア

 

ライス『わぁ……お洋服、いっぱい……』

 

『旅行用なら、動きやすい服がいいかな』

 

ライス『うん……あっ、これ可愛い』

 

『どれどれ?』

 

ライスは答える代わりに、黒い服をそっと指さす

 

『……黒?』

 

ライス『う、うん……落ち着いてて、いいかなって』 

 

『こっちの灰色のも持ってるよな?』

 

ライス『これは灰色じゃなくて、チャコールグレーだよ』 

 

『俺には同じ色に見える……』

 

ライス『ぜ、全然違うよ、お兄さま』 

 

『そうなのか……』

 

ライス『……』 

 

『でも、ライスの私服って、黒とか茶色が多いよな』

 

ライス『うん……こういう色が、落ち着くから』

 

『好きなの?』

 

ライス『え?』

 

『ライスは、黒とか茶色の服が好きなのか?』

 

ライス『……』

 

ライスは黒い服へ視線を落としたまま、口を閉ざす

 

『……ライス?』

 

ライス『好き……っていうより……』

 

『うん』

 

ライス『……目立たないから』

 

『目立たない……?』

 

ライス『黒とか、茶色なら……景色の中に隠れられる気がするの』

 

『……』

 

ライス『目立つと……みんな、ライスを見るでしょ?』

 

『うん……』

 

ライス『その時に、誰かに悪いことが起きたら……』

 

ライス『やっぱりライスのせいだって、思われちゃうから……』

 

『……だから、いつも目立たない服を選んでたのか』

 

ライス『……うん』

 

『そっか……』

 

ライス『ごめんなさい……せっかく、お兄さまと一緒にお買い物してるのに……』

 

『謝ることじゃないよ』

 

ライス『でも……』

 

『ただ、俺は……』

 

ライス『?』

 

『ライスが景色に隠れてても、絶対に見つけるけどな』

 

ライス『……え?』

 

『だって、ライスのことばっかり見てるから』

 

ライス『お、お兄さま……❤』

 

『……』

 

(あれ?ワシ、今なんかとんでもなく恥ずかしいこと言わんかった?)

 

ライス『……えへへ❤』

 

『そ、それに!今日は隠れるための服じゃなくて、ライスが着たい服を選ぼう』

 

ライス『ライスが……着たい服……』

 

『うん』

 

ライス『……』

 

ちらっ……

 

『……やっぱり、あれが気になるんだろ?』

 

ライス『えっ!?』 

 

『さっきから何度も見てたじゃないか』

 

ライス『み、見てないよ』 

 

『見てたよ』

 

ライス『……ちょ、ちょっとだけ』

 

『ちょっとだけね』すっ……

 

ライス『お兄さま……?』

 

『ほら』

 

ライス『……白いワンピース……青いバラも、綺麗……』

 

『ライスに似合いそうだと思って』

 

ライス『で、でも……こんなに明るい色、ライスには……』

 

『たまには明るい服も着てみたら?』

 

ライス『……』

 

『ライスは可愛いんだから、絶対似合うよ』

 

ライス『きゃっ ……か、可愛い……❤』

 

『うん、可愛い』

 

ライス『……////』

 

『とりあえず、試着してみよう』

 

ライス『……お兄さまが、選んでくれたから』

 

『うん?』

 

ライス『着てみる……!』

 

『うん、行っておいで』

 

ライス『お兄さま……どこかに行かないでね?』

 

『行かないよ、ここで待ってる』

 

ライス『……うん♪』

 

・・・・・・

 

シャッ……

 

ライス『お、お兄さま……』

 

『……』

 

ライス『……どう、かな?』

 

白いワンピース姿のライスを、言葉もなく見つめる

 

ライス『やっぱり、変……?』しゅん……

 

『可愛い……』

 

ライス『えっ?』

 

『すごく可愛い❤』

 

ライス『……!』ぴこっ

 

『思ったとおり、よく似合ってる』

 

ライス『ほ、本当に……?』

 

『うん、俺が保証する』

 

ライス『……お兄さま』

 

『それに、明るい色の方がライスの表情もよく見える』

 

ライス『ライスの……表情?』

 

『うん、今すごく嬉しそうな顔してる』

 

ライス『……だって』

 

『?』

 

ライス『お兄さまが、可愛いって言ってくれたから……////』

 

『うっ……』トゥンクッ❤

 

(あかん……その服で、その顔は反則やろ……)

 

ライス『お兄さまは……』

 

『う、うん?』

 

ライス『こういう服を着たライス……好き?』

 

『好きだよ』

 

ライス『……////!』

 

『……』

 

ライス『……』

 

『……服の話だよな?』

 

ライス『えへへ……どっちだと思う?❤』

 

『えっ!?』

 

ライス『ライス、この服にするね♪』

 

『あ、ああ……』

 

ライス『温泉旅行に着ていくから……』

 

『うん』

 

ライス『その時も、いっぱい見てね……お兄さま❤』

 

『……はい』

 

ライス『えへへ……お兄さまが選んでくれた、大切なお洋服♪』

 

『大切にするのは嬉しいけど、服なんだからちゃんと着てくれよ?』

 

ライス『うん、いっぱい着るよ』

 

ぎゅっ……

 

ライス『お兄さまに、いっぱい見てもらうために……』

 

(温泉旅行に行く前から、ワシのライフ削りにきてない?) 

 

・・・・・・

 

4階 そらくもひろば

 

ライス『わぁ……4階なのにお外だ』✨

 

『ここで、待ち合わせのはずだけど……』きょろきょろ……

 

マリ『てっぺぇーーーん!』

 

広場にある“のぼれるやま”の頂上で、ポーズをとるマリ

 

エク『マリッ ちょっと……いや、かなり恥ずいって!』 

 

『あぁ……なんてわかりやすい』 

 

スズカ『ふふ……本当に、探す手間が省けていいですね』

 

トラン『まぁ、ウチが送ったLANEに気付いて、集合時間に来ただけでもいいでしょ』

 

『お、二人も来たね』

 

ライス『二人とも凄い荷物……』

 

『トラン……また、予算オーバーだろ?』

 

トラン『う゛……滅多に来ないとこだからいいの!』

 

スズカ『ライスちゃんは何を買ったの?』

 

ライス『えっ!? えっと……ライスはお兄さまと一緒に選んだお洋服を……////』

 

ライスは、白いワンピースの入った紙袋を大切そうに胸へ抱える

 

マリ『ふんすーい……よっ、ほっ♪』

 

エク『マリッ 濡れちゃうよ』

 

トラン『……トレちゃん……呼びにいかないの?』

 

『……今、トレーナーは休養中なので……』

 

マリ『あ!ナビっちぃ!みんなも!』びゅーん……

 

エク『あ!マリ!荷物荷物!……もおー……』ガサガサッ

 

マリ『ナビっち、ここめっちゃ楽しくね?明日も来よう!』

 

『来ません』

 

マリ『えぇ~、だってまだ全部回れてないよ?』

 

『回らんでええわっ!』

 

エク『マリ!自分の荷物くらい、自分で持って……』

 

『お疲れ様、エク』なでなで……

 

エク『ん♪……いえ、いつものことなので……』✨ブンブン……

 

マリ『ナビっち!お腹空いた!』

 

『お前は……ホントに忙しないやつだな』 

 

トラン『このひろばに併設のそらくもダイニングでご飯食べれるよん』

 

『1階にこもれびフードホールもあるみたいだけど、どうする?』

 

マリ『ここがいい!お腹空いたし』

 

ライス『うん、ライスもここがいいな……景色もいいし』

 

トラン『じゃあ、中入ってお店選ぼ』

 

・・・・・・

 

『イタリアンに焼肉、寿司とカレーにお好み焼きもあるのか……』

 

『みんな、なにがいい?』

 

ライス『お寿司がいいな』

 

スズカ『私はカレーがいいです』

 

トラン『ウチ、イタリアン~』

 

マリ『焼肉ー!』

 

エク『私はお好み焼きがいいです』

 

『んーっ……』 

 

『見事にバラバラだな……』 

 

トラン『あ、お店でテイクアウトして、ここで食べれるみたいよ』

 

マリ『おお!それならみんなが食べたいものが食べれるじゃん!』

 

『そうするか……じゃあ、スズカ、これ』さっ

 

スズカ『はい、カード……?』

 

『トレーナーさんがご馳走してあげます』エッヘン

 

マリ『マッ!?』

 

トラン『どうしたのさ、トレちゃん……レンタカーといい、今日はやけに太っ腹じゃん?』

 

マリ『なになに?トレーナーってそんな儲かるの?』

 

『ふふん……』✨

 

スズカ『ふふふ……トレーナーさんの場合は自分にお金を使わないから……』

 

『ちょっ! スズカ!余計なことは言わなくていいのっ!』 

 

エク『なるほど……』

 

『早く買って来なさいッ!』 

 

・・・・・・

 

『……』 

 

ズラーーーー……

 

寿司、カレー、サラダ、ピザ、焼肉、お好み焼き、焼きそばが、テーブルの端まで隙間なく並んでいる

 

(あぁ……忘れてた……あまりにも日常に慣れて……全員ウマ娘だった……) 

 

レシートを眺める

 

(……この1食でワシの何カ月分の食費……?)

 

一同『いただきまーす』

 

『……召し上がれ……』

 

(あとで、たづなさんにチームの経費で落ちないか聞いてみよ……)

 

スズカ『トレーナーさん、本当にコーヒーだけでいいんですか?』

 

『え!?あ……ああ』

 

スズカ『食欲、ないんですか?』

 

『いや、そういう訳じゃないんだけどね……』 

 

スズカ『少しでも食べないと体に悪いですよ、はい、あーん……』

 

『あー……パクっ、もぐもぐ……』

 

一同『じーっ……』

 

スズカ・片桐『……あ 』

 

スズカ『やだ、看病してた時のクセで……////』 

 

(アカンアカン スズカにあーんされると、つい普通に受け入れてまう) 

 

ライス『お、お兄さま……お寿司もおいしいよ!はい、あーん……』

 

『ラ、ライス!?』 

 

ライス『あーん……』 

 

『くぅっ……あー……パクっ……もぐもぐ……////』

 

ライス『……お、おいちぃ?』上目遣い

 

『❤ッ!おいちぃ!❤』

 

ライス『よかった♪』

 

トラン『ニヒヒ……面白そ♪ ウチも混ざってこよ……♪』

 

トラン『トーレ……ちゃんッ♪』

 

『トラン!?』

 

トラン『はい、あーん……』

 

『え?いや……大丈夫……大丈夫だから』 

 

トラン『ぐすんっ……そっか、スズカさんとコメちゃんのは食べても、ウチのは食べてくれないのね……ぐす』キランッ✨←目薬

 

(涙ッ!?)

 

『いやいやいや 食べる!食べさせていただきます!あー……』

 

トラン『はい、あーん……』

 

『あー……パクっ……もぐもぐ……』

 

トラン(ニヒヒ……タバスコ地獄ピザに悶えるがいい!)

 

『もぐもぐ……ん、ウマい!』✨

 

トラン『……ありゃ?』 

 

『トランも辛いの好きなのか?結構辛みがあると思うけど?』

 

トラン『へ?……トレちゃん、なんともないの?』

 

『ん?おいしかったよ?』

 

トラン『そ……そう、ならよかった』

 

マリ『ナビっちぃ~……』

 

『もう!もう、結構でぇーーーっす!!』 

 

・・・・・・

 

帰りの車内

 

後部座席では、遊び疲れた4人が眠っている……

 

『……』

 

ライス『……』

 

助手席のライスは眠る様子もなく、静かに前を向いている

 

『ライス、助手席だからって気を使わなくていいよ……休んでもいいんだぞ』

 

ライス『ううん、大丈夫……』

 

『……』

 

ライスが、小さく息を吸う

 

ライス『ライスね、今日とっても楽しかったの……』

 

『……うん』

 

ライス『今まで……こんなに大勢でお出かけしたことなかったし』

 

『……』

 

ライス『みんなでお出かけしても……絶対なにか嫌なことが起きちゃうの……』

 

『……』

 

ライス『でも、でもね……今日はみんな最後まで笑顔で……ライスもすっごく楽しくて……』

 

ライス『お兄さま……』

 

『ん?』

 

ライス『ライス、とっても楽しかったよ……ありがとう』

 

『うん……でも、まだまだ楽しいことはいっぱいあるぞ、温泉旅行だってこれからだしな』

 

ライス『うん!』

 

 

 

◇◇◇

 

『え!?経費じゃ落ちない!?』

 

たづな『片桐トレーナー、レシートでは無理ですよ、領収書じゃないと……』

 

『あっ……』 

 

たづな『そもそも領収書だったとしても……どう見てもプライベートな出費ですし』 

 

『ガァーーン……』

 

 

 

 

ー2章ー010話   今日という、笑顔の宝物 -Beyond The Future!-   完

 

 

 

 

 




第2章第10話「今日という、笑顔の宝物 -Beyond The Future!-」

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

ブルボン、強い……!
ライスは16番人気からの2着。大健闘ですが、欲しかったのはもう一つ上なんですよね。
それでも、「あと、たったの4バ身」と言ってくれるポリマのみんなが頼もしい。
菊花賞では、今度こそあの背中を追い越せるのでしょうか。

一方、レースを離れたお兄さまは、みんなに押されっぱなし(笑)。
白いワンピース姿のライスには、もう勝ち目がありませんね。
こちらの勝負は、ライスの圧勝でした♪

次回、第2章第11話。
10月18日(日)19:00公開予定です。

【KUROXの駄馬(だば)なし  第12走】
対象話:第2章第10話・第11話
10月19日(月)07:00公開予定です。

【X】
https://x.com/utsupapa_2021

【note記事 KUROXの駄馬(だば)なし 】
https://note.com/kurox_1200
※noteは、登録・ログイン不要でそのままお読みいただけます。

KUROX
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