【ウマ娘if】転移した俺は、トレセン学園で運命に抗う 作:KUROX
6月上旬
トレセン学園 正門前
バタンッ
『よし、これで荷物は積めたかな……』
スズカ『はい、あとはライスちゃんだけですね』
マリ『ライスちゃん、おっそーい!もう集合時間過ぎてんじゃん』
トラン『さっきLANEで、もうすぐ着くって言ってたよん』
エク『忘れ物でもしたのかしら……?』
『まぁ、まだ慌てるような時間じゃ……』
ライス『ま、待ってぇ~……!』
『ん?』
一同『!』
白いサマーワンピース姿のライスが、小走りで正門へ向かってくる
白地に咲いた小さな青いバラと、肩にかけた薄いシフォンのストールが朝の風にふわりと揺れた
ライス『はぁ……はぁ……お、遅くなって、ごめんなさい……!』
『……』
スズカ『まぁ……』
トラン『コメちゃん……』
マリ『えっ!?ちょっ、ライスちゃん!?』
エク『……綺麗』✨フリフリ……
ライス『……////』もじもじ……
マリ『めっちゃ可愛いじゃん!なにそれ!反則っしょ!』
トラン『うんうん、普段と全然雰囲気違うけど、すっごく似合ってる♪』
スズカ『青いバラも素敵ね、ライスちゃん』
エク『ストールも、ワンピースによく合っています』
ライス『あ、ありがとう……みんな……////』
『……』
(……天女がおる)
ライス『……お兄さま?』
『……』
ライス『お兄さまは……どう、かな?』
『言葉が出なかった……すごく似合ってる』
ライス『……!』ぴこっ
『可愛いよ、ライス』
ライス『……えへへ❤』
トラン『はいはい、朝からごちそうさま』
マリ『旅行始まる前から、もう二人の世界じゃん!』
『う゛……か、感想聞かれたから答えただけだろ!』
ライス『えへへ……////』
スズカ『でも、どうして遅くなったの?』
ライス『……この服で外に出るの、少しだけ勇気がいって……』
『ライス……』
ライス『でも、お兄さまに見てもらうって約束したから……勇気、出してきたの』
『そっか……ありがとな、ライス』なでなで
ライス『ううん……ライスの方こそ、選んでくれてありがとう……お兄さま❤』
(可愛い❤可愛い❤可愛い❤可愛い❤……)
マリ『ナビっちぃー!いつまで見つめ合ってんのー!早く行こー!』
『は、はい! じゃあ、ライスの荷物も積んで出発するぞ!』
一同『おーっ!』
ライス『はい♪お兄さま❤』
◇◇◇
ゆこま温泉郷 ゆこま旅館
ブロロロロ……キキッ
ゆこま旅館の玄関前に、片桐の運転するレンタカーが停まる
『到着~……っと』
マリ『着いたぁーーーッ!』ガラッ
『マリ!駐車が終わるまでドア開けるな!』
マリ『もう停まってんじゃん♪』
『今停まったんだよ!』
トラン『はいはい、トレちゃんお疲れ~』
スズカ『トレーナーさん、運転お疲れ様でした』
ライス『お兄さま、ありがとう♪』
エク『片桐トレーナー、荷物を降ろすのを手伝います』
『うん、ありがと、とりあえず全員、忘れ物がないか確認して……』
女将『ようこそ、ゆこま温泉郷へ。お待ちしておりました』
『!』
旅館の玄関前で、一人の女性とウマ娘が一行を出迎える
女将『片桐様と、チームポリマの皆様ですね』
『はい、そうです』
女将『改めまして、ゆこま旅館で女将を務めております、保科健子と申します』cv.高垣彩陽
『保科……健子さん……』
(保科……?それに、この人……誰かに似てるような……)
ユノハナ『そして、私はユノハナブルームです!こちらで女将になるため、修業をしています♪』cv.豊崎愛生
マリ『若女将ってやつ!?』
ユノハナ『まだまだ修業中ですけどね♪』
『チームポリマのトレーナー、片桐です』ぺこっ
『本日から2泊、よろしくお願いします』
女将『ふふ、皆様のお話は伺っておりますので、どうぞごゆっくりお過ごしください』
一同『よろしくお願いします!』
ユノハナ『お荷物はこちらの台車へどうぞ』
『あ、荷物くらい自分たちで運びますよ』
ユノハナ『いえいえ、皆様はお客様ですから♪』
マリ『じゃあ、これお願いしまーす!』
ドサッ!
ユノハナ『はい♪』
『マリ……お前、そのバッグになに入れてきたんだ?』
マリ『着替えとか、お菓子とか、トランプとか、枕とか』
『枕!?旅館にあるだろ!』
マリ『いつもの枕じゃないと寝れないかもしれないじゃん?』
エク『昨日まで、どこでも寝られるって言ってたでしょ……』
マリ『それはそれ!これはこれ!』
『ったく……重いだろ?俺が載せるよ』
ユノハナ『大丈夫ですよ♪』ひょいっ
『おっ……』
マリ『おおっ!』
ユノハナはマリの大きなバッグを軽々と持ち上げ、台車へ載せる
ユノハナ『まだまだ載りますから、皆さんのお荷物もどうぞ♪』
トラン『さすがウマ娘……』
スズカ『トランちゃん、私たちもウマ娘でしょう?』
トラン『いやぁ、ウチは荷物運びよりデータ運びの方が得意だからさ♪』
『はいはい、トランの荷物も載せてもらいなさい』
トラン『はーい』
ライス『ライスも、自分で持てるよ?』
ユノハナ『今日は身体を休めに来たんですよね?遠慮せず、私に任せてください♪』
ライス『……うん、ありがとう、ユノハナさん』
ユノハナ『どういたしまして♪』
エク『マリ、そっちの袋も忘れてる』
マリ『あっ!それもお願いしまーす!』
ユノハナ『はい♪』
『マリの荷物だけで台車半分埋まってない?』
マリ『気のせい気のせい♪』
エク『気のせいじゃないでしょ……』
女将『ふふ……賑やかなチームですね』
『すみません、到着早々……』
女将『いえいえ、旅館が明るくなって嬉しいですよ』
ユノハナ『女将、皆様のお荷物、載せ終わりました!』
女将『ありがとう、ユノハナ』
女将『それでは皆様、お部屋へご案内いたします』
『はい、みんな、行くぞ』
一同『はーい!』
ユノハナ『足元にお気をつけくださいね♪』
ユノハナは荷物を満載した台車を押し、一行の後ろに続く
『……』
(保科健子さん……やっぱり、誰かに似てんねんけどなぁ……)
女将『片桐様、どうかなさいましたか?』
『えっ!?い、いえ!なんでもありません』
女将『ふふ……では、こちらへどうぞ』
『はい……』
(う~ん……誰やったっけぇ……?)
・・・・・・
ゆこま旅館 客室【岩の間】
スーッ
女将『こちらが、皆様にお泊まりいただく【岩の間】でございます』
マリ『うおぉーーーっ!広ーーーい!』
トラン『おー、窓から山が一望できるんだ』
スズカ『素敵な景色ですね』
ユノハナ『このお部屋は、付近の名峰を一望できるのが自慢なんですよ♪』
ライス『わぁ……綺麗……』
女将『どうぞ、ごゆっくりおくつろぎください』
ユノハナ『では、皆様のお荷物はこちらへ置かせていただきますね♪』
『ああ、ありがとう』
ユノハナは一人ずつ荷物の置き場所を確かめ、部屋の隅へ順番に整えていく
マリ『うちの枕は、こっちに置いといてー!』
エク『旅館まで持ってきたんだから、自分で置きなさいよ……』
マリ『えぇー、もう座っちゃった♪』
エク『まったく……』
荷物を片づけ終えると、ユノハナは座卓の前に座り、湯呑みにお茶を注いでいく
ユノハナ『長旅、お疲れさまでした』
ユノハナ『こちらをどうぞ♪』
一同『いただきます』
女将『ゆこま旅館は、URAの保養施設として、古くからウマ娘の皆様をお迎えしてきた宿でございます』
トラン『なるほどね、ガチで身体を休めるための旅館ってわけだ』
女将『ええ、いい走りには、いい休養が欠かせませんから』
女将『ここでは何も気にせず、心も身体もゆっくりと休めてください』
スズカ『はい、ありがとうございます』
女将『大浴場は、この部屋を出て、先ほどの廊下を戻った先にございます』
女将『男女それぞれの暖簾が目印です』
女将『奥には露天の岩風呂もございますので、ぜひお楽しみください』
マリ『露天風呂!早く入ろうよ!』
『説明は最後まで聞きなさい』
マリ『はーい』
女将『ふふ……ゆこまの湯は、疲労回復のほか、筋肉痛や関節のこわばり、打ち身などにもよいとされています』
ライス『今のライスたちに、ぴったりだね』
女将『ええ、頑張った身体を、ゆっくり休めてあげてください』
ユノハナ『それに、美肌にもいいんですよ♪』
マリ『美肌!?』ガタッ
『お前、食いつくところそこかよ』
トラン『いやいや、美肌は重要でしょ、トレちゃん』
スズカ『私も、少し興味があるわ』
ライス『ライスも……綺麗になれるかな……?』
『ライスもスズカも、もう十分綺麗だろ』
ライス『お、お兄さま……❤』
スズカ『ト、トレーナーさんったら……////』
トラン『あぁ、ウチらはまだまだですか……?』
マリ『贔屓だぁぁーっ!』
『うるさい!』
女将『貸切のお風呂もございますので、ご希望でしたらお申しつけください』
ユノハナ『お風呂上がりには、名物の温泉にんじんもございますよ♪』
ライス『温泉にんじん!?』✨
エク『ライスさん……美肌の時より、反応が速くありませんでしたか?』
女将『旅館についてのご案内は、以上となります』
女将『それから片桐様、お部屋はこのお隣にご用意しております』
『ありがとうございます』
一同『えっ?』
『ん?』
マリ『ナビっち、別の部屋なの!?』
『そりゃそうだろ、男は俺一人なんだから』
トラン『トレちゃんだけ一人部屋ぁ?それ、ズルくない?』
『なにがズルいんだよ!』
スズカ『せっかく皆で来たんだから、夜くらい一緒にお話しできると思っていたのに……』
ライス『お兄さまと……同じお部屋じゃないんだ……』
『ライスまで……』
エク『男女別なのは当然ですが……』
エク『片桐トレーナーだけ個室というのは、部屋割りの公平性に欠けます』
『公平性の問題じゃないだろ!?』
マリ『えぇー!一緒の部屋がいいー!』
トラン『ウチもウチもー』
ライス『ライスも……』
スズカ『私も……少し残念です』
エク『私も異議を申し立てます』
『全員で愚痴るな!』
女将『ふふ……片桐様のお部屋は、こちらのすぐお隣ですのでご安心ください』
ユノハナ『寂しくなっても、すぐに会いに行けますよ♪』
マリ『じゃあ、夜はナビっちの部屋に集合ね!』
一同『賛成!』
『集合すなっ!』
女将『それでは片桐様、お部屋へご案内いたしますね』
『は、はい……みんな、少し休んでろよ?』
マリ『はーい!あとで遊びに行くねー!』
『来んでええッ!』
・・・・・・
トラン『さってとぉ……昼食はサービスエリアで食べたし……これからどうしよっか?』
トラン『やっぱ温泉?』
マリ『そういえばさー、女将さん、貸切のお風呂もあるとか言ってなかったっけ?』
トラン『にやり……気づいちゃった?マリ』
マリ『へへへ……モチロン♪』ニヤリ
スズカ『二人とも、なにを企んでいるの?』
マリ『んー?別にぃ?』
エク『その顔で、なにも企んでないってのは無理っしょ……』
トラン『いやぁ、貸切ってことはさ……』
トラン『その時間は、ウチらだけで使えるってことでしょ?』
スズカ『そうでしょうね』
マリ『だったら、ナビっちも一緒に入れるじゃん♪』
ライス『お、お兄さまと一緒に!?……////』
スズカ『えっ……』
エク『やっぱり、それが目的だったのね……』
マリ『せっかくチーム全員で来たんだよ?お風呂も全員で入った方が楽しいっしょ!』
エク『片桐トレーナーは男性です』
トラン『でも貸切だよん?他のお客さんはいないし♪』
エク『そ、そういう問題では……』
マリ『まあまあ♪ どうせナビっち、顔真っ赤にして断るって!』
トラン『絶対いいリアクションしてくれるよ、トレちゃん♪』
スズカ『二人とも、最初からトレーナーさんをからかうつもりなのね……』
マリ『スズカねえは、どんな顔で断るか見たくない?』
スズカ『私は……』
マリ『見たくない?』
スズカ『……少しだけ』
エク『スズカさんまで……』
トラン『そういうエクは?』
エク『私は止める側です』
マリ『じゃあ、ここに残る?』
エク『……』
トラン『トレちゃんのリアクション、見られないよん?』
エク『……見届けるだけです』フリフリ……
マリ『エクも見たいんじゃん♪』
エク『違うし』
ライス『お兄さまが嫌がったら、無理に誘っちゃダメだよ?』
マリ『分かってるって♪ 聞くだけ聞くだけ!』
トラン『じゃあ、決まりだね♪』
スズカ『本当に聞きに行くの……?』
マリ『モチロン♪』
エク『聞くだけですからね?』
トラン『はいはい♪』
ライス『お兄さま……びっくりしないかな……』
マリ『よーし!ナビっちの部屋に突撃ー!』
スズカ『マリちゃん、廊下は走っちゃダメよ』
マリ『はーい!』タッタッタッ……
エク『言いながら走ってるし……』
・・・・・・
ゆこま旅館 客室【楓の間】
トントン……
『はい?』
トラン『ト~レ……ちゃん♪ ちょっといい?』
『ん?』
スーッ……
『どうした?全員そろって……』
マリ『ナビっち!貸切風呂、うちらと一緒に入ろ!』
『……』
一同『……』ニヤニヤ……
(あぁ……なるほどな……)
『……いいよ、いこっか』
一同『えっ!?』
マリ『ほぇっ!?』
ライス『ひゃわわッ!!』
トラン『……トレちゃん……い、いま、なんて?』
『だから、みんなで入るんだろ?』
ライス『お、お兄さまと……み、みんなで……////』シュー……
スズカ『ト、トレーナーさん……本当に?……////』
『ああ、せっかくの貸切だしな』
エク『か、か、か、片桐トレーナー!状況を理解していますか?』
『もちろん』
マリ『ナ、ナビっちは男で、うちらは女の子なんだけど!?』
『知ってるよ』
マリ『知ってて一緒に入るの!?……////』
『誘ったのはみんなだろ?』
マリ『そ、それはそうだけどぉ!』
トラン『あ、あれぇ……?なんか思ってたのと違うんだけど……////』
『どうした?早く行こう』
スズカ『ま、待ってください!心の準備が……////』
『心の準備?』
スズカ『それは……その……ぽっ////』
ライス『お、お、お兄さま……ライスも、まだ……ぽっ////』
『まだ?』
ライス『な、なんでもないよぉ!』
エク『片桐トレーナー、皆さんは冗談で誘っただけです』
『俺は本気だけど?』
エク『ッ!?……////』ブンブンブン……
マリ『ちょ、ちょっと待って!一回みんなで相談するから!』
『なんで?チームの親睦を深めるんだろ?』
マリ『ナビっちが乗り気だと話が違うのッ!!……////』
トラン『これ、もしかしてウチらの方がピンチじゃない?』
エク『だから、私は止める側だと言ったでしょう!……////』
マリ『エクもついてきたじゃん!』
スズカ『トレーナーさん、や、やっぱり今のお話は……////』
『じーっ……』
『冗談に決まってるだろッ!!』
一同『……』
『お前らの悪だくみなんか、顔を見た瞬間に分かったわ!』
マリ『や、やられたぁぁぁっ!』
トラン『カウンターが重すぎるよ、トレちゃん……////』
スズカ『もう……心臓に悪いです……////』
ライス『お兄さまのいじわる……////』
エク『最初から気づいていたのなら、そう言ってください!』
『大人をからかおうとした罰だ』ベーッ
マリ『くぅぅ……ナビっちのくせにぃ……!』
『ほら、お前らだけで入ってこい』
トラン『はーい……今回は完敗だねぇ』
スズカ『行きましょう……これ以上ここにいると、また何を言われるかわからないわ』
ライス『お兄さま、あとでちゃんと謝ってね?』
『なんで俺が!?』
エク『女の子5人を一度に困らせた責任です』
『お前らが仕掛けてきたんだろ!』
マリ『ナビっちー!あとで覚えてろー!』
『はいはい……負け惜しみ乙ー♪』
マリ『ぐぅ……』
トラン『次は負けないからね、トレちゃん♪』
『もう仕掛けてくんな!』
スーッ……バタンッ
『やれやれ……俺も温泉で運転の疲れを癒してきますかね』
・・・・・・
ゆこま旅館 露天風呂 女湯
カラカラ……
マリ『うっわぁ~!ひっろーい!』
トラン『露天風呂、貸切状態だねぇ♪』
スズカ『マリちゃん、走ったら危ないわよ』
マリ『分かってるって♪』
エク『分かっている人は、そんな勢いで入ってきません』
ライス『み、みんな待ってぇ……』
トラン『コメちゃん、大丈夫?』
ライス『う、うん……でも、やっぱりちょっと恥ずかしいよぉ……////』
スズカ『女の子同士なんだから、そんなに緊張しなくても大丈夫よ』
ライス『スズカさんは平気なの……?』
スズカ『平気というわけではないけれど……』
エク『最低限の慎みは必要です』
マリ『えー?みんな女の子じゃん♪』
エク『そういう問題ではありません』
トラン『マリ、女の子なんだから……タオルは肩にかけるものじゃないよ?』
マリ『だって邪魔じゃん』
エク『少しは隠しなさい!』
マリ『減るもんじゃないっしょ♪』
エク『マリ!』
マリ『はいはい、分かりましたぁ~』
スズカ『まずは身体を洗いましょう』
マリ『はーい!』
5人が並んで洗い場の椅子へ腰を下ろす
わしゃわしゃ……
ゴシゴシ……
ライス『じーッ……』
エク『じーッ……』
トラン『んん?コメちゃんもエクもそんなにウチのこと見て、どしたん?』
ライス『えッ?あ、えっと……ご、ごめんなさい』
エク『す、すみません!』
トラン『ん~……?……あ!ピコーン 』
トラン『もしかしてぇ……これッ?』ぎゅむッ
得意げな顔で、両腕を胸の下で組む
スズカ『……すごい』
マリ『あれぇ……?スズカねえも、気になっちゃう感じ?』
スズカ『わ、私は別に……』
マリ『うちもなかなかのもんっしょ?』エッヘン
スズカ『……う……』
自分の身体をみつめるスズカ
ライス『いいなぁ~ライスももうちょっと……トランちゃんみたいになったらなぁ……』
エク『……』こくこく
トラン『あははは……大丈夫大丈夫、トレちゃんはちっちゃいのが好きだから♪』
一同『えッ?』
トラン『……あッ 』
トラン『ちょ!今のはナシナシ! 聞かなかったことにして!』
・・・・・・
ゆこま旅館 男湯脱衣所
『はーっくしょんッ!……チクショウ……』
(ん?誰かに噂でもされたか?)
・・・・・・
露天風呂 女湯
ザァァァ……
マリ『よっし!いっちばーん♪』
スズカ『マリちゃん、泡はきちんと流した?』
マリ『バッチリ♪』
エク『湯船へ飛び込んではいけないからね』
マリ『分かってるって!』
ちゃぷん……
マリ『うっひゃぁ~……気持ちいい~♪』
トラン『極楽、極楽ぅ~♪』
ライス『ふわぁぁ……あったかいねぇ……♪』
スズカ『ええ……身体の力が抜けていくみたい』
エク『泉質による効能は、疲労回復、血行促進、それから……』
ちゃぷん……
エク『……』
マリ『エク?』
エク『……気持ちいい』ほわぁ……
トラン『エクがとろけた♪』
エク『とろけてぇ……ません』
マリ『それにしても、ひろーい!』
スズカ『貸切ではないけれど、今は私たちだけみたいね』
マリ『これなら泳げるじゃん♪』
エク『マリ、泳いじゃダメ!』
マリ『とーう!』
ザバザバザバッ!
ライス『わわっ!お湯が波みたいになってるよぉ!』
スズカ『マリちゃん!温泉はプールじゃないのよ!』
マリ『うちの華麗な泳ぎを見よー!』
エク『見ません!戻ってきなさい!』
トラン『おぉ~、なかなかいい泳ぎだねぇ♪』
エク『トランさんも止めてください!』
トラン『マリ~、ターンして戻っておいで~』
マリ『はーい♪』
エク『そういう意味ではありません!』
・・・・・・
ちゃぷん……
マリ『両側を固める必要ある?』
スズカ『また泳がないように!』
エク『逸走防止です!』
マリ『うち、そんなに信用ない?』
一同『ない』
マリ『即答ッ!?』
トラン『日頃の行いだねぇ♪』
・・・・・・
『く、はぁぁぁぁ~……極楽ぅ……』
一同『!』
マリ『……ナビっち?』
『……』
トラン『トレちゃーん、聞こえるぅ?』
『聞こえな~い』
エク『返事をしている時点で聞こえています』
『……聞こえてるよ!なんだよ!』
マリ『あははっ!壁一枚だから丸聞こえじゃん♪』
『静かに入らせてくれ……』
マリ『ナビっち、温泉入ってすぐオヤジみたいな声出してたね♪』
『45歳は立派なオヤジなの!』
トラン『トレちゃん、そっちのお湯も気持ちいい?』
『ああ……運転の疲れが溶けてく感じだぁ……』
スズカ『トレーナーさん、今日はずっと運転してくれてたものね』
『スズカ……』
スズカ『ゆっくり疲れを取ってくださいね』
『ありがとう……』
ライス『お兄さま、のぼせないように気をつけてね?』
『ライス……』
ライス『お兄さまが倒れたら、ライス心配だよ……』
『大丈夫だから、ライスもゆっくり入っておいで』
ライス『うん♪』
エク『片桐トレーナー、水分補給も忘れないでください』
『エクまで……みんな心配しすぎだよ』
エク『トレーナーの体調管理も、チームにとって重要ですから』
『そ、そうか……』
トラン『トレちゃん、顔が緩んでるんじゃない?』
『ゆ、緩んでない!』
マリ『ナビっち、うちらの声だけで昇天しそうじゃん♪』
『するか!』
一同『せーの!』
スズカ『トレーナーさん♪』
ライス『お兄さま♪』
トラン『トレちゃん♪』
マリ『ナビっち♪』
エク『片桐トレーナー♪』
『ぐっはぁぁぁぁっ!!』
ゴンッ!
一同『!?』
ライス『お兄さまぁ!?』
スズカ『トレーナーさん、大丈夫ですか!?』
トラン『トレちゃん、生きてるぅ?』
エク『返事をしてください!』
『お前ら……俺を昇天させる気かぁぁぁっ!!』
一同『あははははっ!』
『いてて……笑いごとじゃない!』
マリ『ナビっち、声だけじゃ物足りないっしょ?』
『は?』
マリ『よーし……』
エク『マリ、なにをしているの?』
マリ『ちょっとナビっちに、顔見せてこよっかなって♪』
エク『バカッ!……マリ!今全裸でしょッ!』
マリ『大丈夫、大丈夫♪ ナビっちの顔見るだけだから♪』
スズカ『マリちゃん、壁に登ったら危ないわよ!』
ライス『落ちちゃうよぉ!』
マリ『へーきへーき♪』
トラン『あとちょっと、あとちょっと♪』
エク『トランさんは応援しないでください!』
『おい……壁の向こうで、なにしてる?』
マリ『もうちょいで会えるよー!』
エク『片桐トレーナー!万が一に備えてこちらは見ないでください!』
『な!?え?マジで!?……ちょ!マリ、来るな!!』
ガサガサ……
(見たらダメだ……見たらダメだ……見たらダメだ……)
エク『マリ!今すぐ降りなさい!』
マリ『あとちょっとだからぁ!』
スズカ『ライスちゃん、マリちゃんの脚を持って!』
ライス『う、うん!』
マリ『ちょっ、引っ張らないで!』
『……』
『……見たら……』ちらっ
壁の上から、ぴょこんっ♪
(ウマ耳!!?)
『ぐはっ!』
バシャァァン!
マリ『あっ!いま見た!?』
『見てない!耳しか見てない!』
一同『……』
『……』
マリ『耳は見たんだ♪』
『しまったぁぁぁっ!!』
エク『マリ!いい加減にしなさい!』
スズカ『せーの!』
ライス『えいっ!』
マリ『ちょっ、待っ……』
ザバァァン!!
トラン『おぉ~、派手に落ちたねぇ♪』
マリ『ぶはぁっ!ちょっとぉ!』
『な、なにが起きた!?』
エク『こちらは鎮圧しました!』
『温泉で鎮圧ってなんだよ!?』
トラン『トレちゃん、耳だけで倒れちゃったねぇ♪』
『うるさい!』
マリ『ナビっち、うちの耳そんなに可愛かった?』
『知らん!見てない!』
マリ『見たって自分で言ったじゃん♪』
『あれは不可抗力だぁぁぁっ!!』
一同『あははははっ!』
・・・・・・
ゆこま旅館 自販機コーナー
ガコンッ!
マリ『ナビっち、なに買ったん?』
『コーヒー牛乳』
マリ『うちも♪』
ゴクゴクゴク……
腰に手を当て、並んでコーヒー牛乳を飲み干す片桐とマリ
片桐・マリ『ぷはぁぁっ!』
トラン『ふたりとも、おっさんみたいな飲み方だね』
片桐『温泉にはコーヒー牛乳だろ!?』
マリ『温泉にはコーヒー牛乳っしょ!?』
エク『それは銭湯では?』
片桐・マリ『んーッ……』
スズカ『息までぴったりね』
ライス『ふふっ、お兄さまとマリちゃん、親子みたい♪』
『せめて兄妹と言ってくれ!』
マリ『そこ気にすんの?』
女将『皆様、こちらにいらしたのですね』
『女将さん』
女将『お風呂はいかがでしたか?』
ライス『すっごく気持ちよかったです♪』
スズカ『露天風呂も、とても素敵でした』
マリ『めっちゃ広かった!』
エク『一名、泳いでいましたが……』
女将『ふふ、楽しんでいただけたようで何よりです』
女将『そうそう、ちょうどリラクゼーションルームに空きが出たのですが、皆様でいかがでしょうか?』
『リラクゼーションルーム?』
女将『専門の施術師による全身マッサージを受けていただけます』
トラン『全員一緒に?』
女将『はい、ただいまでしたら、皆様揃ってご案内できますよ』
マリ『行く行く!』
エク『マリ、少しはみんなの意見を聞いてから……』
スズカ『私はお願いしたいわ……合宿前に身体を整えておきたいもの』
ライス『ライスも受けてみたいな♪』
トラン『ウチも賛成♪ トレちゃんは?』
『俺も運転で肩が凝ってるし、お願いしようかな』
マリ『じゃ、全員決まり♪』
女将『かしこまりました』
女将『それでは、ご案内いたしますね』
・・・・・・
ゆこま旅館 リラクゼーションルーム
室内は照明が少し落とされ、ほのかなアロマの香りに包まれている
横一列に並べられた6台の施術台
その傍らでは、4人の施術師がすでに待機していた
トラン『あれ?マッサージする人、4人しかいなくね?』
女将『ご安心ください』
女将『残りの2人は、私とユノハナが担当いたします』
ユノハナ『精いっぱい、癒やしますね♪』
スズカ『女将さんたちも施術ができるんですか?』
女将『ええ、旅館で働く者の嗜みでございます』
ユノハナ『私は女将になるため、マッサージも修業中なんです!』
トラン『へぇ~……旅館の女将ってそんなことまでできるんだねぇ』
女将『ユノハナは、ライス様をお願いいたします』
ユノハナ『はい!ライスさん、こちらへどうぞ♪』
ライス『よ、よろしくお願いします』
女将『片桐様は、私が担当させていただきますね』
『あ、はい』
(ユノハナちゃんがよかった……)
トラン『トレちゃん、なんか残念そうじゃない?』
『そ、そんなことない!』
(ウマ娘にマッサージしてもらえる機会なんて、滅多にないやん……)
女将『片桐様、こちらへどうぞ』
『お願いします』
それぞれ施術台へうつ伏せになり、マッサージが始まる
ぎゅうぅ……
『おぉぉ……』
女将『肩から背中にかけて、かなり張っていますね』
『朝から運転しっぱなしでしたからねぇ……』
女将『姉の言ったとおりです』
『お姉さん?』
女将『ええ、姉はトレセン学園で保健室を預かっている、保科健美です』
『保科先生ぇ!?』
(どうりで誰かに似てると思ったわ!)
『女将さん、保科先生の妹だったんですか!?』
女将『はい、姉から片桐様とチームポリマの皆様のお話は、よく伺っております』
『な、なんて言ってました?』
女将『ふふ、それは秘密です』
女将『今回の施術も、姉から頼まれていたものなんですよ』
『保科先生が?』
女将『皆様がしっかり休養できるように、念入りにほぐしてあげてほしいと』
女将『特に片桐様は、ご自身の休養を後回しにしがちだと伺っておりますから』
『よく分かってらっしゃる……』
女将『それでは、少し強く押しますね』
ぐぐぐっ……
『くぅぅ……効くぅぅ……』
女将『力加減はいかがですか?』
『最高です……極楽です……』
(あかん……意識が飛びそうや……)
静かな室内に、ポリマたちの声が聞こえ始める
ぐっ……ぐぐぐっ……
スズカ『あっ❤……そこ、よく効きます❤』
施術師『脚もずいぶん張っていますね』
スズカ『はい……少しずつ軽くなっていくみたいです❤』
もみもみ……
ライス『ふわぁぁ❤……あ❤気持ちいいですぅ❤』
ユノハナ『力加減は大丈夫ですか?』
ライス『はい……このまま眠っちゃいそう……❤』
ぎゅうぅ……
トラン『あぁ~……ん❤そこそこ❤そこめっちゃ効くぅ❤』
トラン『ん❤ん~……これはクセになりそうだねぇ❤』
ぐぐぐっ……
マリ『うっわ❤なにこれ、最高じゃん♪』
施術師『もう少し強くしてみますか?』
マリ『うん、よろ~……ひゃっ❤……効くぅぅ~❤』
ぐっぐっ……
エク『い、痛っ❤……ですが、ちゃんと効いています』
施術師『こちらは少し弱めましょうか?』
エク『いえ❤このままでお願いします❤……んっ❤あ❤ッ❤』
『……』悶々……
ライス『あ❤……そこ❤……気持ちいい❤』
『……』悶々……
スズカ『ん❤……ああ❤……いいです❤』
『……』悶々……
(なんで!?……なんで真ん中の施術台を選んだんや!?ワシ!!)
トラン『お❤……おお❤……ん❤……いいねぇ❤……』
(なに!?このASMR!?なんてエロゲーですかッ!!?)
エク『あ❤……痛っ❤……いえ、痛いぐらいが好きなので❤……』
『……』 悶々……悶々……
マリ『あっひゃひゃひゃ!ちょっ!そこダメ、笑っちゃう!』
『……』スン……
『女将……』
女将『はい?』
『耳栓とか……あったりします?』
女将『はい、すぐにご用意しますね……』てくてく……
マリ『オホッ!ぎゃはは……!だめ!そこもダメ!ぎゃはは……』
『……』
心の中で、ちょっとだけマリに感謝した片桐であった……
一同『マリ!うるさいッ!』
マリ『はぅ……ごめんちゃい……』
・・・・・・
ゆこま旅館 宴会場
広々とした宴会場に、色とりどりの料理が所狭しと並べられている
マリ『うっわぁぁ!すっごいごちそう!』
トラン『これはテンション上がるねぇ♪』
スズカ『ですけど、なぜ私たちだけで宴会場を?』
女将『今はまだシーズン前で、ほかのお客様も少ないものですから』
女将『本日は特別に、こちらの宴会場を貸し切りでご用意させていただきました』
スズカ『私たちのために、ありがとうございます』
女将『どうぞ皆様だけで、ごゆっくりお楽しみくださいませ』
『ありがとうございます』
一同『いただきます!』
マリ『この天ぷら、サクサク♪』
トラン『こっちも美味しいよ、エク』
エク『では、いただきます』
ライス『……』じぃぃ……
『ライス、遠慮しないで食べていいからな』
ライス『は、はい♪』
ぱくぱく……もぐもぐ……
ユノハナ『ライスさん、お櫃のおかわりをお持ちしました♪』
ライス『ありがとうございます♪』
スズカ『ライスちゃん、それで3つ目よね……?』
ライス『えっと……でも、小さいお櫃だから……』
トラン『問題はサイズなんだ』
マリ『その身体のどこに入ってんの!?』
エク『摂取量と体積が一致していません』
ライス『ご、ごめんなさい……』
『謝ることじゃないよ』
『今日はたくさん食べて、しっかり元気になろう』
ライス『うん、お兄さま♪』
再び、ライスは嬉しそうに箸を動かし始める
女将『片桐様、よろしければ地酒はいかがですか?』
『いえ、酒は好きなんですが、体質的に弱くて……』
女将『それでしたら、無理にはお勧めできませんね』
ユノハナは徳利を手に、片桐の隣へちょこんと腰を下ろした
ユノハナ『本当に一杯だけ、いかがですか?』にこっ
『いや、でも……』
ユノハナ『一杯だけです♪』にこにこ……
(きゅん❤)
『……じゃあ、本当に一杯だけ』
ユノハナ『はい♪』
とくとくとく……
『ありがとうございます』
くいっ……
『……美味しい』
女将『口当たりが柔らかく、飲みやすいお酒なんですよ』
『これは進みますねぇ』
スズカ『トレーナーさん、本当に大丈夫ですか?』
『一杯だけなら大丈夫だよ』
食事が進み、宴会場に楽しげな笑い声が響く
女将『皆様、お腹も落ち着いてきたところで、ユノハナから余興を披露させていただきます』
ユノハナ『皆様、どうぞお楽しみください♪』
ユノハナ『まずは、南京玉すだれです♪』
しゃらっ……
細長かった玉すだれが、ユノハナの手の中で次々と形を変えていく
スズカ『ふふ……今度は橋になったわ♪』
ライス『あっ、お花にもなったよ♪』
ぱちぱちぱちぱち!
『いやぁ、すごいなぁ!』
トラン『若女将っていうか、大道芸人じゃん』
ユノハナ『女将への道は、芸の道でもありますので♪』
女将『そのような教えをした覚えはないのですが……』
ユノハナ『備えあれば宴会ありです♪』
エク『使い方が違います』
片桐は空になった杯を眺めると、ユノハナへ差し出した
『ユノハナさん、もう一杯だけもらえます?』
ユノハナ『ふふふ……もちろんです♪』にこっ
『ありがとう』
とくとくとく……
その言葉とは裏腹に、料理と余興に気をよくした片桐は、自分から何度か杯を差し出していた
マリ『ナビっち、顔赤くなってない?』
『なってない、なってない』
トラン『その返し、もう酔ってる人のやつだねぇ』
『全然酔ってないよ』
エク『2度目の典型例です』
女将『片桐様、お水もお持ちしましょうか?』
『大丈夫ですって!全然酔ってませんから!』
エク『3度目の典型例です』
女将『ふふ、それでは片桐様も、一曲いかがですか?』
『えぇ?ワシがですか?』
トラン『あ、一人称まで漏れた』
『……俺がですか?』
トラン『遅い遅い♪』
『せっかくなら、女将さんも一緒にどうです?』
女将『まあ、私とですか?』
ユノハナ『でしたら、こちらはいかがでしょう♪』
ユノハナが操作したカラオケの画面に、曲名が映し出される
【ゆこまロマン純情派】
トラン『選曲が強いねぇ』
マリ『ナビっち、女将とデュエットだ♪』
『よぉし、歌いますか!』
エク『先ほどまでの遠慮はどこへ行ったのですか?』
ゆったりとした前奏に合わせ、女将が先に歌い始める
片桐もマイクを握り、その歌声に続いた
スズカ『トレーナーさん、意外とお上手ですね』
ライス『お兄さま、楽しそう……♪』
女将と片桐の歌声が重なり、ポリマたちも曲に合わせて手拍子を始める
一同『はぁ、ゆらりん♪』
ぱんぱん♪
一同『はぁ、ゆらりん♪』
ぱんぱん♪
マリ『ナビっち、女将と息ぴったりじゃん!』
トラン『温泉旅館の営業部長みたいになってるけど』
エク『歌声は安定していますが、身体は安定していません』
ふらっ……
『大丈夫、大丈夫!』
曲が終わると、宴会場に大きな拍手が響いた
『いやぁ、楽しかったぁ!』
どすん……
片桐はそのまま、スズカとライスの間に腰を下ろした
スズカ『ト、トレーナーさん?』
ライス『お、お兄さま……ち、近い』
『スズカもライスも、本当によく頑張ってんなぁ~』
ぽん……ぽん……
片桐は2人の頭へ、同時に手を置いた
『スズカはいつも綺麗で、頼りになって……』
スズカ『き、綺麗!?……////』
『ライスはかわいくて、頑張り屋さんで……』
ライス『か、かわいい……////』
『2人とも……自慢の娘やぁ!』
ぐいっ!
片桐は両腕を広げ、スズカとライスの肩を抱き寄せた
スズカ『ト、トレーナーさん!近いです!か、顔が近いです!……////』
ライス『お、お兄さま……ぎゅってしすぎだよぉ……////』
片桐は2人を抱き寄せたまま、交互に顔を覗き込む
『2人とも、かわいいなぁ……❤』
スズカ『そ、そういうことは、酔っている時に言わないでください!……////』
ライス『お兄さま、お酒の匂いがするよぉ……////』
『ワシは幸せ者やなぁ……❤』なでなで
トラン『トレちゃん、距離感が完全に壊れてるねぇ♪』
マリ『ちょっ、トラちゃん!撮って撮って!』
トラン『もう撮ってるよん♪』
エク『撮影していないで止めてください!』
『スズカぁ……ライスぅ……大好きやぁ!❤❤』
スズカ『トレーナーさん!……////』
ライス『お、お兄さまぁ……❤』
エク『片桐トレーナー!今すぐ2人から離れてください!』
エクは片桐の襟首を掴むと、スズカとライスから強引に引き剥がした
『な、なにすんねん……!』
エク『これは完全にセクハラです!』
『褒めてただけやろぉ……』
マリ『ナビっち!うちも褒めて、うちも♪』
『マリは……やかましいッ!』
マリ『なんでぇ!?』
ユノハナ『それでは最後の一芸をご披露いたします♪』
ユノハナが棒の先へ皿を乗せ、軽くひねる
カラカラカラ……
一同『おぉ~!』
マリ『ユノハナ、すっげー!』
『それ、ワシにもできそうやな♪』
エク『片桐トレーナー?』
片桐がふらりと立ち上がる
ユノハナ『片桐さん、見た目より難しいですよ?』
『1枚だけ♪』
エク『酔っ払いの「1枚だけ」は信用できません!』
ユノハナから棒と皿を受け取り、片桐が見よう見まねで回してみる
カラカラカラ……
トラン『おぉ~!回ってる!』
『どやッ♪』
エク『意外です……』
『意外とはなんやねん!失礼な……』
マリ『ナビっち、もう1枚いけるんじゃね?』
『よっしゃ、もう1枚!』
エク『ほら始まった!』
2本目の棒でも、皿が回り始める
一同『おぉ~!』
『ワシ、皿回しの才能あるんちゃう?キシシ……』
スズカ『トレーナーさん、最初の皿が傾いています!』
『んあ?』
片桐が棒を振ると、皿がスズカへ飛んだ
スズカ『えっ!?』
パシッ!
『ナイスキャッチ、スズカ!』
スズカ『いまのは投げたんですか!?』
『……ほほう、なるほど……なるほど♪』
エク『なにを思いついたんですか!?』
『ライス、前!』
ライス『えっ?わわっ!?』
パシッ!
『ナイス!』
ライス『と、取れたぁ……』
女将『ユノハナ』
ユノハナ『はい、女将』
皿が飛び交う横で、二人は徳利と料理を盆へまとめる
『トラン、右!』
トラン『ほいっと♪』
パシッ!
『マリ、高め!』
マリ『任せろー!』
パシッ!
片桐が次の皿を回す頃には、配膳台も座卓も壁際へ移されていた
『エク、左!』
エク『な、投げないでください!』
パシッ!
『取れてるやん♪』
エク『反射です!』
『ええ動きや、ポリマ!』
エク『宴会場でトレーニングを始めないでください!』
マリ『ナビっち、次は2枚同時に投げて!』
エク『マリも参加しない!』
『よっし、皿を全部回収せえ』
エク『嫌な予感しかしません!』
片桐はポリマが受け止めた皿を集め、両手の指に挟んだ6本の棒へ乗せていく
ユノハナ『片桐さん、その本数は無理です!』
『最後に大技を見せます♪』
エク『絶対に失敗します!』
マリ『やっちゃえナビっち!』
スズカ『マリちゃん、煽らないで!』
『いくでぇ!』
カラカラカラカラカラカラ……
6枚の皿が、一斉に回り始めた
一同『おおおおっ!?』
『ドヤッ!』
カタッ……
ライス『あっ!』
1枚の皿が傾き、続けて残りの皿も揺れ始める
『ライス、左!スズカ、前!トラン、右!』
一同『一度に言わないで!!』
5人が一斉に駆け出す
パシッ!
パシッ!
マリ『まだ来る!』
エク『お、多すぎます!』
ガラガラガッシャーーン!!
一同『……』
『……ヒック』
一同『あ~あ……』
床いっぱいに散らばった皿が、からんと音を立てて止まった
ライス『お皿が……』
スズカ『割れて……』
トラン『ん?……ないッ!?』
女将『皆様、ご安心ください』
女将『皿回し用ですので、落としても割れませんよ』
一同『ええッ?』
マリ『じゃあ、うちらが必死に追いかけてたのって……』
エク『なんのためだったんですか!?』
女将『よいトレーニングになりましたね』
トラン『確かに、いい運動だったねぇ♪』
エク『そういう問題ではありません!』
『ガハハハッ……』
スズカ『トレーナーさん!!』
ライス『お兄さま!』
トラン『トレちゃん!!』
マリ『ナビっち!!』
エク『片桐トレーナー!!』
『んーっ……』
『……だめだこりゃ』
片桐はそのまま座布団へ倒れ込んだ
『ぐがぁー……』
一同『寝たぁッ!?』
◇◇◇
翌朝 ゆこま旅館【楓の間】
スーーッ……
マリ『ナビっちぃ!おっはよー!』
エク『マリ!ノック!』
『……ぅぅ~……』
マリ『ナビっち?』
スズカ『トレーナーさん!どうしました!?どこか具合が悪いんですか!?』
『……し、静かにしてくれ……』
ライス『お兄さま!!どうしたの!?』
『大きい声……出さないで……頭に響く』
トラン『ああ……二日酔いだ』
エク『ですね』
マリ『ナビっちぃ!あ~さ~ご~は~んッ!!』
『……うッ!』ダッ……
バタバタバタ……ガチャッ、バタンッ!
『オエーーッ!オロロロロ……』
一同『……』
トイレの中から『……ごめん、ハァハァ……ごはん、いらない……うッ』
一同『……』
一同『だめだこりゃ』
身も心も癒されたチームポリマでした❤
ー2章ー011話 湯けむり騒動、ゆこまロマン純情派 完
第2章第11話「湯けむり騒動、ゆこまロマン純情派」
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
休養旅行のはずが、宴会場では皿回し騒動に(笑)
片桐の「一杯だけ」と「1枚だけ」は、どちらも信用してはいけませんねw
次回、第2章第12話。
10月21日(水)19:00公開予定です。
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対象話:第2章第10話・第11話
10月19日(月)07:00公開予定です。
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