【ウマ娘if】転移した俺は、トレセン学園で運命に抗う   作:KUROX

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ー2章ー013話

 

 

 

京都レース場 入場口前

 

わいわい……がやがや……

 

多くの観客たちが京都レース場の入場口へと吸い込まれていく

 

マリ『うっひょ~……さすが菊花賞、すんごい人!』

 

エク『クラシック最後のレース、それに……』

 

トラン『うん、ブルボンさんの無敗三冠がかかってるからね』

 

スズカ『注目度は例年以上ね』

 

『……ブルボンの無敗三冠はないよ』

 

一同『!』

 

ライス『……お兄さま』

 

観客A『ブルボンが勝てば、ルドルフ以来の無敗三冠かぁ』

 

観客B『トゥインクルシリーズ史上2人目の大偉業だ』

 

観客C『あぁ~……この時代に生きててよかったぁ~!生で無敗三冠ウマ娘の誕生が見られるなんて!』

 

観客D『俺たちの応援で、ブルボンを無敗三冠にするんだ!』

 

観客E『ははは……お前の応援がなくても、ブルボンは勝ってくれるさ』

 

マリ『……何?この空気……ブルボンさんの三冠一色じゃん』

 

トラン『う~ん……期待はわかるけど……ちょっち偏り過ぎだよねぇ』

 

ライス『……』

 

片桐『……行こう』

 

???『片桐トレーナーぁ~!!』

 

片桐『!?』

 

タッタッタッ……

 

藤井『ふぃ~……やっと見つけたわ』

 

『藤井記者……』

 

藤井『ご無沙汰してます、片桐トレーナー』

 

『……お久しぶりです、ですが……』

 

藤井『レース前のインタビューはお断りします、やろ?』

 

『……ご承知でしたら、これで……』

 

藤井『あぁ~あ……あん時の記事、わしの記事の中でも特に評判良かったんやけどなぁ~……』ちらっ

 

『う゛……』

 

(こいつ、取材の為やったらホンマ手段を選ばんな……)

 

『……一言だけでしたら……』

 

藤井『さすが、片桐トレーナー♪』

 

藤井『では早速……わしの見立てでは、ブルボンの三冠を止めるもんがおるとすれば……』

 

藤井『ライスシャワーだけやと思うとります』

 

『……』

 

ライス『!』

 

藤井『片桐トレーナー……ライスシャワーはブルボンの三冠を阻止する〝刺客〟になりえますか?』

 

片桐『……〝刺客〟という言葉がライスにふさわしいとは思いませんが……』

 

片桐『菊花賞を獲るのはライスシャワーです』

 

藤井『!』

 

藤井『あはははは……!さすが片桐トレーナー!自信満々ですな!』

 

観客F『おい、あれ……』

 

観客G『ん?ライスシャワー……?』

 

観客の視線に気づき、取材を切り上げようとする

 

『それでは、失礼します』

 

藤井『最後に!』

 

『一言だけのはずです!』

 

藤井『ライスシャワーさん!自信のほどは!?』

 

ライス『……え?ええっと……』 

 

『ライス!答えなくていい!行くぞ』

 

ライス『ライスが勝ちます!』

 

『!』

 

藤井『……応援してます』にや

 

『行くぞ!ライス』

 

ライス『え!?あ、はい!』

 

観客F・G『……』

 

観客F『ブルボンの邪魔はしないでくれよー』

 

観客G『ホント……ブルボンの無敗三冠見に来たのに、邪魔されちゃかなわないよな』

 

ライス『!』

 

『ライス!』

 

ライス『……うん』

 

・・・・・・

 

京都レース場 控室

 

マットに座るライスの背中に、片桐が手を添える

 

『ゆっくり倒して……無理のないところで止めて』

 

ライス『……ん……』

 

『ここ?』

 

ライス『うん……もう少し……』

 

マリ『……ね、さっきの人たちさ……』

 

トラン『うん……ちょっと、ね』

 

マリ『絶対ライスちゃんに聞こえるように言ってったっしょ……』

 

エク『……マリ、見て』

 

ライス『お兄さま、そこで止めて……』

 

『痛くない?』

 

ライス『うん……大丈夫』

 

『よし、ゆっくり戻して』

 

ライス『ふぅ……』

 

スズカ『ライスちゃん、身体の感じはどう?』

 

ライス『うん!京都新聞杯の時より、いいよ』

 

『……そうか』

 

ライス『早く走りたい……ブルボンさんと……』

 

マリ『……ライスちゃん』

 

ライス『え?なあに?』

 

マリ『えっと……』

 

トラン『あはは……マリが静かだから、コメちゃん心配になっちゃうじゃん♪』

 

マリ『は!?うち、別に……!』

 

ライス『えへへ……マリちゃん、探検はしないの?』

 

マリ『し、しないしッ! 今日はライスちゃんを応援する日っしょ!』

 

エク『我慢してるしね』

 

マリ『ちょ!エクッ!!』 

 

ライス『ふふっ……』

 

『ライス、脚は?』

 

ライス『うん、痛みも違和感もないよ』

 

『よし……』

 

『最初は、トランの背中を追ったな』

 

トラン『コメちゃん、急に抜いてくるんだもん……びっくりしたよ』

 

ライス『……えへへ』

 

『マチタンと競って、カラットムーンにも勝った』

 

『ブルボンの背中には、ダービーでついていけた』

 

ライス『……うん』

 

『夏にはマリを追って、トランについていって……最後はエクを抜いた』

 

エク『……ハナ差です』

 

マリ『そこ大事なんだ?』

 

エク『大事』

 

ライス『えへへ……でも、ライスが勝ったもん♪』

 

エク『ええ……だから今日も、勝ってきてください』

 

ライス『……うん!』

 

『走って、食べて、休んで……みんなで積み重ねてきた』

 

『全部、今日のためだ』

 

ライス『……今日のため……』

 

『3000メートル……ライスの走りを、最後まで見せてこい!』

 

ライス『うん!』

 

スズカ『最後の600メートルも、ちゃんと走れるわ……夏合宿で、見せてくれたもの』

 

ライス『あそこからが、勝負だね……!』

 

トラン『ついてくだけで終わらないでよ?今日は、追い越してくるんだから♪』

 

ライス『うん……追い越してくる!』

 

マリ『ライスちゃん、ブルボンさんに勝って……胸張って帰ってきな!うちら、待ってるから!』

 

ライス『……ありがとう、マリちゃん』

 

ライスはマットから立ち上がり、片桐を見上げる

 

ライス『お兄さま……』

 

『ん?』

 

ライス『ライス、今日こそブルボンさんを越えるよ』

 

『ああ』

 

ライス『それで……今日こそ、ライスシャワーになるの!』

 

『……』

 

ライス『……お兄さま?』

 

『……ああ』

 

ライス『どうしたの?』

 

『いや……先頭でゴールするライスを、想像してたんだよ』

 

ライス『……そうなの?』

 

コンコンコン……

 

係員の声『ライスシャワーさん、パドックへお願いします』

 

ライス『……はい!』

 

『ライス』

 

ライス『……うん』

 

『自分を信じて……全部、出してこい!』

 

ライス『……うん!』

 

片桐が差し出した手に、ライスと仲間の手が重なる

 

『今日の掛け声は、ライスに任せる』

 

ライス『……えへへ』

 

ライス『がんばれポリマ、がんばれー……!』

 

一同『おー!!』

 

『いってこい、ライス!』

 

ライス『うん!いってきます、お兄さま!』

 

・・・・・・

 

京都レース場 パドック

 

『ブルボーン!無敗三冠見せてくれー!』

 

『がんばれ!ブルボン!がんばれ!ブルボン!』

 

実況『パドックからすでにミホノブルボンの三冠ムード一色ですが』

 

実況『はたして!ブルボンの三冠に待ったをかけるウマ娘は現れるのか!?』

 

実況『注目ウマ娘を紹介していきましょう』

 

実況『まずは7番、ミホノブルボン!堂々の1番人気です!』

 

実況『デビューから7戦7勝!皐月賞、日本ダービー、そして京都新聞杯と、その強さに陰りはありません!シンボリルドルフ以来、史上2人目の無敗三冠へ!最後の一冠に挑みます!』

 

実況『続いて8番、ライスシャワー!2番人気です!』

 

実況『ダービーでは4バ身差の2着!京都新聞杯では、その差を1バ身半まで詰めてきました!』

 

実況『距離はさらに延びて3000メートル!追い続けてきたブルボンの背中を、今度こそ捉えることができるのか!』

 

実況『そして10番、マチカネタンホイザ!3番人気です!』

 

実況『ダービーでは4着!こちらも春の雪辱を期して、菊の舞台へやってきました!ブルボンの三冠を阻むのは、このウマ娘かもしれません!』

 

実況『三冠ウマ娘は、京都でしか生まれない』

 

実況『最も強いウマ娘が勝つと言われる、クラシック最後の一冠……GⅠ菊花賞』

 

実況『答えは、この3000mの先にあります』

 

実況『全18人、GⅠ菊花賞……まもなくスタートです!!』

 

ワアアアアアアアアアアアアア……!!

 

 

マチタン『ライスさん、今日もよろしくね』

 

ライス『……うん』

 

ブルボン『……』

 

マチタン『……ライスさん……?』

 

ライス『……』

 

ブルボン『……』

 

マチタン(ひゃあぁ~ 二人ともすごい気合い……) 

 

ライス『……ライスが……勝つんだ……!』

 

ブルボン『……負けません……!』

 

マチタン(ひょえぇぇ~……) 

 

マチタン『私は、マイペースでいこっと……』 

 

・・・・・・

 

京都レース場 ゲート前

 

実況『さあ、各ウマ娘のゲートインが順調に進んでおります』

 

 

コース横関係者席で見守るチームポリマ

 

『……』

 

マリ『なんか……いつもと空気違くない?』 

 

トラン『うん、いつものGⅠより浮ついているような……それなのに重いような……』

 

エク『無敗三冠がかかっていますからね……』

 

スズカ『この空気感はクラシック独特ね……』

 

(ライス……)

 

 

実況『18人のゲートインが終わりました』

 

ブルボン(マスターとの約束……三冠を……!)

 

ライス(追いつく追いつく……ライスが……!)

 

ガシャンッ!!

 

実況『さあ、スタートです。さあゲートが開いた』

 

実況『ミホノブルボン好スタート』

 

実況『12番どうするんだ。行った、行った、行った』

 

実況『12番がかわしていくのか。外からかわしていった』

 

実況『12番がかわして先頭に立ちました』

 

実況『注目の先陣争いは、12番の方がかわして、3バ身くらいのリードをつけました』

 

マリ『ブルボンさんが!?2番手ッ!?』

 

トラン『ブルボンさんにハナを取らせない……12番の作戦だね』

 

スズカ『……ペースが乱れなければいいけど……』

 

エク『スズカさん、ライスさんの応援をしてください……』 

 

スズカ『あ!ち、違うのよ!つい、“逃げ視点”で見ちゃっただけで』 

 

『……』

 

実況『ミホノブルボン抑えて2番手』

 

実況『これでもハナに立っているのと同じでありますが、前にウマ娘を見てレースをするのは、新バ戦以来2度目であります』

 

実況『12番先頭。ミホノブルボンが2番手』

 

実況『それから4番が3番手で、これから1周目の第4コーナーに向かいます』

 

実況『10番のマチカネタンホイザが4番手でありますが、先頭12番が差をつけてまいりました』

 

実況『敢然と行った12番先頭であります』

 

実況『12番先頭、2バ身くらいの差がありましょうか』

 

実況『ミホノブルボンが2番手。ミホノブルボン、2番手であります』

 

実況『これが2番手のミホノブルボンで、メインスタンド前、場内から大歓声が上がります』

 

実況『4番、3番手。マチカネタンホイザ4番手』

 

実況『ライスシャワーは5番手』

 

マリ『ライスちゃんちょいヤバくない!?ついていけてなくない!?』

 

『大丈夫、自分のペースでいってるだけだ……しっかりブルボンは捉えている』

 

ライスは5番手のまま、前を走るブルボンの動きを追っている

 

実況『今、ちょうど59秒ぐらい』

 

実況『1000メートルは59秒から1分というところで、まずまずではないかと思いますが、18人が非常に縦に長い、縦に長いレース展開になりました』

 

ブルボン(12番……いえ、想定の範囲内です)

 

ライス(……)

 

実況『先頭からちょっと整理をしましょうか』

 

実況『第1コーナー、右にカーブを取ります』

 

実況『12番が先頭』

 

実況『いつ、いつミホノブルボン、2番手のミホノブルボンがこの12番をかわしていくか』

 

実況『7番のミホノブルボン今日は一人旅にはなりません。2番手であります』

 

実況『そして3番手は依然として4番か。マチカネタンホイザが4番手』

 

実況『その後ろに、その後ろにライスシャワーが続いているのではないかと思います』

 

実況『ライスシャワー5番手であります。続いて6番。その後ろに17番であります』

 

実況『それから1番。内を通って16番。2番であります』

 

実況『14番がいる。それから5番でありますが、18番がいました』

 

実況『それから、それから13番』

 

実況『そして9番でありまして、18人が縮まった、坂の上』

 

実況『しかし、ミホノブルボンはまだ2番手』

 

実況『満を持している感じであります。ミホノブルボンは2番手』

 

実況『満を持している感じ。さあ、バ体を併せに行く』

 

実況『ああ、今度は4番が来た』

 

実況『前に敵がいて、後ろからも4番が追い上げてくるが……』

 

ブルボン(……そろそろ、行きます!)

 

ライス『!』

 

実況『ようやくここで、ようやくここでミホノブルボンが先頭に立った!』

 

実況『ミホノブルボン先頭で、第4コーナーをカーブする!』

 

実況『あと400メートルだ!』

 

実況『どっからでも、何でも来いという感じか、ミホノブルボン!ミホノブルボン!』

 

ライス(ライスだって……!ブルボンさんに!……勝ちたいッ!!)

 

ライス『やあぁぁぁーーッ!!』

 

実況『ライスシャワーが襲いかかってくる!』

 

実況『外からライスシャワー!外からライスシャワー!』

 

マチタン(ブルボンさんもライスさんもすごい!でも……私だって!)

 

マチタン『やあぁぁぁーーッ!!』

 

実況『さらにマチカネ!マチカネタンホイザ!』

 

実況『さあ、ミホノブルボン逃げる、逃げる!』

 

ブルボン(ライスさん!?……でも……想定内ですッ!!)

 

ブルボン『はあぁぁぁーーッ!!』

 

実況『外からライスシャワー!』

 

ライス(追いついた!?……ここからッ!!)

 

実況『ライスシャワーかわしたか!ライスシャワーかわしたか!』

 

実況『内からマチカネ!内からマチカネ!』

 

ライス『やあぁぁぁーーッ!!』

 

ブルボン『はあぁぁぁーーッ!!』

 

マチタン『やあぁぁぁーーッ!!』

 

実況『ああ、ライスシャワー先頭に立った!』

 

実況『ライスシャワー先頭に立った!』

 

ブルボンと並んでいたライスが、一歩、前へ出る

 

ブルボン(くっ!……ライスさん……想定より速い!?)

 

ライス『やあぁぁぁーーッ!!』

 

実況『ライスシャワー!ライスシャワーです!』

 

実況『ミホノブルボンは三冠にならず!』

 

実況『1着はライスシャワー!』

 

ライス『はあっ……はあっ……はあっ……』

 

ライス(やった……ライスが、勝った…………ブルボンさんに!)

 

実況『「ああ」という悲鳴に変わりました、ゴール前!「ああ」という悲鳴に変わりました、ゴール前!』

 

ライス『……え?』

 

実況『ダービー2着のライスシャワーが菊花賞を制しました!』

 

実況『ついに、ついに……三冠街道、ゴール前』

 

実況『菊花賞の舞台でミホノブルボンを捕らえました』

 

実況『8番のライスシャワーです!』

 

実況『ミホノブルボンは惜しい2着!』

 

実況『勝ち時計3分5秒0はレコード!』

 

実況『ゴールまであと50メートルというところで、ミホノブルボンは捕まりました!』

 

観客『なんだよ~……』

 

観客『何してんだ!ライスシャワー!!』

 

観客『ああ~ブルボンの無敗三冠がぁ!!』

 

(おいおい……なんやこれ?……ここまで、やったんか……) 

 

ライス『……ライス……勝ったよ……?』

 

観客『俺たちはブルボンの無敗三冠がみたかったんだよー!何してくれてんだ!ライスシャワー!!』

 

観客『お前の勝利なんて誰も望んじゃいないんだよっ!!』

 

ライス『……え!?』

 

マリ『ちょ! てめぇー……』

 

『やめろ!マリ!!』

 

マリ『けど!今のはあんまりじゃないッ!?』

 

『……やめろ、こんなところで問題を起こしても、ライスに迷惑がかかるだけだ……』ぐっ……

 

トラン『わかる、わかるよ……けど、これじゃあコメちゃんがあまりにも……』

 

観客『あぁ~あ……がっかりだ、帰ろ帰ろ……』

 

ライスがまだコースにいるうちに、観客席から人が立ち去っていく

 

観客『何が“ライスシャワー”だ、おとなしくブルボンの三冠祝ってくれればいいものを……』

 

『あ? お前にライスの何がわかんねんッ!!』

 

スズカ『トレーナーさん!!』

 

トラン『トレちゃん!マリに注意したばっかっしょ!おんなじことしてどうすんのさっ!』

 

『う゛……ぬぬぬぅ……』ぐっ

 

スズカ『トレーナーさん、冷静になってください……ライスちゃんのことを考えて』

 

『ライスッ!?』

 

ライス『……』

 

・・・・・・

 

京都レース場 地下バ道

 

コツコツコツ……

 

一人、地下バ道を歩いていくライス

 

タッタッタッ……

 

『ライスーっ!』

 

ライス『……お兄さま……』

 

『はぁはぁ……菊花賞で初のGⅠ制覇……そして憧れを越えた勝利!』

 

『おめでとう!!』

 

ライス『……うん……ありがとう……』

 

『……ライス……?』

 

ライス『……ライス……勝ったのに……みんなに……』

 

バッ!

 

ライス『!』

 

不意に、強くライスを抱きしめる片桐

 

『最高の走りだった、すごい走りだった、しかもレコードだ……』ぎゅ

 

ライス『でも……でも……!』

 

『チームポリマでの初のGⅠ制覇だ、誇っていい……』ぎゅ

 

ライス『でも、みんなライスが勝っても……』

 

『スズカも、トランも、マリもエクも、たづなさんも、もちろん俺も……』

 

『ライスの勝利を願っていた、信じていた……』

 

ライス『……ぅ』

 

『ありがとう……“ライスシャワー”』

 

ライス『ぅ……うええぇぇぇ~ん……!』

 

スズカたちも、片桐とライスのそばへ集まってくる

 

スズカ『おめでとう、ライスちゃん』

 

トラン『うんうん、コメちゃんおめでとう』

 

マリ『ライスちゃん、サイコー!おめでとー!』

 

エク『ライスさん、素晴らしい走りでした、おめでとうございます!』

 

ライス『ええぇぇ~ん……!』

 

『……おめでとう』

 

ライス『うぅ……みんな……みんな、ありが、とう……』

 

ライス『うぅ~……』

 

『……』ぎゅ

 

片桐はライスを抱きしめたまま、泣きやむのを待つ

 

(ライスは、ワシが支える……ワシが守るんや……)

 

・・・・・・・

 

関係者通路

 

記者『来た来た!』

 

『!』

 

記者『ライスシャワーさん!菊花賞勝利、おめでとうございます!』

 

ライス『!』

 

記者『インタビューよろしいでしょうか?』

 

『……』

 

『どうする?ライス……取材、受けなくてもいいんだぞ』ぼそぼそ……

 

ライス『ううん、ライス受けるよ』

 

『……そうか』

 

スズカ『私たちは先に控室に戻ってますね』

 

『ああ』

 

控室へと引き上げていく、スズカたち

 

『お待たせしました、どうぞ』

 

記者『ありがとうございます!では、早速……』

 

記者『ミホノブルボンの無敗三冠を阻止した訳ですが、初めから狙いはミホノブルボンだったんですか?』

 

(ハァー……こうなるやろうとは思っとったが……)

 

『はい、皐月賞・日本ダービーと二冠を獲っているブルボンは、一番にマークする相手でした』

 

記者『やはり最初から、ブルボンが狙いだったと?』

 

(わざわざ、角の立つような聞き方しおって……)

 

『……目標は常に定めていました』

 

藤井『見事、狙いのミホノブルボンを〝差した〟いう訳ですな?』

 

(……藤井記者……)

 

『……ええ』

 

藤井『まさに……〝黒い刺客〟ですね』

 

ライス『!』

 

『その、言い方はどうかと……』

 

藤井『いやいや、ご謙遜を……ミホノブルボンをターゲットに定め、見事に〝差して〟無敗三冠を阻止した……』

 

藤井『漆黒のステイヤー・ライスシャワー……黒い刺客に違いありませんやん』

 

『三冠阻止は結果そうなっただけであって、元々菊花賞ではステイヤーであるライスの方が……!』

 

藤井『そもそも3000mはミホノブルボンには長すぎた……ライスシャワーの菊花賞勝利は当然である。でっか?』

 

『くっ……』

 

(こいつ……どうあってもライスを悪役(ヒール)にしたいみたいやな)

 

藤井(すまんな片桐トレーナー……民意を考えれば、ブルボンの無敗三冠を阻止したライスシャワーには、悪役になってもらうのが一番盛り上がんねん)

 

『ミホノブルボンの資質は素晴らしい……あくまで距離適性の話をしているまでです……勝って当然なんてことはありえません』

 

藤井『なるほど……では、ライスシャワーさんにお尋ねします』

 

ライス『は、はい』

 

『……』

 

藤井『シンボリルドルフ以来、史上2人目のクラシック無敗三冠……トゥインクルシリーズファンの“夢”を阻んだご感想を、一言』

 

記者たちの視線が、ライスへ集まる

 

ライス『……え』

 

『質問に悪意があります!質問を変えてください!』

 

藤井『なにをおっしゃいます!わしはファンの声を代弁したまでですよ?』

 

片桐『……』ギロッ

 

藤井『……』にや……

 

ライス『えっと……あの』 

 

『ライス、答えなくていい……』

 

『インタビューは以上とさせていただきますッ!』

 

記者『え!そんなっ……!』

 

ライス『……』しゅん……

 

『行こう、ライス』

 

記者『あ!ちょっと!ライスシャワーさん!せめて一言だけでも!』

 

呼び止める声に答えず、片桐はライスを連れて歩き去る

 

藤井(片桐トレーナーとライスシャワーには悪いかもしれんけど……)

 

藤井(わしはわしのやり方でトゥインクルシリーズを盛り上げるんや)

 

・・・・・・

 

京都レース場 控室

 

『……』

 

ライス『……』

 

マリ『……なに?……この空気……ライスちゃん、ブルボンさんに勝ってGⅠ獲ったんだよね……』 

 

トラン『大方、取材でブルボンさんのことばっかり聞かれたんでしょ……』

 

エク『……私、記者の方々の言動はあまり好きになれません……』

 

スズカ『ええ……気持ちはわかるわ……』

 

~LANE♪

 

スズカ『!』

 

スズカ『たづなさんからだわ……』

 

たづな【ライスさん、念願の菊花賞、GⅠ初制覇おめでとうございます】

 

スズカ『ですって、ライスちゃん』

 

ライス『……うん』

 

スズカ『……』 

 

『……』

 

(ライスはワシが……)

 

 

◇◇◇

 

翌日 六平銀次郎自宅

 

六平『ふあぁぁ~あ゛……』バサッ!

 

新聞記事【無敗三冠の夢を砕いた「黒い刺客」!ライスシャワー、ブルボンを差し切り菊花賞制覇!】

 

六平『……』

 

新聞を脇へ置き、別のスポーツ紙を開く

 

新聞記事【無敗三冠ならず、場内悲鳴!ブルボンを仕留めた「黒い刺客」ライスシャワー!】

 

六平『……はぁ』

 

さらに別のスポーツ紙を広げる

 

新聞記事【菊の舞台に悪役(ヒール)誕生!ライスシャワー、ブルボンの無敗三冠を阻止!】

 

六平『……勝ったウマ娘にかける言葉が、それかよ……』

 

六平『相変わらず、なんでもかんでも面白おかしく書けばいいと思いやがって……なんも変わっちゃいねぇな』

 

六平『ロクな新聞記者がいねぇ……』ぽいっ

 

六平『……』

 

六平(……片桐……もう大丈夫だろ……お前がライスシャワーを支えてやれよ……)

 

六平『……だから、新聞記者はキライだッ!』

 

・・・・・・

 

藤井『へぇっくしょいっ!!』

 

藤井『んあ?誰ぞわしのこと噂でもしてるんか?』

 

藤井『モテる男はツライなぁ~……♪』

 

 

◇◇◇

 

 

12月 トレセン学園 トレーナー室

 

(あの菊花賞以降、ライスの走りは精彩を欠いていた……トレーニングにも身が入らんようやし……)

 

(確かに、菊花賞での観客の反応が堪えるのは、人々に幸せを与えたいライスの夢からすれば当然と言えば当然……)

 

(さらに先月、ミホノブルボンの……)

 

───────────

 

11月下旬

 

ライス『え?……ブルボンさんがケガ?』

 

『ああ、ジャパンカップを目指して調整中のケガだそうだ……』

 

ライス『そんな……ブルボンさんが……』

 

ライス『復帰!……復帰出来るんだよね!?ライスの時みたく!』

 

『詳しくはわからないが……復帰は未定らしい……』

 

ライス『……ライスが……ライスのせいだ……』

 

『ライス!ケガは誰のせいでもない!』

 

ライス『……』

 

ライス『……うん……そうだね』

 

『……』

 

───────────

 

(あれが、トドメにならんとええねんけど……)

 

『ああぁぁー……!ワシまで弱気になってどうすんねんっ!』

 

『そろそろだと思うんだけど……』

 

(今のライスには何より、ライスの“夢の形”を見せるのが一番や、それには……)

 

コンコンコン……

 

(来たっ!)

 

『どうぞ!』

 

ガラガラ……

 

たづな『失礼します』

 

『たづなさん!』

 

たづな『はい、きましたよ……有マ記念ファン投票の最終結果』さっ

 

たづなから渡された最終結果の書かれた紙を手に取り、むさぼるように見る

 

【有マ記念ファン投票 ー最終結果ー】

 

1位 トウカイテイオー  177,926票

2位 ミホノブルボン   160,519票

3位 ライスシャワー   139,416票

4位 ヒシ------- 129,908票

5位 メジロマックイーン 127,670票

6位 ダイタクヘリオス  126,756票

7位 ナイスネイチャ   91,866票

8位 レオ------- 84,477票

9位 レッツ------ 84,406票

10位 シンコウ----- 81,458票

 

(やっぱり!3位!!)

 

(あれ?パーマーがおらんな……)※メジロパーマーはファン投票17位でした 

 

たづな『あ!速報なので10位までですよ』

 

『なるほど……』

 

たづな『これで少しでもライスさんを元気づけられればいいんですけど……』

 

『ええ、たとえ勝てなくても……これだけ多くの人がライスに期待しているのを知れば……』

 

たづな『勝てなかったんですか?……ライスさん』

 

『……はい、けど……ライスの今の精神状態を考えれば史実がどうこうより……仕方ないのかなと……』

 

たづな『この投票結果で少しでも調子を上げてもらえるといいですね』

 

『ええ、ライスだったらきっと喜びますよ』

 

・・・・・・

 

放課後 チームポリマ部室

 

マリ『うぅ~……なんか今日寒くない?』

 

エク『うん、随分寒くなってきたね』

 

トラン『もう12月だもんねぇ~』

 

マリ『ねぇ、部室にコタツ入れない?』

 

トラン『いいねぇ~……みんなでコタツに入って、みかん♪』

 

ライス『……コタツでみかん……❤』

 

スズカ『よくありません、トレーニングに出たくなくなっちゃうでしょ?』

 

マリ『だめかぁ~……』

 

ガチャッ!

 

マリ『あ、ナビっち、おt……』

 

『結果!はっぴょぉぉぉぉぉぉっ!!』

 

ライス『ひゃあっ!』 

 

マリ『うお!声デッカ!?』

 

エク『……結果?』

 

たづな『はい、有マ記念のファン投票の最終結果が届きました』

 

トラン『そっかぁ、もうそんな季節だ』

 

ライス『……ファン投票』

 

『我がチームポリマが誇る!名ステイヤーのライスは……』

 

ライス『名ステイヤー!?……////』 

 

『総得票数……139,416票で!第3位です!!』

 

マリ『3位ッ!?』

 

エク『……すごい……』

 

トラン『すごッ!シニア期のウマ娘も全部含めての3位っしょ!?』

 

スズカ『よかったわね、ライスちゃん♪』

 

ライス『ライスが3位……』

 

『ああ……約14万のファンが、ライスの有マ記念出走を望んでいるんだ……』

 

ライス『ライスが走るのを?』

 

『うん、君に夢を託してる』

 

ライス『……夢を……』

 

『出るか?……有マ記念』

 

ライス『……』

 

一同『……』

 

ライス『うん!ライス出る!みんなの期待に応えたい!!』

 

『よし!じゃあ、本格的に有マ記念に向けて、チームポリマをあげてトレーニングだ!!』

 

一同『おー!』

 

(これで……大丈夫やんな……)

 

わいわい……

 

ライス『えへへ……』

 

 

◇◇◇

 

 

12月末 中山レース場 芝2500m GⅠ有マ記念 どーーーん

 

 

中山レース場 ゲート前

 

実況『さあ、今年も一年の締めくくり……あなたの、私の夢が走る!』

 

実況『GⅠ有マ記念!ゲートイン完了しました』

 

 

ライス『……』

 

───────────

 

観客『俺たちはブルボンの無敗三冠がみたかったんだよー!何してくれてんだ!ライスシャワー!!』

 

観客『お前の勝利なんて誰も望んじゃいないんだよっ!!』

 

───────────

 

ライス『!』

 

菊花賞の日の罵声が、ゲートの中にいるライスの耳に蘇る

 

ライス(……ライスは……)

 

 

ガシャンッ!

 

実況『ゲート開いて、今!有マ記念スタート!!』

 

・・・・・・

 

実況『メジロパーマー!メジロパーマー!内から6番!』

 

実況『メジロパーマー逃げ切ったか!?ゴールインッ!!』

 

実況『トウカイテイオーもライスシャワーもどうしたんでしょうか!?』

 

実況『意外な展開であります!勝ったのは15番人気!メジロパーマー!』

 

 

◇◇◇

 

 

翌日 放課後 トレセン学園 トレーナー室

 

 

(結局ライスは有マ記念8着……)

 

(……なんとかモチベーションは上げれたと思うとったんやが……)

 

(トレーニングでも、いつもの気迫も、集中も見られんかったし……)

 

(……有マの走りも精彩を欠いていた、8着は当然か……)

 

コンコン……

 

ガラガラ……

 

ライス『失礼します』

 

『ライス……ごめんな、休養日なのに呼び出して』

 

ライス『ううん、ライスも、落ち着かなかったからいいよ』

 

片桐『……』

 

ライス『……』

 

しばらく、どちらも口を開かなかった

 

『……昨日はおつかれさま』

 

ライス『……うん』

 

『来年からの目標なんだけど……』

 

ライス『うん』

 

『ライスの得意な長距離で戦っていこうと思ってるんだ』

 

ライス『うん』

 

『……来年の春、天皇賞を大目標にしたい!』

 

ライス『天皇賞……』

 

『そう、ステイヤーの女王、メジロマックイーンに挑む!』

 

メジロマックイーンの名を聞いて、ライスが顔を上げる

 

ライス『!』

 

ライス『マックイーンさんに……』

 

『……』

 

『……どうかな?』

 

片桐は口を挟まず、ライスの言葉を待つ

 

ライス『……ライス……』

 

『……』

 

ライス『挑戦したい!マックイーンさんに!!』

 

『よし!来年の目標は、天皇賞(春)制覇だ!』

 

ライス『うん!』

 

(マックイーンなら、ライスの闘争心を燃やすのにもうってつけ……)

 

(気迫も、集中も、取り戻せる……せやけど……)

 

(……大丈夫、ステイヤーで戦っていく以上、春天は外せへん……)

 

(大丈夫……ライスなら、乗り越えられる……)

 

(……ワシが、ワシが支えるんや……ライスを守るんや!)

 

 

 

 

 

ー2章ー013話   傷ついた夢に、木漏れ日のエール   完

 

 

 

 

 

 




第2章第13話「傷ついた夢に、木漏れ日のエール」

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

ライス、ついに菊花賞を制してGⅠ初勝利です!
……なのに、素直に喜べないのが今回のつらいところですね。

ライスを守ろうとする片桐も、平静ではいられませんでした。
二人がこの先どんな一歩を踏み出すのか、引き続き見守っていただければと思います。

次回、第2章第14話。
10月28日(水)19:00公開予定です。

【KUROXの駄馬(だば)なし  第13走】
対象話:第2章第12話・第13話
10月26日(月)07:00公開予定です。

【X】
https://x.com/utsupapa_2021

【note記事 KUROXの駄馬(だば)なし 】
https://note.com/kurox_1200
※noteは、登録・ログイン不要でそのままお読みいただけます。

KUROX
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