【ウマ娘if】転移した俺は、トレセン学園で運命に抗う   作:KUROX

3 / 6
ー1章ー003話

 

 

 

『……てくれ』

 

スズカ『……え?』

 

『……手伝わせてくれ』

 

スズカ『……それって……』

 

『担当トレーナーとして君と一緒に走りたい!』

 

『君のレース人生を手伝わせてくれ!』

 

スズカ『……』

 

『……』

 

スズカ『はい!……トレーナーさん!』

 

『……』

 

スズカ『……』

 

『い……いいのか?……俺で?』 

 

スズカ『?』

 

スズカ『ふふっ……おかしな人……トレーナーさんから言ってきたんじゃないですか?』

 

『それは……そう、なんだけど……』 

 

スズカ『学園に帰りましょ!トレーナーさん♪』

 

『……ああ!』

 

スズカ『じゃあ……はいっ』

 

背中をこちらに向けしゃがむスズカ

 

『……はい?』

 

背中を向けしゃがんだままの姿勢でこちらを向くスズカ

 

スズカ『……はいっ!』

 

『な……何してるの?』 

 

スズカ『……おんぶです』

 

『!』

 

『おんぶぅぅ~っ……!?』 

 

スズカ『トレーナーさん……走れます?』

 

『無理です』即答

 

スズカ『今から歩いて帰ったら、日が暮れちゃいますよ?』

 

スズカ『だから……はいっ♪』

 

(ぐはぁっ……アカン……色々と……耐えられる自信がない) 

 

『いやぁ……この歳でスズカみたいな若い娘に……おんぶされるのは、ちょっと……』

 

スズカ『?』

 

スズカ『ふふっ……何言ってるんですか?私“ウマ娘”ですよ?』

 

『!!』

 

(……ホンマ……この娘は……)

 

(……かなわんなぁ……)

 

『じゃあ、今日だけお言葉に甘えますか!』

 

スズカ『ふふっ……どうぞ♪』

 

ガシッ

 

(ふあぁ~……めっちゃいい匂い♡……って、アカンッ!!アカンッ!!)

 

(担当に邪な気持ちはご法度や!)

 

スズカ『それじゃ、行きますよ』

 

スズカ『よっ……と』軽々と立ち上がるスズカ

 

『うぉっ』

 

スズカ『しっかり掴まっててくださいね』

 

『はい……おねがい……じまずぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ~~~~っ!!?』

 

『あばばばばばばばばばばばっばばっばばっ…』

 

(風圧でまともにしゃべれへん!)

 

(あれ?これラッキースケベイベントちがうかった?)

 

(めっちゃ怖い!めっちゃ怖い!めっちゃこわぁぁぁぁい!!)

 

(どんだけスピード出てるんですかぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~っ!?)

 

 

 

【ピンポーン!】

 

【駿川たづなのトレセン学園豆知識♪】

 

ウマ娘……

 

彼女たちは人間を遥かに超えた脚力を持っています

 

レース中の平均時速は約60km

 

ラストスパートなどでは時速70kmを超えることもあるとか……

 

ですが、ご安心ください♪

 

街中にはウマ娘専用レーンが整備され、交通ルールもしっかり存在しています

 

……もっとも

 

ヘルメットも固定ベルトも無しで背中に乗ることは、あまりおすすめできませんけどね♪

 

もちろん、スズカさんもしっかり交通ルールは守っていますよ♪

 

~トレセン学園豆知識~ おわり

 

 

 

『ズズガ……ざん……!……ズズガざん!!』

 

『……ぼう゛……ぼっぼ……ゆっぐり……ばじればぜんぐぁ?』(もうちょっとゆっくりはしれませんか?)

 

スズカ『ふふっ……ふふふっ♪』

 

(めっちゃ楽しそう!!?)

 

スズカ『二人で走るのも楽しいですね?……トレーナーさん♪』

 

『……ぼう゛……べ……ず……げぇ……』(そうですね)

 

(スズカってこういうとこある!)

 

(こういうとこあるよねぇぇぇぇ~~~~……)

 

スズカ『ふふふっ♪』

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

トレセン学園理事長室前

 

スズカ『あの……大丈夫ですか? ……トレーナーさん?』

 

『ハァハァハァ……全っ然っ大丈夫……』ガクガクガク……

 

スズカ『でも……足が……生まれたての小鹿みたいになってますよ?』

 

『こ……これは……ただの……武者震いだから……』ガクガク……

 

スズカ『ごめんなさい私……またレース走れるんだって思ったら……ハシャいじゃって……』 

 

『うん、わかってる』

 

(……ホントに走るのが好きなんやな)

 

『よしっ!じゃあ善は急げだ!正式契約だな』

 

スズカ『はい!』

 

コンコン、コンコン……

 

たづなの声『どうぞ』

 

ガチャッ

 

スズカ&片桐『失礼します』

 

たづな『あら?片桐トレーナーとスズカさん?』

 

『お疲れ様です、たづ……』

 

《ガッビーン》

 

『?』

 

(……ガッビーン??)

 

たづな『ふふっ……どうされました?片桐トレーナー?』

 

『いや、なんでも……お疲れ様です、たづなさん』

 

理事長『歓迎ッ!!よくきてくれた二人とも!』

 

『うおっ!いらっしゃったんですね……理事長……お疲れ様です』

 

(ちっこくて見えんかった……)

 

理事長『憤慨ッ!今、失礼なことを考えなかったか!?』

 

『いや!滅相もない!』 

 

(ちっこくてもさすが理事長……鋭い……) 

 

たづな『どうやら決心されたようですね♪』

 

『はい!』

 

『すうぅー……』

 

『私!片桐隆は中央トレセン学園のトレーナーとして復帰し……』

 

『サイレンススズカと担当契約を結びますっ!』

 

スズカ『……』まっすぐこちらを見つめている

 

理事長『天晴ッ!!君ならそう言ってくれると思っていたぞ!片桐トレーナー!!』

 

たづな『ふふふっ……おめでとうございます』

 

たづな『スズカさんもよかったですね』

 

スズカ『はい!』

 

理事長『それではたづな!契約書を!』

 

たづな『はい、こちらに』

 

(準備良ッ!なんかこうなること、分かってたみたいやな) 

 

たづな『では、こちらにお二人のサインをお願いします』

 

スズカ&片桐『はい』

 

たづな『ふふふっ』

 

『どうしました?』

 

たづな『こちらに来られた時も思ったのですが、お二人はもう息ぴったりですね♪』

 

『……』チラッ スズカを見る

 

スズカ『……』チラッ 片桐を見る

 

『そ……そんなこともないと思いますよ……!?』 

 

スズカ『……////』

 

『……はい、これでお願いします!』

 

たづな『はい、確かに受領いたしました』

 

理事長『祝福ッ!これで晴れて正式な担当契約締結ッ!!』

 

たづな『改めておめでとうございます!』

 

スズカ&片桐トレ『ありがとうございます……っ!?』

 

慌てた様子でまた顔を見合わせる

 

たづな『ふふふふっ……』

 

(なんかやりにくぅ~……) 

 

理事長『朗報ッ!!』

 

『うおっ』

 

(この人いつも突然なんよな……)

 

理事長『実は昨日の片桐トレーナーの面談の後、改めて片桐トレーナーの過去の記録を調べてみたのだ!』

 

(ワシの……過去?)

 

理事長『たづなッ!』

 

たづな『はい』

 

たづな『なにぶん……学園の資料が膨大で、しかも時間も随分経っていますので……』

 

たづな『片桐トレーナーに関する資料を全て発見することはできなかったのですが……』

 

たづな『片桐トレーナーが過去に担当していたウマ娘が一名判明しました』

 

(“過去のワシ”の担当……)

 

スズカ『……』

 

たづな『そのウマ娘の名前は……』

 

『……』

 

たづな『……』

 

『……』 

 

(ためるな!サラッと言って!たづなさん!)

 

たづな『ハイセイコーです』ニコッ♪

 

『ハッ!?』

 

スズカ『えっ!?』

 

片桐脳内エコー↓

たづな『ハイセイコーです』ニコッ♪

たづな『ハイセイコーです』ニコッ♪

たづな『ハイセイコーです』ニコッ♪

たづな『ハイセイコーです』ニコッ♪

たづな『ハイセイコーです』ニコッ♪

 

『……』

 

 

 

脳内聖〇ちゃん(あぁ~~♪わったしの~愛わぁぁ~……♪東のぉ~~波に乗って、走ぃるわぁ~~♪)

 

 

 

理事長『驚愕ッ!!そう!あの伝説の元祖アイドルウマ娘!ハイセイコーだ!』

 

スズカ『……スゴい……』

 

(なにしてくれちゃってんのぉぉぉ~~!?過去のワシぃぃぃ~~!!)

 

たづな『第一次ウマ娘ブームの火付け役、伝説のアイドルウマ娘ですよ』

 

(やめてぇ~)

 

理事長『うむ!記録よりも“記憶”に残る正に名ウマ娘ッ!!』

 

(もう……やめてぇ~……)

 

スズカ『私でも知ってます!レースの度にレース場が埋め尽くされていたって……』

 

(スズカまで……やめてぇ~……知らなぁ~い……ワシにそんな記憶なぁ~い……)

 

理事長『そんな伝説のウマ娘を育てた!正に伝説のトレーナーの……』

 

理事長『復帰ッ!!私の目に狂いはなかったのだッ!!』

 

(……ぐはぁっ)

 

『……』

 

『…………』

 

『……スズカ……』

 

スズカ『はい!』尊敬の眼差し

 

(……うっ)

 

『……帰ろ……』

 

スズカ『え?あ、はい!』

 

理事長『期待しているぞ~!!片桐トレーナーッ!!!!』

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

一夜明けトレセン学園登校時間 正門前広場・・・の木陰

 

 

 

(やぁ!みんな!伝説的ウマ娘♡ハイセイコーを育てた片桐【名トレーナー】だよッ☆)

 

(あの後時間が遅い事もあってすぐにグッバイ!解散サッ☆)

 

(さあ!今日からスズカと本格的にドキドキ♡トレーニングの開始☀)

 

(今日からはスズカと嬉し✨恥ずかし…///二人三脚で目指せ!トップアイドルウマ娘☆)

 

(まぁハイセイコーを育てた僕の手腕にかかればお茶の子さいさいサッ✨)

 

(見ていてくれ!僕の華麗なるトレーニングメニューをッ☆)キランッ✨

 

 

 

(て、なるかぁぁぁぁ~~~~いっ!!)

 

(華麗なるトレーニングメニューってなんやねん!)

 

(普通のトレーニングメニューも組めんわっ!!)

 

(ただの競馬ファン&ウマ娘オタクのおっさんに伝説的名馬育成できるかいっ!!)

 

(まったく……この世界の“過去のワシ”……どうなってんねん……)

 

『!』

 

『……あれはっ!?』

 

大塚〇夫風片桐(大佐!こちらス〇ーク!これよりスニーキングミッションを開始するっ!)

 

脳内大佐(いいか?ス〇ーク!これはウマ娘への耐性を鍛えるための極秘ミッションだ!)

 

脳内大佐(決してウマ娘たちには見つかってはならんぞ!繰り返す!決してウマ娘たちに見つかってはならんぞ!)

 

大塚明〇風片桐(安心してくれ大佐!サングラスとマスクでカモフラ率はMAXだ、見つかることなんてありえない)

 

『……』ちら

 

キタサンブラック『おはようございまーす!』

 

サトノダイヤモンド『キタちゃん、待ってくださ~い♪』cv.立花日菜

 

『……くっ』 

 

(……キタサト……てぃてぃ……♡)

 

『……むっ!?』

 

トウカイテイオー『マックイーン!今日こそ勝負だよ!』cv.Machico

 

メジロマックイーン『朝から元気ですわね、テイオー』cv.大西沙織

 

『…………ぐあぁぁっ』 

 

(……テイマクの勝負だと!?……み……見た過ぎる!!)

 

『……あれはッ!?……』

 

『マズイッ!!』

 

スペシャルウィーク『今日もいっぱい食べますよ~!』cv.和氣あず未

 

グラスワンダー『スペちゃん?学生の本分をお忘れではありませんか? 』cv.前田玲奈

 

エルコンドルパサー『朝から元気デース!』cv.髙橋ミナミ

 

キングヘイロー『もう少し優雅に登校なさい!』cv.佐伯伊織

 

セイウンスカイ『ふぁ~……眠いなぁ……』cv.鬼頭明里

 

(黄!金!世代ッ!!)

 

『ぬあぁ~……ぬあぁ~……ぬあぁ~……』エコー

 

『……』

 

脳内大佐(どうした!?ス〇ークッ!?応答しろっス〇ークっ!?ス〇ェェェェェーーーークッ!!!!)

 

(……ウマ娘……TVアニメシリーズ……全3期……)

 

(コン……プリー……ト)バタッ

 

『……』

 

(天国の父さん……聞こえますか?)

 

(ありました……黄金郷(エルドラド)は……ここに……)

 

『……』ピクピク……

 

???『……トレーナーさん?……』

 

(ハッ!!)

 

(……この声は……まさかっ!!?)

 

『スズカッ!?』

 

スズカ『どうしたんですか?こんなところで?そんな格好で?』

 

『ババッ……っと』慌ててサングラスとマスクを外す

 

『これは……なんというか……』 

 

『極秘ミッション……?』

 

スズカ『……はい?』

 

『いや!休養明けだから……その……リハビリ的な?』

 

(うん、嘘は言ってへんな)

 

スズカ『ふふっ……変わったリハビリですね』

 

『ハハハ……片桐式です……』

 

(なんじゃそりゃ……)

 

『ス……スズカは朝練終わりかい?』

 

スズカ『はい、外周にいってました』

 

『そうか』

 

(実は昨日の別れ際、スズカと決めたことがある)

 

 

 

───────────

 

 

 

スズカ『……明日からのトレーニングどうしましょう?トレーナーさん?』

 

『……ホェー』ハイセイコーショックから立ち直ってない

 

スズカ『トレーナーさん?』

 

『ほえ!?なに?』

 

スズカ『明日からのトレーニングのことです』

 

『あ!あぁトレーニングね』

 

『……』

 

スズカ『……』

 

『!』

 

『うん、朝は自主練、本格的なトレーニングは午後トレからにしよう』

 

スズカ『……自主練……で、いいんですか?』

 

『スズカの走りの原動力は、“走ることが楽しい、大好きだ”っていう想いだと思うんだ……』

 

『あんまり分刻みのトレーニングメニュー、みたいなのは合ってないと思う』

 

『だから、明日以降もそんな感じでいこうと思ってるんだ……けど……』

 

『……いいかな?』

 

スズカ『……トレーナーさん……////……はい!もちろんです♪』

 

(やっぱスズカは可愛いなぁ~)

 

 

 

───────────

 

 

 

『おつかれさま、そろそろ始業時間だろ?』

 

スズカ『はい……いってきます』

 

『うん、いってらっしゃい、がんばって』

 

スズカ『ありがとうございます』びゅん!

 

(あ、やっぱ走ってくのね) 

 

『さて、それじゃ俺も行きますか』

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

トレセン学園 【片桐】トレーナー室前

 

(ここがワシのトレーナー室……ちょっと感動)

 

(朝トレを自主トレにしたのには……実は理由があって……)

 

(時間稼ぎだ)

 

(本格的なトレーニングが始まる前に少しでもトレーナー知識をつけたかったから)

 

(ナイスアイデアやろ?)

 

ガラッ

 

(よかった、鍵開いてるやん)

 

キョロキョロ

 

スタスタ

 

キョロキョロ

 

(違うなもうちょっとこっちか?)

 

スタスタ

 

『じーーーっ……ここ!』

 

(めっちゃゲームウマ娘のトレーナー室ぅ~~~)

 

(トレーナーデスクにソファ、面談用の椅子と机、ホワイトボードもあって、テレビも完備)

 

(そして……壁際に置かれた棚には専門書がギッシリ)

 

(ありがたい、これで最低限の勉強はできそうやな……)

 

(にしても……多すぎん?) 

 

(何!?中央トレーナーってこんくらいの知識が全部頭の中に入ってるの!?)

 

(さすがエリート……ちょっと……いや、かなり引いたわ……)

 

(……ん?)

 

(……中央トレーナーって……資格いるんよな?受験あるくらいやし……)

 

(ワシ資格持ってないよ!?) 

 

(闇医者ならぬ、闇トレーナー?) 

 

(いやいや!アカンやろ!なんかあったらスズカに迷惑がかかる!)

 

(ワシなんかのことでスズカに迷惑かけられるかい!)

 

『……ん?』

 

『これって……』

 

壁に掛かった一つの額縁が目に入る

 

【中央トレーナー資格証】

 

『あった』

 

『……名前も俺の名前だ』

 

(おそらく、いや、間違いなく“過去のワシ”のものやろうけど……)

 

(ふ~ん……こんな賞状みたいなやつなんやな……)

 

『っていうか、この部屋って……』

 

(“過去のワシ”の部屋!?)

 

(……な、訳ないか)

 

(理事長もたづなさんも“過去のワシ”に会ったことなさそうやったし、随分前に休職してんのやろ)

 

(と、いうことは……学園に保管されていた資格証を……)

 

(おそらく、たづなさんあたりがここに掲示してくれた……って感じやろ)

 

(いやぁ、さすがはシゴデキお姉さん、たづなさんやな)

 

(トレーナー資格問題は解決!……一応な……アハハ)

 

(あとは……)

 

『やりますか!』

 

必要そうな専門書を手当たり次第手に取りデスクに置く

 

・・・・・・

 

どーーーーーーーーん

 

『……もうちょっと減らす?』 

 

(アカンアカン、自分に甘えるな!スズカのため……スズカのため!)

 

『ヨッシャァ!』気合を入れデスクに向かう

 

 

・・・・・・

 

 

コンコン……

 

『……はい』作業しながら視線も上げずに応答する

 

???『邪魔するぞ』

 

ガラッ

 

『邪魔すんのやったら、帰ってやぁ~』

 

???『ほな、また来るわ~』

 

???『って、俺に何をさせるんだ!馬鹿もん!』

 

『!?』

 

『ろっぺいさんっ!?』

 

六平銀次郎『むさか、だ!』cv.大塚芳忠

 

(六平銀次郎やぁ~!つい“シングレノリ”でろっぺいさん言うてもうたぁ~) 

 

六平『長期休養から復帰したと聞いて、見に来てみれば……』

 

六平『相変わらずだな?アイドルトレーナー』ニカッ

 

(相変わらず?……“過去のワシ”のことか?……それに……)

 

『アイドルトレーナー?』

 

六平『なんだ?忘れちまったのかぁ?』

 

六平『稀代のアイドルウマ娘ハイセイコーのトレーナー……』

 

六平『あの頃は周りの連中がお前のことをアイドルトレーナーなんて呼んで騒いでただろうが』

 

(ワ~オ!セイコちゃんだけじゃなくて“ワシ”も人気者だったのねぇ~) 

 

『ははは…… そんな事もありましたねぇ~……』

 

六平『そんな事ってお前……まぁ、いい、それより調子はどうなんだ?勘は取り戻せそうか?』

 

(勘?勘ってなんの勘?アルミ缶?スチール缶?菅直人?……)

 

(わかってるわ!トレーナーとしての勘やろ!?そんなもん元々ないわ!)

 

(……ん?もしかしてこれは……チャンスなのでは?)

 

『……ろっぺいさん』

 

六平『むさかだ!お前わざと言ってるだろ?』

 

(はい)

 

『ははは、まさか……』

 

(六平銀次郎と言えばトレセン学園内でも超ベテランの、名トレーナー)

 

『実はですね~……なんと言いますか……』

 

六平『なんだ?まどろっこしい、はっきり言え!』

 

(うまいこと誘導すればトレーナー業のこと教えてくれるかも!?)

 

『トレーナーの時の記憶が……曖昧……というか……ほとんど、無くて……』

 

六平『っ!?』

 

六平『……病気の後遺症か……?』

 

『……はい』

 

六平『……そりゃあ、あんだけ大変な目に遭えば……無理もねぇか……』

 

(ろっぺいさんは“過去のワシ”の休職理由を知ってる!?)

 

六平『う~む……』

 

六平『わかった!また新人の時みたいに面倒見てやるよ』

 

(ハイ!キターーーーッ!ワシ天才っ♪)

 

『ありがとうございます!ろっぺいさん!!』

 

六平『む・さ・か・だ!』

 

『ははは……』

 

六平『ただし!お前も聞いていると思うが、今この学園は深刻なトレーナー不足だ』

 

六平『俺も自分の娘たちを見るだけで手一杯だから手取り足取りってわけにはいかない……』

 

六平『困った事があったら俺に聞け!なんでも答えてやる!それでいいな?』

 

『十分ですっ!さすがっ!神様!仏様!六平様~!』

 

六平『けっ!調子の良さは忘れてねぇじゃねぇか?』

 

『へへっ……では!早速!聞きたいことが……』

 

六平『おう!何でも聞け』

 

『今日スズカとの初トレーニングなんですけど……』

 

『何したらいいですか?』

 

六平『……なんだ、そんな事か?』

 

『そんな事って……』

 

六平『いいか?技術や戦略なんてもんはいつでも教えられる』

 

六平『それこそ、そこいらの専門書でも読めば身につけられる』

 

六平『じゃあ、ウマ娘になんでトレーナーは必要だ?』

 

『わかりません』即答

 

六平『ちょっとは考えろ!』

 

六平『彼女たちは物言わぬ機械じゃねぇ、技術や戦略をインプットしただけじゃいい走りはできねぇ』

 

六平『……不思議なもんでなぁ、トレーニングで完璧に身体を仕上げても』

 

六平『ちょっとの心の“揺らぎ”で負けちまうなんてことがザラにある』

 

六平『かと思えば、心の力で大本命相手に圧勝なんてこともある』

 

六平『その心に寄り添い、支えてやる……それがウマ娘トレーナーってもんだ』

 

六平『わかったか?』

 

『はい』

 

六平『じゃあ聞くが、今日のトレーニングメニューは!?』

 

『わかりません』即答

 

六平『お前なぁ……信頼と絆だ!』

 

六平『それっぽいトレーニングやりたきゃ、その辺に転がってるマニュアルでも見てろ!』

 

『……信頼と絆』

 

六平『そうだ!まずお前がやらなきゃいけないことは担当との信頼と絆を深めること!』

 

六平『それにお前の担当、サイレンススズカだろ?』

 

『知ってるんですか!?』

 

六平『ああ、お前が復帰する前にな……俺んとこにも担当頼めないかって依頼があったからな』

 

六平『少し調べて……断った』

 

六平『あの娘なら“俺じゃなくてもいい”と思ったからな』

 

六平『あの娘は速い、もう身体は完成してる、今のあの娘とまともに勝負できんのは……』

 

六平『G1級のウマ娘ぐらいだろ』

 

『……そんなに……』

 

六平『だから、お前なんだろ』

 

『!?』

 

六平『俺はもう帰るぞ、なんだか疲れた……』

 

『ありがとうございました“六平”さん!』

 

六平『……へっ』

 

六平『っと!そうだったそうだった!忘れるとこだった』

 

六平『ほれっ……』何かをこちらに投げる ポイッ

 

『おっと……鍵?』

 

六平『この部屋の鍵だ』

 

六平『まったく……たづなの奴、お前が復帰したから様子見がてら鍵を届けてくれなんて……』

 

六平『余計な仕事が増えたじゃね~か』

 

『……』

 

六平『じゃあがんばれよ!アイドルトレーナー』

 

ガラガラッ……バタン

 

(ホンマにありがとうございます、ろっぺいさん!)ぺこっ

 

(とはいえ……)

 

『信頼と絆ねぇ……』

 

『信頼と絆……信頼と絆……信頼と絆……信頼と絆……』

 

『お互いの信頼と絆を深める……』

 

『絆を深める……』

 

(ピコーーーンッ!)

 

『これやっ!!』

 

(ふふふ……これさえあれば……完璧や!)

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

放課後 トレーナー室

 

コンコンコン……

 

『はい』

 

スズカ『失礼します』

 

ガラッ

 

スズカ『本日から改めて、よろしくお願いします……トレーナーさん♪』ニコッ

 

(トレーナーさん♪ニコッ✨……トレーナーさん♪ニコッ☆……トレーナーさん♪ニコッ♡……)脳内エコー補正付き

 

(……イイッ!すごくイイッ!!)

 

『コホンッ……こちらこそよろしく』

 

スズカ『それで……今日はなにをしましょう?』

 

『うん、準備はばっちり!ちょっとそこで座って待ってて』

 

スズカ『はい』イスに腰掛ける

 

『……えっと~、どこしまったっけなぁ~……』ガサゴソ

 

スズカ(すごい量の本と……資料?)

 

『あれぇ~……さっき作ったばっかりなのに……』バサッドサドサドサッ……!!

 

デスクからこぼれ落ちる資料や本

 

『うお!……あぁ~ごめんごめん、あとで片づけるから……』 

 

落ちた資料の中に何かを見つけるスズカ

 

スズカ(あれは……私のレース記録……デビュー前の物もあるわ)

 

スズカ(今日だけであの量を……?)

 

『お!あったあった……これこれ!』

 

『作業に夢中になってたら、変なとこに紛れちゃってたよぉ』

 

『お待たせ、スズカ』

 

スズカ(どんな……トレーニングメニューなのかしら……?)ドキドキ……

 

『まずは……これを見てくれ!』

 

スズカ『はい!』

 

ばさっ

 

【スズカ&片桐トレの交換日記 ノート】

 

スズカ『……』

 

『……』ニコニコ

 

スズカ『……』

 

『……』ニコニコ

 

スズカ『……』

 

『……』ニコニコ

 

スズカ『……』

 

『……』ニコニコ 

 

(あれ? ワシ……ヤっちゃってる…………?) 

 

スズカ『……トレーナー……さん……これはぁ……?』絞り出すような声

 

『あぁ~……ちょっと子供っぽかったかなぁ~?……違ったかなぁ~?』

 

『スズカが……嫌なら……別に……やらなくてもぉ……全然いいんだけどぉ~……』しゅん……

 

スズカ『ふふっ……』

 

『!?』

 

スズカ『ふふふふふふっ……♪』

 

(めっちゃ笑ってる……走ってる時以外にこんな笑ってるスズカは初めて見るわ)

 

『やっぱり、ダメ……だよね……』しゅん……

 

(めっちゃ考えたのに……)

 

スズカ『ふふっ……そうですね』

 

(ガァーーーーーーン)

 

『……ぁ……ぁぅ……』

 

スズカ『トレーナーさん、ペンあります?』

 

『え!?ああ!……はい、これ』さっ

 

スズカ『ありがとうございます……』ノートとペンを手に取る

 

ノートになにやら書き込んでいるスズカ

 

スズカ『……これなら、いいですよ』

 

【スズカ&片桐トレの交換日記★ノート】

 

『!!』

 

(ハートがアカンかったかぁー!)そこじゃないっ!

 

『いいの?』

 

スズカ『いいですよ』ニコッ

 

『……ヨッシャ!』

 

スズカ(……本当に楽しい人)

 

『じゃあ、時間ももったいないし、一旦トレーニングコースに出ようか?』

 

スズカ『はい!』

 

椅子から立ち上がり……トレーナー室のドアへと向かうスズカ……

 

(……ん?……スズカの右足)

 

『スズカ!』

 

スズカ『はい?』振り向く

 

『スズカって利き足どっち?』

 

スズカ『え?……利き足……ですか……?』

 

スズカ『……わからないです』 

 

(そっか……理論や戦術で走るタイプやないもんなスズカは……そういうことには疎いんやな)

 

『ふむ、ちょっとそのまま立っててね』

 

スズカ『え……はい』

 

スズカの後ろに回り込む

 

『リラックスして、まっすぐ前を向いて……』

 

スズカ(リラックス……まっすぐ前を向く……)

 

(ウマ娘だから……ちょっと強めかな?)

 

『えいっ!』どんっ!

 

スズカ『きゃっ』

 

背中を急に押され一歩踏み出すスズカ

 

『……うん』

 

『やっぱり右足だね、スズカの利き足』

 

一歩踏み出していたのは右足だった

 

スズカ『こんな、簡単にわかるんですね……』

 

『わかるんです♪』

 

『う~ん……』

 

『昨日、学園まで俺をおんぶしてきた影響もあるのかなぁ~……?』

 

スズカ『……』

 

『ちなみにスズカさん!』

 

スズカ『は……はい!』

 

『朝練の外周はどのくらい走ったの?』

 

スズカ『えっと……距離はわかりませんけど……』

 

スズカ『朝の4時に寮から出て……』

 

(はやっ) 

 

スズカ『正門前の広場でトレーナーさんに会う前までくらいです』

 

『休憩は?』

 

スズカ『……今日は……トレーナーさんとの初トレーニングだと思ったら……』

 

スズカ『……ハリキっちゃったみたいで……あんまり……』 

 

(くぅ~……うれしい事言ってくれちゃって……)

 

『ちょっとだけど、いつもより右足に疲労が溜まってるみたいだ』

 

『真っすぐ走っていても、無意識に利き足の方が力を使って疲労が溜まりやすいんだよね』

 

『だから今日のトレーニングは時間を決めてウッドチップコースを流す程度でスズカの走りを見よう』

 

スズカ『でも!痛みもまったく無いですし……全然普通に走れますよ?』

 

スズカ(……少しだけ右足が重かったけど……)

 

『スズカさん!』

 

スズカ『は……はい!』

 

『レースに出る、ウマ娘にとって一番大事な事は!?』

 

スズカ『え?……えっと……レースに出る……』

 

『はい!体調管理です!』

 

『体・調・管・理です!!』

 

『いま先生、大事なことだから2回言いましたよ!』

 

(初日でいいとこ見せたいって気持ちもわかるけどな)

 

スズカ『ふふっ、わかりました』

 

『はい!先生聞き分けのいい娘は大好きですっ♡』

 

(聞き分け悪くても大好きです!……って、やかましいわっ!)

 

『それじゃ、行こうか!』

 

スズカ『はい!』

 

トレーナー室を後にし……廊下を歩く二人……

 

(せやけどなんでワシ、スズカの足のことわかったんやろ?)

 

てくてくてく

 

(歩き方を見る限り、めっちゃ普通に歩いてるもんなぁ~)

 

(見て……っていうより……違和感が……)

 

ぐうぅーーーー

 

『はうぁぁぁぁぁぁぁ~~~~』

 

スズカ『きゃっ!……なんの音ですか?』

 

『なはは……ちょっと俺のお腹の虫が鳴いたみたい』

 

スズカ『鳴いたというより……叫んでたみたいですよ?』

 

『ははは……』

 

スズカ『トレーナーさん!』こちらを向く

 

『は……はい!』

 

スズカ『ごはん……最後にいつ食べました?』

 

『え……っと~……』 

 

スズカ『い・つ・食・べ・ま・し・た?』

 

『……』 

 

『……昨日の……夜?……』

 

スズカ『!』

 

スズカ『……さっき私になんて言いましたか?』

 

『……聞き分けのいい娘は……大好きです?……』

 

スズカ『な・ん・て!言いましたか?』

 

(……アカン!ボケも拾ってもらえん!)

 

『……一番大事なことは……体調管理です……』

 

スズカ『……むっ』睨む

 

『いや、あの!作業とかに夢中になると……時間も忘れる質って言うか……』チラッ

 

スズカ『………むすぅー……』プクー

 

(ほっぺ膨らませて……怒ってる……)

 

(やだ何?この可愛い生き物は……♡)

 

(って、ちゃうちゃう!めっちゃ怒ってる!めっちゃ睨んでるって!)

 

『あ、後でしっかり食べるから!今日初日だし!スズカの走りも早く見たいし……』チラッ

 

スズカ『……むっすーーーー……』プクーーーー

 

(全然しゃべってくれません……) 

 

(これがホントの“サイレンス”スズカなんつって……) 

 

『……すぐに購買に行って……何か買ってきます……』

 

スズカ『はい!聞き分けのいい子は好きですよ♪』

 

『ッ!!』

 

(……かなわんなぁ……)

 

 

 

 

 

ー1章ー003話   手綱と絆、はじめの一歩   完

 

 

 

 

 

 




最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

3夜連続投稿、最後までお付き合いいただき
本当にありがとうございました!

第3話にして、片桐とスズカは
ようやく正式に担当契約を結びました

ここから2人の物語が
本当の意味で走り始めます!

そして明日朝7時 noteにて、
本作の裏話・公開全3話のネタ解説の記事を公開します

通勤のお供に、ぜひ読んでください♪

▼KUROXのnote
https://note.com/kurox_1200

さて、第4話以降の投稿頻度ですが……

このあと、アンケートを実施します!!

皆さまからいただいた投票を参考に
今後の投稿スケジュールを決めたいと思います!

果たして、次回の公開はいつになるのか……?

アンケート結果と次回投稿日は8月4日(火)19時に
Xにて発表します!

▼KUROXのX
https://x.com/utsupapa_2021

Xで「KUROX ウマ娘if」と検索しても
見つけていただけます!

まだまだ始まったばかりの物語

これからも片桐とスズカを
見守っていただけたらうれしいです!

それでは、また第4話で!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。