【ウマ娘if】転移した俺は、トレセン学園で運命に抗う 作:KUROX
トレセン学園 旧研修センター近郊の山中
ライス『はあ!はあ!はあ!はあ!……』
ダッダッダッダッ……
『最後までへばるな!ライス!!』
ライス『はい!』
ダッダッダッダッ……
(研修センターの近くにある山道で坂路練習……整備されている坂路コースとは違い、傾斜も途中で変わる……お世辞にも整備されてるとは言えん坂道での練習……脚に応えんわけが無い……それでも……)
『フォームが乱れてるぞっ!!』
ライス『はい!』
ダッダッダッダッ……
ストップウォッチ【ピッ】
『……よし、ノルマタイムはクリアだ、スタート地点に戻りながら休憩!水分補給したらもう1回だ!』
ライス『はあ……はあ……はあ……は、はい!』
タッ……タッ……タッ……
(うぅ~……ライスめっちゃつらそうやん……可哀そうに……)
(いや、アカンアカン!鬼トレーナーになるんや!……マックイーンに勝つために!)
タッ……タッ……タッ……
ライス『はあ……はあ……はあ……勝つんだ……はあ……マックイーンさんに……はあ……はあ……』
『準備いいか!?ライスッ!!』
ライス『はあ……はあ……はいッ!』
(心を鬼にしろ……甘えは捨てろ……絶対女王に勝つんや……!)
『よ~いッ』
ライス(まだ……まだ……!)
『スターット!』
ライス『やあっ!』
ダッダッダッダッ……
・・・・・・
数時間後……
ダッダッダッダッ……
ライス『はあ!はあ!はあ!はあ!……』
頬を伝う汗も拭わず、ライスは坂の先を見据えて脚を動かし続ける
『ペースが落ちてるぞ!タイムがでなきゃやり直しだぞ!!』
ライス『はあ!はあ!……んぐっ……やあぁぁぁ!』
『ライスッ!限界を越えろ!精神は肉体を凌駕する!!』
ライス『やあぁぁぁぁッ……!!』
ストップウォッチ【ピッ】
『……よし!クリアだ!』
ライス『はっ、はっ、はっ、はっ……!は、ぁっ……っ、はっ、はっ……!』
『……ライス?』
ライス『い、き……っ、はっ……息、が……っ!はっ、はっ、はっ……!』
『ライスッ!?』ダッ……
慌ててライスに駆け寄る片桐
ライス『く、るし……っ、は、ぁっ……!はっ、はっ……っ!』
『ライス、俺の声が聞こえるか?……返事はしなくていい、頷くだけでいいから』
ライス『はっ、はっ……っ……』こくっ……
(過換気症候群!?……過呼吸か!……まずは呼吸を落ち着かせな……)
『もう走らなくていいからな……ここで休もう』
ライスの体を支え、ゆっくりと座らせる
ライス『はっ……はっ……お、兄さ……っ!』
『無理にしゃべらなくていい……大きく吸おうとしないで、まず、ゆっくり息を吐いてみよう』
ライス『っ……ふ、ぅ……っ、はっ、はっ……!』
『焦らなくていい……もう1度、ゆっくり……』
ライス『ふ……ぅ……っ……はっ……ふ、ぅ……』
『そう、その調子……小さく吸って、またゆっくり吐こう……急がなくていい』
ライス『す……っ、ふぅ……っ……はぁ……はぁ……』
『俺はここにいるから……そばにいるからな、ライス』
ライス『はぁ……はぁ……お兄さま……っ……』
(“目”を使ってるから……後に残るような違和感は感じなかった……大丈夫……大丈夫)
『ゆっくり……小さく吸って、ゆっくり吐こう……』
ライス『す……っ……ふ、ぅ……っ……はぁ……』
『そう……焦らなくていい……その調子だ』
ライス『ふぅ……っ……はぁ……はぁ……』
『うん……ライスのペースでいいからな……』
ライス『す……っ……ふぅ……はぁ……』
しばらくして、激しく上下していたライスの肩が、少しずつ落ち着いていく
ライス『はぁ……はぁ……お兄さま……』
『うん……聞こえてるよ』
ライス『さっき、より……息……できる……』
『そうか……よかった……』
ライス『ふぅ……はぁ……びっくり……しちゃった……』
『うん……苦しかったな……』
ライス『……うん……』
『今は何も頑張らなくていい……このまま、もう少し休もう』
ライス『はぁ……うん……お兄さまも……いて……』
『ああ……そばにいるよ』
ライス『……うん……』
・・・・・・
トレセン学園 旧研修センター内
カフェ『おかえりなさい……』
『ああ、ただいま』
カフェ『!』
カフェ『ライスさん……どうかされたのですか?』
『……ああ、トレーニングの最後に過呼吸になってな……』
ライス『スー……スー……』
片桐におんぶされ、寝息を立てるライス
カフェ『大丈夫……なんですか?』
『ああ……一時的なものだと思う、今は落ち着いてる』
カフェ『……そうですか……』
『……』
『心配……だよな……』
カフェ『はい……』
『そうだよな……けど、これだけは信じて欲しい……』
カフェ『……』
『絶対にライスを壊したりはしない』
背中のライスを支え直し、片桐はカフェとまっすぐに目を合わせる
カフェ『……はい』
『……ありがとう……』
・・・・・・
旧研修センター 食堂
『……ズズッ』コーヒーを飲む
カフェ『……』
タッタッタッ……
『ライス!』
カフェ『!』
ライス『お兄さま……』
『調子はどうだ?』
ライス『うん、もう平気だよ……ごめんなさい……心配させちゃって……』
『いいんだよ……ご飯、食べられそうか?』
ライス『うん!ライスお腹空いちゃった!』
カフェ『すぐにご用意します……』
ライス『ありがとう!カフェさん♪』
『今日は無理せずゆっくりするんだぞ』
ライス『はい!』ぐうぅぅ~……
ライス『ひゃあっ!……////』
『ははは……お腹は元気みたいだな』
ライス『……////』
◇◇◇
天皇賞(春)まで残り1週間
トレセン学園 ポリマ部室
マリ『スズカねえ、ナビっちたちいつ戻ってくんのぉ~?』
スズカ『知りませんッ!』プイッ
マリ『まだ怒ってんの?スズカねえ』
スズカ『……むぅ』
トラン『確か、春天の2日前には戻ってくるってさ』
エク『あと、5日ですね』
トラン『春天の前日には京都に出発するって言ってたからねぇ』
マリ『それにしても春天ヤバくない?マックイーンさんの三連覇一色じゃん!』
エク『うん、達成したら前人未到の大記録だからね』
トラン『考えようによっちゃ、クラシック・ティアラ三冠より凄いことかもね』
マリ『マ!?そんなヤバヤバ記録なの!?』
トラン『うん、芝レースだと、同一GⅠ三連覇は長いトゥインクルシリーズの中でも誰一人出来てないからねぇ』
マリ『そっかぁ、クラシック三冠とかなら会長さんとかいるし……』
トラン『そういうこと♪』
マリ『ねぇ……?もしかしてマックイーンさんってかなり凄い?』
スズカ『凄いなんてものではないわ、もし三連覇したら間違いなく、〝歴代最強の長距離ウマ娘〟になるわ』
マリ『ライスちゃん、大丈夫かなぁ~……』
エク『そのマックイーンさんに勝つための合宿っしょ?』
マリ『……どんなトレーニングしてんだろぉ~……』
トラン『血の滲むような地獄のトレーニング、だったりしてぇ』
マリ『ええ!?ないない!……だって……行け行け!ブルボン!コバンザメ大作戦トレーニングだ!』
マリ『とか言ってるナビっちだよ?』
スズカ『ふふ……やるときはやるのよ?トレーナーさんは』
マリ『うちはまた、変な作戦名のトレーニングしてると思うけどなぁ……』
・・・・・・
同日 旧研修センター近郊の山中
ライス『はあ!はあ!はあ!はあ!……』
ダッダッダッダッ……
『スパートッ!!』
ライス『やあぁぁぁぁーッ!!』
ダッダッダッダッ……
ストップウォッチ【ピッ】
『ナイスランッ!』
ライス『はあ……はあ……はあ……はあ……』
『戻りながら休憩して、次だ!』
ライス『はい!』
タッ……タッ……タッ……
ライス『もっと……はあ……はあ……もっと……』
・・・・・・
同日 六平トレーナー室
コンコンコン……
六平『開いてるぞ』
ガラガラ……
たづな『失礼します』
六平『おお、たづなじゃねぇか』
たづな『六平トレーナー、頼まれていた書類、整理してお持ちしましたよ』
六平『すまねぇな、わざわざ』
ベルノライト『こんにちは、たづなさん』
オグリキャップ『もぐもぐ……こんにちは』
マチカネフクキタル『こんにちはです!』
たづな『あら、みなさんお揃いなんですね、こんにちは♪』
六平『どうだ?お前んとこの“黒い刺客”は?』
オグリ『……黒い刺客……?』
ベルノ『ライスシャワーちゃんのことだよ!オグリちゃん』
オグリ『黒い刺客……かっこいいな……』
たづな『うふふ……がんばってるみたいですよ』
六平『みたいですよ、ねぇ……極秘合宿か?』
たづな『あら?よくご存じで、さすがは六平トレーナー♪』
オグリ『……芦毛の怪物……』
六平『やっぱり噂は本当だったのか……』
たづな『もしかして私……カマかけられちゃいました?』
オグリ『……黒い刺客……』
六平『がはは……才媛・駿川たづなも、自分のチームのこととなると判断が甘くなるらしいな』
たづな『かないませんね……六平トレーナーには……』
オグリ『なあ、ろっぺい』
六平『むさかだ!』
オグリ『私の〝芦毛の怪物〟って、安直じゃないか?』
六平『知るか!藤井にでも言え!』
オグリ『……黒い刺客……白い刺客!?』
フクキタル『異名を変えるのでしたら、画数も見ませんと!このフクキタルにお任せを!』
オグリ『頼む』
ベルノ『何と戦おうとしてるの……オグリちゃん』
六平『……ったく』
六平『合宿の言い出しっぺは、片桐か?』
たづな『はい、環境を変えて集中したいからと……』
六平『なるほどねぇ……やつが考えそうなことだ』
たづな『?……なにかあるんですか?』
六平『……見てみな』
机の上に無造作に置かれた複数のスポーツ新聞を指す六平
たづな『スポーツ新聞……』バサッ
六平『なんだ?読んでねぇのか?』
たづな『いえ、目は通していますが……ここまでの数は……ッ!?』
A紙
【マックイーン 前人未到の春天三連覇へ】
【〝黒い刺客〟またしても大記録を阻むのか!?】
B紙
【メジロの悲願へ一直線 女王マックイーン万全】
【ブルボンの次はマックイーン?ライス、再び夢を砕くか】
C紙
【淀に刻め伝説 マックイーン三連覇へ死角なし】
【祝福の舞台に黒い影 ライス、偉業阻止へ牙をむく】
D紙
【ファン待望の瞬間へ マックイーン三連覇目前】
【歓迎されざる挑戦者 ライス、今度は春の盾を狙う】
E紙
【3つ目の春の盾へ 絶対女王マックイーン盤石】
【〝三冠潰し〟再び ライスシャワー、三連覇阻止へ照準】
たづな『こんな……』
六平『世間はマックイーンの三連覇一色、その対抗ウマ娘ライスシャワーは格好の
たづな『……』
フクキタル『ライスさんにだって、福が来ていいはずなのに……』
六平『普通にトレーニングをしていたら、どれだけの四流記者が学園に押しかけて来たもんか……』
たづな『……片桐トレーナー……』
六平『集中するためねぇ……相変わらずウマ娘第一のアイツらしいじゃねぇか』
たづな『はい、チームポリマの名トレーナーです!』
・・・・・・
同日夕方 旧研修センター近郊の山中
『ラスト1本ッ!いくぞ!ライスッ!』
ライス『はあ……はあ……はあ……はいッ!』
『今までのベストを出すつもりで走れッ!マックイーンはもっと先を走ってるぞ!!』
ライス『……マックイーンさん……』
『よーいッ……』
ライス『はああああ~……』
『スタートッ!』
ライス『ッ!』ダッ……
ダッダッダッダッ……
(速いッ!このまま……ッ!)
ダッダッダッダッ……
『ライスぅぅぅッ!ここからやッ!ラストぉぉぉぉッ!!』
ライス『すぅぅぅぅ~……』
ダッダッダッダッ……
ライス『はああああ~……』
ビキッ……
『いけッ!』
ライス『ッ!やああぁぁぁぁッー!』
ビキッ!ビキッ!……
ダダダダダダッ……
(ッ!!)
(ライスの雰囲気が……変わった!?)
ライス『やああああッー……!』
ストップウォッチ【ピッ】
ライス『はあ!はあ!はあ!……』
『……新記録や……』
ライス『はあ、はあ、はあ……』
『やったで!ライス!新記録やッ!』
ライス『はぁ……はぁ……お兄さま……』
『ん?』
ライス『もう少し……もう少しなのッ!』
『え?』
ライス『もう少しでライス!壁を壊せそうな気がするの!』
『え?え?……壁?』
ライス『うん!ライスにもよくわかんないんだけど……なんかこう、もう少しで……』
ライス『バリーンッ!……って!』
『はい?』
ライス『…… ええ~ん……うまく説明できないよぉ~』
『まぁまぁ 落ち着いて、今のは最高の走りだった……今日はもう帰るぞ』
ライス『ううん、ライス……まだ速くなれる!マックイーンさんよりも!』
『!』
『ああ、そうだな!』
ライス『うん!』
◇◇◇
天皇賞(春)まで残り3日 合宿最終日
旧研修センター 食堂
ライス『ごちそうさまでした♪』
カフェ『お粗末様でした……』
『……ズズッ……はぁー❤』←カフェのコーヒーが気に入った
ライス『……』ぺたぁ←ウマ耳
カフェ『……ライスさん……どうかしましたか?』
ライス『今日でカフェさんの手料理……食べられなくなっちゃうんだね……』
カフェ『……今日で合宿も終わりですから……』
ライス『そう……だよね……』しゅん……
『本当にそれだよなぁー……カフェ、毎朝俺にコーヒーを淹れてくれないか?』キリッ✨
カフェ『……なっ!?……////』
ライス『ライスも!毎日食べたいっ!カフェさんの手料理!』
カフェ『……ふ、二人とも、変なことを言わないでください!……////』
『だってぇ~……』
ライス『本当においしいんだもん♪』✨
ライス・片桐『ねぇ~……❤』
カフェ『……////』
カフェ『……ま、毎日とはいきませんが……また機会があれば……その、いつでも……』
ライス『やったぁー!ありがとう、カフェさん❤』
『……ええ~……毎日がいいっ!毎日カフェの淹れたコーヒーが飲みたいッ!!』←コーヒー好き
カフェ『……////』
ライス『お兄さま!カフェさんを困らせたらダメだよ!』
『うぅ~……はい……』
カフェ『ふふ……お二人は今晩の夕食、何か食べたいものはありますか?』
ライス・片桐『カツ丼!!』
カフェ『ふふ……かしこまりました』
ライス『やったぁ♪』
『最後のトレーニングも気合いが入るな』
ライス『うん!』
???『ごめんください!』
『?……誰だ?』
ライス『ライス、見てくるね……』
タッ……タッ……タッ……
・・・・・・
ライス『はぁ~い……』
ライス『!』
ライス『ブルボンさん!?』
ブルボン『おはようございます、ライスさん』
・・・・・・
カフェ『コーヒーです……』コトッ
ブルボン『ありがとうございます』
ライス『どうしたの?ブルボンさん、こんなところまで?』
ブルボン『いえ、ライスさんが春の天皇賞でマックイーンさんに挑むと聞いて……』
ブルボン『気づいたらこちらに来てました……』
ライス『……ぇぇ~……』
『よくこの場所がわかったな、チームメンバー以外は知らないはずなのに』
ブルボン『たづなさんに教えていただきました』
『……気づいたら来てたんじゃなかったのか?』
ブルボン『はい、気づいたら、たづなさんにライスさんとの面会をお願いしていました』
(そっからかいッ!)
ブルボン『どうしても……レースの前に、ライスさんとお話がしたかったので』
『そ、そうか……二人きりの方がいいかな?』
ブルボン『……はい』
『いこう、カフェ』
カフェ『はい……』
席を外し、離れていく片桐とカフェ
ライス『……』
ブルボン『……』
ライス『……ブルボンさん、ケガ……大丈夫?』
ブルボン『……復帰の予定は、まだ立っていません』
ライス『……ごめんなさい』
ブルボン『?』
ブルボン『何を謝っているのですか?』
ライス『ライスが……ブルボンさんの三冠の夢……壊しちゃったから……』
ブルボン『ライスさんが気にすることではありません』
ライス『……』
ブルボン『お互いが全力を尽くして走った結果です、菊花賞のライスさんは強かった……』
ライス『!』
ブルボン『菊花賞のあと、ライスさんに勝つためにさらに厳しいトレーニングを続けました……』
ブルボン『そして、ケガをしました……大きなケガです……いつ復帰できるかもわからない……』
ブルボン『マスターの期待にも応えられず……ケガの不安で圧し潰され……もう走るのをやめようかと考えていた時……』
ブルボン『マックイーンさんに挑むライスさんの話を聞きました……』
ライス『……』
ブルボン『私は……菊花賞でライスさんに負けるまで、一度も負けたことがありませんでした……』
ブルボン『悔しかった……ライスさんよりも前を走りたい……ライスさんに勝ちたい……』
ブルボン『……あなたは私の初めてのライバルなんです……』
ライス『……ライバル』
ブルボン『もう一度あなたと走りたい……強いライスシャワーに勝ちたい』
ブルボン『そう思えたから、今の私はがんばれるんです』
ライス『ブルボンさん……』
ブルボン『ライスさん……今の私ががんばれるのは、ライスシャワーという目標があるから……』
ブルボン『あなたは私の
ライス『!』
ブルボン『あなたはどんどん先に行ってしまうけれど……必ず追いつきます』
ブルボン『だから……強いライスシャワーでいてください……マックイーンさんに勝ってください!』
ライス『……』
ライスは視線を落とし、唇をきゅっと結ぶ
ライス『……勝手なことばかり言わないでください……』
ブルボン『!?』
ライス『……ライスがどんな気持ちで走っているのか……なんにも知らないくせにっ!!』
ブルボン『……』
ライス『ブルボンさんに勝ちたい!勝ってみんなに喜んでもらいたい!そう思って走って!』
ライス『やっと……やっと!!菊花賞で勝てたのに!!』
ライス『誰も!……誰もライスの勝利なんて望んでなかった!!』
ライス『ブルボンさんとは違う!……みんなから嫌われて、ブーイングされて……みんなを不幸にしちゃう……』
ライス『祝福の名前をもらったのに……“ライスシャワー”なのに……』
ライスの脳裏に、菊花賞で勝った直後の光景が蘇る……
───────────
観客『なんだよ~……』
観客『何してんだ!ライスシャワー!!』
観客『ああ~ブルボンの無敗三冠がぁ!!』
ライス『……ライス……勝ったよ……?』
観客『俺たちはブルボンの無敗三冠がみたかったんだよー!何してくれてんだ!ライスシャワー!!』
観客『お前の勝利なんて誰も望んじゃいないんだよっ!!』
ライス『……え!?』
───────────
ライス『ライスが……ライスがどんな気持ちで、走っているか……』
ライス『なんにも知らないクセにッ!「マックイーンさんに勝て」なんて簡単に言わないでッ!!』
ブルボン『……』
ブルボン『四の五の言わずに走りなさいッ!走って!マックイーンさんに勝ちなさいッ!!』
ライス『!?』
ライス『どうして……どうしてそんな勝手なこと言うのッ!!』
ブルボン『あなたは……私の
ブルボン『私はライスシャワーの勝利を誰よりも望んでいます』
ライス『!!』
ブルボン『私だけではないはずです、あなたの勝利を望んでいるのは……』
ライス『……』
───────────
スズカ『ええ……勝ちましょう、菊花賞で!』
トラン『ついてくだけで終わらないでよ?今日は、追い越してくるんだから♪』
マリ『ライスちゃん、ブルボンさんに勝って……胸張って帰ってきな!うちら、待ってるから!』
エク『ええ……だから今日も、勝ってきてください』
たづな『それに、今日の走りも、我々に夢をみせてくれましたよ』
『ライスの勝利を願っていた、信じていた……』
───────────
ライス『……ブルボンさんだけじゃない……みんな……うぅ~……』
ライスの瞳から大粒の涙が零れる
ライス『えぇ~ん……』
ブルボン『ライスさん……』
───────────
少しだけ時間を遡る……
旧研修センター 食堂
『そ、そうか……二人きりの方がいいかな?』
ブルボン『……はい』
『いこう、カフェ』
てくてくてく……
カフェ『なんの御用でしょうか……ブルボンさん?』
『さあ?けど、ブルボンなら問題ないだろ……』
カフェ『……トレーナーさんの勘ですか?……それとも“目”ですか?』
『んなッ!?』
(異界渡りの能力のこと……ちゃうよな?)
『ん、まぁ……人を見る目はあるからね トレーナーですから!』
カフェ『そうですか……』
『それよりもカフェ、コーヒーのことなんだけど……』
朝食の席でのやり取りを思い出し、カフェは頬を染める
カフェ『えッ!?あ、それは……その……まだ、私はデビューもしていませんし……すぐには……////』
『ん?いや、あのコーヒー豆どこで売ってるのかな?って……』
カフェ『えッ!?あ!ああ…… それでしたら……』
カフェ『専門店で買った生豆を、私が焙煎しているんです……ですから全く同じものは……』
『そうなんだ……残念……』しゅん……
カフェ『ふふ……本当に気に入ってもらえたんですね……』
『うん、今までは缶コーヒーばっかりだったからなぁ~やっぱり淹れたては違うよな』
カフェ『ふふ……そうですね、トレーナーさんさえよければ、私が焙煎したものをお持ちしましょうか?』
『マジで!?めっちゃ嬉しい❤あ、けど手間じゃない?』
カフェ『ふふ……同じ学園内ですから、大丈夫です』
『ありがとう!あ……けど、淹れ方とかにもコツがあるんじゃない?』
カフェ『確かにそうですが……そこまでこだわらなくても大丈夫ですよ……』
『うぅ~ん……やっぱりカフェが淹れてくれた方が……』
カフェ『……////』
『あ!そうだ ……カフェ!』
カフェ『はい?』
『チームポリマに入らないか?』
カフェ『え?』
───────────
ブルボン『……』なでなで……
ライス『ぐす……』
ライスのすすり泣きが収まるまで、ブルボンは黙って頭を撫で続ける
ブルボン『落ち着きましたか?』
ライス『うん、ありがとう……ブルボンさん』
ブルボン『いえ、これくらい……』
ライス『ううん、ライスのこと
ブルボン『……』
ライス『ライスにとってもブルボンさんは
ライス『だから……今のブルボンさんの気持ち、ライスにもよくわかるの……』
ブルボン『ライスさん……』
ライス『ライスがんばるね!がんばってマックイーンさんに勝つ!』
ブルボン『はい、信じています……私の
ライス『えへへ……』
ライス『ふふふ……』
『ライスぅ~……そろそろトレーニングを……』
ライス『お兄さま!』✨
『ん?なんか随分さっぱりした顔をしてるな……』
ライス『えへへ……』
『いい話が出来たんだな』
ライス『うん!』
『じゃあ、最終日のトレーニングだ!』
ライス『はい!ライス、準備してくるね』
タッタッタッ……
『そういえばブルボン』
ブルボン『はい』
『どうやってここまで来たんだ?足は?』
ブルボン『電車と徒歩です』
『え? 帰りは?』
ブルボン『徒歩と電車です』
『……脚……まだ治ってないんだろう?』
ブルボン『はい』
『ハァー……学園には連絡入れとくから、明日一緒に帰ろう』
ブルボン『いえ、ご迷惑をかけるわけにはいきません』
『駅までのアホみたいな距離歩かせて、ケガが悪化する方が迷惑やッ!』
ブルボン『……』
『ライスのトレーニング、見学していきな』
ブルボン『ライスさんの……はい』
『やれやれ……』
ブルボン『しかし、いいのですか?極秘トレーニングなのでは?』
『……あ 、はは……別にいいよ、特別なことはしていないし……』
ブルボン『そう……ですか』
タッタッタッ……
ライス『お兄さま!お待たせ!』
『よし!じゃあ、最終日トレーニングいくぞ』
ライス『はい!』
・・・・・・
夜 旧研修センター グラウンド
月明かりに照らされグラウンドを走り続けるライス
タッタッタッ……
ライス『はあ……はあ……はあ……』
『じーーーーっ……』
遠ざかった足音が再び近づき、ライスがブルボンたちの前を駆け抜けていく
ブルボン『い、いつまで……走り続けるんですか……?』
カフェ『今日は最終日なので限界までと……トレーナーさんはおっしゃっていました』
タッタッタッ……
ライス『はあ……はあ……はあ……』
ブルボン『ありえません……こんな……』
タッタッタッ……
ライス『はあ……はあ……はあ……』
ライスの瞳に新たな闘志が宿る……ブルボンからの期待……その気持ちを背負って……
瞳に闘志の炎が……
◇◇◇
春天まで残り2日
トレセン学園 ポリマ部室
マリ『ねぇ!今日だよねナビっちとライスちゃん帰ってくるの?』
エク『うん』✨フリフリ……
マリ『エク、嬉しそう~♪』
エク『え?そんなこと……』
トラン『どれだけ成長したかねぇ、コメちゃん』
スズカ『ふふふ……逢えるのが楽しみね』
トラン『トレちゃんに?』
スズカ『ええ!……え!?……ふ、二人によっ!』
トラン『あはは……スズカさんは素直だねぇ』
スズカ『トランちゃん!』
ガチャッ
『相変わらずにぎやかだな……うちの部室は……』
スズカ『トレーナーさん!』
トラン『トレちゃん♪』
エク『片桐トレーナー!』✨ブンブン……
マリ『ナビっちぃぃぃぃぃ~……』ガバッ!
エク『マリ!またおまえはッ!』
ガシッ……むにゅぅぅぅぅ~……
マリ『はうっ!ぅぅぅぅ~……』
『ただいま……みんな』
一同『おかえりなさい』
マリ『……おかえり……あのぅ……ナビっち?……アイアンクローやめてもらっていいですか?』
『ん?もう飛びつかない?』
マリ『……はい』
『なら、よし』パッ
マリ『……うぅ~……』
スズカ『あら?トレーナーさん……ライスちゃんは?』
『ああ、カフェにしっかりお礼がしたいとか言って……話し込んでたな……』
ガチャ
『お!噂をすれば……』
スズカ『ふふ……ライs……』
スズカ『!!』
一同『!!』
ライス『ただいまぁ~』
一同『……』
ライスを見つめたまま、誰もすぐには挨拶を返せない
ライス『?』
マリ『え?ちょっと……ライスちゃん……だよね?』
エク『うん……見た目は……』
トラン『……こんな、雰囲気変わるもん?』
スズカ『身体は……前より絞って……細くなってるのに……』
トラン『うん……存在感?が……前より大きくなってる?』
マリ『いきなり嚙みついてきたり……しないよね?』
エク『マリ!……気を付けて……』
ライス『??』
『ははは……そんなに変わったか?いつもの可愛いライスだぞ?』なでなで
ライス『お、お兄さま! ……えへへ』
マリ『ほ、ホントだ……』なでなで
ライス『えへへ……』
トラン『いつものコメちゃんだ……』なでなで
ライス『え?トランちゃんも?……えへへ』
マリ『ほら!エクもエクも!』
エク『え?いいんですか……?じゃあ、失礼して……』なでなで
ライス『えぇ!?ちょ……みんな……』
ライス『んーッ……』
ライス『なですぎだよッ!』キッ!
トラン・マリ・エク『!!』
バッ
反射的に手を離し、ライスと距離をとる三人
ライス『もぉ~……』
『ははは……ライスが可愛いからしょうがないよ』なでなで
ライス『お兄さまも!なでなでしすぎ!』プンプン……
『あ、すみません……』
マリ『……トラちゃん……今の……?』
トラン『う、うん……ヤバい殺気だった……』
エク『猛獣に睨まれたみたいでした……』
スズカ『本当によく頑張ったみたいね、ライスちゃん』
ライス『うん』
マリ『なんでナビっちは平気なの?』
トラン『鈍感なだけじゃん?』
『よし!久しぶりのチーム全員での練習だ、はりきっていこう!』
ライス『おー!』
一同『おー!』
◇◇◇
同日 メジロ家 屋敷
メジロドーベル『わあ……表紙、ほとんどマックイーンじゃない?』
机の上に無造作に置かれた、多数の競バ誌をみるドーベル
メジロライアン『すごいよ!マックイーン!注目されまくってるね』
メジロマックイーン『嬉しいけど……こんなに取り上げられると少し恥ずかしいですわ』
競バ誌の一つを手に取り、読み上げるライアン
ライアン『ライスシャワー陣営、マックイーンに勝つ!良バ場なら負けない』
ライアン『確かに、今のマックイーンにとって長距離で脅威になるのはライスシャワーかも……』
競バ紙の記録を見ながら話すドーベル
ドーベル『菊花賞上がり3ハロンのタイムは……マックイーンより、ライスの方が速いって……』
マックイーン『レースは時計だけじゃ計れません』
ドーベル『え?』
マックイーン『いいでしょう、いくらでも相手になりますわ』
マックイーン(テイオーにも譲らなかった“春の盾”もう一度……必ず)
ー2章ー016話 unbreakable――憧れを力に 完
第2章第16話「unbreakable――憧れを力に」
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
自分の勝利は望まれていない。そう思っていたライスに届いた、ブルボンからの「憧れ」という言葉。
仲間たちの想いも受け取り、いよいよ春の天皇賞へ向かいます。
……そして片桐、カフェへの勧誘はコーヒー目当てじゃありませんよね?(笑)
次回、第2章第17話。
11月8日(日)19:00公開予定です。
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対象話:第2章第16話・第17話
11月9日(月)07:00公開予定(暫定)です。
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