【ウマ娘if】転移した俺は、トレセン学園で運命に抗う 作:KUROX
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努力の末に勝利を得た者には、
惜しみなく賛歌が捧げられねばならない。
その誉れを言葉に刻み、
勝者の偉業を遠き後世へと伝えること――
それこそが、勝利にふさわしい祝福なのだから。
――ピンダロス『オリンピア祝勝歌 第11歌』より意訳
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4月下旬
京都レース場 芝3200m GⅠ天皇賞(春)どーーーん
京都レース場 入場口
わいわい……がやがや……
藤井泉助『さてさて……ついにこの時がきたで、トゥインクルシリーズ史上初!芝のGⅠ三連覇の偉業……』
藤井『……それを阻むことができるのか……?』
藤井『ん?あれは……』
タッタッタッ……
藤井『月刊トゥインクルさん!』
乙名史悦子『あら?……藤井さん、ご無沙汰してます』
藤井『お疲れ様です、乙名史さん……トゥインクルさんもマックイーンの三連覇ですか?』
乙名史『ええ……達成できれば、史上初の偉業ですから……』
藤井『ほう……“達成できれば”でっか?マックイーンの三連覇は容易ではないと?』
乙名史『ふふふ……あれだけ記事でライスシャワーを〝黒い刺客〟と呼んで世間を煽り立て、対抗の筆頭に挙げていたのは、藤井さんのところの紙面ではなかったですか?』
藤井『ははは……わしはちぃっとマックイーンの三連覇にドラマを付け加えただけですわ』
乙名史『あら?私はてっきり藤井さんはライスシャワーが本命だと思ってました』
藤井『それが……わっからへんのですわ!ははは……』
乙名史『ええ……マックイーンの大阪杯以来、ライスシャワーは学園を休学中……どこでトレーニングしていたか全く不明』
藤井『やっぱり乙名史さんも探してましたか……』
乙名史『……はい』
藤井『わしの情報網にもまったく引っかからへんかった……普通のトレーニング施設ではない……そんなところにおったんやろうけど……』
藤井『果たしてそんな場所でのトレーニングで絶対女王メジロマックイーンに勝てるのか?』
乙名史『それを確かめなければいけませんね♪』
藤井『やっぱり……乙名史さんもライスシャワーの入り待ちでしたか』
乙名史『ええ……藤井さんもでしょ?』
藤井『……レース前に、この目で確かめておかんと……』
・・・・・・
わいわい……がやがや……
入場口へ向かう人波の中を、チームポリマも進んでいく
観客『いよいよ三連覇か!歴史に残る瞬間を、この目で見られるんだな!』
観客『マックイーン、今年も勝ってくれるよね!私、今日をずっと楽しみにしてたの!』
観客『ほら、早く入ろうぜ!マックイーンの三連覇、見逃したら一生後悔するぞ!』
ライス『……』
マリ『あれ……なんかこの空気……』
エク『うん……似てるね』
トラン『前回はブルボンさんのクラシック無敗三冠、今回はマックイーンさんの同一GⅠ三連覇のかかったレース、しかも同じ京都レース場……』
スズカ『嫌でも思い出しちゃうわね……』
『……』
・・・・・・
藤井『……そろそろやと思うんやけど……』キョロキョロ……
乙名史『あ!いましたよ!藤井さん!』
藤井『よっしゃ!突撃や!』タッタッタッ……
乙名史『あ!抜け駆けはなしですよぉ!』タッタッタッ……
・・・・・・
藤井『片桐トレーナー!』
『……藤井記者……』
乙名史『はぁ……はぁ……ご無沙汰しています、片桐トレーナー……』
『乙名史記者まで……』
藤井『片桐トレ……』
『何度も申し上げてますように、レース前のインタビューはご遠慮ください』
藤井『それは重々承知してますが!一言!一言だけでも!』
『……』
乙名史『片桐トレーナー!今日までどちらで?どんなトレーニングをなさっていたんですか?』
『……レース前です、ご遠慮ください』
藤井『そこをなんとか!わしと片桐トレーナーの仲やないですかぁ?』
(どんな仲やねん!)
『菊花賞の時のインタビューで、あの件のお返しはしたはずですが?』
藤井『ぐっ……』
藤井(さすがにそうそう何度もおんなじ手は使えへんか……せやったら……本人に直接!)
藤井『ライs……ッ!?』
ライス『……』
乙名史『ッ!』
藤井(は?……ライス、シャワー……?)
乙名史(え?……これがライスシャワー……?)ブルブル……
藤井(ちがう!あきらかに纏ってるオーラが……以前のライスシャワー……とは!)
藤井『あ、あのぅ……ライスシャワー……さん?』
ライス『……』ギロッ
藤井『……ヒッ!……あ、あ……あの……』
『……行くぞ、ライス』
ライス『はい、お兄さま』
藤井『……』
乙名史『……コワイ』ブルブル……
遠ざかるチームポリマの背中を、藤井と乙名史は立ち尽くしたまま見送る
藤井(な、なんじゃありゃあああっ!どうしたらあんなんなれんねん!何をした!片桐隆!?)
乙名史『藤井さん……あれ……本当にライスシャワー……でした?』
藤井『は、はははは……!おもろなってきたやないか!天皇賞ッ!!』
・・・・・・
京都レース場 控室
ライス『……ん……ん』
『体の力を抜いて……』
ライス『……』
『大きく深呼吸……』
ライス『すぅぅぅー……』
ライス『はああぁぁー……』
『よし!……ストレッチ完了!』
ライス『……ありがとう、お兄さま』
『どういたしまして』
ライス『……』
『……』
マリ『……ナビっち、よくあのライスちゃんと普通にやり取りできるね……』
エク『うん、レース前で集中力が増して私たちでも近寄りがたいね……』
スズカ『トレーナーさんですもの、それにライスちゃんに変わりはないわ』
トラン『それは分かってるんだけどねぇ……』
ライス『……スゥー』
ライス『……ハァー』
トラン『……ッ』
ライスがさらに集中を高め、控室の空気が張り詰めていく
スズカ・トラン・マリ・エク『……』
・・・・・・
コンコンコン……
係員『ライスシャワーさん、パドックにお願いします!』
ライス『……』
『……』
ライス『……はい』
『ライス、マックイーンだけでいい……マックイーンだけみて走れ』
ライス『……うん』
『……』ぎゅっ
突然ライスを抱きしめる片桐
ライス『!』
一同『!』
『……』ぎゅう……
『大丈夫……ワシらがついてる……』ぎゅう……
ライス『……うん……?』
抱きしめていた腕を緩め、ライスの両肩に手を置いて見つめる
『行ってこい!ライスシャワー!』
ライス『はい!』
ガチャ……バタンッ
『……』
スズカ『トレーナーさん……?』
ライスが出て行った後もドアを見つめる片桐
『……』
(大丈夫……ライスはワシが守る……なにがあっても!)
・・・・・・
京都レース場 パドック
実況『さあ、春の盾を巡るレース!天皇賞(春)!次々と出場ウマ娘がパドックに姿を現します!』
実況『3番、ライスシャワー、2番人気です!昨年の菊花賞を制し、前走の日経賞も快勝!長距離での実力は、すでに証明しています!再びこの淀で、立ちはだかる王者に挑みます!』
実況『5番、マチカネタンホイザ、3番人気!今年はダイヤモンドステークス、目黒記念と重賞を連勝!その目黒記念ではライスシャワーを破っています!充実の春、ここで初のGⅠタイトルをつかめるか!』
実況『9番、メジロパーマー、4番人気です!昨年は宝塚記念、そして有マ記念を逃げ切ったグランプリウマ娘!前走の阪神大賞典でも、その粘り強さを見せつけました!今日も自ら流れを作るのは、このメジロパーマーでしょうか!』
実況『13番、イクノディクタス、14番人気です!数々の重賞で強豪たちと渡り合ってきた実力者!人気こそ控えめですが、その豊富な経験は侮れません!淀の3200メートル、春の盾に挑みます!』
実況『14番、メジロマックイーン!堂々の1番人気です!前走の大阪杯を制し、いよいよ迎えた大一番!目指すは天皇賞・春、史上初の三連覇!この淀で2年続けて頂点に立った王者が、今日、新たな歴史の扉を開こうとしています!』
観客『マックイーン!三連覇頼んだぞー!』
観客『マックイーンさぁぁん!こっち見てぇー!』
ライス『……』
マックイーン『……』
マチタン(ひょえぇ~……ライスさん?だよねぇ?……ちょっと今日は声かけるのやめとこっかなぁ~……?)
イクノディクタス『すごい気迫ですね……ライスさん……』
マチタン『イクノ!うん、いつものライスさんじゃないみたい……』
イクノ『本気でマックイーンさんに勝とうとしているんですね……』
マチタン『……うん』
イクノ『……』
マチタン『……』
マチタン・イクノ『……あ』
イクノ『と、当然!私も負ける気はありませんよ!』
マチタン『わ、私だって!負けないんだからぁー!』
マチタン・イクノ『……』
マックイーン(
ライス『……』
マックイーン(この程度で恐れをなしていては、メジロの名が泣きますわ!)
ライスに歩み寄るマックイーン
マックイーン『お会いしたかったですわ……ライスシャワーさん……』
すぐそばから声をかけられても、ライスの視線は一点から動かない
マックイーン『!』
マックイーン(なんですの!?この異常なまでの集中力は?
ライス『……』
実況『さあ、全15人!春の盾を手に入れるのは果たしてどのウマ娘か!?天皇賞(春)まもなく本バ場入場です!』
ライス『……』くるっ
カツ……カツ……カツ……
無言のままレース場に続く通路へと向かうライス
マックイーン『……』
・・・・・・
京都レース場 ゲート前
実況『さあ、今スターターがスタート台に上がりました!』
実況『マックイーンの三連覇のかかった天皇賞(春)!ファンファーレですッ!』
ライス『……』
マックイーン『……』
パララッ! タッタッ! タッタッ! タッタッ!
タッタララッ! ターラッ!
パララッ! タッタッ! タッタッ! タッタッ!
タッタララァーー!
パァーラッパパァーラッ!
パァーラッパ、パッパパッパッ!
パァーーッ! パラパッパパパパッ!
パッ! パッ! パッ! パァァァーーーン!!
ワアアアアアアアアアアアア……
実況『場内大歓声に包まれます!さあ、各ウマ娘ゲートイン……』
関係者席、外ラチに一番近いところから見守るチームポリマ
『……』
一般立ち見席最前列
ブルボン(ライスさん……)
報道関係者記者席
藤井『さあ、見せてもらいましょか?……あの気迫の正体!』
乙名史『……ごくっ』
実況『さあ、順調にゲートインが……おっと?どうした?メジロマックイーン……』
マックイーン『……』
ゲートのすぐ手前で立ち止まり、微動だにしないマックイーン
実況『ゲートに入りません……メジロマックイーン』
観客『なんだ?なんだ?』ざわざわ……
乙名史『マックイーン……どうしたんでしょう?』
藤井『……』
マックイーン(猛獣……?なんなんですの?……まるで
一瞬だけ、ライスシャワーを見るマックイーン
ライス『……』
マックイーン(……ですが、
実況『メジロマックイーン、係員に促されようやくゲートに入りました』
実況『パワーとスタミナが要求される、おなじみ京都レース場3200m』
実況『15人のウマ娘がゲートに入りました』
実況『さあ!天皇賞(春)……』
ガシャン!
実況『今!ゲートが開いて、15人がゆっくりと飛び出しました……ゆっくりと飛び出しました』
マリ『いけぇ!ライスちゃぁぁんッ!』
『……』
観客『マックイーン!!』
実況『やはり行く、早くも9番のメジロパーマーが行きます!メジロパーマーが行きます!』
実況『外からゆっくりと、メジロマックイーン』
実況『メジロマックイーンが2番手に上がる勢いであります!』
実況『ライスシャワーもマチカネタンホイザも、4番もあんまり行きません』
実況『9番のメジロパーマーの後ろに、メジロマックイーンがつけました』
実況『こうなりますと、メジロマックイーンのパターンでありますが』
実況『内から1番。そして真ん中に4番であります』
実況『その外へメジロマックイーン、ちょっと掛かり気味か?14番のメジロマックイーン』
乙名史『いい位置取りですね、メジロマックイーン』
藤井『いや、パーマーなんかに付き合うたらアカン……あれは、掛かってる……』
藤井(先頭のパーマーを追って、マックイーンも序盤からペースを上げすぎている)
藤井(……ペースを乱されてる?……いや!気にしてるんか!?)
実況『その後ろからすーっと3番のライスシャワーであります、ライスシャワー、それから11番』
トラン『コメちゃんマックイーンさんにピッタリだね』
スズカ『ええ、ここでも“ついていく作戦”のマークがしっかりできてるわ』
エク『でも、どうしてマックイーンさんの背後に入らないんでしょう?』
『あえて背後に入らず……自分の姿を見せてるんだ、マックイーンに……』
マリ『え?それって……』
ライス『……』
マックイーン『……』
ライスはマックイーンの斜め後ろ、外側の位置を保って走り続ける
実況『そして13番のイクノディクタス。どのウマ娘もちょっと掛かり気味であります』
実況『8番がいました。その後ろでありますが、14番のメジロマックイーンが4番手』
実況『内からマチカネタンホイザ、5番マチカネタンホイザであります』
実況『さらに10番であります。それから12番あたりが続きました』
藤井『ライスシャワーによるマックイーンへの徹底マーク……』
藤井『あえて姿の見える位置取りで、プレッシャーをかけてるんや』
乙名史『ええッ!?あの……気迫を……?』
藤井『ああ……3200m……ずっとかけ続けるつもりやろ』
乙名史『……』
実況『これから例によってメジロパーマーが引き離しにかかります!パーマーが引き離しにかかります!』
実況『さあ、パーマーが引き離しにかかった!1周目の直線!』
マックイーン(いけませんわ……自分の走りに集中しなくては……周りを気にしていては……!)
ライス『……』
実況『メジロマックイーンはようやく落ち着いた、落ち着いて外々を通ります』
ワアアアアアアアアアアアアア……!!
実況『1周目のスタンド前、大歓声であります!スタンドは大歓声!』
観客『がんばれー!マックイーン!!』
観客『三連覇だぁぁ!いけぇー!』
スズカ『作戦ですか?トレーナーさんの?……あえて見える場所で圧をかけろって……』
『いや、そんな指示は合宿中にも一度もしていない……』
スズカ『じゃあ……』
『ああ、おそらく自然に……いや、本能的にそうしてるんだろう』
スズカ『ライスちゃんの……本能……』
実況『第1コーナー、右にカーブを取りました』
イクノ(このペース!とても3200mとは思えませんッ!)
マチタン(今は脚をためて……前が疲れるのを待つんだから!)
実況『ライスシャワーはマチカネタンホイザと一緒に、このメジロマックイーンを見るような展開になりました』
実況『第2コーナーにかかります。もう一度15人の位置取りを紹介しておきましょう』
実況『先頭は9番のメジロパーマーであります、9番のメジロパーマーが先頭。例によってかなり差を広げました』
実況『4番、絶好調4番2番手。そして1番、外から14番メジロマックイーン』
実況『外からメジロマックイーンであります』
マックイーン(……くぅ……)
実況『そして5番手、おお、来た来た!怖いライスシャワー!3番ライスシャワー!』
ライス『……』
実況『イクノディクタスがその外へ行っている』
実況『内で5番のマチカネタンホイザ、じーっと我慢している』
実況『8番、そして2番。外へ10番……6番……11番がいて、12番』
実況『ここでペースが速くなりました!』
パーマー(もっと!……もっともっと!逃げる!!)
実況『15番、そして7番であります』
実況『第3コーナーの坂!天皇賞はスタミナ勝負!ここからが勝負になります!』
マックイーン『ッ!』
実況『おっと!早くもマックイーン、早くもマックイーン!4番と一緒に2番手!』
パーマー(きたぁっ!!)
実況『そして、そしてライスシャワーも来た!ライスシャワーもすーっとメジロマックイーンの外へ、メジロマックイーンの外へ!』
実況『ライスシャワーが襲いかかります!!』
実況『さあ、4番はいっぱいになった……パーマー先頭!パーマー先頭!』
実況『そしてマックイーン!マックイーンが2番手!』
マックイーン(くッ……まだ、ついてきますの……!?)
実況『外からライスシャワー!』
ライス『……』
乙名史『マックイーンが全然引き離せない!?足が残ってないの?』
藤井『いや、マックイーンの足が残ってないんとちゃう……』
乙名史『え?』
藤井『ライスシャワーの速さが異常なんや……』
実況『マチカネタンホイザはまだ来ないのか?』
実況『さあ、まもなく第4コーナー!マチカネ来た!差を詰めてきた!』
マチタン(私だってぇぇッ!)
実況『第4コーナーをカーブ!!』
ブルボン(ライス……)
観客『いけぇぇー!マックイーン!!』
ブルボン『……いけ……ライス……!』
実況『さあ、マックイーン!パーマーをかわして!ここで先頭に立った!独走になるか!』
マックイーン(このまま……先頭で……!)
実況『いや!外から、外からライスシャワー!外からライスシャワー!』
マックイーン(くっ!……この気迫!だけど
実況『さあ、マックイーン必死のスパート!マックイーン必死のスパート!』
実況『ライスシャワー並んだ!ライスシャワーがメジロマックイーンに並んだ!』
二人は肩を並べたまま、激しく腕を振って芝を蹴る
マックイーン(引き離せないッ!?)
実況『さあ!マックイーンの三連覇!またしても偉業を阻むのはこのウマ娘か!ライスシャワー!!』
観客『おいおい!やめてくれよ!!』
観客『ライスシャワー!!また、
ライス『ッ!?』
ライス(ライスは……)ビキッ……
スズカ『ライスちゃん!!』
トラン『いけぇぇー!!コメちゃん!!』
観客『マックイーン!黒い刺客なんかに負けるなぁー!!』
ライス(ライスは……なんて呼ばれても構わないッ!)ビキビキッ……!
マリ『ライスちゃん!ラストぉぉぉッ!!』
エク『ライスさんッ!!』
ライス(ライスには……ライスを応援してくれる人たちがいる!)ビキッ……ビキビキッ!
ブルボン『いけ!ライスシャワー!!』
ライス(ライスを
観客『マックイーン!!
ライス『すううぅぅ……はああああ……ッ!』
ライス(ライスは……
マックイーン『ッ!?』
『いけぇぇぇぇ!ライスぅぅぅッ!!!』
ライス『
バリーーンッ!!
マックイーン(なんですの!?……ライスさんが!!)
ライスの瞳に青い闘志の炎が灯り、黒いオーラが全身を包む
ライス『やああああぁぁぁぁー……!!』
実況『ライスシャワーかわした!ライスシャワーかわした!!』
藤井『あれは!?
乙名史『……
藤井『せや、タマモクロスの【白い稲妻】やオグリキャップの【
藤井『一部のウマ娘のみが入れる、極限の集中力により己の限界を超える覚醒状態!』
乙名史『……すごい……』
実況『もう一度マックイーン!今年だけ、もう一度頑張れマックイーン!!』
実況『しかしライスシャワーだ!ライスシャワーだ!!』
実況『昨年の菊花賞でも、ミホノブルボンの三冠を阻んだライスシャワーだ!!』
実況『ライスシャワー完全に先頭!!2バ身から3バ身と開いた!!』
実況『ライスシャワーだ!ライスシャワー1着!!』
実況『マックイーンは2着!』
実況『黒い刺客!ライスシャワー!!』
実況『天皇賞でも圧倒的な人気のメジロマックイーンを破りました!!』
実況『昨年の菊花賞でも!昨年の菊花賞でも!ミホノブルボンの三冠を阻んだライスシャワー!!』
実況『春の天皇賞では、メジロマックイーンの大記録を打ち砕きました!!』
ライス『はあ!……はあ!……はあ!……』
マックイーン『はあ!……はあ!……はあ!……』
実況『このタイムは……レコードタイム!3分17秒1!3分17秒1!』
ライス『はあ……はあ……はあ……ッ!……レコード……!?』
マックイーン『はあ……はあ……負けた……』
ライスは荒い息をつきながら、スタンドへ顔を向ける
ライス『ッ!?』
観客『またやられたよ……』
観客『マックイーンの三連覇見たかったなぁ……』
観客『なんでだよッ!』
『……おかしいやろ……』
片桐は拳を握りしめ、飛び交う罵声を聞いている
スズカ『トレーナーさん……?』
観客『一度ならず二度までも!何が黒い刺客だッ!』
観客『お前の勝利より!史上初の偉業が見たかったんだよ!』
『おかしいやろッ!!』
観客『ッ!?』ざわざわ……
『勝ったのはライスシャワーやぞッ!!』
『勝者を正しく賞賛するべきやろがッ!!』
スズカ『トレーナーさん!落ち着いてください!』
トラン『トレちゃん!どうどう……!』
ライス『……』
スタンドを見つめ、涙を流すこともなく一礼するライス
タッ……タッ……タッ……
ぱちぱちぱち……
ライス『……ッ!?』
レース場を後にしようとするライスの背中に、拍手が届く
マックイーン『……』ぱちぱちぱち……
ライスを見つめ、拍手を送るメジロマックイーン
ライス『……!』
ぱちぱちぱち……ぱちぱちぱち……
ライス『ッ!?』
パーマー『……ハハッ』ぱちぱちぱち……
イクノ『……』ぱちぱちぱち……
マチタン『……へへ』ぱちぱちぱち……
マックイーンの拍手に、共に走ったライバルたちの拍手が重なっていく
ブルボン『おめでとう……ライス……』ぱちぱちぱち……
ライス『……』ペコっ
ライバルたちに一礼してレース場を後にする
・・・・・・
京都レース場 地下バ道
コツッ……コツッ……コツッ……
地下バ道へ戻ってきたライスを、片桐たちが迎える
『……ライス』
ライス『……』
『天皇賞(春)、優勝おめでとう……』
ライス『……う、うぅ……』
片桐の『おめでとう』を聞いて、こらえていた涙がライスの頬をつたう
ライス『また、たくさんの人の夢を壊しちゃった……』
『それが、勝つということだ……』
『誰かが勝てば、誰かが敗れて傷つき……夢破れる……それがレースだ……』
ライス『……ブーイングって痛いね……なんて言われても、お兄さまや……ポリマのみんながいれば、平気だと思ってた……でも、やっぱり痛かった……』
『俺たちも一緒に受け止める……大丈夫……一人で受け止めなくていい……一人で傷つく必要はない』
ライス『マックイーンさんに勝てば……今度こそ……今度こそ認められると思ってたのに……』
『勝ち続ければ……いつか……いつかブーイングが、歓喜と祝福の声に変わる日はくる……』
タッ……タッ……タッ……ぎゅ
ライスに歩み寄り優しく抱きしめる片桐
『ライスが勝ち続ければ……きっと……』ぎゅう
ライス『……うぅ~……』
『だって……君の名前は“ライスシャワー”だろ』
ライス『ッ!?』
スズカ『ライスちゃん!おめでとう』
トラン『コメちゃん!すごかったよー!』
マリ『ライスちゃん!マジヤバ!おめでとー!』
エク『素晴らしい走りでした!おめでとうございます!』
ライス『みんな……』
ライス『……ありがとう……』
『……』
感謝の言葉を口にするライスの顔に笑顔はなかった……
ー2章ー017話 Ms. VICTORIA――笑顔なき勝利 完
第2章第17話「Ms. VICTORIA――笑顔なき勝利」
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
ライスが勝ったのに、素直に喜べない。
「勝つこと」と「祝福されること」の間にある距離が、重く残る天皇賞(春)でした。
そんな中で、最初に拍手を送ったのはマックイーン。
勝負では譲らず、決着がつけば勝者をたたえる。ライバルだからこそ届くものもあるのだと思います。
次回、第2章第18話。
11月11日(水)19:00公開予定です。
【KUROXの
対象話:第2章第16話・第17話
公開日時未定です。
【X】
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【note記事 KUROXの
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KUROX