【ウマ娘if】転移した俺は、トレセン学園で運命に抗う 作:KUROX
トレセン学園 トレーナー室
(今日も今日とて片桐のおっちゃんは勉学に勤しむ訳ですが……)
(今のサイレンススズカは絶好調、ワシがトレーナーとしてできることなんてたかが知れているんやが)
(史実を鵜呑みにしてトレーナー業をサボって、史実通りにいかんかった……)
(ましてや、【あの日】が前倒しで起こるなんてことも危惧しなきゃならん)
(史実のサイレンススズカだって、優秀な調教師・厩務員・関係スタッフがいたから)
(あの走りができていたわけやしな、ワシが怠けていい理由なんて一つもない)
(何よりサイレンススズカのトレーナーとして恥ずかしくないようなワシでいたいからな)
(……)
(どや?ラノベの主人公みたいなセリフやろ?ぐふふ……)
(と、いう訳で……って、どういう訳か知らんけど)
(今日はスズカの今までのレースとワシの記憶にある史実のデータを照らし合わせてる訳やが……)
(【サイレンススズカは左回りが得意】)
(って、イメージが強いねんけど、よくよく調べてみるとあれはウマ娘でのエピソードも加わって)
(強くなりすぎてる感があるんよな)
(純粋に今までの戦績、史実での戦績をみても特別左回り専用、右回り苦手ということはない)
(右回りでもしっかり勝っている)
(では、なぜ?サイレンススズカは左回りが得意のイメージが強いのか?)
(それは、左回りでの“強い勝ち方”のイメージが先行しているからや)
(先のバレンタインSでもそうやが、スズカの逃げは“大逃げ”と称されるほど)
(人々に強烈なイメージを与える)
(その強い勝ち方のイメージが先行して【左回りが得意】のイメージが強いのやろう)
(特に東京レース場は別格に強い)
(以前本人にも聞いたことがある……)
スズカ『好きなレース場ですか?……東京レース場は走っていて楽しいです♪』
(スズカの走りの源は、走ることの楽しさが根っこになっている)
(コースも広くコーナーも緩やかな東京レース場は走りやすい=走っていて楽しいレース場なんやろ)
(反面、次走重賞初勝利を賭けて走るG2中山記念はその名の通り中山レース場での開催となる)
(中山レース場は東京レース場と比べて1周の距離で400m以上も小さい)
(コース幅も場所によっては10~20m近くの差がある)
(最終直線に関しては中山レース場は東京レース場よりも200m以上短い)
(さらにその短い直線310mの間の約110mで2.2mの急勾配を駆け上がらなくてはならない)
(まぁ、スズカっぽく比較すると……)
(東京レース場は広い草原みたいな大舞台、最後の直線でまだ終わらない)
(中山レース場は箱庭みたいに見えるけど、坂とコーナーが牙を剥く魔境)
(って、感じやな)
(と、なると喫緊の課題は……)
(中山レース場対策!)
(右回りでクセ強コースの対策やな)
(なんとな~く……やりたいことはあんねんけど……)
(……)
『頼れる先輩に相談してみますか!』
・・・・・・
トレセン学園 【六平】トレーナー室
コンコンコン……
六平の声『開いてるぞ……』
『しっつれーいしまーっす!』
六平『……やけに元気だな……片桐』
『説明パートが長くてしゃべるの久々だったんで!?』テヘペロ
六平『あ?なんの話だ?』
『いえいえ……こっちの話っす』
六平『?』
六平『で?今日はどうした?なんか聞きたいことでもあんのか?』
『実はろっぺいさんに……』
六平『むさかだ!』
『へへっ……お願いしたいことがありまして』
六平『お前のお願いぃ?まぁ、聞くだけ聞いてやる』
『実はかくかくしかじかで、中山対策をしたくて……』
六平『中山対策ねぇ~……』
『そうっす♪』
六平『……』
『……』
六平『……』
『……』
六平『で?その、かくかくしかじかの説明はいつしてくれんだ?』
『え!?かくかくしかじかって言えば伝わるシステムじゃないんですか!?』
六平『そんなシステムあるわけねーだろ!馬鹿モン!』
『ちぇ、めんどくさっ……』ボソッ
六平『……お前もう、帰れ……』
・・・・・・
六平『なるほどな、それで中山対策ってわけか……』
『そうっす』
六平『お前にしては珍しく論理的だが……相変わらずよく担当のことを見てるな』
『なはは……“見る”ことしかできないんで……』
六平『よく言う……で?頼みってのはなんだ?』
『実は……並走相手を探していまして……』チラッ
六平『今のサイレンススズカの並走相手か……』
六平『ふむ……ちょうどうちにサイレンススズカの並走相手にぴったりの娘がいるぞ』
『マジっすか!?その娘ぉ……しばらくお借りすることはできませんか?』
六平『まぁ、ちょっと問題があって休養中だが、お前の目なら大丈夫だろ』
六平『いいだろう、こっちで話は通しておいてやる』
『あざーっす!』
『で?その娘って……』
六平『……』
『!!』
◇◇◇
放課後、トレセン学園、トレーニングコース
スズカ『中山対策……ですか?』
『おいおいおい、俺の脚力よ!』
スズカ『……?』
『中山対策やるのかいっ!?やらないのかいっ!?』
『どっちなんだいっ!!?』
スズカ『……』
『ん~~~~~~~っ……』
『やーるっ!!』✨やり切った
スズカ『えっと……それが対策ですか?』
『いや “中山”対策だけにね……気合入れてみました……』
スズカ『……私もやらなきゃいけないのかと思ってびっくりしちゃいました』
『スズカもやってm』
スズカ『やりません』食い気味
『ちょわぁー!』
『と、冗談はさておいて……』
『本日は中山対策のためにスペシャルゲストをお呼びしました!』
スズカ『スペシャルゲスト?』
『こちらのかたです!!』ビシッ
スズカ『……』
『……』
スズカ『……』
『……』
スズカ『?』
『……あぁ、待機してもらう位置……遠すぎたな……』
ものすごく遠くから誰かが駆けてくる……
『……』
スズカ『……あれって……?』
『……』
マチカネフクキタル『トレーナーさぁぁぁん!遠すぎますぅぅぅ!これでは開運ゲストではなく、長距離走ゲストですぅぅぅ!!』cv.新田ひより
スズカ『フクちゃん!』
『と、いうわけで……スキル右回り◎持ち!吉兆・初あらし!こと』※この世界にスキル概念はありません
『フルアーマー・マチカネフクキタルさんでーっす!』
フクキタル『むむっ!?その紹介、半分くらい意味がわかりませんが……吉兆です!』
フクキタル『フルアーマー・マチカネフクキタル!本日はスズカさんの開運中山対策に参上しましたぁ!!』
スズカ『……フル……アーマー?……というかなんで勝負服なの?』
フクキタル&片桐『開運ですっ!!』くわっ!
・・・・・・
『並走トレーニングは第3コーナー手前200mからスタート』
『第3コーナーから最終コーナーを回り、中山想定の最終直線310mを走り切った地点をゴールとします』
スズカ『えっと……私は普通に走るだけでいいんですか?』
『うん、スズカはイン側でスタートして普通にゴールまで走ってね』
『あ!もちろん勝つつもり……っていうか、先頭でゴールするように!』
スズカ『はい』
『フクキタルは打ち合わせ通りに』ニヤ
フクキタル『おまかせください!』ニヤ
『じゃあ、俺はゴール地点にいるからね~』
スズカ『よろしくねフクちゃん』
フクキタル『はいっ!よろしくお願いします、スズカさん!』
フクキタル『このフクキタル、精いっぱい福を呼び込みつつ……走らせていただきます!』ニヤ
スズカ『?』
・・・・・・
『それじゃ、いくぞ~!』拡声器
スズカ&フクキタル『ザッ』スタート態勢をとる
『よーい!』
スズカ『……』
フクキタル『……』
『どんっ!』
フクキタル『開運ダーーーッシュ!』
スズカ『ッ!?』
(さすがは昨年G1菊花賞ウマ娘、作戦通りにスズカのハナをとったな)
フクキタル(なるべくスズカさんに寄って……つかず離れず……このままいきます!)
スズカ(……くぅ)
(あんな見た目でもG1ウマ娘、こちらの指示通りスズカの左前方をキープして走ってる)
(これで、スズカのコースは内いっぱいのみ……どないする?スズカ?)
『ジーーーーー……』コーナーに置かれたビデオカメラ
スズカ(……これ以上スピードを上げたら膨らんでフクちゃんに接触しちゃう……!)
スズカ(けど、このままだと……!)
(さぁ……最終直線やリードは変わらずフクキタル!)
スズカ(直線に出ちゃえば!)
スズカ『はぁっ!』
フクキタル『ちょわぁっ!!』
・・・・・・
『ゴーールッ!』
スズカ(え?……もうゴール?)
『勝者フクちゃん先生っ!』
フクキタル『大吉ですっ!スズカさん、ここでは“気持ちよく走る前”にゴールが来ちゃうのです!』
『フクちゃん先生の言う通り!』
『狭くてキツイコーナー、その後の短い直線、さらに本物の中山レース場には2m以上の坂のおまけ付きだ』
『コーナーでのロスが中山では勝敗を分けることにもなる』
『そしてこれが……』
『開運っ!仮想中山レース場!ちっこくて走りにくいけど福を呼び込め!トレーニングだ!』
フクキタル『なのですっ!』
スズカ『……ネーミングセンスはともかく……』
フクキタル&片桐『ちょわっ!』
スズカ『すごい走りにくかったです』
『スズカの脚質は“逃げ”だからね、コーナーでのコースを狭めるためにフクキタルにはあのポジションで走ってもらってるけど、自分の前に他のウマ娘がいることも走りにくさを感じる原因だろう』
『だがしかーしっ!このトレーニングが成功した暁には!』
『新たな景色がスズカの前に広がっているはず!!……さッ』✨
スズカ『……新たな景色……』
『と、いう訳で、あとは反復練習あるのみ!』
『フクちゃん先生もお願いします!』
フクキタル『はいっ! フクちゃん先生にお任せください!』
フクキタル『開運、先導、ほどよい圧! 三拍子そろえて参りますっ!』
・・・・・・
休憩中……
(ここまで……いいところまではいくけど、スズカの全敗か……)
『じゃあ、次が最後のセットにしようか……?』
スズカ『……はい!』
フクキタル『かしこまりです!』
ぞわ……
『??』
(……なんや……違和感……?)
『フクキタル!』
フクキタル『はい!』
『じーーーーっ……』ガン見
フクキタル『ちょわわっ!?な、なんですか!?私の今日の運勢、そんなに凶相ですか!?』
『いや、運勢じゃなくて……右足……いや、爪か?』
フクキタル『ちょわ~!なんでわかったんですか?もしやシラオキ様からのお告げ?』
(そっか、ろっぺいさんの言ってた『ちょっと問題があって休養中』って爪のことやったんか……)
『散々走らせといて、今更だけど……大丈夫なのか?』
フクキタル『ご安心を!一時期は少々、凶兆の気配がありましたが……今はシラオキ様のお導きにより、ほぼほぼ大吉快復です!』
『そっか……それならいいんだけど……』
(あのジジイ、こういう大事なことは教えとけっちゅーねん)
(なぁ~にが『お前の目なら大丈夫だろ』や)
『うん、今日のトレーニングはここまでにしよっか?』
フクキタル『私のことならご安心ください!このフクキタル、今はばっちり大吉コンディションです!』
スズカ『最後にもう1セットやらないんですか?』
『じーーーーっ……』スズカをガン見
スズカ『……』
(スズカも、慣れない右回りの並走トレーニングで左足に疲労が溜まってる、利き足の右より今日は左に負担が出てるみたいやな)
『うん、やっぱ、今日のトレーニングは終了!ダウンして上がろう』
スズカ&フクキタル『?』
スズカ&フクキタル『はい』
◇◇◇
練習後…… トレーナー室
『とりあえずこれでしばらく待ちだな……』
(まさか、こんなとこで動画編集スキルが役に立つとはなぁ)
(一人暮らしの好奇心旺盛なおっさんは多趣味やからなんにでも手を出すもんや)
(今日録画したデータをPCに移して動画作成ソフトに入れるまで……)
『……スズカでも見てるか』
(もう恒例になっている練習後の交換日記を書いているスズカ……)みつめる
(けど、なんでフクキタルの爪の異常やスズカの疲労感なんかわかったんやろな……?)
(前にもこんなことあったし……)
(見てわかる……いや、爪なんか見えへんやんけ……それに……)
(わかるってより……違和感……そう、よーく見るとそっから違和感を感じるって方が正しい)
『うーむ……』
スズカ『何か考え事ですか?トレーナーさん』
『お、書き終わった?』
スズカ『はい』
『うーん、まぁ考え事かなぁ……』
(確認してみるか?)
『スズカ……ちょっといいか?』
スズカ『はい?なんでしょう……』
『そのまま立っててねー』
スズカ『……はい』
『……よ』しゃがみ込む
スズカ『?』
『じーーーーっ……』足ガン見
スズカ『……』
『じーーーーっ……』
スズカ『あの……そんなに足ばかり見られると……』
『じーーーーーーーっ……!!』
(やっぱりや!なにが違うとかやない……左足にだけ違和感がある!)
『ちょっと、触るぞ』
スズカ『えっ!?』
(まずは右足)もみもみ
スズカ『きゃっ』
(次は左足)もみもみ
スズカ『……////っ!』
(!!)
(やっぱりや!左足の方が筋肉が張ってる……)
(そして!……スズカの肌スッベスベ♡……って)
『そうじゃないだろぉ!』バシンッ!(自分にビンタ)
スズカ『きゃあっ!』
スズカ『……?』
スズカ『ト……トレーナーさん?』
『スズカ、今日は慣れない右回り練習のせいでいつもより左足に疲労が溜まってるから』
『ボディケアをする時は左足をいつもより多めにやるように!』
スズカ『はい、わかりました』
スズカ(ボディケア用のチェックだったのね)
『うん、それじゃあおつかれさん!』
スズカ『おつかれさまでした……トレーナーさん……鼻血出てますよ』
『へっ?……いや!これは!……ちょっとビンタが強かったかなぁ~……アハハ……』ツー
・・・・・・
(間違いない!ワシは……体の異常……特に不調を“違和感”として感じることができる!)
(理由はさっぱりわかりませんけども、ね)
(けど、理由なんかどうでもええ)
(これは大きな武器になる)
(これから先、違和感があったらすぐに拾う)
(見逃さん)
『使えるもんはなんでも使ってくんや……』
PC『ティロリン♪』
『お!読み込み終わったな……ではでは……』
『これ(動画編集)も素人トレーナーの足搔き、使えるもんはなんでも使いますでぇ~……っと』
(まずは必要なシーンだけ切り抜いて……)
(次に入れてあったバレンタインSの時の映像も出して……)
(こっちの映像は反転させて……フォームが重なるようにタイミングを合わせて……)
(今日の右回り映像と、バレンタインSの左回り映像を並べる)
(で、再生っと……)
『じーーーーっ……』
『!』
(やっぱりや!生で見ていた時には気付かんかったけど、こうして映像を並べてみるとよくわかる)
(右回りの時のスズカは上半身が左回りに比べて少し浮いている……)
(それに……ストライドの幅がまったく変わっていない!?)
『これが……走りにくさの原因かもしれないな……』
『右小回り用のフォーム改善かぁ~……』
(……)
(いやいやいやいや……!!)
(ムリムリムリムリ!カタツムリッ!!)
(フォーム改善!?いや、専門書読み漁ってる時にちらっと見たけどさ)
(時間かかるよ?めっちゃ大変だよ?ワシ途中で読むのやめたもん!)
(それに、フォーム改造ってデビューしたての頃とかが一番いいって)
(スズカもうシニア級よ?中山記念までもうとっくに1か月切ってるよ?)
(下手にフォームいじくってタイム落ちたらどーすんの?)
(………)
『う~~ん……ちょっと休憩……』コーヒーを片手に立ち上がる
『フォーム改造かぁ……ズズ』ふと、窓の外をみる
(ん?あれは……)
(桐生院葵とハッピーミークか?)
(あらあら、葵ちゃん自転車なんか乗っちゃって……)
(外周の帰りかな?自転車でついていくとか……)
『ふふ……若いねぇ~』
(ワシじゃ自転車でスズカについていくとか……絶対無理!倒れるわ!……)
(ん?……自転車……!)
(ピコーン!)
(これなら!……ワンチャンあるかも?……)
◇◇◇
翌日…… トレーニングコース
『むかーし、むかしあるところに、片桐少年というそれはそれは可愛らしい少年がいました……』
スズカ(昔話?)
フクキタル(突然の開運昔話……!?)
体育座りで話を聞く、スズカとフクキタル
『片桐少年は自転車で遊ぶのがだぁ~い好き♪今日もいろんな乗り方で遊んでいました』
『ある日、片桐少年はついに!“両手離し”で自転車に乗ることができるようになりました』
『周りに人の少ない公園で!周囲の安全に配慮しながら!』※コンプラ大切
『今日も両手離しで自転車で遊んでいました……』※良い子も悪い子もマネしちゃだめだよ!
片桐少年『両手離し楽しいな~けど、ハンドルから手を離してるから曲がるときは……』
片桐少年『あ!危ないっ!前に野生のハダカデバネズミがっ……!!』
『……』
スズカ『……野生?』
フクキタル『……ハダカデバネズミ??』
『さて!ここで問題です!』
スズカ(今度はクイズ?)
フクキタル(むむっ!? これは知力を試される吉兆クイズ……!?)
『“両手離し”をした自転車で進行方向を変える方法はっ!?』
『はい!フクキタル!』ビシッ 指をさす
フクキタル『はいっ! シラオキ様に進むべき方角をお尋ねしますっ!!』
『残念!他責!不正解です!』
フクキタル『ちょわぁ~』
『続いてスズカさん!』
スズカ『えっと……行きたい方を見る、とかでしょうか?』
『惜しい!けど半分正解!』
スズカ『……』
『正解は……行きたい方向に“行くと考える”ことです』
スズカ『!』
『両手離しの自転車の操作方法なんて誰も教えてくれないし、マニュアルなんてあるわけがない』
『もちろん身体操作で動かすわけなんだけど、片桐少年はそんな体の使い方はわからないよね?』
『だから頭の中で何度も“右に行く”って念じるんだ、そうすると身体操作を意識しなくても』
『自然と右に少し自転車は進んでくれる、もちろん急カーブだったりすぐに回避しなきゃいけないときは』
『しっかり身体操作も意識して体を使わなきゃいけないけどね』
『って、両手離しはダメだよ!あくまで昔話の話……俺の過去の体験談じゃないからね!』
スズカ(そっか……トレーナーさんの実体験なのね)
フクキタル(むむっ……これは昔話ではなく、片桐少年実録開運伝説では!?)
『と、いう訳で前置きはこのくらいにして』
『今日も……』
『開運っ!仮想中山レース場!ちっこくて走りにくいけど福を呼び込め!ぱわーっ!トレーニングを……』
『やっていきます!』
フクキタル&スズカ『はい!』スタート地点に向かう……
『スズカ!』
スズカ『……はい』
『ちょいちょい』手招き
スズカ『?』
『トレーナーさんからアドバイスです♪』
スズカ『……アドバイス?』
『コーナーに入ったら“上体を低く・ストライドを短く”と頭の中で復唱してください』
スズカ『上体を低く、ストライドを短く……復唱……!?』
『あとは普通に走るだけね』
スズカ『 』
スズカ『昔話……ですね♪』
『察しのいい娘は、トレーナーさん大好きです♪』
・・・・・・
スズカ(コーナーに入ったら上体を低く、ストライドを短く……)
フクキタル(おや?スズカさんの様子が……?)
『準備はいいかー?いくぞー』拡声器
スズカ&フクキタル『はい!』
『位置について』
スズカ&フクキタル『ザッ』
『よーい』
スズカ(低く・短く……)
フクキタル『……』
『どんっ!』
スズカ『はっ!』
フクキタル『ふんすっ!』
『うん、二人ともいいスタートだ♪フクキタルもばっちりハナをとったな』
(あとはコーナー……)
スズカ(コーナー!ここから!)
スズカ(低く・短く……低く・短く……低く・短く……)
フクキタル(!!?)
フクキタル(スズカさんのスピードが……!もっとペースを上げなくては!)
(……スズカ……昨日はあんな顔で走ってたのに……楽しそうだ)
スズカ(低く・短く……低く・短く……低く・短く……)
フクキタル(ぐぬぬぬ……位置を保てませぇぇ~ん)
(よしっ!並んだ!ここから最後の直線や!)
スズカ(景色が……前よりずっと広がって……)
スズカ『はぁっ!』
フクキタル『ちょあぁっ!』
『いけっ!スズカっ!!』
・・・・・・
『ゴーーーールッ!』
『勝者スズカ!』
スズカ『……ふぅ』
フクキタル『はぁ……はぁ……大吉ですっ! スズカさん、今の走り……とっても大吉でしたぁ!』
(さすがは感覚派の天才タイプ、このアドバイスと相性ええとは思うてたけど……)
(正直こんなすぐに効果がでるとは思ってなかったわ)
『スズカ、どうだった?』
スズカ『えっと……走りやすかったです♪』
『じゃあ後は体に覚えさせるため、反復練習です!』
スズカ『はい!』
フクキタル『このフクキタル、何度でも大吉先導いたします!』
『頼もしいなぁ、フクちゃん先生!』
フクキタル『ですが!できれば次は勝たせていただきたいです!』
『そこは開運力でなんとか』
フクキタル『ちょわぁ!? また他責ですぅ!?』
スズカ『ふふっ』
◇◇◇
数日後……
『スズカ、今日で中山対策は最後にしよう』
スズカ『……もう、ですか?』
『うん、やれることはやった、あとは本番で走るだけ』
フクキタル『開運判定も大吉です!』
『よし、じゃあ最後の仕上げ、行こうか』
スズカ『はい』
『目指すは……中山記念!』
◇◇◇
【中山レース場・芝1800m・GⅡ 中山記念】どーーん
実況『早くもレースは中盤、先頭はサイレンススズカ!』
実況『2番手との差はおよそ7バ身か!』
実況『第3コーナーに入って後続も追い上げてきた!』
(ここからや!スズカっ!)
スズカ(……低く……短く……)
実況『コーナーに入って後続との差は5バ身と迫ってきた!』
実況『サイレンススズカ逃げ切れるか!』
実況『さぁ最終コーナー立ち上がって最後の直線!』
実況『先頭は変わらずサイレンススズカ!』
実況『後続も必死の追い上げ!その差は2バ身!』
(大丈夫!スピードに乗ったまま直線に入ってる!)
スズカ『やあぁーーーーっ!!』
実況『先頭はサイレンススズカ!サイレンススズカだ!』
実況『後続も懸命に突っ込んでくる!』
実況『しかし!サイレンススズカ抜かせない!差が縮まらない!』
実況『2番手も懸命に接近するが!』
実況『サイレンススズカ!サイレンススズカだ!』
実況『サイレンススズカ!逃げ切って!今っ!ゴーールインっ!!』
『ヨッシャーーーっ!!』
実況『サイレンススズカ重賞初勝利!見事な走りでした!』
スズカ『……勝てた……』
スズカ(あんなに憂鬱だった中山でも……気持ちよく……)
『スズカーーっ!!重賞制覇!おめでとーーっ!!』スタンドから
スズカ『ふふふっ……トレーナーさんったら……』
スズカ(……ありがとうございます)ペコっ スタンドに向かって一礼する
『パラッ』交換日記をめくる……また一つ、俺たちの記録と記憶を残して……
◇◇◇
【中京レース場・芝1800m・G3 小倉大賞典】※代替開催 どーん
実況『さぁ!レースは最後の直線!』
実況『先頭はサイレンススズカ!2番手との差は2バ身!』
実況『後続はサイレンススズカをとらえることはできるか!』
実況『残り200を通過!ここでサイレンススズカまた突き放した!』
実況『サイレンススズカ逃げてもさらに後続を突き放す!』
実況『これは!サイレンススズカ!サイレンススズカだ!』
実況『サイレンススズカ!今、ゴール!』
実況『まさに!逃げて、差す!サイレンススズカ圧勝!』
実況『タイムは……1分46秒5!レコードタイム!』
実況『サイレンススズカ!レコードタイムでの勝利ですっ!』
『パラッ』
◇◇◇
【中京レース場・芝2000m・GⅡ 金鯱賞】どーーん
実況『レースは中盤!残り1000mを通過!先頭はサイレンススズカ!』
実況『今日も飛ばしに飛ばして!2番手との差は10バ身!』
フクキタル『はぁっ……はぁっ……』
フクキタル(速い……速すぎます……!)
──────
スズカ『今日はよろしくね、フクちゃん』
フクキタル『はいっ!今日はレースで、大吉勝負です!』
スズカ『ふふっ……私も負けないわよ』
──────
フクキタル(トレーニングで見ていたスズカさんと……レースで走るスズカさんは……)
フクキタル(こんなにも違うのですか……!!)
フクキタル(追いつく未来が……見えませ~ん……!!)
実況『サイレンススズカ残り600の標識を通過!各ウマ娘差を詰めにかかるが!』
実況『独走態勢か!サイレンススズカ!まだリードは7バ身以上ある!』
フクキタル(スズカさんが……見えませぇぇんっ!)
実況『さあサイレンススズカ!拍手に送られて、直線を向いた!残り400の標識を通過!』
実況『先頭はサイレンススズカ!まだリードは5バ身以上あるぞ!』
実況『後続も一団となって迫ってくる!』
実況『サイレンススズカ速い速い独走だ!残り200を通過』
実況『サイレンススズカまだ突き放す!これだけ逃げてもまだ突き放す!』
スズカ(このまま、どこまでも……!)
実況『完全に一人だけ別次元の走り!異次元の走りだ!サイレンススズカ!』
実況『サイレンススズカ大楽勝!ゴールインッ!』
実況『2着とは10バ身以上の差をつけてサイレンススズカ4連勝!!』
実況『そしてタイムは1分57秒8!またもレコードタイムです!』
『パラッ』また一つ……
◇◇◇
トレセン学園 トレーナー室
【サイレンススズカ4連勝!重賞は3連勝!うち2レースはレコード勝利!次走は……?】バサッ
『なぁ~んて、スポーツ新聞に特集まで組まれちゃってますよ?スズカさん♪』
スズカ『もおー……茶化さないでください!トレーナーさん……』
『今のうちにサインでも貰っておきますかね?』
スズカ『いい加減にしないと怒りますよ?』ムッ
『ハハハ……スズカは優しい娘だから、このくらいじゃ怒らないって、トレーナーさんは知ってますよ♪』
スズカ『……むぅ……////』
(金鯱賞から数日後、今のところ次走はまだ未定や)
(今はトレーニングを終えて、迫る夏合宿の準備の真っ最中……)
『じーーーーっ……』ガン見
(……大丈夫……違和感はない……)
スズカ『トレーナーさん、最近よく私の足見てますよね?』
『ギクッ……』
スズカ『どこかおかしいですか?私の足?』
『いや!全然まったく!おかしくないです!むしろ綺麗です!』
(って、それもおかしいやろ!)
スズカ『……////』
(見てみぃ、スズカ困ってるやんけ!)
『あ、えっとぉ……これはそうじゃなくて……あの異次元の走りを生み出す……』
『スーパーウマ娘の脚力はどうなってるのかなぁ~……って!……ね?』
スズカ『むっ……スーパーウマ娘なんて、また茶化すんですか?』
『なはは~……冗談冗談!』
(誤魔化せた……かな?)
コンコンコン……
『ん?……どうぞー』
たづな『失礼します』
ガラッ
『たづなさん……』
スズカ『……』ペコッ
『なにか御用ですか?』
たづな『今、URAから宝塚記念ファン投票の結果が届いたのですが!』
(……宝塚記念)
たづな『サイレンススズカさんがファン投票6位に選ばれました!』
『6位!?』
スズカ『え!?』
(G1ウマ娘でもないスズカが6位!宝塚出走はもちろん知ってたけど……6位だったんや)
たづな『これはとても名誉なことですよ!片桐トレーナー!』
(どうする?宝塚記念は努力だけで出られるレースちゃう!)
(せやから史実は知っていてもローテーションには組まんかった)
(ここまでスズカは絶好調、史実通り進んでる……)
(せやけど“この”宝塚記念は……強敵が多すぎる!)
(いいのか?このまま史実通り進んで……いいのか?出走させて……)
『……』
スズカ『トレーナーさん……』
『!』
スズカ『私……走ってみたいです、宝塚記念』
『!!』
『だ……だけど宝塚記念は2200mだし……ちょっとスズカには長いかも……』
(どないするんやっ!?)
スズカ『走って……みたいです!』
『!!』
(そっか……スズカがここまで言うんやな……)
(……迷わんわけやない……)
『スズカ』
スズカ『はい』
『……』
スズカ『……』
じっと見つめ合う、スズカと片桐
(……大丈夫)
『出よう……宝塚記念!!』
スズカ『!!』
『たづなさん、出走手続きをお願いします!』
たづな『はい♪』
スズカ『ありがとうございます!トレーナーさん!』
『“ありがとう”は俺の方だよ……スズカ』
スズカ『え?』
(まだまだやなワシも……)
(いくで!全ウマ娘ファンの夢の舞台!宝塚記念!)
ー1章ー006話 Special Record!を、重ねて 完
第6話『Special Record!を、重ねて』
今回は中山対策から始まり、スズカが異次元の走りを見せるまでを一気に駆け抜けました!
フクちゃんを呼んだ時点ではもう少し真面目なトレーニング回になる予定だったんですが……
片桐とフクちゃんが揃って、真面目に終わるわけがありませんでした(笑)
それでも積み重ねたものは、きっちり結果へ繋がっていく
交換日記にまた一つ、片桐とスズカの記録と記憶が刻まれました
そして次なる舞台は――宝塚記念!
史実を知る片桐が迷う中、自分から「走りたい」と伝えたスズカ
トレーナーが決めるのではなく、最後は担当ウマ娘の意志を尊重する
この2人らしい出走決定になったと思います
世間はお盆休みの真っ最中!
お休みの方も、お仕事の方も、空いた時間にのんびり楽しんでいただければ嬉しいです♪
次回は8月16日(日)19時公開予定です!
次回もよろしくお願いします!
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