【ウマ娘if】転移した俺は、トレセン学園で運命に抗う 作:KUROX
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『ありがとうございましたー!またお越しくださいませー』
???『お疲れ様片桐さん、交代の時間ですよ』
『あ、山本さんお疲れ様です』
山本『しかし偉いわねぇ、早朝からバイトしてこの後お仕事でしょ?』
『子供たちとの時間も減らしたくないし、この時間がいいんですよ』
山本『ほんと感心しちゃうわ、うちの旦那も見習ってくれないかしら?』
『ハハハ……じゃあ、仕事あるんでお先失礼します』ペコッ
山本『はーい、お仕事頑張ってねー』
……ザザッ……
『こんちは!ベルコーヌでーす!資材お届けにあがりましたー!』
取引先『おお!片桐さん、現場までわざわざ悪いね』
『いやいや、ご用命とあればどこへでも!その代わりご注文はベルコーヌまで!』
取引先『はは!相変わらずだな片桐さんは』
『最近どうですか?景気の方は?』
取引先『まぁ、ぼちぼちだな』
『うちへの注文はぼちぼちじゃなくてもいいですからね』
取引先『ははは……ま、またなんかあったら頼むよ』
『はい!それじゃまたお願いします!失礼しまーす!』
……ザザッ……
『こんにちはー片桐でーす』
保育士『ああ!まーちゃんパパ、こんにちは』
保育士『まーちゃん!パパお迎えきたよー!』
???『パパーおかえりー』
『はい、ただいま』
『それじゃあ、ありがとうございました』ぺこっ
保育士『はい、さようなら~まーちゃんまた明日ね』
???『さよーならー』
……ザザッ……
妻『いつもありがとね、お迎えからなにから……』
『いいよ、お前客商売で土日も仕事なんだし、できる人ができることやれば……』
妻『うん、ありがと』
……ザザッ……
???『パパー今日はどこいくのー?』
『う~んどこ行こっかぁ~?エオンでもいくかー?』
???『ママも日曜日お休みだったらいいのにねー』
『ねー』
……ザザッ……
???『ただいまー!』
『まー、先に手洗いしろよー!』
???『はーい』
『……もうこんな時間か……』
(……また自分の事なんもできんで1日終わってもうたな……)
パリーーンッ
(……)
……ザザッ……
???『パパーご飯だよー』
『……』
『……パパ、調子悪いから……ご飯いらないや……』
???『?……わかったー』
『……』
『……』
妻『……どうしたの?布団なんか被って、どこか調子悪い?』
『……ちょっと……疲れ溜まってるだけだよ……』
妻『……本当にご飯いらないの?』
『……ああ』
……ザザッ……
(……怖い……人が怖い……人の顔が見れない……外に出るのが怖い……)
(……体が重い……動きたくない……何もしたくない……)
(……それでも……仕事行かなきゃ……ワシが稼がなくちゃ……)
(……ワシの)
……ザザッ……
妻『ねぇ?本当に大丈夫?最近全然夕飯食べてないじゃない?』
『……』
妻『ずっと、布団の中入って……心配なんですけど?』
『……』
……ザザッ……
妻『起きて、病院行くよ』
『……やだ……』
妻『いいから、ほら、起きて!』
『……』
……ザザッ……
医者『どうされました?』
『……』
妻『ずっと部屋から出ないで、ご飯も食べず、布団の中に閉じ籠ったまんまなんです』
『……』
医者『片桐さん、いつからか覚えてますか?』
『……あ、え……』
医者『ゆっくりでいいですよ』
『……日曜日に子供たちと出かけて……』
『……帰ってきて……ぅ……』
(あれ?)
『……今日、もう終わっちゃったんだって……うぅ……』
(なんや?これ?)
『……何も出来なかった……って……うぅ……くっ……』
『……思ったら……ううううう~……』
(涙が……感情がコントロールできん……)
医者『そうですか……ちょっと、疲れちゃったのかもしれませんね……心が』
(いやや……まだ頑張れる……)
医者『少しお仕事はお休みした方がいいですね』
『うわああああああ~……』激しく首を振る
(やだ、いやや、仕事してなきゃ!ワシの居場所が!存在意義が!)
医者『うつ病で、診断書を書いておきますね』
(ヤダヤダヤダヤダヤダ……)
医者『片桐さん、今は心が疲れてエネルギー切れを起こしちゃってる状態なんです』
医者『今はゆっくり休んで、心にエネルギーを貯めてください』
『ううぅぅぅぅ~……』
……ザザッ……
(……)
(……誰か……誰か……)
(……殺してくれ……)
(……ワシなんか……)
(……)
(…………死にたい)
──────
9月 トレセン学園郊外
ポッポッポッ……
タッタッタッ……
『スズカーッ!ファイトー!』ポッポッポッ……
スズカ『ふふっ…はい!』タッタッタッ……
(今日は外周でトレーニングや)
(トレーニング中になにかあるかもしれんから、最近はワシも同伴するようにしてる)
(ちなみに自転車ではワシが死んでしまうので、原付で並走中やで)
『スズカー!今日も可愛いよー』ポッポッポッ……
スズカ『ふふっ…その変な掛け声やめてください……ふふっ』タッタッタッ……
『スズカー!その笑顔がたまんないよー』ポッポッポッ……
スズカ『も~……ふふっ』タッタッタッ……
・・・・・・
『よしっ!到着~♪ここで一旦休憩です』
スズカ『はぁ……はぁ……はい』
(スタミナ強化に加えパワーも鍛えるため、近くの山道を走ってきたが……)
(スズカは平地とまったく同じペースで山道を登りきることができてる)
(夏の合宿でさらに一段階レベルアップしたのは間違いないな……それに)
『じーーーーっ……』ガン見
スズカ『……』
(よっしゃ、こっちも異常なしやな)
スズカ『……トレーナーさ……』
???『おや、こんなところで会うとは……私の願いが通じたかな?』
スズカ『!』
スズカ『……ステイゴールド』
ステゴ『こんにちはスズカ……』
ステゴ『と、片桐トレーナー』
『おまけみたいに言うなー』
ステゴ『ははは……そんな風には思ってないさ』
『ステイゴールドはトレーニング……では、なさそうだな』
ステゴ『ああ、風の向くまま歩いていたら、いい景色を見つけてね』
『相変わらずというか……何というか……どうせ授業にもロクに出てないんだろ?合宿にも参加してなかったし……』
ステゴ『私の教科書は、この“世界”だから……』
『む……なんかカッコイイこと言っちゃって……どーせ授業が退屈なだけだろ』
ステゴ『う~ん……否定はしないかな?』
『そこは否定して』
スズカ『……ステイゴールド、あなたの願いって……?』
ステゴ『ああ、そうだった……スズカ……』
ステゴ『もう一度私と走ろう』
スズカ『!?』
『ダメーーッ!』バッ
『この前みたいにいきなり勝負を仕掛けるのは、先生許しませんよっ!』
ステゴ『ふふ……私はそれでもかまわないんだが……』チラッ
スズカ『!』
『先生ダメって言ってるでしょ!スズカは山道トレーニング終わったばっかりなんです!』
『オーバーワークは許しませんよっ!ダメダメ!絶対ダメっ!!』
ステゴ『ははは……そんな目くじらを立てるなよトレーナー』
『フンッ!』鼻息
ステゴ『……』タッ……タッ……スズカに歩み寄る
スズカ『……』
ステゴ『スズカ……天皇賞・秋に出ろ……待っている』タッタッ……
『!!』
スズカ『……ステイゴールド……』
『……』
『スズカ、あと10分休憩したら帰るぞ……』
スズカ『え?あ!はい……』
スズカ(……トレーナーさん?)
◇◇◇
トレセン学園 トレーナー室
(……『スズカ……天皇賞・秋に出ろ……待っている』)
(……)
(今後のローテーションはまだ決まっていない……)
(いや、決められないって言った方が正確か……)
(まだ迷っている……できることならば……回避したい)
『……』交換日記を書いているスズカを見る
(うん、そうやな……それが一番ええ……)
スズカ『……うん、ヨシっと』
『スズカ』
スズカ『はい』
『スズカは次のレースどうしたい?』
(きっと、ワシが決めるより……)
スズカ『……』
『……』
スズカ『……トレーナーさん、屋上行きませんか?』
『屋上?』
スズカ『景色がいいところで考えた方が、きっといい答えがでますよ』
『……ああ』
・・・・・・
トレセン学園屋上
スズカ『空が高くて……夕日が綺麗……』
『ああ、本当にな』
スズカ『ここならいい考えが浮かびそうじゃありませんか?』
『……そう……だな』
スズカ『……』
スズカ『私、天皇賞に出たいです』
『!』
『……そう……だよな』
『……』
『やっぱりステイゴールドのこと気になる?』
スズカ『そうですね……半分は……』
『半分?』
スズカ『宝塚記念でステイゴールドと走って……』
スズカ『なんとなくステイゴールドの言っていたことが分かった気がしたんです』
『……自分の走りと似てる』
スズカ『はい、だからもう一度走って確かめたい……』
『……』
スズカ『それが半分!もう、半分は……』
スズカ『宝塚記念で見た先頭の景色……』
『!』
スズカ『先頭でゴールを駆け抜けた後、コースも……お客さんいっぱいのスタンドも……』
スズカ『すごい広くて……どこまでも広がっていくようなあの景色を……』
スズカ『もう一度、見たい……あの素敵な景色を……』
『……』
スズカ『……』
スズカ『……トレーナーさん、私の左足……どうかなっちゃうんですか?』
『!!』
『どうして!?そ……』
ズキンッ!!
(ぐっ……アカン……)
『……はぁ……な、なんで?』
スズカ『トレーニング中……特に終わった後なんかあんなにガン見されてたら気づきます』
スズカ『それに左足ばっかり……』
『いや、だからあれはトレーニングの成果を……』
スズカ『あんなに悲しい顔をしてですか?』
『!』
スズカ『最近私のことを見る時、トレーナーさんとっても悲しい顔をしてる時があるんです』
スズカ『理事長室で初めて会ったときみたいな……』
『……くっ』
スズカ『……私……』
スズカ『走れなくなるんですか?』
『!!』
『そんな事ワシがさせん!絶対に!』
スズカ『っ!?』
『スズカ!聞いてくれ!君は!て……』
ズキンッ!
『カッ!……ァ……ゥ……』ガクッ
スズカ『トレーナーさん!』
(クソッ!クソッ!クソッ!……こんなモンにっ……!!)
(クソッ!……このクソがぁぁぁーッ!!)
ガンッ!!地面に頭を叩きつける
スズカ『きゃあっ!』
ガンッ!! ガンッ!!
(このッ!……)
スズカ『だめぇっ!!』ガバッ!
スズカ『トレーナーさん!やめて!もうやめてくださいっ!』ギュウ
『はあ……はあ……はあ……』
スズカ『やめて……やめてください……ぅぅ……』片桐の頭を抱きしめる
『はあ……はあ……はあ……』
──────
波音が脳裏に蘇る……
スズカ『でも今は先頭を走っていても“一人”じゃない……』
スズカ『ずっと私は……トレーナーさんと走っています……』
スズカ『だから……逃げてもいいんですよ……貴方も一人じゃないから……』
『……くっ……うぅ……うぅぅ……』
スズカ『私の走る先を、一緒に見てください』
スズカ『それだけで、私は一人じゃなくなりますから』
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『……』
『……スズカ』
スズカ『……ぐすっ……』
『制服が汚れてまうで……』
スズカ『……どうでもいいです……ぅぅ……』ギュッ
『もう……大丈夫やから……』
スズカ『……もう……しませんか?……グスッ……』
『ああ、もうせえへんから……』
スズカ『……ハイ』
『ごめんな怖がらせて……』スズカの頭をなでる
スズカ『!』
スズカ『……トレーナーさん……血が……いっぱい……うぅ~』
『ああ、こんなもんかすり傷や』
スズカ『そんな訳ないじゃないですか!』
『ごめん、ごめん、冗談や冗談』
スズカ『……冗談に、しないでください……』
『スズカ……』バッ
スズカの頭を抱きしめる
スズカ『……あ』
『約束する……君の走る先を……俺はずっと見てる……スズカの隣で』
スズカ『……』
『……』
『出よう……天皇賞』
スズカ『……トレーナーさん……』
『よし!そうと決まれば、天皇賞用のローテーションとトレーニング組まないとな!』
スズカ『先に保健室です!』
『大丈夫!大丈夫!こんなのツバつけときゃ治……』クラッ……
『おっとっと……?』
スズカ『全然大丈夫じゃないじゃないですか!』
『あれ……?おかしいな?』くらぁ~
スズカ『もー保健室行きますよ!』ひょいっ
『え?』
『スズカさん?もしかしてこの格好で行くんですか?』
スズカ『立ってるのもやっとの人を歩かせるわけにはいかないです!』
『え? けど、これは……』
スズカ『今のトレーナーさんの言うことは聞きません!』タッタッタッ……
(いやいやいや!45にもなって女子にお姫様だっこはもうこれ……)
(公開処刑やぁー!)
『やだーーっ!降ろしてぇーーっ!』
スズカ『知りませんっ』ムスー
・・・・・・
保科『一応止血の応急処置はしたけど……こりゃ病院行って縫って貰わないとダメね』
【彼女の名は、
トレセン学園の保健・医療関係を預かる、保健室の養護教諭。
元URA指定病院の看護師であり、一時は医師を目指したこともある医療の専門家だ。
ウマ娘の健康管理には厳しいが、根は優しく、一度関わった者を放っておけない。
さしずめ、肝っ玉母さんを少しだけマイルドにしたような人物である。
そんな彼女が下した結論は――病院送り】
『えぇ~~……』
スズカ『……キッ』睨む
『……ゴメンナサイ……』
(エアグルーヴに似てきたんちゃうか…… )
スズカ『……ムスー』プクゥ
スズカ『私が連れて行ってあげましょうか?トレーナーさん?』ニコッ✨
『タクシー呼びますっ!』
(絶対お姫様だっこで連れて行く気や……)
保科『タクシー呼んどいてあげるから、正門で待ってなさい』
スズカ『ありがとうございます』
『お手数おかけしましたぁ』
スズカ『じゃあ、行きますよ』ひょいっ
『え?』
保科『……落とさないようにね』
スズカ『はい!失礼しました』タッタッタッ……
『スズカさーん!もう大丈夫だからぁー!』
保科『……』
保科『仲のいいコンビだねぇ』
・・・・・・
トレセン学園 正門前
ウマ娘A『ねぇねぇ、あれ見てあれ!』
ウマ娘B『きゃーお姫様だっこ!』
ウマ娘C『やだ、あれってスズカ先輩じゃない?』
ウマ娘D『だっこされてるのはトレーナーさん?』
わいわい……キャッキャッ……
(ちょうどトレーニング終わりの下校時間でめっちゃ見られてるぅぅ~……)
『スズカさん……////スズカさん……////』両手で顔を覆ってる
スズカ『……』
『待ってるだけだし、大丈夫ですから、降ろしていただけませんか?』
スズカ『……』
『なんなら地面に体育座りしておとなしく待ってますから……』
スズカ『……フンッ』プイ
『……スズカさん?……怒って……る?』
スズカ『怒ってます』
『……はぅ……』
スズカ『私の大事なトレーナーさんが、自分のことを大事にしてくれないので』
『……ホントウニモウシワケアリマセンデシタ……』
スズカ『……フンッ』
(めっちゃ怒ってるぅ~……これは……アカン……諦めよ)
わいわい……キャーキャー……ヒソヒソ……
『……モウ……好きにして……』チーン……
スズカ『……ムスー』
◇◇◇
翌日 トレーナー室
(……昨日は大変やったなぁ~)
(結局あの公開処刑の後も、病院までスズカは付いてきて……)
(その後ももう大丈夫だからと何度言っても聞かへんし……)
(また変なことをするんじゃないかと、ワシのアパートまで押しかけてくる勢いやってん)
(説得して帰すまで、めっちゃ大変やったのよ……)
(ともあれ、今は次のローテーションや……)
(このまま天皇賞に行ってもいいかもしれんが……)
(うん!やっぱりこれやな……)
・・・・・・
放課後 トレーナー室
『……カタカタ』PCで作業中
ガラッガラッ……バタンッ!
『うおっ!びっくりしたぁー……』
スズカ『……』てくてくてく……
『スズカ……?おつかれさ……マッ!?』ガシッ
(え!?……顔面両手で掴まれたんやけど……)
スズカ『じーーーっ……』
『ふふは……はん?』 (スズカ……さん)
スズカ『……』きょろきょろ……
『……ほーひはの?』 (どーしたの)
スズカ『どこも……傷は増えてないですね』ぱっ
『……ふぅ、もうしませんってあんなこと……』
スズカ『ものすごーーっく、心配したんですからね!』
『……ハイ』
スズカ『トレーナーさん頭おかしくなっちゃったんじゃないかって……』
『……ご心配おかけしました……少し取り乱してしまいました……』
(ちょっと言い方が“アレ”な気もするんやけど…… )
『それより、スズカ!ローテーション決まったよ!』
スズカ『……それより?……私の心配は“それより”ですか?……』
『あ! ……ぁぁ……そ、そんなことは……思っていません……ゴメンナサイ……』
スズカ『……じーっ……』
『……しゅん』
スズカ『……ふふ』
『……へ?』
スズカ『ふふふっ……私をあんなに心配させた、悪いトレーナーさんにお返しです♪』
『ごめん、本当に悪かった……もう二度としないよ……あんなこと……』
スズカ『はい!もういいですよ、トレーナーさん♪』
『ありがとう、スズカ……』
スズカ『……ふふっ』
『で、ローテーションなんですが!天皇賞に出走する前に“毎日王冠”に出ようと思います』
スズカ『はい』
『直接天皇賞にいくのも考えたんだけど、前回の宝塚記念から天皇賞だと4か月も期間が空いちゃうから』
『勝負勘を取り戻すためにも、10月の毎日王冠を走ってから天皇賞に挑みます』
スズカ『わかりました』
『トレーニングは引き続き左脚強化を軸に、全体のバランスも取っていきます』
スズカ『……』
『特にトレーニング後のボディケアは入念にするように!』
スズカ『はい!』
『……』
(……もう、何も聞いてこないんやな……)
(天然やけど勘の鋭いとこもあるし……何かしら気付いてんのやろ……)
『じゃあ、まずは!毎日王冠がんばるぞっ!オー!』
スズカ『オー!……ふふ』
(大丈夫……全部見届ける……スズカの走りの先を……)
◇◇◇
数日後 トレーナー室
スズカ『これでぇ、ヨシ♪』日記を書き終えた
『終わった?』
スズカ『はい』
『しつこいようだけどトレーニング後のボディケアは入念にな、特に左脚!』
スズカ『……それなんですけど、トレーナーさん』
『ん?』
スズカ『トレーナーさん、やってもらえませんか?』
『……え?』
スズカ『トレーナーさんに言われてボディケアの本で勉強したんですけど』
スズカ『自分でやる用の本じゃなかったみたいで、自分ではうまくできなくて……』
スズカ『トレーナーさんならできますよね?』
『そ……それはモチロン……』
(ここ最近はボディメンテナンスの本で勉強しまくってたから知識はもちろんありますがぁ……)
スズカ『じゃあ、お願いします♪』ぽすっ ソファに座る
『……ゴクッ』
(え?なにこの流れ?え?ワシがやるの?スズカの足を!?マッサージ!?)
スズカ『あ、ソックスない方がやりやすいですよね!』ぬぎぬぎ
『!!』
(ちょちょちょちょっ!ちょまっちょまっちょまって!)
(生足はアカンやろぉ~!いや、見てますよ!何度も見てますよ!?)
(読者諸君には悪いけどね!プールトレーニングもやってますからね!そりゃ何度も見てます、が!!)
『……』チラッ
スズカ『ヨイショ……これでよし♪』ぽすっ
スズカ『トレーナーさん、お願いします♪』
(制服、生足は違うんですよぉぉぉぉ~……!趣が!違うんですよぉぉぉぉ~!!)
スズカ『トレーナーさん……?』
スズカ『じーっ……』真っ直ぐな瞳✨
『!』
(って、アホか!スズカの為になんでもできるように勉強したんやろが!煩悩退散や!)
『コホンッ……スズカ、マッサージ始める前に一つ聞いていい?』
スズカ『はい、なんですか?』
『こんなおっさんに足触られて、嫌じゃない?』
スズカ『???』こてん?
スズカ『トレーナーさんですよ?』
『いや それはそうなんだけどね……』
『スズカぐらいの年の娘が40過ぎのおっさんに足を触られるのに抵抗ないのかなぁ~って?』
スズカ『トレーナーさんじゃなかったら……?』
スズカ『……』想像中……
『……』
スズカ『……すごい嫌かもです!』
『でしょ?』
スズカ『けど、私もトレーナーさんじゃなかったらお願いしないし……』
スズカ『トレーナーさんだったら全然、嫌じゃないですよ♪』
『!』
スズカ『なので、お願いします♪』
(……いつまで経っても……スズカにはかなわんなぁ~……)
『はい、かしこまりました……』
『では、先に……じーーーーーーっ』ガン見
スズカ『……そうやって見るとなにかわかるんですか?』
『ははは……名トレーナーですから……』
スズカ『ふふふっ……さすがですね』
(いや できればツッコんでほしかったんやけど…… )
(うん、大きな違和感はないようやけど、練習直後やから疲労は溜まってるな……)
『では、失礼しまーす』
(煩悩退散……煩悩退散……)
ぷにっ
スズカ『あっ…………ふふ』
(どきゅーーーーーーーーん♡)
スズカ『ちょっとくすぐったいです……ふふっ』
『ごごごごごごごご……ごめんなさいっ!』 ぱっ
(今のはワシ悪くない!今のはワシ悪くない!あんなん誰だって“どきゅーん”なりますやん!!)
スズカ『ごめんなさい、私も、もう少し我慢しますね』
『……』
(アカン、切り替えよう……今までの勉強はなんのためや?一緒に進むて決めたんやろ?)
『すぅーーーーーっ』
(スズカのために……ワシの全てを注ぐって)
『はぁーーーーっ』
スズカ『……』
『じゃあ、始めるよ』
スズカ『……お願いします』
『……』もみもみ……
スズカ『……っ』
『……』もみもみ……
(ワシには、こんなことぐらいしかできへんかもしれんけど……)
スズカ『……ん!』
『……』もみもみ……
(それでも、ほんの少しでも……)
スズカ(あ……すごい気持ちいい……)
『……』もみもみ……
(スズカの力になれるなら!)
スズカ『……』
スズカ『……スー』
・・・・・・
スズカ『スー……スー……』
『お客さぁ~ん、終わりましたよー……』
スズカ『んー……もう走れませ~ん……ムニャムニャ……』
(またそれかいっ!ずっと走ってるな!)
『ふふふ……スズカ、起きて』
スズカ『……トレーナーさん?……あれ?私』
『ボディケアの勉強するんじゃなかったんですか?』
スズカ『ごめんなさい!トレーナーさんのマッサージが気持ちよくて……』
『それはなによりです♪』
スズカ『自分でできるように勉強しようと思ってたのに……』しゅん……
『いいよ、これからは毎日してあげるから』
スズカ『!』
(足の状態も見れるし、なによりスズカがリラックスしてくれるなら……)
スズカ『でも!……それじゃあトレーナーさんが大変になっちゃうんじゃ……』
『トレーナーはレースに出られないんです!』
スズカ『え?はい、そうですけど……?』
『気持ちではねレース中でも一緒に走ってるつもりでも……』
『送り出した後はスタンドで祈ることしかできないんです』
スズカ『……』
『無事に帰ってきてくれ……って、だから少しでもスズカの力になることをしてあげたい』
『これが、俺の“走り方”なんです……』
スズカ『!』
『って、ちょっとカッコつけすぎか?』
スズカ『いいえ、やっぱり私のトレーナーさんは名トレーナーです!』✨
『おだてても、おやじギャグくらいしかでませんよぉー……』
スズカ『ふふっ……私おやじギャグ大好きですから♪』
『ぐぬっ……////……はい!今日はもう解散っ!』
『スズカも早く帰ってしっかり休むように!』
スズカ『はい!お疲れ様でした、トレーナーさん♪』
◇◇◇
10月
【東京レース場 芝1800m GⅡ 毎日王冠】どーーん
東京レース場 控室
『はい!これでOKっ!』
スズカ『ありがとうございます』
『しっかりストレッチしとけばケガの予防になるからね』
(勉強の成果で少しでもスズカの役にたたなきゃな)
『あ、どっこいしょ』ぼすっ 椅子に座る
『……じーっ』出走表を見てる
スズカ『……』
スズカ(ふふ……静かね……)
スズカ(前まではあんなにドタバタだったのに……)
スズカ(……でも)
スズカ(……今は……トレーナーさんとのこの空間が……)
スズカ(……この静けさが……とても落ち着く……)
『……』
スズカ『……』
コンコンコン……
係員の声『サイレンススズカさーん、まもなく時間でーす!』
スズカ『はい!』
『よしっ!』
『スズカ!』
スズカ『はい』
『今日の作戦を発表します!』
スズカ『はい♪』
『思いっきり楽しんで!……』
スズカ『はい!』
『“勝ってこい”!!』
スズカ『!!』
スズカ(……トレーナーさん……初めて…………ぐっ)
スズカ『はいっ!!』
◇◇◇
東京レース場 パドック
???『スズカ先輩!』
スズカ『あら?エルコンドルパサーさんと……グラスワンダーさん』
グラス『……』ペコッ
エル『スズカ先輩!今日はよろしくお願いしますデース!』cv.髙橋ミナミ
スズカ『ふふ……こちらこそ』
エル『でも!今日は胸を借りるつもりなんてありません!』
スズカ『……』
エル『エルはスズカ先輩に勝つつもりで走ります!世界最強になるために!』
片桐(うわぁ……眩しい……若さと自信が直射日光みたいに眩しい……)
グラス『エル……少し声が大きいですよ』cv.前田玲奈
エル『グラスも言ってたデース!今日のスズカ先輩を見てみたいって!』
グラス『……はい』
スズカ『私を?』
グラス『宝塚記念……見ていました』
グラス『あの日のスズカ先輩は、とても速くて……綺麗で……』
グラス『でも、だからこそ……届いてみたいと……越えてみたいと思いました』
スズカ『……』
グラス『今日は、挑ませていただきます……サイレンススズカさん』
エル『エルもデース!スズカ先輩!今日は簡単には逃がしませんよ!』
スズカ『……ふふ』
エル『?』
グラス『?』
スズカ『ありがとう、二人とも』
エル『え?』
スズカ『そんなふうに言ってもらえるなんて……嬉しいわ』
スズカ『でも……』
スズカ『今日の私は、いつもより速いわよ』✨
エル『!』
グラス『っ!』
スズカ『トレーナーさんが、“勝ってこい”って言ってくれたから』ニコッ✨
片桐(んんー??なんかしゃべってる?……ここからじゃ会話が聞こえんっ……)
グラス『……私も譲りません』
エル『……ふふっ、最高デース!ますます、楽しみになりましたー♪』
スズカ『ええ、私も♪』
エル『それじゃあスズカ先輩!ターフで!』
グラス『失礼します』ペコッ
スズカ『はい』
◇◇◇
実況『さあ、ファンファーレの大歓声の中!ゲートインが始まっています!』
実況『改めてここで注目ウマ娘を紹介しましょう』
実況『まずは2番、1番人気サイレンススズカ』
実況『今年に入ってからバレンタインステークス、中山記念、小倉大賞典、金鯱賞、そして宝塚記念と破竹の5連勝!』
実況『前走、宝塚記念では並み居る強豪を相手に堂々の逃げ切り勝ち』
実況『勝って、勝って、勝って、なおその先頭は止まりません』
実況『今日も見ることができるのか、誰も届かない先頭の走り』
実況『堂々の1番人気、サイレンススズカです!』
実況『続いて4番、3番人気エルコンドルパサー』
実況『今年5月のNHKマイルカップを制した、黄金世代の実力者です』
実況『デビューから底を見せぬまま世代の頂点へ、そしてその視線はすでに世界へ向いています』
実況『掲げる夢は世界最強』
実況『今日この毎日王冠で、1番人気サイレンススズカにどこまで迫ることができるのか!』
実況『そして6番、2番人気グラスワンダー』
実況『前年の朝日杯フューチュリティステークス覇者!』
実況『クラシック戦線はケガにより出走できませんでしたが、秘めた実力は誰もが認めるところ』
実況『復帰戦となる今日、いきなり相手はサイレンススズカ』
実況『しかし、その静かな瞳に宿る闘志は決して揺らいでいません!』
実況『4番エルコンドルパサー、6番グラスワンダー』
実況『黄金世代を代表する2人が、異次元の逃亡者サイレンススズカに挑みます!』
実況『その他にも実力あるウマ娘たちが揃った今年の毎日王冠』
実況『全9人、東京レース場芝1800m、G2毎日王冠』
実況『秋の大舞台へ向けた重要な一戦が、まもなく始まります!』
・・・・・・
実況『全ウマ娘ゲートイン完了……』
実況『毎日王冠……』
『……』
スズカ『……』
グラス『……』
エル『……』
ガシャンッ!
実況『今!スタートです!』
ー1章ー009話 君へ贈る、Fanfare for Future! 完
第9話「君へ贈る、Fanfare for Future!」
今回、私が一番書きたかったのは、スズカを守ろうとする片桐が、逆にスズカから「貴方も一人じゃない」と救われる場面でした。
一人で全部を背負って、自分まで傷つけてしまう片桐。\
それでもスズカの走る先を見続ける――片桐の「俺の走り方」が、ようやく形になった回です。
……と、ここまで真面目に書いた直後に、お姫様抱っこの公開処刑、保科先生の初登場、制服生足ボディケアですw
温度差で風邪ひくわ!(笑)
そして片桐から、初めての「勝ってこい」。
未来へ向けたファンファーレとともに、毎日王冠が始まります!
物語はここから、毎日王冠の先に待つ“運命の日”へ、少しずつ近づいていきます。
そして、本編を読み終えた皆さまへ。
明日8月24日(月)朝7時、noteにて【KUROXの駄馬《だば》なし】第4走を公開します!
第8話・第9話に仕込んだ元ネタ、史実とのつながり、ゲーム・アニメ由来の小ネタ、そして本編では語れなかった制作裏話まで、いつもの調子で掘り返しますw
本編の余韻が残っているうちに、ぜひ覗いてみてください!
【次回更新】\
第10話 8月26日(水)19:00公開予定\
第11話 8月30日(日)19:00公開予定
【KUROXの
第4走「第8話・第9話のネタ解説・裏話」\
8月24日(月)07:00公開予定
【X(本編直接公開・最新情報)】\
[https://x.com/utsupapa\_2021](https://x.com/utsupapa_2021)
【note(裏話・ネタ解説)】\
[https://note.com/kurox\_1200](https://note.com/kurox_1200)
それでは、次回もよろしくお願いします!
KUROX