旅する物語 異世界探訪 太宰治との邂逅   作:masuda028

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【文豪ストレイドッグス/太宰治】
ふらりと迷い込む別世界。

※本作は『文豪ストレイドッグス』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。

◆ヒロイン(?)は名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです。


4創稿編 7・8:面接の茶番を笑い飛ばす探偵と、新衣装の少女に必死で釈明する保護者

●7

 

 風呂上がりのますだは、髪をタオルで押さえながら応接室へ戻ってきた。

 白猫はふわふわの尻尾を揺らしながら、その後ろをついて歩く。

 

 応接机の向こうでは、国木田独歩が手帳を開いて待っていた。

 太宰は椅子に座り、敦は緊張した面持ちで端に立っている。

 

「では、一応面接という形を取らせてもらう」

 

「はい」

 

 ますだは背筋を伸ばし、白猫を膝に乗せて座った。

 

「君にできることを教えてくれ」

 

「えーと……」

 

 ますだは少し考えた。

 

「読み書きができます!」

 

「……いや、それは普通だ」

 

「あっ」

 

「他には」

 

「お茶とか淹れられます」

 

「それも普通だ」

 

「そうなんですね」

 

 国木田は額を押さえた。

 

「何か特技はないのか」

 

「特技ですか」

 

 ますだは腕を組み、真剣に考え込む。

 

「空気が読めます!」

 

「……なんだそれは」

 

「え?」

 

「大事じゃないですか」

 

「いや、それは履歴書に書くような技能ではない」

 

「そうなんですか」

 

「そうだ」

 

「じゃあ、お話ができます!」

 

「誰でもできる!」

 

「えぇっ」

 

「君は本気で言っているのか?」

 

「すごく本気です」

 

 国木田は深いため息をついた。

 

「例えば事務仕事は」

 

「あっ、それなら!」

 

 ますだの表情がぱっと明るくなる。

 

「タイピングはわりと早いと思います!」

 

「ほう」

 

「議事メモとか、たぶんいけます!」

 

「たぶん!?」

 

 横で聞いていた敦が思わず声を上げ、太宰が「頼もしいねぇ」と呑気に手を叩いた。

 

 ますだは照れ笑いを浮かべる。

 

「やってみないと分からないので」

 

「普通はそこは『できます』と言うところだ!」

 

「でも出来なかったら申し訳ないですし」

 

「…………」

 

 国木田は黙った。

 

(正直すぎる)

 

 履歴書を見ても盛っている様子はない。

 できることは「できる」。

 分からないことは「分からない」。

 その線引きが異様に正確だった。

 

 すると、ますだがふっと笑う。

 

「でも」

 

「雇ってもらえることが決まってるのに面接するのって、なんだか面白いですねぇ」

 

 部屋が静まり返る。

 

 太宰だけが肩を震わせて笑いをこらえていた。

 

「……国木田君」

 

「この人、面白い」

 

「笑っている場合か!」

 

 国木田は深いため息をつき、静かに立ち上がった。

 

「……よし。ではまず議事録の作成からだ」

 

「えっ、やっていいんですか?」

 

「試験だ。できるかどうか確かめる」

 

「はい!」

 

「それと、着替えの用意と宿泊費は前借りという形で支給する」

 

「ありがとうございます!」

 

「ただし働いて返してもらうぞ」

 

「はい! 働きます!」

 

「……では、今日から頼む」

 

「はい!」

 

 ますだは嬉しそうに深々と頭を下げた。

 

 膝の上の白猫が「にゃ」と満足そうに一声鳴く。

 太宰は楽しそうにくすりと笑い、敦もほっとしたように微笑んだ。

 

 武装探偵社に、なんともマイペースな新しいアルバイトが加わった。

 

 

●8

 

 面接が終わり、国木田から渡された着替えに袖を通したますだは、再び応接室の扉を開けた。

 見慣れない服の匂いを確かめるように、白猫が裾へスリスリと体を寄せながらついてくる。

 

 応接机の向こうでは、国木田が書類を整えていた。

 その視線がますだの姿を捉えた瞬間──ぴたりと固まる。

 

「……着替え終わったのか」

 

 ますだはくるりと回って見せた。

 

「どうですか? なんかメイドさんみたいで可愛いですよね」

 

「違う」

 

「即答でしたね」

 

「違うものは違う」

 

「でもエプロンも付いてますし」

 

「家事をする時に都合がいいだけだ」

 

「なるほど」

 

 ますだは素直に頷く。

 

「あとサイズもぴったりで」

 

「与謝野先生が見繕った」

 

「そうだったんですね」

 

「私は反対した」

 

「え?」

 

「必要な着替えだ。それ以上でもそれ以下でもない」

 

 照れ隠しのように言い放つ国木田の横で、太宰が肩を震わせて笑っていた。

 

「国木田君、そんなに必死に否定すると余計怪しく聞こえるよ」

 

「黙れ太宰! 貴様が妙な煽り方をするからややこしくなる!」

 

 国木田は真っ赤になりながら書類を整え直した。

 

「……とにかく、その服は業務に支障がないように選ばれたものだ。私の趣味ではない」

 

「はい。ありがとうございます」

 

 ますだはぺこりと頭を下げた。

 

 国木田は軽く咳払いをして視線を書類へ戻した。

 

──

 

「さて、ますだ君。今日から武装探偵社で働いてもらう」

 

「はい!」

 

 ますだは白猫を膝に乗せて座り直した。

 

「まずは簡単な事務作業からだ。議事録の作成、書類整理、来客対応などだな」

 

「がんばります!」

 

「……その意気は良い」

 

 国木田は咳払いし、太宰をちらりと睨む。

 

「太宰。余計なことはするなよ」

 

「えぇ〜? 私はいつも真面目だよ」

 

「嘘をつくな」

 

 太宰はにこにこと笑い、白猫は「にゃ」と鳴いた。

 

 ますだはその空気を楽しむように目を細めた。

 

「なんだか、賑やかで楽しい職場ですね」

 

「楽しいだけではないぞ。仕事は仕事だ」

 

「はい!」

 

 国木田は書類をトントンと机に整え、深く息を吐いた。

 

「……よし。ではまず議事録の作成からだ。会議室へ来い」

 

「わかりました!」

 

 ますだは立ち上がり、白猫を抱き上げた。

 

 太宰はひょいと立ち上がり、肩をすくめる。

 

「国木田君、もう保護者みたいになってるよ」

 

「誰が保護者だ!」

 

 武装探偵社の日常は、今日も騒がしく、そしてどこか温かかった。




本作はハーメルンのみの限定公開作品です。

気が向いたら続きを書いてアップします。
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