旅する物語 異世界探訪 太宰治との邂逅   作:masuda028

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【文豪ストレイドッグス/太宰治】
ふらりと迷い込む別世界。

※本作は『文豪ストレイドッグス』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。

◆ヒロイン(?)は名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです。


8創稿編 15・16:襲来する四人の外敵と、献立に敗れる天才策士

●15

 

 昼下がりの武装探偵社。

 

 太宰治は窓際でコートを揺らしながら、にやりと笑った。

 

「国木田君……ふふふ……外敵が来るよ」

 

「またお前の裏工作か」

 

「ふふふ……横浜が揺れるねぇ」

 

「揺れさせるな!」

 

 国木田が怒鳴るが、太宰は楽しそうに肩をすくめた。

 

「今回は強敵が四人も来るんだよ」

 

「四人だと!?」

 

「探偵社の総力戦だねぇ」

 

「ふざけるな!」

 

 その頃──ますだは商店街で買い物袋を提げて歩いていた。

 

「今日は煮物にしようかなぁ」

 

「にゃ」

 

 

◆第一の外敵

 

 港に立つ黒コートの男。

 瞳は深い哲学を宿し、街を見下ろして呟く。

 

「太宰治……人間の苦悩を語る者よ。決着をつけに来た」

 

 その前を、ますだが通りかかった。

 

「あっ、どうも。またお会いしましたね」

 

「…………」

 

「煮物食べます?」

 

「……煮物?」

 

「はい。猫も好きな香りで」

 

「猫……」

 

 男は座敷で煮物を食べながら言った。

 

「人間とは、苦悩と選択の連続だ……」

 

「そうなんですねぇ。私も今日、大根を乱切りにするか面取りするかで悩みました」

 

「……料理の工程で私の哲学に並ぶな」

 

「え?」

 

「……いや、なんだその自由さは。戦う意欲が削がれる……帰る」

 

「はい、お気をつけて」

 

 

◆第二の外敵

 

 次に来たのは、合理主義の男だった。

 

「太宰治を倒すための最適戦略を構築してきた」

 

「あ、まずご飯食べません? お腹空いてると血糖値下がって判断力落ちますよ」

 

「…………実に合理的だな」

 

「ですよねぇ」

 

 大皿の煮物を綺麗に平らげた男は、満足そうに息を吐いた。

 

「満腹状態での戦闘は消化に悪く、極めて非効率だ。今日の作戦は延期する。帰る──ごちそうさまでした」

 

「はい。おそまつさまでした」

 

 

◆第三の外敵

 

 三番目に来たのは、静かで不気味な男だった。

 

「……私は、異能の構造を破壊しに来た」

 

「あ、出汁がよく染みた煮物食べます?」

 

「……煮物?」

 

「はい。大根に味が染み染みで美味しいですよ」

 

 男は差し出された小鉢を見つめたまま、じっと動かない。

 

「…………」

 

「どうしました?」

 

「……味が染みすぎている。毒気を抜かれた。……帰る」

 

「あ、お出汁効いてますもんね」

 

 

◆第四の外敵

 

 そして最後の外敵は、太宰が裏で呼び込んだという噂の強敵だった。

 

「太宰治を討ちに来た」

 

「煮物余ってますけど、食べます?」

 

「……2分で食う」

 

 本当に2分で完食した男は、満足そうに立ち上がった。

 

「……美味かった。帰る」

 

「はい、おそまつさまでした」

 

 

◆武装探偵社

 

「国木田君」

 

「なんだ」

 

「外敵、四人とも帰ったよ」

 

「は?」

 

「ますだ屋で飯食って帰った」

 

「…………」

 

「事件、終わったねぇ」

 

「終わってないだろ!」

 

「終わったよ」

 

「終わってない!」

 

「終わったんだよ国木田君」

 

「終わってないと言っている!」

 

 太宰は机に突っ伏した。

 

「なんで……なんで誰も戦わずに帰るの……?」

 

「煮物が美味しかったんじゃないですかねぇ」

 

「にゃ」

 

 白猫が机の上で丸くなる。

 

 国木田は頭を抱えた。

 

「……探偵社には、とんでもない人材が入ったな」

 

 太宰は天井を見上げて呟いた。

 

「ますださん……君は事件を“食事で終わらせる異能者”なのかもしれないねぇ」

 

「え? 煮物作っただけですよ?」

 

 

●16

 

 外敵四名がますだ屋で煮物を食べて帰っていった翌日。

 武装探偵社の応接室は妙な静けさに包まれていた。

 

 国木田は手帳を閉じ、深く息を吐く。

 

「……太宰。昨日の件だが」

 

「昨日の件ねぇ」

 

 太宰はソファに寝転び、天井を見つめたまま指先を組んだ。

 

「四人だよ、国木田君」

 

「四人だな」

 

「外敵が四人だよ?」

 

「知っている」

 

「全員、ますだ屋でますださんと飯食って帰ったんだよ!?」

 

「知っていると言っている!」

 

 太宰はゆっくりと起き上がり、ますだの方へ視線を向けた。

 

 ますだは白猫を膝に乗せ、書類をまとめている。

 

「ますださん」

 

「はい?」

 

 太宰は目を細めた。

 

「君、何を企んでいるんだい?」

 

 ますだは首を傾げた。

 

「えぇ?」

 

「えぇ? じゃないよ」

 

「外敵が四人も来て、君と話して、君の料理食べて、帰ったんだよ?」

 

「そうですねぇ」

 

「普通じゃないよ?」

 

「そうですか?」

 

「そうだよ」

 

 太宰は身を乗り出す。

 

「ますださん。君は何を企んでいるんだい?」

 

 ますだは少し考えたあと、ぽんと手を打った。

 

「そうですねー」

 

「明日の献立は何にしようかなーと」

 

「…………」

 

「太宰さんは何がいいですか?」

 

「…………」

 

「そろそろ焼き魚とかにしましょうか。秋刀魚も脂がのってて美味しそうですし」

 

「…………」

 

 太宰は完全に沈黙した。

 

 国木田は額を押さえる。

 

「太宰。質問の答えを貰えていないぞ」

 

「国木田君」

 

「なんだ」

 

「僕は今、とても大事なことに気づいた」

 

「なんだ」

 

 太宰はますだを指差した。

 

「この人、事件を料理で終わらせる異能者だよ」

 

「違いますよ?」

 

 ますだは困ったように笑った。

 

「ただご飯作ってるだけです」

 

「にゃ」

 

 白猫が満足そうに尻尾を揺らす。

 

 国木田は深いため息をついた。

 

「……太宰。お前の計画は全部無効化されたんだ」

 

「国木田君」

 

「なんだ」

 

「僕はもう……この人に勝てる気がしない」

 

「勝とうとするな!」




本作はハーメルンのみの限定公開作品です。

気が向いたら続きを書いてアップします。
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