オレたちの説明が終わったその瞬間だった。
席へ戻ろうとした時。
森下が立ち上がった。
「質問があります」
担当教師が、今度は質疑応答の時間であることを確認する。
「どうぞ」
「きよぽんは、何もしないで一緒にいるとのことですが」
森下は真剣だった。
「何時間まで可能でしょうか」
長谷部が答えに詰まる。
「何時間?」
「一時間。三時間。二十四時間。どこまで隣にいてくれますか」
「きよぽん本人の都合によるよ」
「では本人に聞きます」
森下がオレを見る。
「何時間まで可能ですか」
「状況による」
「一晩は?」
「なぜ一晩一緒にいる必要がある」
「検証です」
「しない」
「残念です」
森下は座った。
次に一之瀬が手を挙げる。
「きよぽんは、ほなわんと友達になってくれますか?」
「もちろん!」
長谷部が答える。
「きよぽんは?」
一之瀬はオレを見る。
「カードは受け取った」
「それは、友達ってことでいい?」
周囲の視線が集まる。
「キャラクター同士なら、構わない」
一之瀬の顔が明るくなる。
「ありがとう!」
ほなわんの友達第一号。
正確には、他クラスのキャラクターとして最初の友達。
それがきよぽんになった。
龍園が手を挙げる。
「りゅうまるが、きよぽんのヨーグルトを食ったらどうする」
「何で食べるのよ」
伊吹が言う。
「ドラゴンは腹が減る」
「スープが好きな設定です」
ひよりが訂正する。
「ヨーグルトも食うかもしれねぇ」
長谷部は少し考える。
「きよぽんは、たぶん怒らない」
「怒らないのか?」
「予備を持ってるから」
「二個持つと第二形態です」
森下が補足した。
「森下さん、詳しくなりすぎ」
長谷部が警戒する。
「学習しました」
「でも一個は渡さない」
「きよぽんは渡すだろ」
龍園が言う。
「自分の分を食われても、何も言わなさそうだ」
オレは少し考える。
「勝手に食べられたなら、注意する」
「本人は怒るって」
龍園が笑う。
「きよぽんと違うじゃねぇか」
「だからオレはきよぽんではない」
「今更それ言うの?」
伊吹が呆れる。
坂柳が手を挙げた。
「ほりぽんときよぽん。二体のうち、正式な代表を選ぶ基準は何でしょう」
堀北が答える。
「クラス内投票よ」
「投票日は?」
「三日後を予定しているわ」
坂柳は楽しそうに微笑む。
「では、今日の発表が大きく影響しそうですね」
その通りだった。
ほりぽんの努力と成長。
きよぽんの静かな寄り添い。
二体とも、発表前より明確な存在になった。
どちらが勝つか、簡単には予測できない。
「龍園くんのクラスも同じでしょう」
堀北が言う。
「りゅうまるとぶっくまる。どちらを選ぶの?」
「明日決める」
龍園が答える。
「随分早いわね」
「着ぐるみ作る時間が足りねぇ。いつまでも二体に金と人を使う気はねぇよ」
合理的だった。
だが、選ばれなかった方に関わってきた生徒の気持ちもある。
ひよりはぶっくまるのぬいぐるみを抱えたまま、りゅうまるのパネルを見ていた。
どちらを選んでも、片方は正式な代表ではなくなる。
合同説明会は、その現実を各クラスへ突きつける場でもあった。
◯
全クラスの発表と質疑応答が終了し、最後に自由交流の時間が設けられた。
生徒たちは席を離れ、他クラスの展示台へ集まっていく。
最も人が集まったのは、ぶっくまる。
次にきよぽん。
ほなわんはお友達カードを配りながら、自ら各展示台を回っている。
ありすぽーんの周囲では、森下の転倒動画が再生されていた。
りゅうまるには、目付きの悪い外見を気に入った男子生徒が集まっている。
ほりぽんの栞も、真面目な生徒を中心に好評だった。
「ほりぽんの栞、一枚もらっていい?」
一之瀬が堀北へ尋ねる。
「ええ。代わりに、ほなわんのお友達カードをいただけるかしら」
「もちろん!」
堀北と一之瀬がグッズを交換する。
競争相手でありながら、互いの良さを認める。
その様子を龍園が少し離れた場所から見ている。
「龍園さん、りゅうまるにも友達カード来ましたよ」
石崎がカードを持ってくる。
「いらねぇ」
「でも名前まで書いてあります」
カードの裏。
『りゅうまる』
その下へ小さく、『ほなわんのおともだち』。
「捨てるんすか?」
石崎が尋ねる。
龍園はカードを見る。
数秒。
「展示台に置いとけ」
「友達になるんすね」
「宣伝に使うだけだ」
素直ではない。
ひよりはぶっくまるのカードを、ぬいぐるみの小さな鞄へ入れていた。
「ぶっくまるに最初のお友達ができました」
「俺たちがいるだろ」
龍園が言う。
「龍園くんも、ぶっくまるのお友達ですか?」
ひよりが尋ねる。
龍園は止まった。
伊吹が面白そうに見る。
石崎も答えを待っている。
「俺は制作者側だ」
「友達ではないのですか」
「そういう設定なら、友達でいい」
「では最初のお友達は龍園くんですね」
ひよりは嬉しそうに言った。
龍園は何も答えなかった。
だが否定もしなかった。
坂柳クラスの展示台では、山村がありすぽーんの小さな説明カードを配っていた。
最初は人前に出ることを嫌がっていたが、
白石が隣にいることで、何とか役割をこなしている。
「ど、どうぞ……」
佐倉へカードを差し出す。
「ありがとう。ありすぽーん、可愛いね」
「ほ、本当ですか……?」
「うん。王冠がずれてるところが可愛い」
山村は少しだけ笑った。
「私も、そこが好きです……」
「山村さんもデザインしたの?」
「少しだけです。王冠で目が隠れる角度を……」
「細かいところまで考えてるんだね」
佐倉と山村。
二人とも人前で積極的に話すタイプではない。
だが絵やデザインの話なら、少しずつ会話が続く。
白石が穏やかに見守っていた。
「山村さんがお友達を増やしていますね」
「カードを渡しているだけです……」
山村が小さく否定する。
「それでも、最初の一歩ですよ」
白石の言葉に、ありすぽーんの設定が重なる。
一度に一歩。
小さくても前へ進む。
山村自身が、ありすぽーんに近いのかもしれない。
一方。
きよぽんの展示台では。
長谷部と森下が、再び対立していた。
「このステッカー、一枚いただけますか」
森下が尋ねる。
「何に使うの?」
長谷部が警戒する。
「観察記録へ貼ります」
「一枚だけだよ」
「五枚欲しいです」
「多い!」
「保存用、使用用、布教用、予備、非常用です」
「非常用って何?」
「きよぽん成分が不足した時に使います」
「そんな成分ないよ!」
「では四枚で」
「減らせばいいって話じゃない」
森下は真剣だ。
長谷部も、きよぽんの支持者が増えること自体は嬉しいはずだ。
だが自分以上に詳しくなろうとする森下を、
強力な競争相手として認識し始めていた。
「一枚」
「三枚」
「一枚」
「二枚」
「一枚」
「では、一枚と半分」
「切る気?」
「共有できます」
「駄目!」
森下と長谷部の交渉は、きよぽんステッカー一枚を巡って続いた。
「清隆」
三宅が隣へ来る。
「止めなくていいのか?」
「オレが入れば、さらに複雑になる」
「それはそうだな」
幸村も展示台の反応を記録している。
「興味深い」
「何がだ」
「ほりぽんは好意的な評価が安定している。
きよぽんは熱量の高い支持者を生んでいる」
「熱量が高すぎる気もする」
森下はようやくステッカー一枚を受け取り、丁寧に透明なケースへしまっている。
長谷部は渡した後も警戒を解いていない。
「投票では、どちらが有利だと思う」
オレが尋ねる。
幸村は展示台の周囲を見る。
「クラス内投票なら、きよぽんがわずかに有利だろう」
「理由は?」
「話題性だけじゃない。今日の発表で、
綾小路グループが制作へ深く関与していることが示された。
波瑠加だけの案ではなくなった」
オレ。
長谷部。
三宅。
幸村。
佐倉。
さらに軽井沢たちも宣伝へ関わっている。
多くの生徒が、何らかの形できよぽんへ参加し始めている。
「だが、ほりぽんにも強みがある」
幸村が続ける。
「堀北の案は、クラスの成長を説明しやすい。
専門審査への適性なら明らかに上だ。
投票する生徒が、目先の人気と最終的な得点のどちらを重視するかで変わる」
「どちらを選んでも、間違いとは言えないな」
「ああ」
三宅が腕を組む。
「俺、今日の発表見たら余計迷ってきたぞ」
「みやっちはきよぽんでしょ」
長谷部が交渉を終えて戻ってきた。
「何で決めつけるんだよ」
「一緒に丸を作った仲間だから」
「ほりぽんに入れたら裏切り者扱いか?」
「少しだけ」
「怖いな、お前」
佐倉も戻ってくる。
手には、ありすぽーんの説明カードと、ぶっくまるの小さな栞。
「他のクラスも、みんなすごかったね」
「うん」
長谷部は素直に頷く。
「ぶっくまる、やっぱり強い」
「きよぽんが正式代表になったら、勝てると思う?」
三宅が尋ねる。
長谷部は少し考えた。
普段なら即答すると思っていた。
だが他クラスの発表を見た後では、簡単に勝てると言えないらしい。
「分からない」
長谷部は答えた。
「でも勝たせたい」
自信ではなく、願いだった。
最初は冗談。
オレをゆるキャラにして面白がっていた。
だが今では、本当にきよぽんを良いキャラクターにしようとしている。
「ほりぽんも強いよ」
佐倉が言う。
「うん」
長谷部も認める。
「だから、ちゃんと勝負しないとね」
長谷部の視線の先。
堀北がほりぽんの栞を配りながら、他クラスの生徒から感想を聞いている。
ふざけてはいない。
意地だけでもない。
堀北も本気で、ほりぽんを代表にしたいと考えている。
ほりぽん。
きよぽん。
どちらも、すでに紙の上の落書きではない。
作った者の思い。
手伝った者の技術。
クラスが歩んできた時間。
それらを少しずつ受け取り、一つの存在として育っていた。
◯
合同説明会終了後。
堀北クラスの生徒たちは、そのまま教室へ戻った。
本来ならば解散してもよかった。
だが堀北が、今日の反応を共有するため、短い会議を提案した。
短い。
少なくとも、始まる前はそう言っていた。
実際には一時間近く続いた。
黒板には、他クラスのキャラクター名が並ぶ。
ほなわん。
ありすぽーん。
りゅうまる。
ぶっくまる。
その下へ、それぞれの強みが書き出されている。
ほなわん。
親しみやすさ。
参加型のお友達カード。
一之瀬の知名度。
ありすぽーん。
物語性。
努力の象徴。
転倒による笑い。
ぶっくまる。
高いデザイン性。
分かりやすいテーマ。
幅広い年齢層への訴求力。
りゅうまる。
男子人気。
龍園クラスらしさ。
見た目の個性。
「ぶっくまるが最大の脅威ね」
堀北が言う。
「現在の閲覧数一位。今日の発表後も、好意的な反応が増えているわ」
「でも正式代表になるか分からないよ」
軽井沢が答える。
「龍園くんがりゅうまるを押してるから」
「人気だけで考えれば、ぶっくまるを選ぶべきでしょう」
松下が分析する。
「でも龍園くんは、クラスらしさを重視してるんだと思う」
平田が言う。
「ぶっくまるは、椎名さんらしさが強いからね」
「だったら、うちも同じじゃない?」
池が口を挟む。
「ほりぽんは堀北で、きよぽんは綾小路だろ」
「ほりぽんは私個人ではなく、クラスの成長を表しているわ」
堀北が反論する。
「名前は鈴音だけどな」
須藤が言う。
「名前だけよ」
「きよぽんも名前だけじゃん」
長谷部が答える。
教室の視線がオレへ集まる。
「ほとんど綾小路だろ」
池が言う。
「ヨーグルト好き」
須藤。
「無表情」
軽井沢。
「いつの間にか問題を解決する」
平田。
「人混みが苦手」
佐藤。
「話すのが得意ではない」
佐倉が小さく付け加える。
「本人監修」
幸村。
「運搬は俺」
三宅。
最後は特徴ではなかった。
「オレの要素が強すぎるのは認める」
「やっと認めた!」
長谷部が喜ぶ。
「キャラクターの独立性が低いという意味だ」
「認め方が違う」
「今後、オレを知らない一般来場者にも魅力が伝わる形へ修正する必要がある」
教室が静かになった。
「清隆くん」
佐倉が言う。
「手伝ってくれるの?」
「代表になった場合の話だ」
「でも、きよぽんを良くすることは考えてくれるんだね」
完全に無関係ではいられなくなった。
自分をモデルにしたキャラクターが、
間違った形で広がるよりは、最低限の修正へ関わった方がいい。
それに。
今日の発表で見たきよぽんは、長谷部一人の冗談ではなかった。
三宅。
幸村。
佐倉。
クラスメイトたち。
多くの人間が関わって作ったものだった。
それをオレ個人の都合だけで否定することも、少し違うように思えた。
「投票について確認するわ」
堀北が会議を進める。
「三日後の放課後。無記名で実施します。
投票前に、ほりぽんときよぽんの最終プレゼンを一度ずつ行います」
「今日やったばかりだよ?」
長谷部が言う。
「他クラス向けと、クラス内向けでは内容が変わるでしょう」
「じゃあ、今日の反応を見て改良していいんだね」
「もちろんよ」
堀北は長谷部を見る。
二人の表情に、敵意はない。
だが強い対抗心があった。
「ほりぽんは、きよぽんに負けないわ」
「きよぽんだって、ほりぽんに負けないよ」
「教育的価値なら、こちらが上よ」
「人気ならきよぽん!」
「人気だけでは勝てない」
「人気がなきゃ、ゆるキャラじゃない!」
「何をもってゆるキャラと定義しているの?」
「ゆるいこと!」
「説明になっていないわ」
二人の議論が始まる。
以前なら、長谷部と堀北がここまで正面から対立することは少なかった。
だが今回の争いは、クラスを分裂させるものではない。
互いのキャラクターをより良くするための競争になっている。
「分かった」
長谷部が言う。
「最終プレゼンまでに、きよぽんを完成させる」
「着ぐるみを?」
三宅が驚く。
「全部は無理でも、胴体まで作る」
「三日しかないぞ」
「みやっちがいる」
「俺を頼りにするな」
「ゆきむーも」
「構造の確認はする」
「愛里は表情」
「う、うん。頑張る」
「きよぽんは中身」
「やらない」
「即答しないで」
「三日後のプレゼンでは、頭部だけでも十分だろう」
「胴体ができたら?」
「他の生徒が入ればいい」
「誰?」
全員が三宅を見る。
「何で俺なんだよ!」
「体格」
「清隆と近い」
「歩き方を練習すれば」
「本人の魂は?」
「森下みたいなこと言うな!」
三宅の抵抗が始まった。
その横で、幸村はすでに制作スケジュールを書いている。
佐倉はきよぽんの新しい表情差分を考え始めている。
長谷部はグッズと宣伝方法。
軽井沢や佐藤も、短い動画を作る案を出した。
きよぽん制作班は、さらに大きくなっていく。
堀北も負けてはいない。
ほりぽんの着ぐるみ制作班。
栞以外のグッズ。
勉強応援動画。
苦手科目から逃げるほりぽんの短い物語。
松下や平田を中心に、こちらも具体的な準備へ入っていく。
教室が二つの陣営に分かれていく。
だが敵ではない。
どちらが、よりクラスを象徴するキャラクターなのか。
どちらが、学園祭で人々に愛されるのか。
ほりぽんときよぽん。
正式代表の座を巡る戦いが、本格的に始まった。
「綾小路くん」
堀北に呼ばれる。
「何だ」
「一つ確認しておくわ」
堀北は真剣な表情だった。
「あなたがどちらに投票するかは自由よ」
「分かっている」
「ただし、きよぽんへ投票する場合でも、
自分がモデルだからという理由だけで選ばないで」
「そんな理由で選ぶことはない」
「ほりぽんへ投票する場合も、着ぐるみに入りたくないという理由だけで選ばないこと」
「分かっている」
堀北は頷く。
「私も、ほりぽんの制作者だからという理由だけでは選ばないわ」
「ほりぽん以外へ入れる可能性があるのか?」
堀北はすぐには答えなかった。
「きよぽんが、ほりぽんよりクラスの勝利に相応しいと判断したなら」
「きよぽんへ投票する?」
「ええ」
長谷部が会話を聞き、目を見開いた。
「本当に?」
「その代わり、あなたも同じよ」
堀北は長谷部を見る。
「ほりぽんの方が相応しいと思ったなら、意地を張らずに選びなさい」
長谷部はきよぽんの絵を見る。
少し迷う。
そして頷いた。
「分かった」
二人とも、本気だった。
勝つために。
クラスのために。
そして、自分たちが生み出したキャラクターのために。
感情だけではなく、最後まで公平に選ぼうとしている。
だからこそ。
三日後の投票が、簡単な結果になるとは思えなかった。
放課後の教室。
黒板の左には、ほりぽん。
右には、きよぽん。
二体のイラストが並んでいる。
白いフクロウは、大きな翼を広げている。
丸い謎の生き物は、ヨーグルトを抱えて眠そうに立っている。
外見も。
性格も。
役割も。
何一つ似ていない。
唯一似ているのは、名前の最後に『ぽん』が付いていることだけ。
それでも両者は、同じクラスから生まれた。
ほりぽんは、努力して前へ進もうとするクラスの姿。
きよぽんは、輪の外にいる者も見捨てず、静かに隣へ立つクラスの姿。
どちらも間違っていない。
どちらも、オレたちの一部だった。
長谷部が黒板の前へ立つ。
きよぽんの絵へ手を向ける。
「三日後、絶対勝とうね」
「キャラクターに話しかけているのか」
オレが尋ねる。
「きよぽんに」
「返事はないだろう」
「あるよ」
「何と?」
長谷部は少し考えた後、こちらを見た。
「違う。きよぽんが勝手に」
教室から笑いが起こる。
堀北は呆れたように目を閉じた。
三宅が肩をすくめる。
幸村は制作予定を書き続けている。
佐倉はきよぽんの新しい表情を描き、
平田はほりぽん班の役割を整理している。
須藤は着ぐるみから逃げる方法を池と相談していた。
軽井沢たちは宣伝動画の構成を考えている。
そしてオレは。
笑い声の中心に置かれた、きよぽんの絵を見た。
数日前まで。
存在しなかった。
長谷部の冗談から生まれた、丸い落書き。
それが今では。
名前を持ち。
顔を持ち。
性格を持ち。
友達を持ち。
他クラスにも知られ。
本気で応援する者まで生まれている。
ゆるキャラ選手権。
意味不明な試験だと思っていた。
今も、意味不明だという考えは変わらない。
だが。
意味は最初から用意されているものではないのかもしれない。
多くの人間が関わり。
考え。
笑い。
手を動かす。
その積み重ねによって。
何もなかったものへ、少しずつ意味が与えられていく。
ほりぽんも。
きよぽんも。
そして他のクラスのキャラクターたちも。
まだ完成してはいない。
学園祭の舞台へ立てる形でもない。
それでも。
この日を境に。
彼らは単なる試験の提出物ではなくなった。
各クラスの生徒たちが、自分たちの手で育てる仲間になり始めていた。
そして三日後。
堀北クラスでは。
白いフクロウと、ヨーグルトを被った謎の生き物。
どちらか一方を選ぶための。
高度育成高等学校史上、最も平和で。
最も真剣で。
そして恐らく最も馬鹿馬鹿しい投票が。
行われようとしていた。