根尾中学校に転校生とやって来た少女・風馬マイ。
彼女のベイ「サイクロンペガサス」は、その圧倒的なスピードで、ソウタ達を凌駕した。
彼女の言う「無駄を削ぎ落とす」と言う言葉に対し、「正確さだけでは出来ない戦い方を見せる」と宣戦布告をした。
リベンジとともに、マイの真意を探り出せ__(ナレーション)
――根尾中学校(翌日・昼休みの部室)――
「うーん……。サイクロンペガサスのあの速さ、必ず何かがあるはずだ」
「確か……3つの刃のところに穴が空いていたような……」
ソウタは僅かな記憶を頼りに、サイクロンペガサスの速さについて考察する。
更には、それをノートに書き殴っていた。
「あぁー……。なんだか疲れてきた……」
「あまり考え込んでも埒が明かない。少し校内を散策するか……」
背筋を伸ばした後、部室のドアを開ける。
「何だろうな……このモヤモヤ感」
独り言を呟きながら歩いているその時__。
「痛っ……!」
「おやおや、大丈夫ですか?」
誰かとぶつかるも、逆に向こうから心配する声がかかる。
「はい、大丈夫です……あっ……!」
顔を見上げた途端、ソウタは驚く声を上げた。
「校長先生……!」
「おやおや、蒼龍ソウタ君でしたか……」
ぶつかった相手は根尾中学校校長の根尾新太だった。
「す、すみません……」
「いえいえ、気をつけてくれれば良いんです。それに 、ベイブレードカップでの活躍、素晴らしかったですよ」
許してくれた上に、ソウタの活躍を称賛した。
「ありがとうございます」
「ところで、何かありましたか? 何やら疲れている顔をしていますよ」
「……! ……実は、今の俺達を遥かに超える強いブレーダーが現れて。風馬マイというのですが……」
「ほぉ……。あなた達を超える強いブレーダーですか、それは興味深い。どんなベイを使っていたか教えていただけますかな?」
「サイクロンペガサスというベイです。少なくとも、俺達はそのベイを今まで見たことがありませんでした」
校長と会話を繰り広げている中……。
「ソウタ?」
複数の声がソウタを呼ぶ。
「!」
「バン、ヒカル、ツバサ!」
声の主はベイブレード部のメンバーだった。
「こんな所で何をしてるんだ?」
「それに、校長先生も……」
「えーと実は……」
バン達に一連の流れを話す。
「なるほど、マイとペガサスについて話していたということか……」
「つまり、最終的にどうやってそれを攻略するかという話か?」
「そうなんだよ……。けど、中々いい方法が思いつかなくて。せめて、話でも聞いてきもらおうかなぁって……」
首に手を当て、傾げる。
そんな中、根尾校長が口を開く。
「それでは、こんな方法はいかがでしょう。とっておきの案があります。ついてきてください」
「とっておきの……案?」
指を立て、「とっておきの案」というものを伝える。
数分後……。
「こちらです」
「これは……?」
ソウタ達の目の前には、真っ白で大きい扉が映っていた。
校長はすぐに鍵を取り出し、解錠する。
ソウタ達は驚いている暇も無かった。
「これは……?」
扉を開けると中には椅子が設置されていて、プラグがぶら下がっている。
その横には黒い液晶画面の機械が置かれていた。
「これは、頭の中で思い浮かべているベイを、プラグを通じて出力する機械。通称『ツクール君』です」
「ツ……ツクール君……」
扉の中の機械について得意げに説明する。
それに対し、ソウタは若干戸惑う。
「……本当に、使っていいのでしょうか? なんと言いますか、この機械で結構高かったり……」
説明された性能もあり、使用を躊躇いそうになるが……。
「どうぞどうぞ、お使いください。あなた達を応援してきた者として、協力をしたいのです」
「……! ありがとうございます!」
校長の言葉に嘘偽りは無かった。
温厚な笑みが信頼というものに拍車をかけていた。
ソウタもそれに気づいたのか、感謝の言葉を述べる。
「準備が出来たら、いつでもお声がけください」
「はい」
(待ってろよ、マイ……。すぐに追いついてやるからな……!)
「お願いします」
「それでは始めますよ」
心の中でリベンジの決意を固め、椅子に座り、頭にプラグをつける。
(確か、ペガサスには3つの刃があって、その内側には穴が空いていた……)
(それを基に出力するんだ……!)
記憶を頼りに出力の準備をし、暫くして……。
『出力完了。ベイを取り出してください』
機械から出力完了を知らされる。
丁寧にプラグを外し、ベイを取り出す。
「すげぇ……! 本当にベイが出来ちまった……!」
「細かいところまで、再現されてる……!」
出力されたペガサスを手に取る。
ソウタの頭には驚きと感心が同居していた。
「校長先生、ありがとうございました!」
校長に礼を言い、その場を後にする。
「また何かありましたら、いつでも頼ってくださいね」
__根尾中ベイブレード部部室__
放課後、いつも通りの部室に集まる。
「このペガサスを使って、あのスピードの秘密を暴いて見せるぜ!」
ソウタの決意は固かった。
その証拠に青い瞳の輝きがあった。
「バン、相手を頼めるか? ツバサ、審判を頼むぜ」
「ああ」
「分かった」
「Ready……Set!」
3・2・1 ゴーシュート!
「……! は、速い……!」
スタジアムに放たれたペガサス。
機械で出力されたとは言え、その速さは本物にも劣らなかった。
全員がスタジアムを目を向けたその時。
ケルベロスが大きく弾かれ、そのままスピンフィニッシュ。
「サイクロンペガサス、スピンフィニッシュ! ソウタの勝ちだ」
「驚いたな。スピードまでもがここまで再現されてるなんてな」
バンも、スピードまでもが再現されていたことに感心していた。
そんな中、ソウタは沈黙する。
「……」
「どうかしたのか? ソウタ」
「いや、さっきから気になってはいたんだけどさ。ここ…」
ヒカルの質問に対し、ソウタはペガサスの3枚刃の内側を指差す。
「穴……? それがどうかしたのか?」
「もしかして……ペガサスの速さは、この穴に秘密があるんじゃないかって」
「なるほど……。ソウタ、俺が相手になる。お前のドラグニルとペガサス、どっちがフィニッシュまでの時間が速いか比べてみないか?」
「……! おぉ、それは良いな! 是非とも頼むぜ!」
ヒカルの提案を快諾し、早速、ランチャーを握る。
「Ready……Set!」
3・2・1 ゴーシュート!
ヒカルが相手になり、先にドラグニルで検証をする。
連続した刃でユニコーンに攻撃を叩き込む。
「サンライトスティンガー!!」
「セイバードラグニル、バーストフィニッシュ」
フィニッシュした瞬間、ストップウォッチを止める。
「時間は?」
「42秒だ」
「まずまずと言ったところか……」
「じゃあ、次は……」
続けて、ペガサスをシュートする。
どこか心地の良い音を立てながら、大地を駆け抜けるように、スタジアムを旋回する。
それに魅入っている中、派手にパーツが弾ける音がした。
「サイクロンペガサス、バーストフィニッシュ」
またしてもバーストフィニッシュ。
「どのぐらいだ?」
「……! さ……38秒……!」
ストップウォッチを持っている手を震わせる。
「マジかよ……! ドラグニルより速いなんて、やっぱり、ブレードの構造が関係していたのか!?」
(アタックタイプは、高い攻撃力を持つ代わりに空気抵抗を受けやすい……。ペガサスはブレード内側に穴が空いていることで、それを減らしているということだろうか? もしそうだとすれば……)
「……それもそうだが、俺の意見を述べさせてもいいだろうか?」
ヒカルは心の中であることを考えつく。
「お……おう」
「ソウタ。お前はさっき、ペガサスはブレード内の穴がスピードと関係していると言っていたな」
「ああ」
「その可能性は大いにある。恐らくだが、空気抵抗というのをその穴で減らしていると考えられる。通常、アタックタイプは高い攻撃力と同時に空気抵抗を受けやすいため、スタミナは少ない」
「だが、サイクロンペガサスの場合は空気抵抗減少に特化したブレードになっている」
心の中で立てた考察を基に話し始めた。
「……ということは?」
「つまり、こちらも空気抵抗を減らすことが出来れば勝ち筋は見えるはずだ」
「なるほどな! そうとなればさっそ__」
ソウタは突然、腕を押さえだした。
「!」
「大丈夫か、ソウタ」
「ああ、大丈夫。大丈夫。ちょっと強くシュートし過ぎたのかもな……」
少し無理をし過ぎたとすぐに理解した。
「ん? シュート? ……ああ、そうか!」
それと同時にあることに気づく。
「?」
――根尾中学校・教室(翌日)――
チャイムが鳴り、教室は再び昼休みに入る。
「マイ!」
「ソウタさん?」
ソウタはマイを呼び出す。
腕の痛みは取れたらしい。
「再戦の準備が出来た」
「やろうぜ」
そう言って、ドラグニルを取り出す。
「……分かりました。あなたがペガサスをどう攻略するのか見させてもらいます」
3・2・1 ゴーシュート!
「先制攻撃だ、ドラグニル!」
「!!」
(速い……! ペガサスが追いつかれる……!)
あの日とは打って変わって、ドラグニルがペガサスを追いかける。
それもかなりのスピードで。
その直後、金属がぶつかり合う音がした。
「よし!」
ペガサスを捉え、遂に攻撃が届いた。
「ペガサスに攻撃が……!?」
「ソウタさん、先程のスピードと言い、何を……?」
マイの表情は驚嘆一色だった。
それに対し……。
「シュートさ」
「お前の強さは『無駄を削ぎ落としたこと』って言ってたよな? その『無駄』の正体は『空気抵抗』だ!」
「……ッ!」
堂々とした言い切りに、図星の表情を見せる。
「お前のペガサスは、ブレードの内側に穴が空いていることでそれを減らしていた。正直、俺も分かったところでどうやればいいか分からなかった」
「だが、その後の練習で俺に出来ることが掴めたんだ」
ソウタはこれまでの経緯をマイに話す。
「それが、シュートによる空気抵抗の減少ということさ!」
「……!」
(ペガサスの特徴を一瞬で掴むとは……。……完敗です)
「これでトドメだッ!!」
最後の一撃を叩き込み、ペガサスをバーストして勝利。
見事、リベンジ達成となった。
「よっしゃーーッ!!」
リベンジに喜ぶソウタに、マイが近づく。
「あなたの観察眼には一本取られました。確かにその強さ、見させていただきました」
「そう言うマイも強かったぜ。またやろうな!」
(ソウタさん。そして、ベイブレード部の皆さん。あなた達なら、あの子を『救える』かもしれません……)
マイは心の奥底で、意味深長な思いを抱える。
マイとのリベンジを達成したソウタ。
しかし、戦いはまだこれで終わりではなかった。
これから、彼女が自分達と関わっていくこと、新たな強敵が待ち構えているということに__。(ナレーション)
__イメージCAST__
蒼龍ソウタ-小林千晃
門守バン-梶裕貴
一角ヒカル-小野賢章
焔ツバサ-榎木淳弥
根尾新太-宮澤正
風馬マイ-水瀬いのり
ナレーション-森川智之