ベイブレードNEO Season2   作:マツザキ蓮

20 / 20
ベイブレードNEO 第42話 絆

 

聖永杯3戦目、一角ヒカルVS藤川イリア。

 

互いのプライドをかけた戦いは引き分けという結果となった。

 

そして、遂に迎えた4戦目。

 

最後の戦いが幕を開ける。(ナレーション)

 

「遂に迎えました聖永杯・四戦目です! 残るは聖永学園からは天道シオン選手、根尾中学校からは蒼龍ソウタ選手、風馬マイ選手です!」 

 

「ん? あれ、蒼龍ソウタ選手は……?」

 

実況の古面が、ソウタがいないことに気づいた。

 

「実況者さん。申し訳ありませんが、彼にはある仕事をさせてもらっています。それは直に分かるので、このまま進行してください」

 

「……! わ、分かりました」

「それでは蒼龍ソウタ選手がこの場を離れていることが判明いたしましたので、この試合は自動的に風馬マイ選手VS天道シオン選手となります!」

 

それに対し、ヒカルの説明から何かを察知したのかすぐさま了承のサインを出す。

 

自動的にマイVSシオンの勝負となった。

 

「……」

 

「マイ、君の不安はよく分かる。だが、ソウタなら……彼ならやってくれるさ。行く前に深呼吸《リラックス》をしていくといい」

 

不安がる彼女に対し、ツバサがフォローを入れてリラックスするよう促す。

 

目を閉じ、静かに深呼吸した後、前に踏み出していく。

 

「はい……! 行ってきます」

 

遂に相対した嘗ての友。

 

たった一人の邪悪により、その身を蝕まれた姿に悲痛な思いが込み上げる。

 

「マイ、なぜ裏切ったの……。私が『新時代』を創ればベイを幸福に出来るはずなのに……。私を置いていくの……?」

 

威圧的な話し方は変わらずだが、どこか悲しげだった。

 

「違うよ、シオン! あなたから笑顔が奪われたからそれを取り返したいの! 今までのように笑い合える、そんな日常こそがあなたとの本当の望みなの!」

 

マイは涙を流しながら彼女を説得するが……。

 

「……ッ! なんで、分かってくれない……の……。そこまで言うなら、ワルキューレであなたのベイを破壊する……!」

 

シオンは涙混じりの怒りをマイにぶつけ、宣戦布告する。

 

「友としてあなたを取り戻してみせる……!」

 

対するマイは、シオンの救出を宣言。

 

最後の戦いの火蓋が切って落とされた。

 

――会場内――

 

「『紫琉石』のパワー全開です」

 

会場内に隠れていた神世征二狼は、そこで紫琉石のパワーを最大限にまで上げていた。

 

「征二狼〜〜〜!」

 

「がッ……!」

 

ソウタの捨て身のタックルで、紫琉石の操作スイッチを落とす。

 

床の上にプラスチックの軽い落下音が反響した。

 

「掴んだッ!」

 

素早く、そして力強くスイッチを掴むが……。

 

『パスワードを入力してください』

 

「え……」

 

その瞬間、彼の頭は真っ白に染まった。

 

それと同時に征二狼が立ち上がる。

 

「フッフッフッ、束の間の喜びでしたねェ……。そのスイッチの停止パスワードを知っているのは私のみ。分かったら大人しく返してもらいましょうか?」

 

どうやらそのスイッチの停止パスワードを知っているのは彼だけとのこと。 

 

再び窮地に追い込まれるのだった。

 

「……ッ!」

 

――聖永学園(決戦会場)――

 

「うッ……ぐッ……ッ……〜〜〜ッ!」

 

「シオン!?」

 

「シオン様!?」

 

シュートする直前、シオンが突如として苦しみだした。

 

(恐らくやつがあの石のパワーを……)

「アイ、カイト、エイキ、会場内でやつを探しに行きますよ!」

 

聖永4戦士の一人・帝龍太が、石の力が更に強まったことを察知した。

 

すぐさま他のメンバーとともに征二狼を探しに行く。

 

「新時代……、私の望み……、マイ……、倒す……」

 

紫琉石のパワーを限界にまで引き上げられたシオンには新時代への執着とマイを倒すという意志だけが残った。

 

「シオン!」

 

マイはただ悲痛の叫びしか出なかった。

 

「私に……戻って……ほしいの……? なら……勝って……」

 

「戻ってほしい、だから……行こう!」

 

それでも僅かに残っていた理性を聞き取り、ランチャーを構える。

 

『Ready……Set!』

 

3・2・1 ゴーシュート!

 

「たった今、2つのベイがシュートされました! 天道シオン選手、風馬マイ選手。2人の間柄に何があったのか……このバトルで和解を果たしてほしいところです……」

 

シオンのインペリアルワルキューレとマイのサイクロンペガサスは互いに激しく動き回る。

 

その直後、鋭い金属音を互いに響かせる。

 

(シオン。私はベイがあまり強くなかったことを理由に周りから蔑まれてきた。けれど、あなたはそんな私に手を差し伸べ、助けてくれた。だから、今度は私があなたを助ける!)

 

「ペガサス!」

 

マイの声に呼応し 、ペガサスのオーラが現れる。

 

「サイクロンショット!」

 

ペガサスの最高速度でのアタックが炸裂するが……。

 

それと同時にワルキューレのギア『ダッシュ』がスタジアムの縁と噛み合い、目にも留まらぬスピードで加速した。

 

「征伐しなさい……、ワルキューレ……!」

 

シオンの声に共鳴してワルキューレのオーラが出現、しかし同時に闇のオーラも纏っていた。

 

「インペリアルスティンガー!」

 

ワルキューレの3枚刃による斬撃がペガサスを襲う。

 

「このままでは押し負ける……! お願い……応えて、ペガサス!」

 

マイは祈るように、無意識の内にペガサスに語りかける。

 

「……!!」

 

彼女の想いに応えるかのようにペガサスが輝き出した。

 

「こ……これは! ペガサスも光を放っています! フェニックスの時と同様、進化をしようとしているのでしょうか!?」

 

フェニックスの時より眩しい光を放っていた。

 

その光には「一縷の希望」が見える、そんな気がした。

 

光が開けた先にはフェニックスと同様、全く違う姿のペガサスがあった。

 

3枚刃という形状は踏襲しているが、空力に特化していたサイクロンペガサスから鋭さを持った形状となっていた。

 

「これは……!」 

 

「なんと! フェニックスに続き、ペガサスも進化を遂げましたーーッ!」

 

バトルの途中で進化を遂げたペガサス。 

 

一方で、ソウタはというと……。

 

――会場内――

 

「まだ分かりませんか……、ならば……」

「死んでもらいますッ!」

 

征二狼は至近距離で新ベイ「ブラッディフェンリル」をシュートし、ベイで怪我をさせようとする。

 

「……!」

(なんだあのベイは……! ロアウルフじゃない、全く別のベイだ……。もうすぐ俺にぶつかっちまう!)

 

「……!!」

 

その瞬間、どこからか見たことのあるベイがブラッディフェンリルを弾き飛ばす。

 

「あ、あれはグランドラゴ……!」

 

「どうやら間に合ったようですね」

 

「龍太! それに他の奴らも!」

 

征二狼を探しに来た聖永4戦士が丁度到着した。

 

「チッ……! こんな時に援軍が来るとは……。ですが、紫琉石の停止パスワードは難解なものに仕上げてあります。そう簡単には……」

 

思わぬ援軍に焦りを見せるが、パスワードの解除は困難だと言い張るも……。

 

「出来たよ」

 

その一言が彼の余裕を一気に叩き壊した。

 

「はへ……?」

 

「こんなの、コンピュータに慣れた身からしたらすぐ分かるよ」

 

「ふぁぁあ〜〜〜……!」

 

さっきまでの余裕はどこへやら、征二狼は萎んだ風船のように膝から崩れ落ちた。

 

「はい」

 

「そのスイッチを押すのは君の仕事だよ」

 

「ああ!」

 

『紫琉石の最大出力をリセットしました』

 

カイトのハッキングにより、パスワードを特定し解除に成功。

 

ソウタも彼から渡されたスイッチの停止ボタンを力強く押した。

 

「ハッ……!」

 

「ま、待て……! 私に何を」

 

意識が戻った征二狼の前後には、それぞれエイキとアイが立っていた。

 

「何って、仕置きに決まってんだろ。シオン様を長きにわたって苦しめた罪は重い」

 

「だから、歯食いしばりなさい」

 

「「3・2・1 ゴーシュート!」」

 

「ぶべらぁ……!」

 

征二狼はエイキのアポカリプスクロックに腹部を攻撃され、アイのドレッドピファウルに背中を攻撃された。

 

「ふざけるな……! シオンの手駒の……、クソガキが……!」

 

彼は恨み言を呟きながら倒れていった。

 

――聖永学園(決戦会場)――

 

「あっ……、わ……、うわぁぁぁぁぁ……!」

 

「シオン……!?」

 

シオンが頭を抱え、絶叫する。

 

――

 

絶叫した末、彼女は会場とは違った場所にいた。

 

「……? ここは……」

「……! ……マイ……!」

 

「シオン……!」

 

そんな中、マイと再び出会う。

 

「私はあなたとバトルしていたはず」

「ここは一体……?」

 

「私も気づいたらここにいたの」

 

どうやら2人だけこの場所に来たらしい。

 

「そう……」

「でも一つだけ聞かせて……。なんであなたはそんなに穏やかな表情をしているの?」

 

彼女の言うとおり、マイはなぜか穏やかな表情を浮かべていた。

 

「『破壊』とか『裏切った』とかあなたに酷い言葉をかけたりもした。なのに……」

 

自身の言葉で傷ついたはずだと思っていた中、マイはある一言を放つ。

 

「友達だからだよ」

 

「……!」

 

「確かに私はあなたのもとを急に離れたりした。けど怖かったの、あなたとの大切な日常が帰って来なくなるのが……。だからそのためにはあなたに帰って来てほしかった。そんな中、新しい仲間達との出会い、4戦士との和解があった」

 

彼女は涙を流しながら、シオンに語りかける。

 

「マイ……」

 

「シオン、最後にあなたの思いを聞かせて……。シアス達と新時代を目指すの? それとも彼らと現在《いま》を生きたいの?」

 

「私は……私は、現在《いま》を生きたい!」

 

シオンは感情が高ぶり、現在《いま》を生きると答える。

 

「ありがとう……。シオン」

 

マイが笑顔を浮かべた瞬間、その場所は光に包まれた。

 

――

 

「……ハッ……!」

「マイ……」

 

シオンから邪悪なオーラが抜けた。

 

それと同時に、虹彩も元に戻る。

 

「シオン……!」

「もう大丈夫……なの?」

 

「うん。それに心配をかけさせてごめんね」

 

「……!! いいよ!!」

 

正気に戻ったシオンはマイに今までの非礼を詫び、マイも喜んで許した。

 

「……! たった今、天道シオン選手、風馬マイ選手が和解を果たしました! 現在会場を離れていること蒼龍ソウタ選手が関係しているのでしょうか!?」

 

「マイ、ここからは真剣勝負。どっちが勝っても恨みっこなし!」

 

「もちろんだよ、シオン!」

「そして……共に羽ばたこう! ジェットペガサス!」

 

新しく生まれ変わった相棒……ジェットペガサス。

 

一直線に友の愛機に立ち向かう。

 

「ワルキューレ!」

 

再びワルキューレのオーラが現れるが、先程までの闇は完全に祓われていた。

 

「インペリアルスラッシュ!」

 

「ペガサス!」

 

マイの声に共鳴し、ターボギアの軸先が格納する。

 

その直後、スタジアムに轟音が鳴り響いた。

 

再び衝撃波が巻き起こる。

 

それに耐えることに必死で、目の前の様子を誰も直視できなかった。

 

しかし、その静寂を打ち破ったのは……。

 

「ジェットノヴァ!」

 

ジェットペガサスが勢いよく、インペリアルワルキューレに激突し、それをバースト。

 

――ピシッ……ピシッ……パキィィィン!――

 

同時に、シオンの服と一体化していた紫琉石が衝撃波の反動で粉砕された。

 

「……!」

「強くなったね、マイ……!」

 

彼女は涙を流しながら、マイの成長を称賛した。

 

『ジェットペガサス、バーストフィニッシュ! 風馬マイの勝利!』

 

「き……、決まったぁぁーーッ!! 風馬マイ選手! 天道シオン選手との和解を果たした末、勝利! よって、聖永杯の優勝者は根尾中学校です!!」

 

実況者の声とともに観客席は大いに沸き立った。

 

「おおっ! マイ……遂にやったんだな!」

 

「マイ……良かった……!」

 

「良かった……! シオン様が戻ってきてくれて……!」

 

「マイのやつ、最後の最後でやってくれるぜ……!」

 

「これもソウタさん、あなたのおかげです。それにカイト、あなたの頭脳もまたシオン様を救ったのです」

 

「ありがとう、龍太様。マイもよく頑張ったよ、ありがとう」

 

会場内には喜びの声で溢れていた。

 

そして……。

 

「シオン、おかえり」

 

「ただいま、マイ」

「そして……皆」

 

――根尾中ベイブレード部部室――

 

聖永杯を優勝した根尾中学校。

 

その翌日、マイは聖永学園に帰ることとなった。

 

「本当に帰るのか……? いや、分かってはいたんだけど……」

 

「はい、名残惜しいことですが……」

 

「そっか……、寂しくなるなぁ」

 

ソウタは泣くのを抑えていたが、少しでも気を抜けば涙が零れ落ちそうなくらいに瞳が潤んでいた。

 

「私ももう少しこの場所に居たかったです。ですが……きっとまたどこかで会えますよ……!」

「何かあったらすぐに会いに来てください。よろこんでお手伝いしますよ」

 

マイも本音を話しつつ、心の底から再会を願った。

 

「……そうだよな! 聖永に戻ってもマイは大切な仲間だ」

「……ちょっといいかな?」

 

そんな中、ソウタがある提案をする。

 

「なんでしょう?」

 

「最後に一回だけ……皆でベイを回さないか?」

 

それは皆でベイを回すというものだった。

 

「……はい!」

 

マイはとびきりの笑顔をたたえ、元気よく返事する。

 

「バン、ヒカル、ツバサ、頼むぜ!」

 

「ああ!」

 

「任せてよ!」

 

残る3人も応じ、ランチャーを構える。

 

「3・2・1 ゴーシュート!」

 

一人の少女を救ったベイブレード部。

 

その過程は決して楽なものではなかったが、同時に色褪せることのない思い出となる。

 

絆がある限り、彼らはどこまでも歩み続けるのだ。(ナレーション)




__イメージCAST__

蒼龍ソウタ-小林千晃

門守バン-梶裕貴

一角ヒカル-小野賢章

焔ツバサ-榎木淳弥

風馬マイ-水瀬いのり

天道シオン-悠木碧

帝龍太-島﨑信長

虹羽アイ-沢城みゆき

四天カイト-山下大輝

黒野エイキ-子安光樹

神世征二狼-遊佐浩二

古面定太-小野坂昌也

ナレーション-森川智之

ベイブレード

ジェットペガサス.Vr3.Tr 
(ヴァリアブルスリー・ターボ)
(ペガサスモチーフのアタックタイプ。メタルファイトベイブレードのペガシスのオマージュ。)

ブラッディフェンリル.W4.P
(ウイングフォー・フェイズ)  
(フェンリルモチーフのバランスタイプ。メタルファイトベイブレードのヴォルフのオマージュ。)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。