〜プロローグ〜
スラム街のようなみすぼらしい街。今にも崩れそうな建物の一室で彼は目を覚ます。
いつもの習慣で窓から外を見渡す。
体が起き、脳が起きる。
見慣れた世界。
見慣れた景色。
見慣れた現実。
相変わらずこの“島”からは、他の島が見えない。完全に封鎖されていると言っても過言ではない。
そして、彼は鏡の前に立ち、慣れた手つきで頬にこびりついている血か油かよくわからない何かを拭い去る。
そして立ち上がり外へと歩みを進める。
外に出るまでの道のりで彼はハンドガンとは似てもにつかないものを取り出す。
そして、右手に意識を集中する。右手の甲に刻印のようなものが浮かび出る。
刻印が浮かび出ると同時に脳内に唄が流れる。
《撃て射て討て♪
雷鳴の如く、穿ち貫け♪》
脳内が唄でダブダブになり、激しい頭痛と、脳を抉られるような感覚に襲われる。
それと同時に、ハンドガンがホタルの光のように、淡く発光する。
これで準備はできた。
「よし、いこうか…
この壊れた世界を殺しに」
〜第一章〜
「あーもぅっ、うっざいなぁ!」
なんて愚痴をこぼしながら、得体のしれないバケモノと交戦する。実在した生物で例えるなら、今はもう存在していない恐竜のような体の形に近いだろうか。
半ばやけくそになりながらもトリガーを引く。
射つ射つ射つ射つ射つ射つ…。
何発も何発もハンドガンを射つ。
「この、カスが、うざいんだよっ!死ねぇぇえ!!」
無限なのではと思わせるほどのバケモノの数。一歩間違えれば命は無い。
「うざいうざいうざいうざいうざいうざいうざいうざいうざい!!」
思考が狂う。
一度落ち着くとしよう。
ふぅ、と一息。
右手に意識を集中。刻印が現れ、唄が流れる。
《撃て射て討て♪
雷鳴の如く、穿ち貫け♪》
脳内をダブダブにする唄。
呪い唄。
この呪い唄で自分の攻撃力や防御力、飛躍力、回復力、ありとあらゆる耐性が強化される。簡単に言い換えると、超人的な身体能力を得るのだ。
そして、これとは別にもう一つ能力がある。
「くらえ…!!」
叫びながらハンドガンのトリガーを一度だけ引く。それだけなのに無数の、それも雨のような弾丸が放たれ、バケモノがなぎ飛ばされる。
「雑魚が」
そう、これがもう一つの能力。
人知を越える力。
絶対的で、最強の力。
バケモノを一掃し終えて、息を整えるため深呼吸していると。
「今回も無事成功したね、恭(きょう)くん♪」
「…」
「さ、我が家へ帰ろう!」
「…」
「無視なの?統原 恭也(とうはら きょうや)く〜ん?」
「軽々しく俺の名前を呼ぶな、殺すぞ」
「そう言って一度も殺したことなんてないじゃん(爆笑)」
そう明るく話しかけてくる一人の少女。
彼女の名前は、斬咲 唯(きりさき ゆい 16歳)。
とある事情により恭也と行動を共にしている。
恭也は唯との絡みが面倒だったので、これ以上会話を続けなかった。
しばらくの間、唯はしつこく恭也に話しかけてきたが、もう無理だと諦めたのか、話しかけなくなった。
が、次は彼の腕をつんつんしたり、服を引っ張ったりしてきた。
つんつんつんつん……………
我慢の限界。
「うっざいんだよ!お前!!いい加減にしないと……」
言葉を途中で遮られる。
「いい加減にしないと?」
この後の言葉をさっき指摘されたばかりだ。なので、少しばかり躊躇ってしまう。
「っ……殺す…!」
「あは☆」
そんな感じで我が家へと帰還。
我が家とは言っても、廃墟の一室を基地として使わせてもらっているのだ。
寒々とした部屋。
部屋の中にあるのは、コンロとポッド、マグカップ。それにちゃぶ台と椅子。
「ほんとこの部屋って何も無くて寂しいよね〜」
唯は陽気に恭也に話しかける。
恭也は話しかけてくる彼女を無視。
彼は面倒だと思いながら、部屋の隅にある椅子に腰を降ろし、ハンドガンのメンテナンスをする。
それを見てなのか、唯も自分の武器である刀のメンテナンスをし始めた。
しばらく静かだったが、唯が口を開く。
「最近、雑魚ばっかりたくさん出てきてるけど、どうしてかな?」
「わからない。お前はどう思う?」
いつもの無視、はしない。なぜならこの会話は生死に関わるから。
「さぁ、どうだろ?私にも分かんない。でも何かが起こる気がするんだよね〜」
「それは俺も同感だ」
そして彼は付け足すように続ける。
「2年前のようなことが起こらなければいいが…」
〈2年前 西暦2521年〉
恭也が16歳、唯が14歳の時のことだ。
日本の西側にある小さな島。
平穏だったこの島で突如として“それ”は起こった。
《ドゴォォォォォォォオン!!》
突然の爆発音。
相次ぐ人々の悲鳴や地鳴り。
《ゴゴゴゴゴゴォォッ》
地鳴りは徐々に大きくなる。
次第に地鳴りはおさまっていき、落ち着く。
だが、それは一瞬の安息。
人々は目を疑う。その視線の先にあるもの。
それは、この世のものとは思えない程の巨大樹だった。
その巨大樹は、島の中心部にある烏山(からすやま)と言う山が噴火したかのような形でそびえ立っていた。
人々は驚く。これが何なのか知らずに。
「きゃぁぁぁぁぁあ!」
「だ、誰か助けてくれぇ!」
また一つ、また一つと悲鳴が響き渡る。人々は騒ぎ狂う。
「きゃっ!」
と一人の少女が悲鳴を上げる。
「め、めぐ!?」
この声の主、統原 恭也は、目の前のこの光景に驚嘆していた。
それもそのはず。たった今、目の前で愛人である、椎名 愛(しいな めぐみ 16歳)が巨大樹の太い根によって宙吊りにされているのだから。
彼女は、この事態に混乱しながらも必死に抵抗している。恭也も彼女を助けようとするが、どうしようもできずに立ち尽くしている。
彼女は恭也に叫ぶ。
「恭くん!私の事はいいから早く逃げて!!!!!」
その思いもよらぬ言葉に恭也は動揺する。
「なっ、バカなこと言うな!!俺はお前を見捨てたりしない!!!!!」
「だめっ…恭くんまで死んじゃ………」
彼女の言葉は途中で切られる。
一瞬であった。
巨大樹の根が彼女の胸を突き刺し、凄い勢いで血が吹き出している。真っ赤で熟れすぎた苺のように。
そして、胸を貫かれた彼女は巨大樹の根に呑まれていった。
その光景を前に恭也は絶句している。徐々に事態を理解するのだが。
「あぁ、ああっ………あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
絶叫。
膝が崩れ落ち、腕は無気力に垂れ、泣き叫ぶ。
とても冷静にはなれない状態ではあったが、愛(めぐみ)の言葉を思い出し、なんとか立ち上がる。
恭也は巨大樹を睨みつけながら。
「殺す、殺してやる…!必ず!!」
絶望、悲しみ、怒り、罪悪感、様々な思いを抱きながらこう叫んだ。
それから恭也は、巨大樹とは反対の方向に足を向け、走り出す。
決して逃げているのではない。生きるため、巨大樹を殺すため、復讐するために。
走りながら周りの様子を確認するが、見なければよかったと後悔する。
無数の巨大樹の根は蠢き、人々を襲っている。否、喰っていると言ったらいいのか。それほどなまでにひどい光景だった。
何故人間を喰っているのかはわからない。どれくらいの人々が喰われたのか。
子供も大人も、男も女も無差別に喰らい尽くす巨大樹。
いったいどれくらい走ったのだろう。後ろを振り向くが、巨大樹は山に隠れて見えなくなっている。
恭也は立ち止まり、その場に崩れ落ち、意識を失った。
巨大樹が現れて1日、巨大樹は活動を停止し、眠ったかのように人を喰らわなくなった。
島民…59689人
死者…47487人
負傷者…11421人
生存者…12202人
「じゃ、そういうことで♪」
「ああ」
時は現代に戻り、恭也と唯の会話は一通り終わる。
話し合った結果としては、これからも十分に気を引き締めて行動する、ということになった。
それからというもの、唯がなにをしているか知らないが、特にすることもなかったので身体を横にし、眠ることにした。
深い深い眠りへと落ちていく。
2年前の“出来事”が繰り返されるとも知らずに。
始めにお詫び申し上げます。
今回の投稿は、都合によりプロローグと第一章を同時投稿させて頂きました。
どうかお許しください。
それでは改めてましてこんにちは♪
そしてはじめまして!Re:Ginです!
なんと今回の作品は初投稿となります!どんな評価がくるのかドキドキワクワクする反面、ビシビシと指摘されるのではと不安になっております(笑)
さてこの作品なのですが、第一章から過去の回想が語られており、現在の主人公たちについてのお話は、あまり語られておりません!
「うわー読みたくねぇ」と思った方もおられるかもしれませんが!なにとぞ、あたたかい目で読んでくだされば幸いです!!!!!
次回はもっと面白く!熱く!物語を創っていこうと思いますので、期待してくださいっ←(やけくそw)
この作品が貴方の糧となりますように。