いきなり許嫁候補!? ~分家序列最下位からの成り上がり?!私、望んでませんから!ほっといてくださいよ!~ 作:天野建
夕飯も終わり。
いよいよ、お風呂に入って、後は寝るばかりとなった今。
晶露様の思わぬわがままに、私は困惑をしていた。
「1人でお入りになりたい?」
「はい」
いやいや、それは無理である。
晶露様はまだ4歳である。
いくらしっかりしているとはいえ、1人でお風呂に入らせる訳にはいかないのである。
「私と入るのはお嫌ですか?」
「いいえ!そのようなことはありません!」
「我が父と入るのが、おいやですか?」
「いいえ!」
ではなにがだめなのか?
てっきり喜んで一緒に入ってくださると思っていたのに。
「にいさまをさしおいて、ぼくがねえさまとおふろにはいるなどだめです!」
やっと聞き出した理由がそれとは、私は思わず脱力した。
どうやらこちらの世界でも、そこら辺は前世の貴族と同じで厳しいらしい。
「晶露様、大丈夫ですよ。晶露様はまだ4歳。私とてまだ6歳です。この年頃に男女の区別など殆どありませんから。若君とて気にしません」
加え、にわか許嫁候補である。万に一つも、心配はないであろう。
「ほんとうですか?」
「ええ。私が保証しますとも。なので、晶露様が本当においやでなければ、一緒に入りましょう?」
「はい!ぼく、だれかといっしょにはいるのは、はじめてです!」
うう。なんとも切ない台詞を聞いてしまった。
父、私たちのやりとりの間、脱衣所で直立したままであった。
顔が無でなく、菩薩顔なのが進歩か。
しかし、何も言わないなら、本家子分とともに、脱衣所の外でまっとれ!と叫びたかった。
「では、父よ。風呂の監督を頼む」
私は腹立ち紛れにそう命令した。冷酷にな。
「はっ!」
いやいや、なんなの?
その返事は。私は父の上司ではないから。
私は父の評価をワンランク下げつつも、服を脱ぎ始めた。
その後は何もトラブルもなかった。
ただ腹立ちが収まらなかったので、アヒルの隊長を欲しがった晶露様の為、おそろいのお風呂グッズをプレゼントすることを父に約させて、溜飲を下げた私を、咎めるものは誰もいなかろう。
ちなみにロウは、私たちが風呂に入る時には、すでに自分のマイベッドであるかごでご就寝であった。
もし起きていれば、人間の機微について、根掘り葉掘り聞かれて面倒であっただろう。
寝ていて幸いである。
風呂の後は、私の部屋で、日記を書き終え、晶露様と2人で、私のベッドで眠りについた。
本家子分が客間で眠るように晶露様に進言していたが、私は初めての外泊において、晶露様を1人で寝かせるなど出来る筈もない。
寂しすぎるだろう!
最初は居間に3つ布団を敷いて、真ん中に私と晶露様、左右に両親で、就寝しようと私は考えていた。
うむ。日本の古き家族での眠り方である。川の字、一本多いが、である。
しかし風呂に入って居た時に、思い直したのである。
いかな私の両親とはいえ、晶露様も落ち着かないのではないだろうか。
寝るイコール、無防備になることである。
ならば、私と2人で眠るほうがよいのではないか。
私は本家子分に、以上の思考の経緯を話した。
すると、渋々ながら、後者の案に頷いたのである。
なお、前者の案を聞いた時の両親の顔が、こわばったのを、私は知っている。
どんだけ本家の威光が染みついているのか。
護衛と割り切ればいいだけだろうに。
ああ、護衛は横で眠りはしないか。
なお、私の説得により、晶露様はたいそうお喜びになられた。
客間に布団を敷いて、2人で仲良く横になる。
隣の部屋には本家子分ズが控えている。
2人いるのだから、順番に寝て欲しい。
「ぼく、おとまりもはじめてだし、だれかとこうしてねむるのもはじめてです」
「晶露様、初めてお会いした日に、一緒にお昼寝していたではないですか?」
もっと言うなら、平日、晶露様が寝かしつける為に、ベッド横でお話ししている間に、私が寝落ちしてしまった分も含めれば、かなりな回数である。しかし、寝落ち後の翌朝には、客間で目を覚ます私である。
「あ、そうですね!でもあのときは、ぼく、ひっしだったので」
そう言いつつ、ぎゅっと抱きついてくる晶露様。
「だれかとねむるのは、こうもあたたかいのですね」
可愛さと切なさが私、の中で交錯した。
私はなんとか言葉を絞り出した。
「また1つ新しい気持ちを知りましたね」
「はい!ねえさま、おやすみなさい」
「はい、おやすみなさい。よい夢を」
なお、晶露様は、お風呂をともにするのは躊躇したが、ともに寝るのは抵抗がなかった。
どこら辺が境界なのであろうか。
悩むところである。
一区切りがあまりに短いので、連ねて投稿しました(カクヨムと小説家になろうとのマルチ投稿の関係で話数をあわせてます)