いきなり許嫁候補!? ~分家序列最下位からの成り上がり?!私、望んでませんから!ほっといてくださいよ!~ 作:天野建
「母!居間のテーブルをあけて!」
私は家に着くや、そうお願いしつつ、自室へと駆け込む。
いつもなら、晶露様を居間に導き、ゆったりとお茶をしてから行動を開始する。
しかし、今の私に、その余裕はない。
私は机の広い引き出しから、A2サイズのケント紙を数枚取り出すと、居間へと向かう。
なぜそんな大きなサイズの紙があるのかと?
それは繰り返しになってしまうが、新宿御苑へ出かけた際に、あればよかったと思うものを予め用意していたのである。
その費用は、父に必要経費として、お願いした。
私の異能の向上の為である!との大義名分を
それは今は重要ではないので、追求はやめてほしい。
とにかく、私はケント紙を抱え持ち、居間に入る。
するとそこには晶露様、その後ろに控えるように本家子分ズ2人座っていた。
子分筆頭の松也さんがいない。
ふと疑問が浮かんだが、今はいい。
それよりも重要なことが、今の私にはある!
母がキッチンで、お茶の用意をしているようである。
私は黙したまま、ケント紙をテーブルの上に広げ、角に重しをのせて固定する。
そして、スケッチブックを取り出すと、それを見つつ清書し始めた。
記憶が薄れないうちにと描き進める。
ちらりと本家子分に清書も頼もうかとも思ったが、直に視ている私が描いた方が間違いがないだろう。私は幼い子どもである。それ即ち手も小さい。また疲れやすいが、時間がかかっても正確なものを記録するのが重要であろうと、自らがえんぴつをとった。
可能であったならば、スマホなる文明の利器で、魔法陣が撮れれば、よかったのであるが、水の影響か、光の影響なのか、スマホを向けても、魔法陣を撮ることができなかったのである。悔しい限りである。
まあ、スマホで魔法陣を撮れたとしても、
ただ写真があれば、より正確に起こせたのではないかとは思う。
とはいえ、「黒き森人の井戸」の魔法陣は消えはしない。
また不明な点があれば、見にいけばよいだけである。
とはいえ、折角の好材料である。しっかりと記録せねばなるまい。
集中!集中である!
あ、また私、晶露様を置いてけぼりにしているのである!
申し訳ありません!晶露様!
「ふう」
私は納得いくまで魔法陣を描き終えると、一息ついた。
一気に頭と身体を酷使した為、身体が栄養を求めている。
このまま考察を進めたいが、その前に休憩を挟むのが得策であろう。
私だけでなく、晶露様も疲れている筈である。
私がせき立てるように、井戸を後にして、我が家へと帰宅したのであるからな。
私はケント紙をくるくると丸めると、テーブルからどけた。
そして晶露様に向き直ると、すぐに頭を下げる。
「晶露様、放っておいて申し訳ございませんでした。お茶をご一緒していただけますか?」
私は「黒き森人の井戸」に続き、先程まで晶露様を放置し、ひたすら魔法陣を描いていたのである。
申し訳ございません!平にご容赦を!
「はい」
晶露様は文句も言わずに、頷いてくれた。
なんと貴いお子であるか!
「そうだぞ!我が輩も退屈したが、おとなしくしていたのだ!菓子を所望する!」
晶露様の頭上にいるロウが、激しく主張してくる。
うん。こちらが正常な反応である。
「うんうん。ロウもおとなしくしてくれていて、ありがとう。今母が、きっとおいしいものを持って来てくれるよ」
なにせ、私の腹を刺激する匂いが、キッチンから流れてきているのだから、間違いない。
おそらくこちらの様子を確認しつつ、お茶の出すタイミングを計ってくれているに違いない。
母、お茶の用意のお手伝いができなくて、申し訳なかった。
運ぶのは手伝うのである!
一区切りがあまりに短いので、連ねて投稿しました(カクヨムと小説家になろうとのマルチ投稿の関係で話数をあわせてます)