いきなり許嫁候補!? ~分家序列最下位からの成り上がり?!私、望んでませんから!ほっといてくださいよ!~ 作:天野建
「ロウ!もっと詳しく正確に教えてほしい!」
私はぐわしとロウを両手で捕まえると、揺さぶった。
「ぎゃっ!なにをする!はなせ!」
揺さぶられて目を回す。ロウ。
見かねた晶露様が、私の手をやんわりと掴む。
「ねえさま、おちついてください。ロウがくるしがっています」
「ああ、申し訳ございません」
5歳才児に諭されてしまった。
私は少し冷静さを取り戻す。
「ロウ、すまなかった。つい、ロウのエルフの知識に、興奮してしまった」
少し大げさに褒めておこう。その方がするっと妖精の共通知識も出やすくなるだろう。
「ふふふ。俺は英知の塊だからな!もっと頼るとよい!」
むんと、胸を張るロウ。
「そうさせてもらおう!その英知をどうか私にもっと示してほしい!この魔法陣のどこが、浄化する意味を表すのか?この陣は単一の機能しかないのか?」
さあ、妖精の根底にある知識を私に示せ!
「うーん。こうふわっとなんとなく?そう感じたって感じだな!」
漠然過ぎる!私は思わず顎を落とした。
落ち着け。もう一度丁寧に聞くのである。
「ロウ、もっとこう具体的に言ってくれまいか?日本語が難しければ、エルフ語でもいいぞ」
「いや、言葉は大丈夫だ。けど俺にはそれ以上の説明はできない」
「そうなのであるか」
期待をさせておいての、この落とし。
ダメージが倍加である。
ロウは思考ではなく、感覚派なのだろう。
それともエルフの共通知識がそうなのか?
ロウは妖精となったのはつい最近である。知識の共有は不完全なのかもしれない。
そう思いたい!もっと成長すれば、具体的な知識を披露できると!
どちらにしても、今はこれ以上得られそうもない。
くそう。
私の前世の知識もそれほど深くない。既存の魔法陣を使うばかりであったからな。
この魔法陣の解明には、少し時間がかかりそうである。
水の浄化の魔法陣であるとわかっただけでも収穫であるか。
欲をいえば、もう少し細かく知りたかったが、ロウを追求しても出てこないだろう。
舞い上がった分、ダメージが大きいのである。
私ががっくりしていると、本家子分ズの1人から声がかかった。
「あの、よろしいでしょうか?」
気分的には、もう少しそっとしておいて欲しいが、そうもいくまい。それが大人というものである。
「なんでしょうか?」
「こちらの資料を一旦お借りできないかと。コピーをしたら、お返し致しますので」
ああ、若君への報告か。
「構いませんよ。私からの報告は、週明けにでもすると申し伝えてください」
「かしこまりました」
あ、松也さんは、魔法陣発見の第一報を、若君に入れに行ったか。
なるほどな。
本家子分ズの1人が、素早くスケッチとケント紙をまとめると、部屋から出て行く。
これで考察を進めようにも、資料がなくなってしまった。
うむ。ならば。
明日の予定を決めてしまおうか。
明日は予定通り、新たなパワースポットなる場所へと、赴いてもいいのであるが。
今日の魔法陣の考察を後回してしまうと、後々煩雑になりそうだ。
そう、明日訪れる場所でも、また新たな発見があった場合。
整理するのに骨がおれそうである。
やはりひとつひとつ、片付けていったほうがよいだろう。
まあ、明日訪れる予定であったパワースポットなる場所に、新しい発見があるとは限らないのではあるが。
「晶露様」
私は彼に向き直った。
「予定を変更して申し訳ないのですが、明日の午前中は、今日発見した魔法陣の考察する時間にあてたいと思いますが、いかがでしょうか?」
「ねえさま、おひとりで?」
どうやら、晶露様のポイントはそこらしい。
「いえ、この場にいる者で、考えたいと思います。1つの頭で考えたよりも、複数の頭で考えた方が、色々な意見が出やすいでしょうからね」
目の端にみえる母が、愕然とした顔をしている。
母よ。安心して欲しい。深い意見は期待していない。直感で意見を述べてよいから。
「はい!それならば、いいです!みんなですごせるなら、はんたいはないです!」
晶露様が、元気に答えてくれる。
うんうん。1人遊びは寂しいものね。
今までの晶露様の境遇を知っている私がそんな提案をするとは思わないで欲しい。
「お勉強は魔法陣の考察をする前に、済ませてしまいましょう。午後からはデザートを作りましょう!」
折角の週末である。私だけ楽しんではいけないのである。
ちゃんと晶露様を、もてなさなければならない。
「デザートですか?」
「はい!プリンアラモードを作りましょう!」
「ほんとうですか!?」
晶露様の目がきらきらと輝く。
「もちろんです!」
そうですね。机に向かって魔法陣を見つめるよりも、デザート作りしたほうが楽しいですね。
私に付き合ってもらうばかりでは、いけないのである。
幼児は遊びも必要である。
「さあ、今からプリンアラモードに立てる旗を作りましょう!つまようじの用意もしないといけません」
「はい!ねえさまのははうえさま!つまようじをいただけますか?」
「もちろんでございますですとも!」
母よ。日本語がおかしなことになっておられる。落ち着いて欲しい。
それでも母は、そっと晶露様の手をとると、つまようじを取りに、2人でキッチンへと向かった。
魔法陣の資料も手元にないし、これからは晶露様と戯れよう!
私も小さき子どもであるのだ。
繰り返す。遊びも大切である。
ロウは頭に浮かんだことのみを話するだけw
補足として、妖精は誕生した瞬間からエルフ語ができ、妖精としての知識も芽生える。
一区切りがあまりに短いので、連ねて投稿しました(カクヨムと小説家になろうとのマルチ投稿の関係で話数をあわせてます)