いきなり許嫁候補!? ~分家序列最下位からの成り上がり?!私、望んでませんから!ほっといてくださいよ!~ 作:天野建
大事な事なので、今一度言おう!
私たちに亡霊を祓う力はないのである!
このちんまい姿をみてくれ、人魚様!そして、見極め、納得して欲しい!
そして、ご自身で亡霊を対処して欲しいのである!
先程は脳筋と侮ってしまったが、力がある人魚様なのかもしれない。
そうだ、海の守護者であるのだからな!推測だが。
「よいのか?私が祓えば、神罰になり、魂も消滅してしまうぞ?それを避ける為に、そなたらが、浄化して、魂を天に返すことにしたのではなかったか?」
人魚様!神、もしくはその眷属であると確定である!
そして、なるほど!話がやっと見えて来た。
私たち以外の一族の誰かが、この人魚様とおそらく海で死んだ者を、この場で浄化する契約をしていたのではないかと推測される。
そしてその一族の者、なんらかの理由で、しばらくここに来てないと。
そしてあの金の魚はそれを知っていて、私たちを転移させたと。
まだ抜けは色々ありそうであるが、筋は見えた。
「ねえさま、ぼくやってみる」
少し落ち着いたのか、晶露様が、けなげにも私を見上げてのたまう。
しかし、私の服を掴んだ手は、まだ震えている。
私はその手をぽんぽんと叩いて、安心させる。
「大丈夫ですよ。それは大人のお仕事です」
「でも、ここにはいません」
「そうですね。それならば、呼べばよいのです」
そうである!それが一番の解決方法である!
「対処できる大人を呼ぶ。ついでに若君もお呼びしましょう!」
若君をついで呼ばわり。叱られそうである。
しかし今、叱る大人はいない!それが問題なのである!
「にいさまも?」
若君の話題をしたら、晶露様のお顔が、少し明るくなった。
若君大好きなのだな。よきよき。
「そうだ!大人を呼べ!俺には絶対無理だからな!」
わかってる。晶露様と同じく、私の胸にひっついて震えているお前に、やれとは言わないから安心せよ、ロウ。
ここで俺がやってやる!と言えれば、格好良かったのにな、ロウ。
箱入り妖精、残念である。
ロウの宣言で、少しテンションが下がってしまった。
気合いを入れ直そう。
問題はわかった。今の戦力では、対処は不可能。
本家子分ズを、若君を呼ぶ。
どうやって?頭を回せ、私!
私は頭の中で、状況を整理しつつ、話し始める。
時間を稼いで、道筋を見つける!
「人魚様、この者たちがなぜ命を落とし、このような姿になってしまったのであるかは、存じません。ですが、人魚様がお祓いになることで、消滅するのは不憫です」
と言っておく。本音ではさっさと祓って欲しい。しかし魂消滅は不憫である。
それに先達の契約通りに穏便に進めたい。後で拗れるのは、避けたいのである。
「私たちが浄化し、魂を天に返せればよいのですが、人魚様もお認めの通り、まだ幼く未熟でございます」
私に至っては、未熟どころか力も極小である。
人魚様が力がないって視てくれないなら、こちらから申し上げる!
「なれど、これらの者を浄化し、天にあげることが出来る者を存じております。どうか一度、われらを元の場所にお返し願えないでしょうか?」
「自身でそれをなせばよかろう?術式陣を通って来たのであろうが」
あの川のサークルは術式陣であったのか!魔法陣とは違うのか!?
気になる!しかし、今は、その好奇心を抑えねば!ぐう!
「違うのです。私たちは、金の魚に強制的に飛ばされてここに参りました。入口は確かに術式陣でございました。が、出口はこの砂浜の中央でございまして、ここの陣はみておりません。況してや使用方法を存じあげません」
そう!我らは強制的に飛ばされたのである!使い方などわからないのである!
ここにも術式陣があるのか。見てみたい!
状況が状況でなければ、人魚様を質問攻めにしたいところである!
は!また頭が陣に行ってしまった!戻れ、私!会話に集中!
「であるか」
「であります」
そうだよ。術式陣、使えるなら、とっくに帰ってるのである。
「なるほど。金のは、力業でここに送ったか。術式陣はしるべのみに使用したか。だから少しずれたであるか」
人魚様!気になる単語を並べて、私を誘惑しないで欲しい!
「使い方など、易いと思うが、そなたらは、豆粒のように小さいから無理か」
豆粒は言い過ぎであろう!そこまでは小さくない!
神からすれば、そのくらいに感じるのかもしれぬが、失礼である!
この人魚様、私の感情を、翻弄するのがうまい!
脳筋ではないのか!?
私は怒りを抑えつつ、更に説明する。
「ゆえに、私たちだけで帰ることができないのです」
「ふむ。金のは、こちらの状況を知っているからな。かの血の者を見つけた途端に、問答無用で飛ばしたのであろう。あ奴なら、やりそうなことじゃ」
納得したように、人魚様が頷く。
「そなたたちを川へ返すのは容易い。だが、本当にここに帰ってくるか?そのまま逃げてしまうのではないか?」
「いえ!必ず帰って参ります。私たちとしても、契約をしているならば、一族としてこの状況を放置することはできませんから。必ず、力ある者を連れて参ります!」
「本当か?」
「はい。あなた様たちとの約定を、破る怖さは知っております故」
「ふむ。それでも、念の為の保険は欲しい」
保険か。なんて人間くさい神の眷属であるか。
「そうだな、そこの小さき妖精を置いていけ」
「ぴ!!」
ロウがびくんと跳ねる。
そしていやいやと首を振る。そしてすがるような目で、私を見つめてくる。
フクロウの首振り、可愛い。
だが、それに惑わされない。
「わかりました」
「よし。よかろう」
人魚様も納得してくださった。
「おーみ!俺はいやだぞ!」
納得してないのは、本人のロウ。
怖さと心細さが、先に立つか。
「大丈夫。ロウはどちらかというと神寄りです。ここで待つ間、人魚様に妖精のあり方を教えてもらうとよいでしょう。色々と優しく教えてくれますよ」
すまない、ロウよ。けれど、見捨てないから、しばらくは耐えて欲しい。
そうしないと、事態は改善しないのである。
「うむ。妾は愛いものは大好きである。また、幼きものをどうこうしようとは思わぬ」
「ほらほら、ロウ。人魚様もそう申しておられる。安心して待っていて欲しい」
ならば、人質をとるのもやめて欲しいとは思うが、それは言わないお約束である。
ロウは私を真剣な目で見る。嘘はないかどうか、判断しているようだ。
私は自信をもって頷く。
汚れを持ち込んだ人間の行く末まで考えてくれる人魚である。
ロウを傷付けはしなかろう。
「わかった。のこる」
ロウ!男前である!
「ありがとう!なるべく早く帰ってくるからね」
「晶露様も、よいですか?」
晶露様も逡巡したのち、しぶしぶ頷く。
「はい。ロウ、むかえにくるからまっていてね」
「まってる」
ロウもけなげに頷いた。
よし、話はついた!
早く川辺に戻らないと!これ以上神隠しにあっていたら、若君から外出全面禁止令が発動されてしまう!
え、もうすでにそれは確定!
いや、私はまだ諦めないぞ!
ロウ、不憫。頑張れ。必ず大海は迎えに来るよ。
一区切りがあまりに短いので、連ねて投稿しました(カクヨムと小説家になろうとのマルチ投稿の関係で話数をあわせてます)