いきなり許嫁候補!? ~分家序列最下位からの成り上がり?!私、望んでませんから!ほっといてくださいよ!~   作:天野建

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第22話 私、飢餓感で目覚める

 うーん。柔らかい。それでいて、しっかりと身体を受け止めてくれる。

 極上な寝心地である。

 私のベッドは、こんなに極上なものだったろうか?

 できることなら、ずっとこのまま寝ていたいものである。

 この気持ちに偽りはない。

 が、どうしてもそうできない切羽詰まった事由が、私を苛んでいた。

 今まさにこの瞬間もである。

 それは。

 猛烈な空腹感である。

 もっと直球でいうならば、腹がへったのである!

 この強烈な飢餓感が、私の意識を現実世界へと引き戻した。

 あー。なぜ私は眠る前に、お腹いっぱいになるまで食べておかなったのか!

 いや、まて。私は結構限界まで食べていたはず。

 なぜに、こんなにお腹がすいているのか?

 ぐううううう。

 いや!今は理由はいい!

 とにかくお腹がすいて、死にそうである!

 私は、そんな身体からのSOSから、ぱちりと目を開いた。

 そしていの一番に目を開けた先に見えたものー。

「‥‥‥知らない天井だ」

 ふっ。

 一度言ってみたかったのだ。

 母の好きな小説に、度々出てくる一節を。

 言ってみたかったが、まさか、自分が口にする日が来ようとは。

 小説には真実が多分に含まれているのかもしれない。

 ふっ。

 馬鹿な事をした。けれど後悔はしていない。

 余計に空腹感が増したがな!

 私は目をしばしばさせつつ、周囲を伺う。

 ふかふかの掛け布団。

 頭を優しく包み込んでいるのは、私の身長よりも大きいだろう枕。

 そして掛け布団の下には、金色の、形のよい、まるこい頭がある。

 誰?なぜ?

 との疑問が、頭をかすめたものの。

 起こさないよう、さすさすと撫でておく。

 撫でないという選択肢はない。

 でも起こさないようにしないといけない。

 幼児の眠りを妨げると、大音響による逆襲を受ける時が、ままあるのだ。

 諸君も、注意するように。

 動いたことで、私が目覚めたのに気づいたのか、ベッドの近くの椅子に座っていた父がそっと尋ねてきた。

「具合はどうだい? 気持ち悪くないかい?」

 いつもとは違う、父の囁き声。

 幼児への配慮、流石である。

 父も、一度幼児の逆襲の洗礼を、受けているのかもしれない。

 えっ?それ私!?

「大海?」

 返事をしない私に、父が更に心配そうに私に顔を寄せる。

 うむ。なんとも優しい心地よい気持ちになる。

 ありがとう、父よ。心配をかけた。

 そして、私の行動を止めないで見守ってくれて、感謝である。

「大丈夫」

 私の短い返事に、父はほっと肩の力を抜く。

「そうか。なぜここに寝ているか、わかるかい?」

「うん」

 安心してくれ。気絶する直前までのことを、はっきりと覚えているとも。

 今の私の身体の状況、これは前世の魔力切れを起こした時の症状に似ている。

 状況は理解したが、なぜこのような症状に陥っているのか?

 魔力はおろか、私の中にある得体の知れない力、魔力もどきの力さえ、使っていない。

 強いてあげれば、エルフ語を使った体力の消耗か。

 言霊の力が、気絶するほどに体力を持っていってしまったのか。

 前世では経験がないがー。

 うむ。最後の大詰めで、若君とエルフ語を同調させたせいかもしれない。

 若君には、私が知らない力、それも強大な力を感じた。

 どんだけ武道をやりこんでいるのか?!若君よ!

 半分はエルフ語を使った事により体力気力を消耗し、残りの半分は若君のお力にあてられたのかもしれない。

 どちらにしても、私ももっと体力をつけねばならぬと言う事だろう。

 けれど、それは今ではない。

 今はそれよりも喫緊に対応しなくてはならない最重要項目がある!

 ぐーーー!!!

 私の腹が盛大に主張する。食べ物をよこせと!はよ、よこせと!

 私は父に訴えた。

「おなかがすいて、倒れそうだよ!食べものがほしい!できるだけ急いで!」

 もう倒れてるから!という突っ込みはいらない!

 食べ物を!今すぐに!早急に!ください!

 

 私の要望はすぐに叶えられた。

 黄色い頭のお子様がいらっしゃれば当然のことか、部屋には私たち親子のほかにメイドさんが控えていたのである。

 緑のリボンをしたメイドさん、この部屋に滞在してからずっとお世話になっているメイドさんである。

 念の為、説明しておこう。

 私が寝かされていたのは、この屋敷において、私たちが通された控えの部屋である。

 先ほどちらりと触れたが、この部屋に初めて入った時より、ベッドの寝具は様変わりしていた。

 どれもすべて極上の品質に差し替えられていたのだ。

 どういう経緯からかは不明だが、弟君が添い寝していたからだろう。間違いなく。

 寝心地は快適であったので、ありがたかったことは一言添えておく。

 なぜ弟君が、との質問は、もう少し待って欲しい。

 メイドさんの話に戻る。

 緑のリボンをつけたメイドさん、思った以上にできるメイドさんなのかもしれない。

 なぜなら、若君の弟君がいる部屋を、1人で任されているのだから。

 護衛も兼ねたメイドさん。

 本家に働くものは皆、武道を嗜んでいるのか?

 それほど、本家ご一家はVIPなのだろうか。

 諸君と同様、多々突っ込みたいが、まずは食事である!

 ご飯を食べないと、まともに動けないし、思考も働かない!

 私の要望を受け、緑のリボンのメイドさんは、すぐにワゴンを押して戻ってきてくれた。

 そしてすぐに応接セットのローテーブルの上に、軽食が並べられた。

「お肉も」という、私の図々しいリクエストにも答え、すぐに追加された。

 ありがたいことである。

 私は横で寝ている弟君を起こさぬように、そっとベッドを抜け出し、よろよろとソファに腰を下ろすと、最低限のマナーを遵守しつつ、素早く食べて行く。

 玉子サンドを、あむり。

「おいひぃ」

 おもわず目尻に涙が滲んだ。

 食べ物だ!

 お腹の虫も、歓喜の声を上げている!

 もっと、もっとだ!

 お腹が別人格であるかのように、要求する。

 わかっているとばかりに、私はあむりあむりと、食べ進んで行く。

 身体が万全でないと、次に進めないぞ!と、更に私のお腹は要求してくる。

 3切れほど、サンドイッチを食べたところで、やっと私の頭が動き出したのか、腹の虫に、言い聞かせる余裕ができた。

 次もなにも、私の出番はもうないぞと。

 私が気絶している間に、好配の儀は、終了しているだろうし、後は帰宅するだけだ。

 だから、何も心配することなく、お前はくちくなることだけを考えておけばよいのだと。

 私は自分の言葉を実践し、ひたすらお腹に料理を運び続けた。

 

 




一度は言ってみたいセリフ。主人公に言わせてみましたw
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