いきなり許嫁候補!? ~分家序列最下位からの成り上がり?!私、望んでませんから!ほっといてくださいよ!~   作:天野建

24 / 24
第24話 私、若君の年齢を疑う

「目覚めたか」

 私の心中の抗議など知らないというように、若君がやってきた。

「にいさま!」

 晶露様はソファからポンと飛び降りると、若君に駆け寄っていく。

 そしてすかさず抱きついた。

 うん。スムーズな一連の流れ。

 兄弟にわだかまりはないみたいである。

 何よりである。

 それにしても気になるのは、若君が少々お疲れ気味の(てい)であることである。

 それを真っ先に尋ねたいが、まずは挨拶である。

 上役に当たる人に失礼があってはいけない。

「若君、本家お三方の御目(みめ)の前にて、意識を手放すなどの失態をお見せ致しましたこと、誠に申し訳なく。その上、医者もお呼びいただいたと父から聞きました。感謝致します」

 私は、さっとソファから立ち上がって、即座に片膝をついた。

「……その作法は、お前の家の日常なのか」

 若君が父の方へと視線を向ける。

「ちがいます!大海が、その本家の方々に敬意を表す為に、自分で考えて?その?」

 父もなぜか、私と同じ姿勢になって違うと弁明した。そして最後はなぜか疑問形だ。

 でもこの反応からしてそうか。やはり、この礼は、日本ではメジャーではなかったのか。不勉強だった。

 父よ、すまない。

「まあ、いい。座れ」

 若君は、そこは深く追求する気はないようである。

 ありがたい。

 私と父は、若君の指示に従い、父が座っていたソファに並んで座る。若君は私が座っていた奥のソファに。

 そしてなぜか晶露様が、私の隣にちょこりと座る。

 それを見とがめたように、若君が声をかける。

「晶露、こちらへ」

「ぼく、ねえさまのとなりがいい。だめ?」

 弟君が私の袖をひく。それも不安そうに、こちらを見上げてくる。

「だめではありませんとも! どうぞいてくださいませ!」

 私は一向に構わない。可愛い方は大好きである。

 私がお暇するまで、ここにいてかまいませんとも!

 けれど、若君は、それを許してはくれないらしい。

「晶露、言うことをきけ」

 若君は再度ぴしりと命じる。

「……はい」

 晶露様は、一瞬不満を浮かべたが、素直に若君の隣に座った。

 うん。これが正しい配置であるよな。

 わかっていた、わかっていたけれども、晶露様の願いを、無碍にはできなかったのだ。

 若君の毅然とした対応で事なきを得た。

 私がへたに指摘して、晶露様のお心を傷つけてはいけないからな。

 私は機微にうといところがある。気をつけねばならぬ。

 私たちが座ったと同時に、緑のリボンのメイドさんがテーブルの上を片付け、新たにお茶を配ってくれた。

 今回はお菓子はなしである。非常に残念である。

 これからの話し合いで、和みは必要はないということか。

 若君が真っ先に紅茶に口をつけた後、大きく息をついた。

 もう指摘しても、問題ないだろう。

 労りの気持ちも多分に入っているからな。

「若君、大変疲れていらっしゃるようですね」

「わかるか?」

 なぜか、若君の語尾が荒い。

「はい。疲弊というか憔悴しており、悲壮感まで漂っておりますれば」

 いかな機微にうとい私でもわかるくらいだ、若君の疲労は計り知れない。

「初見えの前儀は、途中中断の後は、無事終わったと父からお聞きしましたが、なにか後処理で問題でもございましたか?」

 あ、これは聞き方を間違えたかもしれぬ。

 この世界で言う、いわゆるフラグを立ててしまったのではないか?

 若君がそこでくわっと目をむいて叫んだ。

「ああ!ああ!不測の事態の連続で!!打ち合わていた内容が無残に全部瓦解した!!」

「それは!大変でございました」

 予定外のことが起こると、事態を収拾するのが大変なのだ。

 だから、打ち合わせは入念に、リハーサルはできるだけ多く、これ大事である。

「人ごとのように言ってくれる」

「申し訳ございません」

 若君、言って悪いが、人ごとである。

 私には若君に労いの言葉をかける以外、すべはない。

「ふん。そうしてすましていられるのも、今のうちだぞ」

 若君がどこかの悪役のような台詞を、私に突きつけてきた。

「あの、それはどういう?」

「お前の質問は後だ。まずは」

 若君は私の質問を遮ると、すっと背筋を伸ばし、頭を下げた。

「あの場を納めてくれたこと、そしてずっと弟を悩ませてきた件に、道筋をつけてくれたこと、礼を言う」

「いけません!若君!分家の小娘に軽々しく頭をお下げになっては!」

 本家は主、分家は家来のようなものだ。

 その本家の跡取りが、私になど頭を下げてはいけないのである。

「感謝はきちんと伝えねばならないだろう。それにこちらに非があっての謝罪ではない。そう堅苦しく考えなくてよい」

「ですが」

「それにここは非公式の場だ。ここでのことは漏れない」

「かしこまりました」

 若君にそこまで言われたら、引き下がるしかない。

「お主の娘は、少し厳しくしつけすぎではないか?まるで君主制や封建制度がしかれていた時代の娘のようだぞ」

「はっ。申し訳なく」

 父、なぜか謝罪する。それに父も言葉使いが固くなっている。私の影響か?どうも私は一連の出来事でかなり前世寄りに意識が傾いているらしい。もしくは私の魂には貴族社会や、軍時代の規律が染みついてしまっているのかもしれない。

 気をつけねばならない。

三弥(みつや)、今見た通り、この娘には忠節が身についている。性分なのか近平の教えなのかは不明だがな。ひとまずは信用してもよいのではないか?」

「是。私もそのようにみます」

「それに年の割にしっかりとしておる」

 いや、若君の足下にも及ばない。私は、前世の記憶があるからこその振る舞いである。

 しかし、ひっそりと若君に付き従って、ソファの後ろに控えていた長身の男性は、三弥さんというらしい。

 若君のお付きであり、護衛もかねている方だろう。

 あのしゃべり方だと、分家筋の方であろう。

 私の家よりは上位。ふっ、それがわかるのは、私の分家が序列最下位であるからである。

 それにスーツの胸ポケットに挿してあるポケットチーフが赤色である。それはつまり分家序列第1位の日陽家の方であるとわかる。

 ふう。若君の護衛だ。それは強い方が配置されるであろう。

 そして決して脳筋ではないはずだ。

 誰と比較しているか。それは秘密である。

「礼は先に済ませたいと思ってな。先ほどは強引に話を進めた。時間は有限だ、確認したいことが山積しているのだから、さっさと話を進めよう」

 若君って本当に御年7才なのであろうか。

 大人と話しているようである。

 突っ込みたい。突っ込みたいが、無礼であるし、話がそれてしまう可能性が大いにある。

 我慢である。

「近平から、お前が気を失ってからのことは聞いたようだな?」

「はい。本家のご当主様、明臣様が場をとりなし、その後初見えの前儀は無事終えたと」

「無事の定義に寄るがな。まあ、そこまではほぼ間違いがない。さて、どこから話すか」

 父といい、若君といい、どうしてちょくちょく含みを持たせた言い方をするのか。

 すっきりと話して欲しいものである。

 若君がしばし考えを巡らせいる。

 そんなにたくさんのお話があるのか。

 自分が倒れた後の経緯や、初見えの前儀が無事終わったと聞いたし。もうお話はお腹いっぱいで、これ以上聞かなくても私は問題ないのだが。

 そういえば先ほど確認したいことが山積していると言っていたのである。できれば端的に終わらせてほしい。そしてどうせ話をするなら、私の山積している質問に答えてくれる時間を作ってほしい。

 切に願うものである。

 

 




とても子ども同士の話し合いには聞こえないw
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

TS転生特級術師 伏黒幸(作者:莠給)(原作:呪術廻戦)

呪い呪われカスばかりの世界で、才能だけは与えられたカスがそれなりに『適応』して生き残るお話。▼TS転生主人公ちゃんが馬鹿の術式を馬鹿の解釈して特級術師になり、しかし特に何かを為すつもりも無くダラダラと生きるお話。スパイダーマンとか観てないタイプというよりは観た上で責任放棄するタイプ。


総合評価:64/評価:-.--/連載:3話/更新日時:2026年08月10日(月) 20:00 小説情報

女体化して母親になったよ!天使な子供たちとファンタジー世界で幸せになります(作者:きさまち)(オリジナルファンタジー/日常)

ファンタジー世界で真っ当に暮らしていた主人公は罠にハメられ意図せず女体化させられてしまう。▼待っているのは最悪のバッドエンド!そのピンチを救ったのは翼を持つ異種族の男(イケメン)だった。▼割と早い段階で女であることを受け入れイケメン旦那と結ばれた主人公は子宝にも恵まれて幸福の絶頂に…しかしそうは問屋がおろさない!?▼我が子との幸せのんびり生活のためお母さんは…


総合評価:553/評価:8.06/連載:17話/更新日時:2026年08月08日(土) 20:08 小説情報

【TS】主人公の両親を殺したラスボス吸血鬼ですが、彼の最後の家族をやってます。(作者:サボテニウム)(オリジナルファンタジー/恋愛)

エロゲーのメインヒロインに転生したオレ。▼……ただしその正体は、原作主人公の故郷を滅ぼしたラスボス吸血鬼である!▼主人公:「お前だけは絶対守る!」▼オレ(真犯人)「(^ ^)」▼主人公:「あと両親の仇は絶対殺す!」▼オレ(真犯人)「(^_^;)」▼復讐に燃える主人公の隣で家族として暮らす胃痛の毎日。▼正体がバレたら即・首チョンパ⭐︎▼※2026年8月1日:タ…


総合評価:2995/評価:8.1/連載:35話/更新日時:2026年08月07日(金) 00:26 小説情報

【実質魔法少女】金髪褐色TSサキュバスの淫紋解消研究(作者:ハーメルンに性嗜好を歪められた被害者)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

▼ 魔族やら魔法が存在するトンデモ現代風異世界に転生した、淫紋のせいで毎日発情しているナルシスト淫魔の『イロ』が、下腹部でビカビカ光ってクソ鬱陶しい淫紋を消すための研究に奔走する。▼ …………という表向きの理由の裏で、死の呪いをかけられた許婚「スミ」を救うために研究するお話。▼https://syosetu.org/novel/392515/▼ガチャの景品で…


総合評価:1425/評価:8.82/連載:7話/更新日時:2026年05月24日(日) 20:30 小説情報

TS双子姫と乙女ゲーム世界(作者:熱湯キチ郎)(オリジナルファンタジー/恋愛)

乙女ゲーム世界の王族の双子姫として転生した元男性二人。▼可憐な見た目とは裏腹に、二人の趣味は人間観察とトラブル鑑賞だった。▼やがて学園に入学した双子は、王子の婚約者である令嬢が追い詰められていることを知る。▼追い詰められた令嬢は双子へ助けを求めた。▼「私たちと契約すれば万難を排して見せましょう。」▼契約を交わした瞬間から、何者かのシナリオは崩壊を始める。▼こ…


総合評価:687/評価:8.25/連載:9話/更新日時:2026年08月10日(月) 07:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>