いきなり許嫁候補!? ~分家序列最下位からの成り上がり?!私、望んでませんから!ほっといてくださいよ!~ 作:天野建
私は、晶露様を寝かしつけると、父のお迎えを待ち、そして家へと帰った。
すでに本家にて夕飯は頂いているので、父とお風呂に入った後、明日に備えて就寝である。
父は私を夫婦の寝室に連れて行こうとしたが、私はやんわりと断った。
今日は考えるべきことがある。1人自身の寝室に行きたいのである。
父はがっかりした様子であったが、深追いはしなかった。
父よ。すまぬな。
私は自身のベッドに1人身体を横たえる。
気分の浮き沈みが激しく、全く眠りが訪れる気配がない。
当然であろう。
改めて昨日今日をふり返り、がっかりとした。
本家の決定は言わずもがなであるが、自分自身に失望である。
なぜに一番と言っていい重要項目を聞き逃したのか?
許可が下りたぜ、やったと、舞い上がってしまった。
5歳の身体にひっぱられてしまったのか。
情けないのである。
前世の友が聞こえる気がする。
お前は詰めが疎かになる時がある、注意しろと常日頃言ってあったであろうと。
今それを痛感している。
ぐぬ。半年のロスは痛い。
しかしこれは覆せぬ。
ならばどうする。
この半年をかけて、綿密に計画を立て、隙なく最大限に活用する!
これしかない!
私がいつまでも落ち込んでいたら、晶露様やロウにも影響が出よう。
明日から遠出先をしっかり調べるのだ。
そしてしっかりとしたしおりを作る!
これしかない!
私はやるべき事を心に刻み、やっと落ち着きを取り戻した。
次回は同じようなミスはするまいぞ!
それが実行できるとよいがなとの、前世の友の声が聞こえる気がする。
ふむ!私もそう思う!
さあ、明日も早い。眠らねば!
私はこの地点で、両親の承諾など頭から飛んでいた。
はっきりすべてが決まっていてから話そうと思っていたから、昨日は話していなかったのである。
翌日。両親に話していない事に気づいた私は、朝食の場にて、さらっと話した。
何せまだ半年も先であるからな!
私の予想通り、晶露様との外出であるが、本家から承認されたのであればと、あっさりと許可がおりた。本家の言は絶対。怖いくらいである。
私もいつかこうなってしまうのか。
お前は大丈夫だよ。
どこにいても染まらないからな、との、前世の友の声が聞こえてくる気がする。
それは褒めているのであるよな?
私は気持ちを新たに、学園幼年部で過ごした後、本家の晶露様部屋を訪れる。
先に帰っていた晶露様と合流。
ロウにも説明した後、しおり作りに励んだ。
パワースポット訪問計画を立てるべく、この世界の超文明の利器である、パソコンをフル活用する。
ちなみに実際に使用したのは、本家の子分の松也さんである。
晶露様の部屋にはパソコンがあり、ネット環境も整っている。
が、勝手には閲覧できないようになっていた。
それは自明の理であろう。私は5歳、晶露様3歳、こればかりは仕方がない。
パソコンなるものは大変高価なものである、自身で操作できないのは歯がゆいが、万が一にも破壊してしまったならば、新たなものを用意してもらうまでに時間がかかろう。最悪の場合はパソコン支給自体がない可能性もありうる。そんな危険はおかせないのである。
以上の理由から、パソコンでの検索は、晶露様付きの松也さんが主に行った。
まずはパワースポットへの移動手段である。
これは、晶露さまが同行することが決定した時点で、自動車での移動は決定である。
私が小学部に上がる時、晶露様は4歳、私は6歳である。
電車移動は危険を避ける為に、今回は諦めるざるを得ない。
電車は自由に外出できるようになったら、ぜひとも乗ってみたい乗り物である!
が、危険と安全を秤にかける訳にはいかない。
晶露様は私と違い、見目もよく、そのうえお金持ちである。
誘拐の危険は大いにあるのだ。
私が誘拐犯に十分対応できる技量がない以上、車移動一択である。
私は今世は女児、非力である。
であるからして、異能を鍛えなくてはならないのである。
私が危険に自身で対処できるようになる為にも、この訪問計画は成功させなくてはならないのである。
余談ではあるが、訪問先を新宿御苑に定めるまで、私と晶露様、それとロウもか?は、松也さんの手を借りて、かなり吟味を重ねたのだ。
自動車で片道2時間以内の場所。それ以上であると、疲労が先に立ってしまう可能性もありうる。
自動車での移動で2時間とは結構な範囲にはなるが、まずはそれで場所を選定。
更にパワースポットには神社仏閣が多いのであるが、それは外した。
神社仏閣とは前世の知識からすれば、おそらく教会や神殿のようなところであろうと推測した。
すなわち神が御座すところ、またはお出でになるところだろう。
となると、自然の良気(りょうき)よりも、神気を帯びているのはなかろうか。
神気は究極の良気であるが、人にとっては強すぎる場合がある。ましてや私の気の力は薄弱である。そこにいきなり神気を取り込もうと試みたら、中(あ)てられて失神してしまう可能性がある。
いや、それ以上に身体になにか障りが出てしまう可能性もある。それは避けたいところである。
だから、まずは自然の良気が滞留している場所での、取り込みを試みたいところである。
更に更にである。
せっかく都心に出れる機会である。
まだ行ったことのない東京都心に焦点をあてた。
更に更に更に、である。できればおいしいものが食べたい。
プラス晶露様が喜びそうなものを、ロウも入れて3人で食べたい!
ゆえに、お子様が喜びそうなお店が近くにある場所が望ましい。
その段階で、晶露様からのリクエストも入った。
「ぼく、できればあにうえに、おみやげをかいたいです!」
くう!晶露様、3歳にしてなんと心配りができるお子か。
若君なんて、お土産買って来た試しがないぞ。
どこでお土産なる言葉を覚えたのであろうか?!
はっ!もしかして弟君である晶露様は、もらった経験がおありか!?
筆頭許嫁候補の私はないのである!
こほん。話を続けよう。と色々な角度から検討を進め、場所はかなり絞り込まれたのだ。
そうして決まったところが、若君へとプレゼンした新宿御苑なのである。
場所が決まり、時期はかなり先であれど、決行の許可が下りた。
そして今まさに計画を立てる段階に至ったと言う訳である。
新宿御苑及びその周辺について、私と晶露さまは書籍を使い、手下はパソコンで入念に調べた。
その計画書を元に、晶露様とロウと私の3人で、遠出のしおりを作った。
遠出のしおり。これは子どもが出かけるにあたり、必須であると、私は書籍で知った。
晶露様にさも当然のごとく話していたが、実は書籍からの知識である。
手下に聞いたところによると、小学部でも遠足なるものが行われる時には、必ず作成されるものであるとも聞いた。
ならば、作らねばなるまい!
ふっ。遠出とは、そこに行くまでの準備もまた楽しいのである。
晶露様は、目を輝かせて、一生懸命しおりの作成に臨んだ。
表紙の絵は晶露様の担当にした。
晶露様は存外に絵がお上手であった。
私は絵心がないので、全面的に任せたのである。
不得意なものがやるよりも得意なものが行う。
適材適所である。
私たちの遠征場所、新宿御苑。
この場所は都心にありながら、広大な面積があり、全体がパワースポットであるといっても過言ではない。その中でもシンボルツリーとされるゆりのきの巨木。
その巨木こそが、私たちの目的地である。
私の見立てでは、その3本の木はご神木である可能性もある。
もしくは神が降臨される場所かもしれない。
が、神殿や神社に奉られていないことから、神気よりも自然の良気が滞留しているのではないかと思う。
どちらにしても、貴き木であるのは間違いない。
その為、舞を奉納したいと考えている。
そうすることによって、巨木から良気を取り込みやすくなるのではないか、と思われる。
奉納舞は気をもらう許可を得る行為であると、言っても過言ではない。
おそらく気を得るのに、舞は必須ではない。
が、舞を奉納することにより、多くの気を取り込み易くなる可能性があると、私は推測するのである。
最大限に活用する。その言を実行するのである。
奉納舞、元来神に捧げる舞である。
貴き木に捧げるに、無礼にはならぬはず。
という訳で、私の前世の記憶から引っ張り出した、前世の神に対する奉納舞を、晶露さま共々、練習に励むことにした。
半年あるからな!練習時間は十分である!
しかし、この世界の神が、お納めくださるかは不明である。
もっと言えば、ゆりのきの巨木に意思があるのかも不明。
そして最大のネックは、それは果たして巨木の前で舞えるか否かである。
ゆりのきの巨木は、人気のスポットである。
果たして衆目のあるところで、舞を披露できるか。
舞えるほどの場が確保できるか、疑問である。
場を確保できると信じて、更に懸命に捧げれば通じる筈であること信じて、身を清め、練習に励むことにする。
晶露様もいやなお顔もせず、むしろ楽しげに舞の練習をしてくださった。
舞を舞うにも、また遠征を熟(こな)す為にも、体力が必須である。
体力がなければ、濃密な計画も熟すことができないからである。
私たちは松也さんに相談しつつ、幼児ができる限りの、体力作りも行った。
この遠出は、なんとしてでも、成功させなければならない。
なぜなら、これが失敗に終われば、以後の遠征の許可が下りなくなる可能性が、高くなるからである。
それは、私の異能の底上げをするという目的を、困難にする。
絶対成果を出さなくてはならない。
私は全力で、この遠征計画に取り組んだ。
加え、私は大いに楽しむことも練り込んだ。
学び、遊び、両方こなしてこその今回の遠出である!
長きにわたって延々と遠出するこの日を迎えた経緯を語った。
諸君、私の語りに耳を貸してありがとう!!
しかしこれで私たちがどんなにこの日を待ち望んでいたか、おわかりいただけたかと思う!
以上のことから、私たちが興奮を抑えきれないのは、当然なのである!
さあ、いかん!晶露様!ロウ!
期待の地、パワースポットなる場所へ!
行って私の力を増幅する手がかりを見つけるのだ!
やっとふり返り終了。
一区切りがあまりに短いので、連ねて投稿しました(カクヨムと小説家になろうとのマルチ投稿の関係で話数をあわせてます)