いきなり許嫁候補!? ~分家序列最下位からの成り上がり?!私、望んでませんから!ほっといてくださいよ!~ 作:天野建
そしてやってきたのが本日、念願のお出かけの日なのである!
長かった!長かったのである!
今は本家の玄関先で、車待ちである。
車を待つ数分など、待ち時間にはならない!
今の私たちにはな!
だが時間があるのは確かである。
ではここで私たちの服装について話しておこうか。
私と晶露様の服装は礼装までは行かないが、略式正装並の服を身につけている。
とはいっても私が用意したのは、1年前好配の儀で身につけていた灰色のワンピースである。1年経ったことで、成長した分、母に手直しを頼んだ。なんとか間に合った。もし間に合わなかったならば、学園の制服を着ていくつもりだった。制服は礼服の代わりになるからである。晶露様も私の指示通り、外出用の少しばかりフォーマルな服を身につけている。
「ねえさま、これでいい?」
と両手を広げて見せてくれる。
晶露様白いシャツに家色である深紫(こきむらさき)の上着、半ズボンそして、蝶ネクタイである。可愛らしい。
「はい。よくお似合いですよ」
私は力強く頷いた。
「よかった」
晶露様がにこりとする。
「おれも!おれも毛繕いしたぞ!」
「はいはい」
ロウはすっかり日本語で話をするのにも慣れた。
そのロウも今日は、晶露様とおそろいの深紫の蝶ネクタイをつけている。
礼装に準じた形だ。
妖精なので、そこまでする必要がないのであるが、ロウが羨ましそうにしていたので、用意したのである。用意したのは私ではない、本家である。
そのロウは少し得意げに晶露様の頭の上で、興奮して羽をばたばたさせている。
「落ち着いて。でないと頭から落ちるぞ」
「大丈夫だ!あ!」
私が忠告した矢先に、ころりと転がったロウである。
お約束すぎる。
まあ、気持ちはわかる。ロウになってから、あるいは意思を持ってから、初めての遠出だろう。
私も初めて本家に来た時には、興奮したものだ。
その後、その初めての遠出が、大いなる人生の転換期になった訳である。
いつ人生の分岐点が来るのか。それは誰にもわからないのである。
はっ!フラグなるものを自ら立ててしまったか!?
いや、違うぞ!
私は軽く頭を振り、その考えを打ち消した。
その時、丁度タイミング良く、車が目の前に滑り込んできた。
「さあ、晶露様、出発しましょう!!」
私たちは車の後部座席に乗り込んだ。
「さあ、いざいかん!希望の地、新宿御苑へ!」
「さあ、晶露様、しおりの最初のページを開いてください」
車の中で、私たちは真剣に今日の予定を確認する。
それの指針となるのは、言わずと知れた遠出のしおりである。
遠出のしおりは3冊作成した。
そして1つは若君へ献上、後の2つは我々用である。
「はい」
晶露様は真剣にページをめくる。
「最初は今日の目的である、新宿御苑のゆりのきの巨木へと行きます。忘れ物はありませんね?」
「はい。前の日に確認しました」
「おやつもちゃんと持ってきましたか?水筒も大丈夫ですか?」
「はい!」
「よろしい」
私がしおりを読み上げ、それに答える晶露様。
どうやら抜かりはないようであった。
よきよき。
「では最後にゆりのきの巨木に対する心構えは覚えておりますか?」
「はい」
晶露様は力強く頷く。
「きょうおとずれるパワースポットのちゅうしんにざすゆりのきのきょぼくは、かみのようにとうといそんざいです。そのため、れいせつをもってせっしなければなりません」
「よくできました。その心構えを忘れないように。敬いの心を胸に望むことが大切です」
「わかりました」
晶露様4才になられてから、ますます聡明さに磨きがかかっておられる様子。
前世の記憶がある私とも対等にお話ができるとは、幼児にしては出来すぎである。
ただ、我ら2人がそれぞれチャイルドシートとジュニアシートに座って話しているのが、なんともしまらなく残念である。
対面に座る手下の1人が肩をふるわせているのは見なかったことにしておく。
寛大な私に感謝するように。
一区切りがあまりに短いので、連ねて投稿しました(カクヨムと小説家になろうとのマルチ投稿の関係で話数をあわせてます)