いきなり許嫁候補!? ~分家序列最下位からの成り上がり?!私、望んでませんから!ほっといてくださいよ!~ 作:天野建
そしてやって来たのである、新宿御苑!
天子の庭園だからか、入園用が取られる。お付きの人間だけ。
ふ、私と晶露様は余裕で無料である。
私の要望通り、開園と同時に、入場である。
やはりご挨拶は午前中が基本である。
できれば早朝が望ましいが、開園してないのだから仕方があるまい。
私たちは目的地に向かって寄り道せずに進む。
本日、私たちの他に本家の子分2人、晶露様の付き人として、従っている。
そのうち1人は松也さんが、
「抱き上げましょうか?」
とのありがたい申し出をしてくれたが、断った。
神に等しいものへの道である。できるだけ自分の足で向かうべきであろう。
しばらく歩くと、目的のゆりのきの巨木が見えてきた。
どれどれ。私は目に力をいれて視る。
「おお~!」
すごい!清浄なる良気が溢れ出でている。
ご神木、あるいはそれに近い貴き木で間違いないであろう。
「ふおおおおおおおお!」
ロウもいち早く反応して、晶露様の頭で跳ねている。
その気持ちわかるのである。気持ちがぐんぐんと上がる。
私ははやる気持ちを抑えつつ、晶露様と手をつないで、晶露様の歩幅に合わせて、近づいて行く。
朝が早いからか、人はそれほど多くなかった。
これはちょうどよい。
ようやくゆりのきの巨木の近くまで来ることができた。
よくみると、ゆりのきは3本の巨木が寄り集まって生えていた。
幹は太く、見上げた先は私たちには見えないほどである。
「晶露様、ご挨拶申し上げますよ」
「はい」
私と晶露様は、ゆりのきの巨木から少しだけ離れた場所ですっと片膝をつき、右手を左胸に持って行った。日本の礼にあわせたほうがいいかとも思ったが、エルフ語がロウに通じたこともあり、ならばと馴染みのある礼を使うことにしたのある。長年使用した礼のほうが様になっているというのもある。
私は隣の晶露様とアイコンタクトを取る。
晶露様はそれに頷く。
よし。私たち2人は声を合わせて挨拶をする。
挨拶だけ、晶露様にもエルフ語を覚えてもらった。
半年の準備期間があったからな!
<<亭々たる大地を守りし偉大なる大樹よ。ここに我ら2人、ご挨拶申し上げます。そしてこの地にたどり着けましたこと、大いなる感謝を申し上げます。どうか感謝の祈りを捧げることお許しください>>
私と晶露様は頭を下げる。
すると、周囲の音がさあっと引く。
私と晶露様が顔を上げた時、周囲の視線がなくなった。
これは。
人払いされたか?
結界の中に入った感じ。
いや、もっと強固な。
この場だけ切り離された空間。
後ろを振り返ると、本家の子分ズがいない。
もっといえば、私と晶露様、そしてロウ以外存在しない。
この地に着いてから感じていた、清浄なる空気が、一層神々しいまでにレベルアップされた空間になったようである。
やはりゆりのきの巨木は、ご神木に近しき木であったようである。
そして、どうやら私たちを歓迎してくれているようである。
神の眷属とも言える妖精、ロウが同行しているからであろうか?
そのロウはと言うと、恐れ多くも、ゆりのきの巨木の一枝に
だめだ。あれは役に立ちそうにないのである。
せっかく舞の補助を教え込んだというのに。
「ねえさま、ここはさっきとじげんがちがいます」
場所は同じでも空間がずれたことに、敏感に察知した晶露さまが、私の手をぎゅっと握る。
それにしても晶露様、難しいこと言葉を知っているな、次元か。言い得て妙だな。
不安そうな晶露様の手を、私はぽんぽんとたたく。
「大丈夫です。こちらの大樹様は、私たちを歓迎してくれているのです。心配はありません」
「はい」
私の言葉に安心したのか、晶露様がほっと力を抜く。
うーん。私の言葉にまったく疑いを持たない。
晶露様の信頼度がこわいのである。
ロウをもう一度見る。もはやうっとりを通り超して、恍惚としている。
だめだ、使えなさそうである。
仕方がない。
我ら2人でこなすしかないだろう。
「晶露様、準備のお手伝いをお願いします」
「はい」
幸いにして、必要な荷物は同じ次元にちょこりとあった。
うむ。次元。私も使わせてもらうのである。
私はその荷物を紐解き、ゆりのき巨木の近くに設置していく。
まずは小さい折りたたみテーブル。
祭壇の代わりである。
「晶露様、これを」
私は御神酒の入った
晶露様は祭壇にそれを置く。私は水の入った瓶子をその隣に置く。
ゆりのきの巨木への捧げ物である。
これで準備完了である。
私たちは祭壇の前に再度跪く。
「ぼくたちのおいのり、ゆりのきさんにとどくとよいのですが」
「そうですね」
前世の知識だと、これで人外への祈りは通じる筈であるが、この世界ではいかに。
現世の日本は前世の世界からみれば異世界である。
こちらで通じるかは不明である。
少なくとも無礼にはならぬと思われる。
「しっかりと祈りを捧げましょう」
「はい!」
私たちは祭壇の前で、祈りを捧げる。
晶露様とは予め祈りの内容は打ち合わせ済みである。
<私は灰咲大海>
<ぼくは本宮晶露>
<<と、申します。本日はこの地に来訪出来ましたこと、誠に喜ばしい限りでございます>>
まずは自分が何者であるかの自己紹介。
次にこの地を訪れた目的、我らは己の気の力を使い、邪悪なるものを退ける役目を持つ一族で、それを全うする為に更に内にある力の解放、あるいは向上を望めればと参拝したことをやんわりと伝えた。
願い部分口上は省略させていただく。
初見での願いとしては、図々しいくらいなので、ここでは披露しない。
本来ならば何度か訪れてから、願うのが筋であろう。
しかし私たちはまだ幼児、そう何度も来られないので、仕方なく初回の訪問で願うしかなかった。
そこは汲んで欲しいところである。
なお、すべて口上はエルフ語である。
はあ、気力をごっそりと持って行かれたよ。
横をみると、晶露様は平然としている。
わかっていた。口上の練習をしている時から、疲れをみせなかったからな。
力の差か。
くう。
一区切りがあまりに短いので、連ねて投稿しました(カクヨムと小説家になろうとのマルチ投稿の関係で話数をあわせてます)