いきなり許嫁候補!? ~分家序列最下位からの成り上がり?!私、望んでませんから!ほっといてくださいよ!~ 作:天野建
「さて次は」
私が言いかけたところで、晶露様が先回りして、しおりを見つつ、申告してくれる。
「はい!またゆりのきさまのところにいくです!」
「はい、その通りですね。ですが、ここでもう一つ買い物をしようと思います」
「おかいものですか?もうおこづかい、ほとんどありません」
晶露様がお財布をあけて、しょんぼりとする。
うん。そう予定通り、私たちのお小遣いは数十円を残すのみである。
「そうです。これは突発的事案になりますので、ちょっと交渉します」
そう言うと私は晶露様の後ろに立っていた松也さんを見上げた。
「すみません。急に入り用な物ができました。晶露様に使えるお金はありますでしょうか?」
「ございます。いかほどでしょうか?それとどういった理由で必要になりましたか?」
当たり前の質問であるな。これでお菓子の追加購入と答えたら、即却下であろう。
「おそらく1000円から2000円ほどで買えるかと。そして理由ですが」
私は必要な金額を告げた後、その理由を話した。
私たちが新宿御苑で、人払いされた間の出来事である。
ゆりのきの巨木に御神酒とお水をお供えしたところ、御神酒はなくなってしまったが、お水は残されていた。貴き木に供えた水である。多少ではあろうが、良気が入った水である可能性が高い。今世なら清めの水とでもいうものか。言えないが、前世では聖水のようなものではないかと思う。ならば、できるだけ持ち歩きたい。その為の水筒が欲しい。後で精算するので、私用にも水筒を買いたいので、用立ててくれないかとも話した。
松也さんは話を聞いて、即承認してくれた。そういった理由であるなら問題ないと。
よかったのである。
今日買わなくても良いのであるが、折角都心まで出てきたので、2人でおそろいの水筒を買うのもよいかと思ったのだ。
「晶露様、了承が得られたので、もう1つ買い物をしましょう!」
「はい!」
晶露様は満面の笑みで頷いた。
晶露様も大喜びである。そうであるよな。買い物は楽しいのである。
そうして私たちはお揃いの水筒を手に入れた。
「さあ、それではゆりのきの巨木の元に戻りましょうか」
「はい!」
私たちは、じっくりと水筒を選んだ後、しおりの通りにことを進めようとした。
「おまちください」
そこで松也さんから待ったがかかった。
なぜに?
待ったをかけたのは本家子分の松也さんである。
「なんでしょう?何か問題がありますか?」
松也さんにも、予め遠出のしおりの内容は把握してもらっている。
午前中での取り込みは限界であったが、昼食を取ったことで、エネルギーも補充したのである。
早く戻って、ゆりのきの巨木のお側に侍りたいのである。それだけでも、力に影響があろう。
邪魔はしないで欲しい。
「買い物に思いの外時間を取られた為に、もう御苑に戻る時間はないかと」
「え?」
「午前中の御苑での滞在も時間が押しておりましたから」
「うーむ」
木への往復に時間がかかったか。我らは幼児、足も遅いのである。
そして水筒の購入にも時間をとられてしまったからな。
しかし、しかしである。
滅多に遠出ができないから、時間がおしても、もう一度ゆりのきの巨木の元に戻りたいのである!
私は松也さんをなんとか説得しようと口を開き書けた。
が、松也さんのほうが少し早かった。
「晶露様もお疲れの様子です」
「え?」
その指摘に隣にいる晶露様をみると、確かに疲れが見える。
「ぼく、まだだいじょうぶです!ぜんぜんげんきです!」
そう言葉で強がって、元気アピールに手を振ってくれるが、力がない。
初めての遠出である。緊張もしていたのであろう。無理をさせてはいけない。
私は自分の欲望を切り捨てた。
「わかりました。今日はこれで帰りましょう」
私はすぐに決断した。
晶露様に無理させてまで、自分の我を通すつもりはないのである。
「ねえさま!ほんとうにぼくだいじょうぶですから!」
「そうですね。それでも、元気なうちに帰ったほうが、今日を振り返った時に、よい思い出になりますから」
「でも、しおりのとおりにしたいです」
晶露様が、しょんぼりぽつりとこぼす。
「ふふ。お出かけではアクシデントもあるのが普通ですから。次にまたお出かけする時に、その反省を踏まえた上で、またしおりを作りましょう?今日は初の遠出だったのですから、少し詰め込みすぎたのかもしれません。私も少し疲れました」
「‥‥わかりました」
晶露様は渋々ながら、頷いてくれた。
先程の言葉はやはり強がりだったのだろう、晶露様は車に乗るとすぐに寝息を立て始めた。やはり疲れていたのである。
そういう私も、つられるように眠ってしまった。ロウもへそ天のままである。
私たちが、次に目覚めた時には本家の玄関であった。
私たちは幼児。疲れて眠るは自明の理である。
幼児の特権でもある!
無事にお家に帰って来ました。お疲れ様でした。
一区切りがあまりに短いので、連ねて投稿しました(カクヨムと小説家になろうとのマルチ投稿の関係で話数をあわせてます)