君たちの時代にいたい   作:たかゆき宗也

15 / 19
2章 番外編
野火、最後の砦


「お墓ですか?」

「ん、あぁ、そうだ」

 

 ベローニャの双塔で私の歓迎会をした後。

 アルヴァ一等兵が2つの土の山の上に花を置いているのを見かけました。

 

「2つだけ……?」

「この塔に居た敵は2人だけだったんだよ」

 

 突然話しかけても、アルヴァ一等兵が悪態をついてくることはありませんでした。

 

「軍服も前線で見る物とは違いましたし、本当この人達は一体何なんでしょうか」

「俺らが考えても仕方ねぇだろ」

「……そうですね」

 

「アルヴァー! 今ならガーラン大尉が煙草一本吸わせてくれるって!」

「まじか!」

 

 クラム一等兵の呼び声にアルヴァ一等兵は立ち上がりました。

 

「そうだ、ガーラン大尉が女は右の塔、男は左の塔で寝泊まりだってよ」

「分かりました」

 

 そのまま別れると思っていましたが。

 

「お前、何時もの馬鹿みたいな言動忘れるなよ」

「はい?」

「前線じゃ一人一人弔ってやれないんだからな」

 

 振り返った思えば、突然何なんでしょうこの男は。

 

 敵兵の死体を見て私が気落ちしてるのは事実です。

 元気な声でも無いでしょう。

 

 いつもの私に戻れと、この人は言ってのけました。

 

 どんなに真似しても私はシユではないんです。

 シユの代わりにもなり得ない。

 

 あーもう。

 何も知らない癖に、なんだかムカついてきました。

 

「ソルジア上等兵にでも慰めて貰え、明日その顔すんな。士気が下がる」

 

 …………。

 

「素直に慰めたい、とでも言ったらどうですか」

「お前口悪ぃな」

「冗談ですよー! 明日も早いので、私もう寝ますね!」

 

 

 

 

 

 

 〈数日前 ベローニャの双塔〉

 

 べローニャの双塔、最上階。

 そこに髪飾りの少女とリボンの少女が寄り添って座っていた。

 

 窓からは向かい側の塔が見え。

 空には星々が輝いていた。

 

 

「ねぇ、メラーニャ」

「ん?」

「もしも僕が死んだらメラーニャは一緒に死んでくれる?」

 

 髪飾りの少女はリボンの少女にありきたりな質問をした。

 

「絶っ対、嫌」

 

 リボンの少女は心底嫌そうな顔をしていた。

 

 髪飾りの少女自身、予想がついていた返答も。

 いざ言葉にされると少し寂しいものがあった。

 

「そっか⬛︎⬛︎⬛︎と同じような事言うんだね」

「あんたは⬛︎⬛︎⬛︎と心中しようとした癖によく言うわね」

 

 リボンの少女は髪飾りの少女を睨みつけた。

 

「死ぬ気なんて無かったよ。あのまま⬛︎⬛︎⬛︎を一人で死なせるのは可哀想だったから、寄り添ってあげたんだ」

 

 髪飾りの少女は旧友を思い出し懐かしそうに言った。

 

「浮気者」

「えー?僕はメラーニャが死んだら一緒に死ぬよ」

 

「どうだか。カタリナなら、のらりくらり東国(ルミエール)で生きていけるわよ」

 

 髪飾りの少女は少し考えた後……。

 

「それは、そうかも」

 

 リボンの少女が不機嫌になるような返事をした。

 

 

 

 

 

 髪飾りの少女が立ち上がった。

 

「さてと。そろそろ戻ろうかな」

「……動かれると寒いんだけど」

 

 リボンの少女は不服そうに言った。

 

「もう雪は降ってないでしょ?」

「ふーん、」

「風邪引く前に寝なね」

 

 髪飾りの少女はそう言い、もう片方の塔に戻る。

 

 そのまま寝るのかと思いきや、塔の窓から身を乗り出した。

 

「メラーニャ手、伸ばして」

「ん」

 

 リボンの少女は要望に応えるか悩んだが、窓から髪飾りの少女に向けて手を伸ばす。

 

 何がしたいのか予想はついた。

 

「あ、思ったより遠いんだね!?」

「当たり前でしょ」

「あははっ届くと思ったんだけどなぁ」

 

 2人の手は空を切っていた。

 

「おやすみ。メラーニャ」

「おやすみ」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。