「リラさんお待たせしました!」
「アンジェおはよう、私も今来た所!」
とある休日。
アンジェとリラは
「じゃあ早速、本日のお目当て行こうか」
「はい!」
約束していたアンジェのケープを買うため。
二人は軍服を取り扱う専門店に立ち寄った。
「私、
「そうなの? じゃあケープ以外にも色々見よっか」
「はい!」
アンジェは暗い色で染められた衛生兵の制服やベルトを中心に店内をうろつく。
値札を裏返し飛び跳ねるまでがワンセットだ。
「
「そうだね、
アンジェの質問にリラは自身の頬をトントンしながら答えた。
「私みたいな突撃兵はスカートの着用も許可されているしね。……まぁ、死亡率が高いのもあるだろうけど」
リラはふわりとスカートを揺らした。
「他にはネクタイの色で所属部隊が分かるようになってるね」
「はっ……確かにそうですね!」
アンジェのネクタイは翠玉色。
対してリラのネクタイは紺色だった。
「後は、街中の行軍パレードとか、祭りの息ぴったりなパフォーマンスとかもアピールが含まれてるかな?」
「へぇ〜!」
アンジェはまだ軍のパレードや出し物に参加したことが無かった。
「そっか、9月の建国祭、アンジェ
「はい!」
「来年の話をすると鬼が笑うんだっけ」
リラは苦笑いしながらケープを見比べていた。
「鬼……?」
「あぁ、私の地元に伝わる、うーん……お化けみたいな感じでね。人型の怪物に角が生えてるの」
「えぇ!? リラさん会ったことあるんですか?」
「無い無い! でもすごく怖い人のことを鬼って例えたりするから、鬼教官ならあったことあるかな!」
リラは両手の人差し指を立て、おでこに当てた。
「ケープ、こんな感じのはどう? 色も暗めで、内ポケットもついてるみたい」
「わぁ! 良いですね! あ、こっちも可愛いです!」
「いいね! 試着してみたら?」
「はい!」
アンジェはケープを数枚持ち、試着室に入っていった。
暫くするとケープを身につけたアンジェがシャッとカーテンを開けた。
「どうですかね?」
「少し動いてみて、どこか動きずらい部分はある?」
アンジェは全力で腕を上下左右に動かした。
「うーん、ちょっと肩を組みながらの部分が引っかかります」
「そっかそっか」
「もう一つも着てみますね!」
シャッと再びカーテンが閉まる。
「どうですかっ!」
「んーどっちも可愛いね」
アンジェは再び腕を動かす。
「あ! でもこっちはさっきより動きやすいです!」
「これにする?」
「はいっ!」
試着を終え購入する商品を決めたアンジェはカバンから封筒を取り出した。
「見てくださいリラさん! 私の初任給、取っておいたんです!」
「おー!」
封筒を掲げるアンジェに小さく拍手するリラ。
会計が終わり店の外に出る。
「これで真っ白な格好でいるより、マシになったかな」
「はい! いつ、また戦争が始まるか分かりませんもんね」
「無責任だけど、戦争が無くなったらいいのにね」
「そうですね……」
リラは優しく微笑みながら問うた。
「アンジェは戦争が終わったらどうする?」
「え? ……そうですね、親友が帰ってきたら、一緒に…………一緒に、何か、したいです」
アンジェの言葉は抽象的で、それでも感じたままの答えだった。
「親友さんはどこかに疎開してるの?」
「いえ、親友は
「そっ……か、無事に助けたいね」
「はい……!」
リラはマイナスな意見を飲み込みアンジェに寄り添った。
アンジェも幾度となく他人から向けられた表情を理解しつつも、希望を捨てられずにいた。
〈首都、カフェ・アーホルン〉
ある日の休日。
カフェ・アーホルンでアメッサはフレーバーティーを飲んでいた。
スカラーは店にアメッサしかいないことを良いことに、接客を放棄し隣に座っていた。
店の鐘が軽快に鳴った。
入店してきたのはビアンカの継母、ビアンカだった。
「スカラー! 手紙、届いたわよ」
「パピーからっ!? やったー!」
ビアンカの一言にスカラーは跳ねるようにしてビアンカの元に向かい手紙を受け取った。
「ふふーん、パパ大仕事が終わったんだぁ〜」
スカラーはふむふむと手紙を何回も読み返していた。
「なんてお返事する?」
ビアンカの質問にスカラーは体を捻り長考した。
「そうだなぁ、このお店の店長になったよーってのと、アメッサちゃんのことと、後は……もうすぐ収穫祭があるよってのを書いて!」
「私のことも書くのか?」
スカラーはどうやらアメッサのことも手紙に綴りたいそうで、アメッサは少し顔をしかめた。
「そりゃそーよ! だって初めての友達だもの」
「何処に送るのか知らないが、あまり私のことを書くと検閲で弾かれるからな」
「任せて頂戴、上手く書いておくわ」
これまでも元
ビアンカはアメッサにウィンクをした。
手紙を執筆するからとビアンカは店の奥に消えていった。
「ビアンカさんの夫は遠方にいるのか?」
「そうだよ。マミーが若い時旅行先でパピーと出会って、それからずっと手紙のやり取りしてるんだって」
なんともロマンチックな出会いだとアメッサは思ったが、その言葉を飲み込むように紅茶を口に含んだ。