「お天気天気〜明るいなぁ〜鳥も〜カルーナーっも〜咲きほっこる〜」
アンジェはリラと共に買ったケープを身にまとい。
るんるんと
今日は収穫祭ということもあり、街には沢山の人と屋台が並んでいました。
「はぁ〜今日の私は特別機嫌がいいですね…………ん?」
店のガラス越しに身なりをチェックしていると、どこからか子供のしゃくり上げる声。
辺りを隈なく確認すると、横道に男の子がうずくまっていました。
「僕。一人でどうしたの?」
「うっ、うう……おねぇちゃん、だれ……?」
男の子はセーラー服を着ていて、大きなテディベアをぎゅっと抱き抱えていました。
「お姉ちゃんはアンジェっていいます! 君の名前は?」
「…………テディ」
「ねぇテディ君、もしかしてママと、はぐれちゃった?」
「うん……」
お母さんの事を思い出したのか、涙がポロポロと落ち、ぬいぐるみを濡らしていました。
「よしっ! 私に任せて下さいっ! 一緒にママを探しましょう!」
「いいの?」
「はいっ!」
テディ君と手を繋ぎ表通りに出ました。
どうしても見つからなかったら軍に行って誰かに助けてもらいましょう。
「テディ君のママって、どんな人ですか?」
「えっと…………おこるとこわい、でもいいにおいがして……まいにち、ぎゅーーってしてくれる」
「ううーーん、とりあえず、大通りを探してみましょう!」
「うん……!」
「ねぇねぇ、しゅうかくさいってなに?」
「えっと、
「おかしもある?」
「あると思いますよ!」
「アンジェ、ぼく、いいことおもいついた……ぼくね、
「良いですよ! まずは……」
指を動かし
「ちがう……おかしみなきゃ、わかんない」
これは…………。
甘い物を沢山あげて虫歯にでもさせてしまったらテディ君のお母さんに怒られてしまうのでは?
うるうると上目遣いをするテディ君に根負けし、手を引かれるまま屋台を巡ることにしました。
街を歩いていると、屋台の店員さんから試食を沢山貰い、両手に溢れるほどでした。
「食べ過ぎてお母さんに怒られませんかね……」
「はみがきちゃんとしてるから、だいじょうぶ!」
テディ君はベンチに座って目をキラキラさせていました。
まずは、花が咲き誇るブルーメのダリアを使ったソフトクリーム。
「おはなのソフトクリーム?」
「はい! いい匂いですよ!」
「うん!」
ソフトクリームを少しずつスプーンであげると、テディは嬉しそうに跳ねました。
お次は
食べやすいように小さくカットして貰えました。
「ぼく、りんごすきかも」
「私も林檎大好きです!」
私の地元、ラントヴィルのメープルクッキー。
「ラントヴィルってどんなところ?」
「そうですね……穏やかで、休みの日には協会に行ってお祈りをして、畑で採れた野菜と穀物で作ったパンを食べて生活してますね」
そうなんだ。とテディはクッキーを口に含みながら喋っていました。
出会った時に比べたら元気になってくれたようです。
更に、モードのオシャレなお菓子、ミニガレット。
「あまくて、しょっぱい!」
「バターと塩ですかね……私これ好きです!」
「ぼくも!」
テディがじーっと私のミニガレットを見つめてきたので、半分にして渡す。
テディはありがとう! と笑顔を見せ、目にも止まらぬ速さでミニガレットを完食しました。
飲み物はヴァッサで採れた新鮮なぶどうジュース。
「ちょっと味が濃かったですかね」
「うーん……」
テディはぶどうジュースを渋そうな顔をしながら飲み干した。
インドゥスのスパイスミルクティー。
テディにはスパイスはまだ早いと思ったので私が飲みました。
私もミルクティーになっていたので飲めましたが、あまり好みの味では無かったです。
最後にリラさんの地元、テクネは工芸品のお店が多かったのですが、なんとか、キノコのスープを発見しました。
「ぼく、キノコすきー! ドルチェはキライでいつものこすから、ぼくがいつもたべてあげてるんだ!」
テディはスプーンを上手に使ってスープを飲み始めました。
「ドルチェ?」
「あっ! ドルチェはね、ぼくのおねぇちゃんだよ!」
新情報です。
家族の情報が少しでも増えた方が早く見つかるでしょう。
「そろそろお母さんとドルチェちゃんに会えるように、探しませんか」
「うん!」
テディはベンチからぴょんっと飛び降りました。
「あ、でもまだたべてないのあるよ? えっと、チャイファルとノイ!」
「まだ食べるんですか!?」
「うーん……おなかいっぱいかも」
テディはまん丸に膨らんだお腹を見せてくれました。
「で、ですよね! えっと、今日のお母さんのお洋服とかって分かりますか?」
うーん。とテディは顎に手を当て思い出そうとしているようです。
「お母様はね………………くろいふく、きてる」
「えっとぉ……」
お、お母様っ!?
この子とてつもなくお坊ちゃんなのでは?
私、誘拐犯とかに間違われたりしませんよね?
「お母様はお母様、だもん」
テディはテディベアの腕を動かして遊んでいました。
子供に外見の特徴を聞いても答えられないですよね。
私も自分のお母さんの顔はふんわり浮かんでも、いざ言葉にするのは難しいですし。
「黒い服……やっぱり軍の人に頼るしかないですかね」
「ぐんのひと? ぼ、ぼくこわいひとやだ」
テディはぬいぐるみで顔を隠しました。
「大丈夫、優しい人達ばかりですよ」
目線を合わせるようにしゃがむとテディは少しだけ顔を見せてくれました。
「おこられない?」
「もしそうなったらお姉ちゃんが助けてあげます!」
不安そうなテディを安心させるように、ポンっと胸を叩き、一緒に歩き始めました。