君たちの時代にいたい   作:たかゆき宗也

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第6話:お茶会

「ふむ……まぁこんな感じか」

 

 春季休暇最終日。

 ルミエール国軍の敷地内の中庭。

 一人の少女がお茶会の準備をしていた。

 

 少女の雪色の髪は肩の上で揺れ、毛先を中心に黒色が混ざっているが、太陽の光で輝いており。

 紫色の瞳は長いまつ毛の下ではっきりと色付いていた。

 

「おはようございます。アメッサ少佐」

「リラ、おはよう」

 

 そこにやってきたのは、長いピンク髪を大きなリボンで一つに纏めた少女。

 瞳はぱっちりとした緑とピンクのオッドアイ。

 オッドアイは珍しく存在感を放っていた。

 

「二人はまだ来てないみたいだね」

「この中庭に立ち入るには士官の許可証が必要だからな。確認の手間があるのだろう」

 

 二人の雑談は、自然と今日の参加者の話題になっていった。

 

「ところでリラ。何故記念式典の日に、急に茶会の申し出をしたんだ?」

「うーん、私が大勢で集まったりするのが好きだから、かな。仲良くなった後、死に別れるのは辛いけど、それを理由に関わらないのは違うかなって」

 

 リラが友人や後輩から慕われているのには、戦場で頼れる味方という理由だけではなく。

 周りに目を向けることの出来るその性格にもあった。

 

 

「……そうか。とはいえレイチェルとも話をする仲になったのか」

「うん。少し前に塹壕内で見かけて、女の子ってだけでも珍しいのに、なかなか見ない格好だったから声掛けたんだ」

「かなり華やかな、死装束という感じだろうか。最後の時まで美しくありたいのだろう」

 

 リラとアメッサはその口ぶりから、レイチェルの事を知っているようだ。

 

「国に雇われているとはいえ、外部の彼女の許可が下りたんだね」

「あぁ、それに関してだが、今回許可を出したのは副総司令官でな」

「えっ、そんな上の階級の方が!?」

「同じ司令部の上官で、有難いことにティーセットまで用意してくれたんだ」

 

 ガーデンテーブルの上には繊細なデザインのティーカップが並べられていた。

 

「茶葉とかお菓子は持ち寄りって感じだったよね?」

「そうだ。手紙にそれぞれ用意して貰いたいものを書いたからな」

 

 

 

 

 

 

「あっ見つけました!」

 

 中庭に明るい声が響く。

 

 少女は薄茶色の髪を下の方で2つに分け輪っかに括っている。

 翠玉色の瞳は薄茶色のまつ毛に覆われていて存在感があった。

 

「アメッサさん、リラさん! おはようございます!」

「おはよう」

「アンジェおはよう!」

 

 アンジェの後ろにはもう一人少女が来ていた。

 

 その少女の髪は短く整えられており、灰色の髪の毛先は赤紫に色付いていた。

 瞳は空の色を移したような水色で一際輝いている。

 

「お二方、お久しぶりです」

「あぁ、先日ぶりだな」

「久しぶりだねレイチェル!」

 

 

「さて、全員揃った事だ。早速始めよう」

 

 

 見た目も背格好もバラバラな4人。

 そんな少女達の初めてのお茶会が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい! 自己紹介します! アンジェ二等衛生兵です! 今年からヴァッサ中央野戦病院で働いています!」

 

「今日私が持ってきた物は〜はいっ! サンドイッチです! 何が好きか分からなかったので、色んな味買ってきましたよー!」

 

アンジェはティースタンドの下段にサンドイッチを並べた。

 

 

「傭兵をしているレイチェルです。手紙の通りスコーンを用意してきました。首都(プロス)で人気のベーカリーのものです。お口に合うと嬉しいのですが」

 

 

 レイチェルはティースタンドの中段にスコーンを並べた。

 

 

「ルミエール国軍司令部所属。アメッサだ。階級は少佐で……見ての通りケーキだ。好きに食べてくれ」

 

 アメッサはティースタンドの上段にショートケーキを並べた。

 

 

「私はリラ。伍長で第13小隊に所属しているよ。今日用意して来たのはテクネに古くからある茶葉でね。香りがすっごく良いんだ」

 

 リラは慣れた手つきでカップに紅茶を注ぐ。

 

「ストレートでもミルクでも合うやつにしたから、好きにアレンジしてね」

 

 

 アンジェは輪切りの林檎を入れ、アップルティーに。

 レイチェルはミルクとメイプルを入れ、ミルクティーに。

 アメッサはそのままのストレートティー。

 リラはレモンを浮かべ、レモンティーにした。

 

 

「それじゃあ……乾杯っ!」

 

 

 

 

 

 

「アンジェさんは、今年から衛生兵になったんですね」

「はい!……あの、レイチェルさん。そのアンジェさんって呼び方、ちょっと、慣れないです」

「そうですね……では、アンジェちゃん。と呼んでも良いですか?」

「はい!それが良いです!」

 

 アンジェとレイチェルは歳が近いこともあり、話が弾んでいるようだ。

 

「じゃあレイチェル。私の呼び方も変える?」

「リラさんをですか……?」

「リラ、君が一番年上なんだ。なかなか難しいものがあるだろう」

 

 アメッサの言葉にアンジェとレイチェルが大きく頷く。

 

 

「あ、じゃあアメッサ呼び方変えて貰ったらどう?」

「……は?」

「休日にまで少佐少佐呼ばれてたら堅苦しいと思うよ」

 

 そう提案され、レイチェルが暫く考えた後……。

 

 

「では……アメッサ、ちゃん?」

「レイチェル、私は君より年齢が上だと聞いていたんだが?……まぁいい、好きに呼べ」

「はい。ありがとうございます」

 

 複雑な表情を浮かべるアメッサを横目にリラがアンジェに語りかける。

 

「そういえば、アンジェ。野戦病院での仕事はどう?慣れた?」

「あ、はいっ! もう何度か前線に行ったりもしています! レイチェルさんとはその時にたまたま出会いました!」

 

 レイチェルは静かに頷いた。

 

「へぇ〜! そうだったんだ! 仕事も上手くやれてるなら何よりだよ」

「体力検定の時はどうなるものかと思ったがな」

 

 

「わ、私の事は良いんですよ! それより私、三人が何してる人なのかとか知りたいです! 話せる事でいいのでっ!」

「確かに良いかもね。私達まだお互いの事殆ど知らないしさ」

 

 

 

「それじゃあ……私から話そうかな」

 

 リラはそう言いサンドイッチを皿に移した。

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