こちらもキリの良いところまで書いておりますので、ゆっくり投稿していきます。
逸般人、異世界にて目覚める
硬質なベッドの感触と、規則的に響く低い機械音で意識が浮上する。ゆっくりと目を開けると、そこは見慣れない天井だった。金属質の、無機質なパネルが整然と並び、隅には淡い光を放つランプが埋め込まれている。
空調から送られてくるのだろうか、わずかにひんやりとした空気が肌を撫でた。
上半身を起こすと、簡素な医療着のようなものを着ていることに気づく。
周囲を見渡せば、そこは医務室のような一室だった。
壁際には心拍や血圧を示すモニターが並び、静かに電子音を明滅させている。窓はなく、外の様子をうかがい知ることはできない。ここがどこなのか、なぜ自分がこんな場所にいるのか、記憶は曖昧だ。
ただ、漠然と「異世界に入り込んでしまった」という、奇妙な確信だけが頭の中にあった。
状況を把握しようとベッドから降りようとした、その時だった。
「…! 目が覚めたのですね、管理人」
凛とした、しかしどこか安堵を滲ませた声が響く。声のした方へ視線を向けると、ドアのそばに一人の少女が立っていた。
陽光を溶かしたようなプラチナブロンドの髪が、室内の照明を反射してきらめいている。
頭には動物の耳のようなものが生えており、時折動いていた。
彼女のライトブルーの瞳が、まっすぐにこちらを見つめている。
その表情には、緊張と、そして微かな期待のようなものが浮かんでいる。
彼女は胸に手を当て、深く息をつくと、一歩、また一歩とベッドに近づいてくる。その手には、データパッドのようなものが握られていた。
「気分はどうですか? 身体に異常は? …ドクターを呼びましょうか」
立て続けに問いかけながらも、その視線は心配そうに管理人の全身を観察している。彼女の言葉から、自分が「管理人」と呼ばれていること、そして意識を失っていたらしいことが推察できた。
彼女が口にした「ドクター」という単語も、この場所が医療施設であることを裏付けている。
ペリカがさらに何かを言おうとした瞬間、医務室のドアが無遠慮にスライドして開いた。
そこに立っていたのは、燃えるような赤い髪を持つ少女だった。ルビーのように輝く瞳が、鋭くこちらを射抜く。
その瞳孔は蒼く、まるで龍を思わせる独特の形をしていた。
彼女は壁に片方の肩を預け、腕を組んだまま、不機嫌そうな表情で口を開く。
レーヴァテイン 「…ようやく起きたか。騒がしいと思ったら、あんたのせいだったんだな」
ぶっきらぼうな口調。その声には、苛立ちと、しかしそれだけではない何か複雑な感情が混じっているように感じられた。
彼女はペリカを一瞥すると、再び視線を管理人に戻す。
その瞳の奥で、蒼い光が揺らめいた気がした。
「レーヴァテイン…! 管理人は今、目を覚ましたばかりです。もう少し静かに…」
「別に。死んでないならそれでいいだろ。
…それより、あんた。今の気分はどうだ? 前よりはマシな顔してるみたいだけど」
「前よりは」その言葉に、彼女が以前の自分を知っていることが示唆される。記憶は無い。
しかし、彼女の言葉は、失われた過去への微かな手がかりのように響いた。
二人の少女の対照的な視線が、ベッドの上で呆然とする管理人に注がれていた。
(おいおい…まさかここって…エンドフィールドの世界の中か…?
最近ようやくアプデの範囲を終わらせて工業を本格的にしようと思ったら…いつの間にかこの世界に居たってのか…それに…)
管理人は2人の様子を見た。
(ペリカ、そして何故か最初からいるレーヴァテイン…レヴィって俺自身は呼んでいた記憶があるが…だが、確か管理人は記憶が無いはずだ。その路線で行こう)
(本物の管理人とは違う俺だけど…何かできることはあるだろうか…)
そう思って管理人はペリカとレーヴァテインに話しかけた
「すまない…まずは2人の名前を教えて貰ってもいいか…?記憶がなくてな」
目の前の二人の少女を見つめながら、内心の動揺を悟られぬよう努める。
ここは間違いなく、つい先ほどまで画面越しに見ていたはずの世界。「アークナイツ・エンドフィールド」
ペリカの生真面目な立ち居振る舞いも、レーヴァテインの刺々しいようでいてどこかこちらの様子を窺うような視線も、記憶の中にある彼女たちの姿そのものだ。
どうして、どうやってこの世界に来てしまったのか。疑問は尽きないが、まずはこの状況に適応し、生き抜くことが最優先だろう。
幸い、物語の導入は原作通り、「記憶喪失の管理人」として始まるようだ。
この設定は、こちらの正体を隠す上で都合がいい。
「記憶がなくてな」
という言葉が、静かな医務室に響く。
その言葉を聞いた瞬間、ペリカのライトブルーの瞳がわずかに見開かれた。
彼女は手にしていたデータパッドを握りしめ、心配そうな表情をさらに深くする。
「…やはり。ドクターの診断通りですね。管理人、どうかご安心を。私たちはあなたの敵ではありません。
私はペリカ、エンドフィールド工業の監察官です。あなたの健康状態と安全を確保するよう命じられています」
彼女はそう言うと、胸に手を当てて丁寧にお辞儀をした。その仕草は、まさにゲームで見た通りの彼女だった。
監察官としての職務に忠実であろうとする生真面目さが、その一挙手一投足から伝わってくる。
ペリカ 「記憶の混濁は、転送ゲートを通過した際の副作用である可能性が高いと予測されています。
身体的な外傷は見られませんが、念のため、もうしばらくここで安静にしていてください。必要なものは全てこちらで用意します」
彼女が理路整然と状況を説明している間、壁に寄りかかっていたレーヴァテインが、ふい、と顔を背けた。組んでいた腕を解き、片手で自身の赤い髪を無造作にかき上げる。その横顔からは表情を読み取ることは難しい。
レーヴァテイン 「…レーヴァテイン」
ボソリと、吐き捨てるように彼女は自分の名を告げた。管理人の方を見ようともせず、視線は床の一点に向けられている。その声には、先ほどまでの刺々しさは少し薄れ、代わりに戸惑いや、あるいは落胆のような響きが混じっていた。
レーヴァテイン 「…本当に何も覚えてないのか。あんた」
突き放すような口調だが、その問いには、答えを確かめずにはいられないといった切実さが滲んでいる。
彼女のルビーの瞳が、ちらりとこちらを窺う。記憶の中の「前の管理人」と、目の前の「記憶を失った自分」を比べているのだろうか。
その瞳の奥で揺れる蒼い光が、彼女の複雑な心境を物語っているかのようだった。
「レーヴァテイン! 管理人をあまり問い詰めるようなことは…」
「…別に。どうでもいいだろ。覚えてないなら、それで。
…どうせ、また最初からだ」
彼女はそう呟くと、踵を返して医務室から出て行こうとする。その背中は、何かを拒絶しているようにも、何かから逃げようとしているようにも見えた。
スライドドアが開く直前、彼女は一度だけ足を止め、振り返らずに言葉を続ける。
「…腹が減ったら、食堂に行け。場所くらい、そこの監察官サマが知ってるだろ」
それだけを言い残し、彼女の姿はドアの向こうへと消えていこうとする。静寂が戻った医務室には、ペリカの困惑したようなため息と、壁のモニターが発する単調な電子音だけが残された。
彼女の寂しそうな背中をみて、思わず口をついて出た「レヴィ」という呼び名。
それは、ゲームをプレイしていた頃の、管理人自身が彼女につけた愛称だった。
この世界の「管理人」も同じように彼女を呼んでいたのか、それとも全くの偶然か。
どちらにせよ、その一言は確かな変化をもたらした。
「レヴィ!」
その声に、医務室から出ようとしていたレーヴァテインの足がぴたりと止まる。彼女の肩が、ほんのわずかに震えたのを管理人は見逃さなかった。
ゆっくりと、本当にゆっくりと、彼女が振り返る。
そのルビーの瞳は、驚きに見開かれていた。先ほどまでの刺々しい光は消え、代わりに戸惑いと、そして信じられないものを見るような色が浮かんでいる。
一瞬の沈黙。壁のモニターの電子音だけが、やけに大きく響く。やがて、レーヴァテインの唇の端が、ほんの少しだけ、本当に気づくか気づかないか程度に持ち上がった。
それは嘲笑でもなく、いつもの不機嫌さでもない、何か別の感情だった。
「…ふん。なんだ…私の呼び方、覚えてるじゃないか」
その声色は、先ほどまでとは明らかに違っていた。
ぶっきらぼうな響きはそのままに、どこか棘が抜け落ちたような、柔らかさを帯びている。
彼女はもう一度、ふん、と鼻を鳴らすと、今度こそ迷いのない足取りで廊下へと消えていく。
去り際の足音が、心なしか軽やかに聞こえたのは、気のせいではなかっただろう。
開いたままだったスライドドアが、静かに閉じていく。
一連のやり取りを、ペリカは驚いたような、それでいて何かを納得したような複雑な表情で見つめていた。
彼女は手に持っていたデータパッドに視線を落とし、何事か呟くと、再び顔を上げて管理人に向き直る。
「…管理人。レーヴァテインは、その…少し付き合いにくいところがあるかもしれませんが、決して悪い人間ではありません。むしろ、誰よりも仲間を…あなたのことを、気にかけています」
フォローするように言うペリカの言葉には、嘘偽りのない実感がこもっていた。
彼女は少しだけ言い淀んだ後、気を取り直すように背筋を伸ばす。
「とにかく、まずは体力の回復が最優先です。レーヴァテインの言う通り、食事を摂りましょう。私が食堂までご案内します。立てますか?」
彼女はそう言って、管理人に手を差し伸べようとする。
そのライトブルーの瞳には、監察官としての職務意識と、目の前の「管理人」個人に対する純粋な気遣いが同居していた。彼女の視線は、管理人の体調を細かく観察している。
もし少しでもふらつく素振りを見せれば、すぐにでも肩を貸す準備ができているようだった。
医務室の空気は、まだ少しだけ緊張感を残しながらも、確かな変化の兆しを見せていた。
失われた記憶の断片が、予期せぬ形で二人の少女の心に波紋を広げ始めている。
キャラエミュが…難しいです…
短めですが、キリがいいのでこの辺で。
本文の長さアンケートです
-
このままでちょうどいい!
-
あのぉもうちょっと短くできませんかねぇ…
-
たまには長くやってもいいのよ。