ある意味記憶の共有された別人のようなものですが…本人たち曰く一心同体みたいな物との事です。
後ペリカの耳は梟っぽいので梟の耳とします。
帝江号の最深部、中枢区画。そこは、通常のオペレーターたちが立ち入ることを許されない、最高機密レベルの領域だった。厚い装甲隔壁に守られた通路を進むと、やがて円形の広間へと出る。
天井は高く、壁面には無数の源石の結晶が埋め込まれ、淡い青白い光を放っている。その光は脈動するように明滅し、まるで生き物のように感じられた。
広間の中央には、巨大な黒い球体が浮遊していた。『協約特異点』エンドフィールドの技術の粋を集めた、謎に満ちた装置。表面は滑らかで、鏡のように周囲の景色を映し込んでいる。
だが、その鏡像は歪み、揺らめき、まるで水面に映る景色のように不確かだった。
球体の周囲には、複雑な幾何学模様が光の軌跡を描き、ゆっくりと回転している。
○○―いや、今は管理人と名乗るこの少年は、協約特異点の前に立ち、じっと球体を見つめていた。その黒曜石のような表面に、自分の姿が映り込んでいる。黒髪の少し疲れたような表情の、若い男の姿。
「……」
彼は、懐から小さな端末を取り出した。ペリカから事前に受け取っていた、協約特異点の操作マニュアルだ。画面には、簡潔な説明が表示されている。
[協約特異点 操作ガイド]
機能: 管理人の身体パラメータの再構成。性別、外見の微調整が可能。
原理: 協約技術による一時的な量子状態の重ね合わせと固定化。詳細は機密事項。
注意: 変更後は24時間、再変更不可。記憶の断片が浮上する可能性あり。精神的な負担を伴う場合がある。
推奨: 初回使用時は、医務室での事後チェックを推奨。
管理人は、端末を仕舞い込むと、深く息を吸った。そして、ゆっくりと協約特異点へと歩み寄る。球体に手を伸ばすと、その表面は冷たく、しかし不思議な温もりを孕んでいた。まるで、生命の鼓動を感じるような、奇妙な感触。
(性別を、変える……)
彼の脳裏に、ゲームで見た『女性管理人』のビジュアルが浮かび上がった。柔らかな黒髪はそのままに、華奢で女性らしい体つき。その姿に、なぜか懐かしさを覚えた。
それは、単なるゲームのキャラクターを見ているような感覚ではなかった。もっと深い、魂の奥底に眠る何かが、共鳴しているような――。
(これも、「俺」なのか? それとも……)
疑問は尽きない。だが、今は考えている時ではなかった。谷地通路への作戦を控え、少しでも多くの情報を、少しでも多くの力を得る必要がある。
もし、この協約特異点が、何か新しい記憶や能力を解放する鍵になるのであれば、試してみる価値はあった。
管理人は、端末の指示に従い、協約特異点へと意識を集中させた。すると、球体が激しく明滅し始め、彼の視界を眩い光が覆い尽くした。
――夢を見ていた。
果てしなく広がる、蒼い海。
波一つない水面が、空と見分けがつかないほど、どこまでも続いている。その境界線は曖昧で、自分が空に浮いているのか、水の中に沈んでいるのかすら分からない。
ただ、静寂だけがあった。そして、その静寂の中に、確かに誰かがいた。
『――また、会えたね』
懐かしい、温かい声。女性の声だった。だが、誰の声かは分からない。ただ、その声を聞いた瞬間、胸の奥が締め付けられるように苦しくなった。
『忘れないで。私たちは、ずっと一緒だったんだよ』
蒼い海が、激しく揺れ動き始めた。水面が裂け、その裂け目から、無数の光の粒子が溢れ出してくる。粒子は、やがて人の形を成し始める。それは――
――自分自身だった。だが、女性の姿をした。
『これが、あなたのもう一つの「可能性」。過去でもあり、未来でもある。受け入れて』
光に包まれた女性の姿が、こちらへ手を伸ばしてくる。その手を取ろうとした瞬間――世界が、弾けた。
(ッ……!)
管理人は、激しく息を吸い込みながら、現実世界へと引き戻された。協約特異点の眩い光は既に消え、広間は再び静寂に包まれている。だが、何かが決定的に変わっていた。
自分の身体が、軽い。
管理人は、恐る恐る自分の手を見下ろした。それは、先ほどまでの、筋肉質で節くれ立った男の手ではなかった。
華奢で、指先の細い、女性の手だった。慌てて自分の胸元に手を当てると――確かに、そこには膨らみがあった。
「……え、嘘……」
声が、違う。少し高く、柔らかな、少女の声だった。管理人は、協約特異点の鏡面のような表面に映る自分の姿を凝視した。
そこには、黒髪の少女が立っていた。身長は、先ほどよりも十数センチ低くなっている。
体つきは華奢で、しかし健康的な曲線を描いていた。服は、自動的にサイズ調整されたのか、ぴったりと身体にフィットしている。
(これが、私……?)
混乱する思考。だが、不思議なことに、拒絶感はなかった。むしろ、この身体は、どこか懐かしい。まるで、ずっと昔から知っていたかのような、奇妙な親近感があった。
協約特異点の力は、単に外見を変えただけではない。それは、管理人の魂の奥底に眠っていた、もう一つの「可能性」を引き出したのだ。
夢の中で見た、蒼い海。あの女性の声。
『私たちは、ずっと一緒だった』
――その言葉の意味が、少しだけ分かった気がした。これは、単なる性転換ではない。記憶の海に沈んでいた、もう一人の自分との、再会だったのだ。
「……ありがとう」
少女の姿をした管理人は、協約特異点に向かって、小さく呟いた。何に対する感謝かは、自分でもよく分からない。
ただ、この再会が、決して悪いものではないと感じていた。
深く息を吸い、管理人は広間を後にした。鏡面のような床に映る、自分の小さな影。
カツン、カツンと響く足音も、先ほどより軽やかだ。中枢区画を抜け、通常区画へと戻る廊下を歩きながら、彼女は自分の身体の変化を確かめていた。
(視点が、低くなってる……それに、身体の重心も違う。バランス感覚も、少し調整が必要ね)
かつての戦闘技術は、男性の身体を前提に磨き上げられたものだった。
だが、不思議なことに、この女性の身体でも、動き方の感覚は残っている。
まるで、ずっとこの身体で生きてきたかのように、自然に動ける気がした。
協約特異点は、単に外見を変えただけではなく、筋肉の記憶や神経回路まで、最適化したのかもしれない。
廊下の角を曲がったところで、管理人は足を止めた。前方から、聞き慣れた足音が近づいてくる。
三つの気配。ペリカ、チェン、レヴィ――彼女たちだ。どうやら、自分を探していたらしい。
(……さて、どう説明したものかしら)
管理人は、少し困ったように微笑むと、そのまま彼女たちの方へ歩き出した。角を曲がった瞬間――
「あ、管理人……え?」
三人が、ピタリと動きを止めた。ペリカの青い瞳が、驚愕に見開かれる。
その顔は、まさに『宇宙猫』が予想外の物体に遭遇した時のような、呆気にとられた表情だった。
口を半開きにして、管理人と、背後の廊下を、何度も見比べている。
「か、管理人……ですよね? え、ちょ、え?」
普段は冷静沈着な彼女にしては、珍しく声が上ずっている。管理人は、そんな彼女に向かって、少し照れたように笑いかけた。
「うん、私だよ、ペリカ。協約特異点、使ってみたの。驚かせちゃって、ごめんね」
女性らしい、柔らかな口調。その声を聞いた瞬間、ペリカの頭の中で何かがショートした。彼女の梟の耳が、ピクピクと激しく動き始める。
「ほ、本物……管理人の、声……」
そして次の瞬間、ペリカの理性のリミッターが外れた。
「か、可愛い……!」
小さく呟くと、彼女は抑えきれない衝動に駆られるように、管理人へと駆け寄った。
そして、躊躇なく――ぎゅっと、彼女を抱きしめた。
「わっ!? ペ、ペリカ!?」
突然の抱擁に、管理人は驚きの声を上げた。ペリカの腕が、自分の背中に回される。彼女の顔が、自分の肩口に埋められる。そして――
「……小さい。柔らかい。いい匂い……」
ぼそぼそと、何かを確認するように呟くペリカ。その声には、明らかに理性が欠けていた。
管理人は、自分と殆ど変わらない背丈になったペリカに抱きしめられ、身動きが取れなくなった。
「ちょ、ちょっと、ペリカ、落ち着いて! 苦しい、苦しいから!」
管理人は、必死にペリカの肩を押すが、彼女の抱擁は予想以上に力強く、びくともしない。普段の冷静なペリカからは想像もつかない、驚異的な握力だった。
「だ、だって……管理人が、こんなに可愛くなって……私と同じくらいの背で……ずっと見上げてた管理人が、今は目線が同じで……」
ペリカの声は、感極まったように震えていた。彼女の梟の耳が、幸せそうにぴょこぴょこと動いている。
どうやら、彼女の中の可愛いもの好きスイッチが完全に入ってしまったらしい。
その光景を呆然と見ていたチェンが、ハッと我に返った。
「あ、ずるい! ペリカだけ!」
そう叫ぶと、チェンもリィルへと駆け寄ってきた。彼女の黒い瞳は、キラキラと輝いている。
「管理人〜! 女の子になったんだね! でも、雰囲気で分かったよ! やっぱり管理人は管理人だもん!」
チェンは、ペリカごとリィルに抱きつく形になった。龍族特有の、温かな体温と、ほのかに香る花のような匂い。
二人に挟まれる形になったリィルは、完全に身動きが取れなくなってしまったのだ。
TSした管理人はちゃんと女の子なのでセーフです
次の関話、誰を書いて欲しいですか?
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管理人(女)
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チェン
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ペリカ
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レーヴァテイン